TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる) 作:模芋
電車で二時間半。
これが今住んでいるマンションからこれから面接を受ける会社まで片道の距離だ。
面接は二回する予定と聞いている。
おそらくは
会社側も一回で済ます方が楽だろうし何とかならないのだろうか。
あるいは通話か何かを利用した面接をしてほしい。
向こうの都合もあるからそうはできないのだろうが。
知らされた予定には試験がある。
試験が要るなら不正防止を考えて現地でするのは別におかしくないだろう。
試験内容は伝えられなかった。
なので対策は高校までの教科書の軽い流し読みで済ませた。
関係ない可能性の方が高いがしないよりはマシだろう。
下りの電車に乗りながら会社の概要を再確認する。
割と最近になってできた創作全般を扱う会社だ。
自社製の小説や漫画、ゲームなどのデータをオンラインで販売を行っている。
その宣伝も兼ねてVtuberを扱っているそうだ。
なんというか、効率を無視している感がすごい。
Vtuberの募集内容だが、要するにゲームを沢山配信できる人が欲しいとあった。
あと他の仕事としてゲームのテストプレイヤーを頼むことがあるともあった。
はっきり言ってとても都合が良い。
多様なゲームをしてきた経験が全面的に活かせる。
一ヶ月以上募集を探し続けた
途中から普通にVtuberの配信を漁ってただけとも言う。
他に見つけた募集は条件的に駄目とか募集が終了しているとかばかりだった。
その間に節約の為に食事の見直しもしてお金に余裕ができ始めている。
もし見つけたのがもう一ヶ月後なら面倒になってやめていたかもしれない。
日曜だからか、会社にはほとんど人がいない。
試験担当の女性がいなければ普通に休みにしか見えなかっただろう。
案内の途中で何かパソコンで作業している人も見たけど。
「面接だけど、社内で共有するのに録画や配信をしても大丈夫?」
「え?配信って――」
「見るのは社内関係者に限るけど、人によっては顔を出すが駄目でVに来るし――」
聞きたいのはそういう話じゃなかったんだけど。
話の意味は面接用の部屋に通されてすぐわかった。
会議室と思われる部屋に二台のノートパソコンが置いてある。
片方は私が座る側、もう片方は面接相手が座る側。
そして相手側には分かり易くwebカメラがついている。
ここにいない人がグループチャットを通して質問をするかもしれないとか。
「
面接はそんな私の自己紹介から始まった。
この面接ではある程度の建前は必要だろうが同時に本音も必要になる。
特にやりたくないこと、苦手なことの情報ははっきりと共有しておく必要がある。
ここで誤解があるとできないことを任されてお互い不幸になる。
勿論、相手に採用してもらうには否定だけではいけない。
きちんと『私にはこんなことができます』というアピールも要る。
大切なのは勢いだ。
面接はある程度勢いに任せた方が素直に答えられて良いと思う。
それで落ちるなら募集と合わなかったのだと諦められる。
「Vtuberになってみたいと思った切っ掛けは何ですか?」
「はい!遊びながら遊ぶお金が欲しいと思ったからです!」
勢い余って素直過ぎる回答をするのはよくないと思うぞ、私!
面接の自己紹介でやっと名前の出てくる主人公がいるらしい
正直ここで名前出さなくても良かったけど勿体ぶる程でもなかったから出しておいた