TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる)   作:模芋

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赤い通信機追加のアップデートは7月16日で作中時間より前ってwikiが言ってた


夏と言えば雪山。よしんば冬だったとしても雪山

 今回集まった中でライバーは八名。

 八名と言えば大人数でやるゲームの目安の一つでもある。

 そう、すなわち――

 

『それじゃあテストも兼ねて、社内雪山人狼始めるぞー!』

 

 社長の音頭に合わせて皆で声を挙げる。

 つまり、そういうことである。

 


 

 雪山人狼とは、一部で流行っていた雪山から脱出するゲームの通称である。

 ゲームをするのに必要な人数の目安は八人。

 サバイバーという役割の六名は制限時間内に施設の修理をして雪山から脱出する。

 トレイターという役割の二名はサバイバーの脱出を妨害する。

 脱出に成功したらサバイバーの勝ち、失敗したらトレイターの勝ちになる。

 

 この役割は最初ランダムに割り振られる。

 なので最初は誰がトレイターか分からない。

 そしてトレイターの妨害は人や場合によって様々なパターンがある。

 

 サバイバーに紛れて進行に必要な材料を隠して遅延を狙っても良い。

 同じくサバイバーに紛れて嘘の情報を流して混乱させても良い。

 あるいは状況を見て突然殺しにかかっても良い。

 そういった判断や駆け引きが肝になるゲームだ。

 


 

 始まった理由は幾つかある。

 その内配信上でやりたいゲームの候補として挙がっていたこと。

 試しにやれるだけの人数が集まったこと。

 配信に近い形式での接触を増やすこと。

 大体その辺りだ。

 

 なお何人かは寮から会社の方に移った。

 理由は単純に寮だけだとパソコンが足りないから。

 寮と会社の配信用パソコンを合わせれば数は足りるので人数を分けたのだ。

 それで良いのか、いろいろと。

 

 それはそれとして、交流会としてはどうなんだ、という疑問は一応ぶつけた。

 

『この手のゲームやってればお互いの性格ぐらい自然と分かるでしょ?』

 

 何当たり前の話をしているんだ、という反応を社長にされた。

 しかも他の人達も感じからして同意しているようだった。

 そんなバトルもので聞くような理論があってたまるか。

 

 

 そう思っていたんだがなぁ。

 

『ハソちゃんトレイターだったっす!今襲われてるっす!』

 

 拾った通信機(トランシーバー)からレトリクーンの声が聞こえる。

 だがこれは誰かの声真似であり本物ではない。

 何故なら本物のレトリクーンは私と一緒に行動しうっかり熊に襲われ既に死んだ。

 お陰で私は現在単独行動中だ。

 第三者視点、どう考えても私がトレイターです本当にありがとうございました。

 逆の立場なら死体見つけても『あの後始末したんだろうなぁ』と思う。

 いや、私は本当にサバイバーなんだけどね?

 通信機(トランシーバー)の声は誰かの声真似で確定しているんだけどね?

 

 こういう事態が頻発する原因は元ネット声優組二人が原因である。

 その二人は他の人の声真似をある程度の精度でできる。

 しかも特徴的な声に限定されないから咄嗟に見抜けなかったりする。

 この都合で通信機(トランシーバー)の使用や死体を着るなどした時の動きの幅がやたら広い。

 私の知ってる雪山と違いすぎませんか……?

 

 なおこの通信で反論するとそれはそれでまずいことになる。

 少なくとも私が通信機(トランシーバー)を持っていることがトレイターに伝わる。

 またサバイバーの誰かが通信機(トランシーバー)を持っているとも限らない。

 持っていたと仮定しても私の反論でサバイバーを証明できるかというと怪しい。

 

 以前なら状況次第で通信機(トランシーバー)を持っているとトレイターを疑われた。

 トレイターは最初から通信機(トランシーバー)を持っている。

 だから通信機(トランシーバー)を作る相談や拾う機会が明確でないと疑う余地になる。

 しかしこの前のアップデートでトレイター専用の赤い通信機が追加された。

 お陰で通信機(トランシーバー)を持っているだけではトレイターを疑われたりしない。

 が、通信機(トランシーバー)を所有しているという情報の価値は残っている。

 例えば今回必要な素材には通信機(トランシーバー)の材料も含まれる。

 トレイターが素材を消費する為に通信機(トランシーバー)を作った、という見方もできるわけだ。

 

 しかも今回は『偶然拾った』という事実を主張しても証明が難しい。

 詳細は略すが、大抵通信機(トランシーバー)を拾う場合は複数個あるし集団行動をしている。

 言い換えると、私が拾ったなら普通は一緒に拾った誰かがいるはずなのだ。

 そしてその一緒に拾ったレトリクーンは熊で死亡済み。

 ……もしかして、トレイターがレトリクーンの死体から回収したのか?

 

 うーん、最悪の場合はここから一気に詰みそうだ。

 でも一応サバイバーで同じ色の通信機を持っている人がいなければ害はない。

 そう期待して探索に――

 

 ん?何か聞こえるな?

 移動中に聞こえ始めたから向かっている側、つまり上の方か?

 えっと――

 

 行った先にあったのは二人の死体と一人の生存者。

 

「ハソシウルさん、丁度さっきトレイター二人倒しました」

「信じられるかぁ!」

 

 一対二で勝てるわけないだろ!

 

 なおこの後生存者の冷雪さんに殴り掛かって返り討ちにされた。

 しかも終わってみると本当にサバイバーだった。

 分かるわけないじゃん。




レトリクーンの声真似周辺の補足
 通信の意図は本文の考察通り撹乱が目的
 声や名前の選択はハソシウルと行動して熊に襲われる流れを隠れて見ていたから
 通信機(トランシーバー)の入手は本文の考察通り本物の死体から回収
 死体から回収できた時点で一緒にいたハソシウルも所有は濃厚と判断(本文参照)
 通信で反応を見た上で他の人が聞いているなら擦り付けるつもりだった
 死体にされて全部破綻した

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