TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる)   作:模芋

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顔合わせ回は特に面白味がなかったので省略


2章 最初は同期と組みつつ無難に?
【初配信】皆さん初めまし……て?【ニシツキシキ】


 同期とのオンライン上での簡易顔合わせも済ませ、ついにデビューの日が来た。

 私はトップバッターである。

 後の方だと前に配信した人の話を振られた時に面倒だから、という理由だ。

 私が先なら後の人に丸投げできる。

 同期二人が男性でその辺りを何か言われても多分困るので助かった。

 ただそこで気を使えるなら女性をもう一人用意してほしかった。

 

『合格の基準を満たした人を全員採った結果がこれなので』

 

 言うだけならタダの精神で聞いてみたらそう言われた。

 ついでに運営側で十分な対応ができる人数の問題もあるとか。

 実際、もう一人増える予定はあるが対応が遅れて時期がずれるそうだ。

 そういう事情があるならまあ仕方ないと思うが……

 

 ……いや、やっぱりデビュー時期揃えて遅らせた方が良かったのでは?

 


 

 配信の練習では担当の水守さんに設定の確認をしてもらえた。

 だが今回からは家からの配信で、自分だけで設定の確認をしなければならない。

 

 最初から変なやらかしはしたくない。

 そう思った私はチェックリストを作っておいた。

 配信のタイトルやサムネイルなど下準備の部分までチェックリストを用意した。

 

 タイトルの初配信宣言と企業名と前振り良し。

 

 配信に利用するソフトの設定を確認。

 マイクはミュートではないし指定も大丈夫。

 ステレオミキサーでマイクとBGMが同時に流れるよう設定。

 BGMは気に入っているフリーゲームで使われたのを配布元で規約確認して使用。

 キャプチャソフトの設定も多分良し。

 V側の透過用の背景色はアバターに使われていない赤を選択。

 背景用の壁紙は会社側で用意してもらえたものを設定。

 チャット関連の設定も多分大丈夫。

 

 今回は配信の流れがあるから簡単なカンペも準備済み。

 余計なもの、特にカンペを映すなどの事故が起きないよう注意しておこう。

 失敗したら失敗したで面白ければ有りだが。

 

 よし、配信を始めよう。

 


【初配信】皆さん初めまし……て?【ニシツキシキ】


 

 わざとタイトルに入れなかった名前を画面に表示する。

 

「皆さん初めまして、ハソシウルちゃんです。BGMとの音量比は大丈夫でしょうか」

 

 以前思いつきで『(はし)る』と『(そう)』を組み合わせただけの安直な名前。

 これまで何度か文字で打ち込んだが口にしたことはあまりない。

 そしてこれが、これからの私のVtuberとしての名前でもある。

 

上位チャット

:やっと名前出たか

:音量比おk

:声ダウナー系?

:また性別不詳が増えた

 

「性別不詳じゃないですハソシウルちゃん女の子です」

 

 確かに声は低めだけど。

 同じ箱に性別不詳とか性別迷子がいるから気持ち分かるけど。

 ところどころ『俺』の影響で男っぽいとか言われるけど。

 それでもちゃんと声は女性だと思うんですけど。

 

 というか公式の告知でも女の子ってあったはず。

 バ美肉とかそういう(たぐい)の可能性も疑われていたのだろうか。

 

「じゃあちょっと自己紹介しながらチャンネルやSNSの設定弄りますね」

 

 ちなみに名前は配信開始まで完全に伏せていた。

 配信タイトルは勿論、SNSや公式告知でイラストを出しても名前は出さなかった。

 何ならSNSのIDすら『no_name』の後に適当な数字の羅列を入れたものだ。

 名前で先に調べられると面白くないからだ。

 

 知名度が低くても検索すればある程度の情報は出てくる。

 それで盛り上がるなら良いが、最悪の場合は初配信の前にピークが終わる。

 少なくとも『俺』は発売前がピークとか言われたゲームを知っている。

 だから情報を伏せることで、せめてピークが配信後に来るよう期待した。

 話題性で言えば先出しした方が強いが、安定性では後出し一択と思っている。

 

「どの程度の方がご存知か分かりませんが、私は以前からRTAとかやってる人です」

 

上位チャット

:マジであの人?

:ぐぐった、わからん

:一発目から分かり易い属性来たな

 

「本人証明は配信終了後、いつものハソシウルとしてのアカウントで告知を――」

 

 配信前から詳細を伏せて配信へ誘導する案もあった。

 ただこれまでのハソシウルとしてのアカウントは露骨にRTA関連に偏っていた。

 そんなアカウントでVtuberの告知をすると、まあいろいろ勘繰られる。

 どう転がるか分からないという点もありこの案も却下。

 水守さんと相談の末、話題が広まるであろう配信後に発表することに決めた。

 最善ではないが安牌だと思う。

 

「改めて、ハソシウルちゃんは近未来から来たほぼ人間な超高性能ガイノイドです」

 

 この辺りは相談して決めた設定だ。

 そして『俺』の話でもある。

 

「具体的には202X(にせんにじゅううん)年から200X(にせんうん)年に特に意味もなく送り込まれました」

 

上位チャット

:近未来(現代)

:目的とかないんかい!

:既にほぼ追いついてるパターンとか初めて聞いたわw

 

 これまでは『俺』がやり込んだゲームを中心にやっていた。

 だがこれから出てくるゲームは『俺』が経験していない。

 そういう部分によるずれをうまいこと設定に落とし込めていると思う。

 

 少なくとも――

 今まで経験したゲームだったから普通にやってもつまらないのでRTAをした。

 ――この『設定』は本当のことなのだから。

 

 他にも本当のこと交じりの設定を並べていく。

 その中の『以前の世界との微妙な違いが気になる』というのも本当だ。

 残念ながらこっちは『私』のような一個人がどうこうできることではない。

 だからこれは、そういう疑問がある、と記憶する程度の意味しかない。

 

「もっとお話をしたいところですが、最初の配信ですしハッシュタグを――」

 


 

 事前準備もありトラブルもなく、予定通りの流れと時間で配信を終われた。

 名前を利用しつつ事故要素を避けるという意味でも失敗らしい失敗は無かった。

 RTAの頻度が下がるという話も自然な形で組み込めた。

 

 ただ一つ、大きな誤算は――

 


 

ハソシウル異名一覧(未整理)

 

・新作走らないと死ぬ人

  Vtuber化以前にやたら新しいRTAに手出ししていたことから。

  配信を始めたので多分快方に向かっている。

 

・未来においていかれたガイノイド

・近未来(現代)出身

  過去に来たのに生まれた時代に追いついたという設定から。

 

・人生RTA勢

  初配信中に各種作業を並行して進めたことから。

 

・匿名希望さん

・名称不明さん

・名前を言ってはいけないVtuber

  配信直前まで名前が伏せられていたことから。

  なお配信前のイラスト公開時には「名称不明の人」と紹介された。

 

  ・

  ・

  ・

 


 

 まだ一回しか配信していないのに何故か非公式Wikiに異名一覧ができていた。

 どうしてそうなった?




いつもより長くなったから二回に分割したかった
他と比べて文字数過少とか面白い要素や分ける必要性に欠けるとかでしなかったけど


Q.実際配信者ってどのぐらい準備するの?
A.本文の準備は元PCゲー配信者視点で想像できる程度
 多分抜けがあるし複数の要素をまとめて管理するソフトが無いともっと大変
 いや普通はある程度まとめて処理してくれるソフト使うと思うけど


IDの確保について補足
 変更後に予定しているIDを別の鍵アカウントで確保
 配信中の修正時までに他に取られないようにした


途中の20XX年のくだり補足
 配信画面に設定を表示しているので200X(にせんうん)年は正しく伝わっています

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