TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる)   作:模芋

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Vtuberとしての活動から見たい人は2章まで流し読み推奨
1章前半はかなりの頻度で時間が飛びます
あと最初の方だけ6時間置き更新します(今更)


1章 『私』というVtuberになるまで
それを前世と仮称する


 『私』には『私』ではない記憶がある。

 

 

 それは平凡な男の微妙な人生。

 客観的にはそこそこ恵まれているはずだが、主観ではそれ程恵まれていない。

 タバコ無し、彼女無し、お酒は軽く嗜む程度。

 それなりに見ていたはずのアニメは徐々に追えなくなった。

 ゲームもそこそこするがソシャゲなどは期間要素を理由に手出ししない。

 昔は笑えていたインターネット老人会をじわじわと笑えなくなっていく。

 そんな珍しくもなんともない、時代に置いて行かれつつある人間の一人だ。

 

 

 もうどんな理由だったかは覚えていない。

 その日は珍しくヤケ酒をしてみたくなった。

 偶然見つけた小さな居酒屋で、財布を叩きつける勢いで酒とつまみを注文した。

 

 確か、誰かに愚痴を漏らしていた。

 居酒屋で居合わせただけの初対面の他人に、だ。

 そんなことをする程度には疲れていたらしい。

 

 

 それでどんなやりとりをしたんだっけか。

 あまり内容を覚えていない。

 ただ一つだけ、覚えている会話がある。

 

「これまでの人生に後悔はある?」

 

 そいつの問いに、俺はこう答えたはず。

 

「後悔の無いやつなんているかよ」

 

 何かもっと大切な話をしていた気もする。

 その大切なはずの話よりもはっきりと覚えていた。

 

 それが『俺』としての最後の記憶だ。

 


 

 『私』が始まってから『俺』の記憶は邪魔なことの方が多かった。

 

 半端に男としての知識や経験の影響を受けた。

 それが原因で人付き合いでは結構苦労した方だと思っている。

 ぼっちとまでは言わないが特別仲が良いと言える関係もできなかった。

 

 『俺』と『私』では生まれた家は勿論、生まれた年も微妙に違った。

 その癖『俺』の最後の記憶よりも大分前、俗に言う逆行に近い何かだ。

 

 もしも『俺』と『私』の生まれた年が同じなら――

 あるいは『俺』の最後の記憶の頃から『私』が始まっていれば――

 生まれた年の違いが何らかの枷になる度に、そんな我儘を思った。

 

 親の違いについては何とも言えない。

 『俺』の時と比較すればやや放任主義でとんでもなく甘い人だろう。

 もしも『俺』の記憶が無ければ結構性格の悪い子に育ってた気がする。

 特にお小遣いの多さで金銭感覚がずれそうだ。

 まあ現実はコンシューマゲームを買う程度にしか使っていないが。

 

 それと、この世界だ。

 どうやら『俺』の生まれ育った世界とは微妙に違うらしい。

 見覚えのある何かの中に、たまに見覚えのない何かが混ざっている。

 テレビだと、よく見ていた番組の企画が見覚えのないものと入れ替わっていたり。

 ゲームだと、以前あったバグ技が消えたり、あるいはなかったバグ技が増えたり。

 バタフライエフェクトの線も考えたが、調べた限り歴史からして微妙に違った。

 これは『俺』だったときにあまり勉強していなくて気付くのが遅れた。

 あるいはテレビをよく見ているような人間だったらもっと早く気付けただろうか。

 記憶していないだけで芸能人も入れ替わっていそうだ。

 

 

 総合的に言うと、皆と違う記憶を持つ、というのはあまり有利に働かないらしい。

 あるいは有利に働いた例を自覚していないだけかもしれない。

 とにかく、主観では損の方が多い人生が続いた。

 


 

 なんだかんだで大学生になり、一人暮らしを始めて一年が経つ。

 ここで一つ問題が起き始めた。

 十分な仕送りをしてもらっているのに金銭面がじわじわと厳しくなっている。

 

 別にガチャやスパチャのような課金の沼で散財しているわけではない。

 食事の用意や片付けの手間を減らす為にお店に行ったりお弁当を買った。

 パソコンやスマートフォンがそろそろスペック不足だから買い換えた。

 気になったゲームを購入した。

 良さそうな同人誌を見つけて買い漁った。

 そういう積み重ねで目減りしてきたのである。

 

 勿論買い換えのような一時的な出費であることを考えればまだお金は何とかなる。

 食事の手間を惜しまなければ少しは余裕ができる。

 少なくとも『俺』は頑張っていたし『私』にもできないわけではない。

 ただ正直に言って、やりたくない。

 

 単なる金欠ならアルバイトでも始めたところだが今回は違う。

 働きたくない楽したいが本質である以上、アルバイトなんて(もっ)ての(ほか)だ。

 しかしそんな都合の良いものに心当たりはない。

 一度はギャンブル系の収入を連想したが、あれは最後に胴元が勝つ仕様だからな。

 やれば間違いなく出費の方が大きくなる。

 

「非課税の5000兆円欲しい」

 

 ベッドで転がりながら口にしてみる。

 残念ながらお金が降ってきたりしない。

 まあ、降ってきたら降ってきたで怖いと思うが。

 

 お惣菜(そうざい)を諦めて自炊するべきだろうか。

 でもお惣菜(そうざい)はプロの味を安く得られるし基本的にコスパが良いんだよなぁ。

 そんなことを考えながらパソコンで日課の消費を始めて気付く。

 

「そうか、この手があるんだ」

 

 何もせずにお金が入ったりはしない。

 ならば次点、楽をしてお金が欲しい。

 

 『私』にとって楽な方法でお金が降ってくる方法。

 理想は遊んでお金が貰える仕事。

 つまり『私』がゲーム動画を投稿して広告収入を得られればいいのだ!




本文に書く機会がありませんでしたが『俺』と『私』の身長は同じ169cmです。
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