TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる)   作:模芋

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書いておいてあれだけどこういうのは小規模な会社じゃないとまずできないと思う


試験概要と準備

 実際の環境に近い形でのゲーム配信。

 これが試験の内容。

 

 なお配信の視聴やチャットは社員のみだそうだ。

 そりゃまあ一般公開してたら何かしら話題になっているはずだ。

 いや現状でも同じ試験を受けた人経由で話題になりそうな気はするが。

 守秘義務とかそういうのか。

 

 

 聞いた限り配信環境は大体揃っている。

 試験用の仮アバターはモブっぽい感じのが何通りかあった。

 パソコン備え付けのカメラから顔の情報を読み取って動くとか。

 ついでにボイスチェンジャーのソフトもあった。

 ボイチェンを使う予定の人はとりあえずこれを、とのこと。

 

 なお使う場合は一部活動に制限がかかるとか。

 具体的にはオフコラボができないなど。

 それでも用意してあるのはバ美肉(バーチャル美少女受肉)希望などに合わせられるように、だそうだ。

 他にも何らかの事情で地声NGな場合も使用を勧められるとか。

 私はボイスチェンジャーは使わないつもりなので詳しいところは聞かなかった。

 

 

 画面内の諸々の配置を考え調整する。

 音量調整を今やるのは難しいから配信開始時にさくさくとやりたい。

 そして肝心のゲームだが――

 


 

『 Fear Dream 』

 テーマは、割と何でもできるホラーゲーム。

 

 この世界で手に入る物は様々な形で使える。

 例えば、斧で扉を壊しても良い。

 例えば、ライターの火で障害物を燃やしても良い。

 例えば、燭台(しょくだい)の針で簡素な鍵をこじ開けても良い。

 だが忘れてはならない。

 お前のその行いが『恐怖』を呼び寄せるかもしれないことを。

 


 

 ――とまあそんな感じ。

 ホラーゲームでたまにある『これをここに使えれば』を実現させたゲームだとか。

 マップのランダム生成がある代わりに攻略法を限りなく増やしてあるそうだ。

 

 

 軽く説明を読んだ限りだと、情報量の割にリスクリターンが直感的に分かり易い。

 

 例えば斧で壁や扉を壊せばいろいろ無視して移動できる。

 だが壊すと敵性の存在である追跡者も移動が簡単になる。

 壊す過程の音で追跡者を呼び寄せる可能性がある。

 追跡者以外で会いたい存在が音を聞いて逃げる可能性がある。

 斧を消耗し過ぎて何かを壊す必要がある時に使えなくなる可能性がある。

 

 そういった可能性から『安直な行動はなるべくしない方が良い』という感じ。

 但し『なるべく』なので『した方が良い』か『必要になる』場合もある。

 マップがランダムなのである程度のアドリブ判断が重要になりそうだ。

 


 

 ここまでが配信前にチュートリアルで練習して分かったこと。

 配信中にチュートリアルからやるとグダグダになりかねないから予習は大切。

 ついでにちょっと聞きたいことができた。

 

「このゲーム、普通に面白そうなのにどうして売っていないんですか?」

 

 このゲームは私のような初見ゲーム配信の試験用の一つと聞いている。

 言い換えると初見になる仕様のゲーム、つまり販売されていないものだ。

 少なくとも販売されているなら受けに来た人が遊んでいる可能性は十分にある。

 

 正直、ほぼこのままでもそれなりに売れそうな気がする。

 少なくとも私は試験とは関係なく面白そうと思った。

 何か売れない事情があるのだろうか。

 

「いやこれね、いろいろ行動でき過ぎるからホラー要素が消し飛んじゃって」

 

 ……なるほど確かにそれはあるかもしれない。

 

 分かり易い例だと、追跡者から逃げる手段が地味に多い。

 扉を閉めて姿を隠すとか、別の音や光で誘導するとか、斧で殴って怯ませるとか。

 ゲームに慣れてくれば幾らでも対処法を見つけられそうだ。

 

 対処法が増えるということは、ホラーに求められる恐怖が減るということだ。

 ホラー要素を無視すると似たような自由度のゲームは幾らでもある。

 どっちつかずで微妙なことになりそうだから試験用にした、とそういうわけか。

 

 うーん、素人判断だが、それでもやっぱり勿体ない気がする。

 


 

 ゲームの確認が済んだので配信側の設定の微調整に入る。

 配信側として情報を把握し易い配置。

 アバターの動きの感度設定。

 飲み物の準備。

 初めて使うソフトの扱い方の確認。

 

「すみません、これって――」

 

 必要な諸々の確認を繰り返し、試験が始まる。

 




「要はローグライクの一種じゃん」と気付いたのは筆者が書いてから大分後のお話

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