TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる)   作:模芋

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書いてたら元々予定していた話が大体吹き飛んでしまったどうして(猫顔)


雨降ってお風呂入る

 会社の寮から近所のスーパーが本当に近い。

 具体的に言うと寮からスーパーまでの間にスーパーの駐車場しか無い。

 近すぎて『夕食中に醤油足りなくなったから徒歩で買いに行く』とかできる。

 実際、今の持ち物は財布と買った諸々を入れた鞄だけだ。

 

「傘、用意しておくべきでしたね」

 

 私達の敗因は、近さに甘えて天気予報を確認しなかったこと。

 急に雨降るなよ聞いてない。

 


 

 残念ながら、誰かが傘を持ってきたりしないことは分かっている。

 

 まず時間からしてやや(おそ)くなったので泊る予定の五人を除いてもう帰っている。

 その五人の内おっさん二人は機材を運ぶ都合で出て夜中まで帰って来ない。

 残り一人、(わた)さんだが――

 

「今の志織(しおり)さんにそういう気遣いを期待するのは無理です」

 

 詳しくは聞かなかったが、江島さんに可能性を否定された。

 そういうわけで諦めて濡れる前提で走って帰ることにした。

 片方だけが急いで往復して傘を回収、という手は帰りついてから気付いた。

 どうせ運ぶ手間とかあるし雨も激しくはないから誤差ということで。

 

 ……私は悲しい。

 


 

 それはそれとして、雨にやられたので風邪をひかない内にお風呂である。

 

 元男とはいえ『俺』から『私』になって二十年経つ。

 だから女性を男性的な視点で見るかと言うと微妙。

 実際修学旅行で仲の良い友人達と一緒に温泉に入った時も特にどうもなかった。

 でも恋愛だの何だのを考えると感覚的には女性が先にくる不思議。

 というかこの手の『俺』の影響は一部男性に対する余計な拒否感が大きい。

 例えば『俺』と比べて明確に顔の良いやつは嫌いだとか。

 

 まあ私の主観はおいておく。

 今回、話の流れとはいえ一緒にお風呂は急に距離が近い感じがする。

 それとも私の感覚がずれているだけだろうか。

 その点が気になったからと軽く話を振ってみたところ――

 

「別に私は混浴だろうが衝立(ついたて)の無い露天風呂だろうが気にしないけど」

 

 ――そんな返答をされた。

 なるほど、参考にはならないな。

 もう少し気にしてくれ。

 

 

 一緒に入るついでにお風呂関係をいろいろ教えてもらった。

 用途毎のタオルの場所とか。

 洗濯物の扱いとか。

 こういう(雨にやられた)時に備えてフリーサイズの着替えが置いてあるとか。

 ここの給湯器を扱う上で覚えておきたい仕様とか。

 置いてある石鹸類は誰かの私物だから使いたいなら自分で用意することとか。

 

「でもここからここまでは私の私物だから、後で補充するなら使っても良いよ」

 

 お風呂場には何故か扉に磨りガラスが使われている棚が置いてある。

 扉は多分、使っていない諸々にお湯がかかるのを警戒しての選択だろうか。

 中には、シャンプーリンスボディソープ固形石鹸洗顔フォーム――とにかく沢山。

 今日泊ってる人数どころか今日集まった人数を元に考えても多い。

 そんな棚の何段かを指しての私物発言である。

 指した範囲にあるのはどう見ても一人分の数や種類ではない。

 あと湯舟で説明を受けながら注視して気付いたがほとんどシャンプーとリンスだ。

 

「石鹸の類が多過ぎませんか?」

 

 しかもさっき私物と言った。

 私物ということは経費で日用品を買っているとかそういうのでもない。

 というかよく見たら結構お高いのが混ざっている。

 記憶が正しければ以前薬局で『こんな高いの買う人いるの?』と思ったやつだ。

 これが勘違いでなく、他に並んでいるのも同程度の値段なら相当な金額になる。

 それこそ、私物の部分だけで私の一ヶ月の食費を平気で超えそうな……。

 そうでなくとも何でこんなにあるの……。

 

「趣味が(こう)じて、とだけ」

 

 なるほど、江島さんが沢山シャンプーやリンスを持っているのは趣味らしい。

 どんな趣味だよ目を逸らすな。

 あとこれだけ多いと仮に私が普段使っているやつがあっても見つけられん。

 そんなわけで銘柄だけ伝えて後で探して貰おうと思ったのだが――

 

「ちょっと明日帰る前に買い物行きません?」

「え、どうして?」

「何と言うかこう、使っているのが微妙というか……」

 

 言葉濁してる雰囲気出してる割に濁しきれてませてませんけど?

 

 一応、一人暮らしを始めた頃に御試し用の少ないやつを幾つか買って試している。

 特別肌に合わないとかは無かったが『安いのは駄目だな』という感じはした。

 だから少し高めのやつを買っているつもりなのだが、あまりよくない、と。

 いや、今言ったのは『安い』じゃなくて『微妙』だった。

 つまり『一般人には高いけどガチ勢には半端に安い』とかそういうのだろうか。

 私に分かる例だとマイクとイヤホンがそれぞれ3000円みたいな。

 

「とりあえず話を聞いた限りで、この中から出せる候補は――」

 

 髪を洗い終わった後『お試しに』と棚に並んでいるシャンプーを勧められた。

 差異も軽く説明してもらったがよくわからない。

 ということで聞いた限り一番無難そうなやつを借りる。

 無難らしく値段もお安い方とか。

 あと今回はお金や使う量を気にしなくて良いと言われた。

 それはそれで後から値段を知る時が怖い。

 

 さて、借り物のシャンプーとリンスである。

 こういうのは良い物でも使ってすぐには実感が出ない。

 しかも合わない場合は結構な悪影響が出るらしい。

 だから試すならまず少量を薄く伸ばすつもりで――

 

 あれ?

 よく考えなくても、棚に並んでるのって私の普段使いが微妙扱いされる世界?

 そんな物が十数本単位?

 

「何で入れ替わりで座った途端椅子の位置ずらしてるの」

「値段を考えたら怖くなったから」

 

 私はうっかりでぶちまけないよう、気を付けながら距離を取った。




補足
・浴室はそこそこ広い(大きさのある棚が許される程度には)
・棚は微妙に傾いて水がはける仕様(扉付き、棚部分の手触りはプラとかそういう系)
・浴槽はシングルの敷布団程度の広さ(一般の浴槽としてはそこそこ広い)


元々あったお風呂に入る前の江島さんの台詞(要約)
「ほら、早く脱がないと風邪ひくよ。
 着替えならこういう時用に常備されているから洗濯機に入れて大丈夫。
 もしかして肌着と上着まとめて洗うのに抵抗あるタイプとか?
 それならとりあえずそっちの洗濯かごに入れて後からね。
 浴槽の広さなら一緒に入っても狭く感じない程度の広さはあるし。
 でもってお湯入れるのも早いからもう最低限は溜まってるはず。
 あ、肌に見せたくない傷とかあるなら見ないように注意するけど。
 それとも――」
※上記は筆者のイメージであって実際の台詞とは異なります


元々の話では先に渡さんが入ってたしなんなら幾らか前の軽い会話も前振りだった
ただ『今のあの人が自分でお風呂用意できるわけないだろ』と筆者が気付いて消えた
完全に消すのもあれだから前振りだけ残った

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