TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる)   作:模芋

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おまたせしました本編書けたので投稿
いつも通り隔日更新です


6章 大型コラボ
前日の準備


 明日土曜日は複数社合同コラボ。

 開始は視聴者が昼食を食べ終わっているであろう13時から。

 配信が多少長引いても何とかし易い時間というのも条件だったとか。

 が、これは視聴者のお話。

 

 当日の演者やスタッフは準備の為に朝から現場に着く必要がある。

 流れの確認やら機材のチェックやらを考えれば当然だろう。

 そしてこれも当然だが、当日の朝にするのは本当に最終確認。

 トラブルを考慮するなら何日も前から準備や確認が必要になる。

 

 企画の都合上(中の人)の私に詳しい内容は知らされていない。

 でも当日円滑に進める為には現場の下見や企画の最低限の情報は要る。

 余程場数を踏んでない限り当日いきなり上手くやれるはずがない。

 ということで、今日は確認を兼ねて当日使うスタジオへ。

 


 

「本当、駒さんいて助かりましたわ」

 

 社用車を運転しながらそう発言したのは松尾さん。

 江島さんの担当をしている似非関西弁使いのおっさん。

 口下手を治す為に口調を変えてみたという経歴の持ち主。

 

「別にアラームを用意してたから何とかなったと思うけど」

 

 私の隣、運転席の後ろでそう言い訳するのは冷雪(江島)さん。

 最近(お泊まりで)知ったが江島さんは朝がやや弱い。

 そして階で男女を分けている都合から起こしに行けるのは基本女性。

 いざという時頼める人が限られていたので候補が増えて助かったとか。

 実際今日も私が起こしに行った。

 私の場合は起きようとすれば起きられる側だし適任だろう。

 というか起きられなかったのにその自信はどこから生えた。

 

「以前そう言って起きられずぎりぎりになって急いでましたよね」

 

 車の助手席からそうツッコんだのは私の担当()さん。

 彼女は普通に実家通いなのだが江島さんの起床時間より早く来た。

 参加者側のネタバレを防ぐ都合上各種相談は彼女に向かっている。

 そこで負担がかかっているのに早い時間に起きられるのは多分若さ。

 これは『俺』の頃の経験則を含む判断だから違うかもしれないが。

 


 

 泊まる予定のホテルに荷物をおろしてからスタジオ。

 そう聞いていたはずなのだが――

 

「スタジオというか会場というか」

 

 感覚的には合唱コンクールとかそういうのをやっていそうな場所。

 正面にはステージがあり客席が長く階段状に並んでいる。

 現在、ステージには各種機材が並びスタッフが手を加えているところだ。

 

「都合の良い場所で借りられるのがここしかなかったそうですよ」

 

 

 そもそも、大型のオフコラボには幾つかの問題があった。

 

 

 まず丁度良いスタジオが無かった。

 

 各会社の中には配信用のスタジオを用意している場所はある。

 ただそれは同社での配信を想定した程度のもの。

 間違っても四社合同で詰め込める程広い環境ではない。

 入るスタッフを減らすにも限度があるのだから尚更。

 そういう経緯で外部の環境を借りる必要があったわけだ。

 

 最低条件は十分な空間と電源。

 加えて借りられる期間の都合が合い、四社から極端に遠くないなど。

 実際ニシツキシキの会社からは高速道路を使わない程度の距離だった。

 

 

 次に日付の調整。

 

 誰かが大丈夫な日でも他の誰かが駄目な日、というのは有り得る。

 本人の調整ができても必要なスタッフや機材の都合もある。

 勿論調整はできるだろうけれど限度だってある。

 まして四社ともなればかなり大変だったはずだ。

 関わっていないから推測だけど。

 

 

 そして技術的なすり合わせ。

 

 分かり易いところではトラッカーの干渉だろう。

 トラッカーというのは位置情報をやり取りするための機器のこと。

 Vtuberの3D配信はこれを利用して行ったりする。

 身体に装着してパソコンで人の動きを読み取らせるわけだ。

 で、これは一人で大体10個付ける。

 場合によって数が増減するがこれは重要じゃない。

 通信機器を一人平均10個、十人が身に着ければ大体100個。

 一箇所で扱うにはかなり多い。

 しかも普段はこれの設定を会社毎に行っている。

 なので他の会社と設定が重複して誤認識を起こすことも十分ある。

 技術関係者はここの調整や正常に動くかのチェックが必要になる。

 少なくともりゅっけ()さんが愚痴る程度には大変なことになっていた。

 

 

 そんな問題を乗り越えて最終調整に入った現在。

 ニシツキシキスタッフのところへ挨拶に来たわけだが――

 

「あの井戸から出てきそうな髪をしたりゅっけ()さんはどこに」

「誰がホラー映画の主演女優って?」

 

 そこには散髪を済ませ真っ当な眼鏡をした渡志織さんの姿があった。

 これ、人によっては眼鏡キャラが眼鏡外す並みに許せないやつでは?




導入の裏方の話が思っていたより長引いて二話分になりました


前書きで察した方もいそうですが
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