「そ、それってどういう……」
「そのままの意味よ、貴女を妖怪でも神でも人でもなくす。完全に洗礼された《人》にするの」
あまりにもバカげたことを言う永琳さん。正直、何を言ってるかも分からない……がこれは逃げた方がいいに決まってる。でも、身体は決して動かなかった。強くなりたいと切実に思っていた私にとって、その話が本当なら。すなわちそれは美味しい話だ。
逃げなければならない、けど強くもなりたい。まるで自分が二人いるかのごとく、頭の中ではそのハッキリとしたふたつの意思がぶつかり合っている。
「身体が震えているけど、そんなに嬉しいことなの?」
「ち、ちが……そうじゃないんです。怖いんですよ、こんなのいきなり──」
「まあそうよね……
じゃあこの薬を作れた経緯でも話そうかしら」
聞かされた話はとても信じ難いことであった。
私の話から神をも超えた人の存在を知り、自分がならなくてもいいからとりあえずなれる薬を作ろうと思ったらしい。これだけでも十分にイカれているというか、なんとも言えない気持ちになるが、それだけではない。
タナトスが永琳さんに力を貸したらしい。最早、タナトスがしたいことが全くもって理解し難いものになるが、協力したらしい。
それにより、永琳さんの能力である、ありとあらゆる薬を作る程度の能力が更に強くなり、素材が無くとも自分の考えた薬が作れるようになったらしい。
そうして、作るにも材料がなかった《人》になる為の薬が出来たというわけらしい。
こんなの馬鹿げてるよ(某馬鹿げてるよおじさん)。え、何? 強くなりたいから作るとかならギリギリ分かりますけど、とりあえず作りたくなったから作ってみたとか意味分かんないんですけど。
アレですか? 神から神よりも上の存在を作ってみた! (某サボテン)的なアレですか? 訳が分からないよ(某魔法少女)
「なにか悩んでいるように見えるけど、そんなに《人》になりたくないの?」
「それも違うんですよ。ただ……」
「ただ? 何?」
「はっきり言いますよ?」
「ええ、構わないわ」
「そんなの馬鹿げてるよ」
「……は?」
それ以降、私の心の中の思いを思いっきりぶつけた。これで何とか馬鹿げてることを以降しなくなるのなら安いものだし、とりあえず話さなきゃ正直爆発でもしそうだったからそういう意味でもお釣りが来る。
「そう……そうね。これはいくらなんでも馬鹿げてたわね」
「ですよね? そうですよね?! やっと分かってくれましたか……」
その後、約二十時間の口論の末、なんとか理解を得られた。
「まあでも作っちゃったものは作っちゃったんですもの……折角だから、飲んでちょうだい」
「いや、ですから……」
「大丈夫よ。自分の好きなタイミングでなれるだけだから」
「な、なら……」(即落ち二コマ)
正直、結構苦かった。でも特にこれといって力が溢れてくるとかそういうのを感じない。
こういうのって通常状態でも力を感じるのでは? と思ったが、某七つの星球の物語の中のアルティメット化を思い出す。
そういえばアレって潜在能力以上を出せるんでしたね。なーんて軽く考えていた。
「じゃあとりあえず、一回なってみない?」
「そうですね。じゃあ失礼して……」
そう、それこそが二つ目の間違い。
「な……?! 力が溢れてくるどころじゃない?! は、早く止めないと!」
「あら、でもそれじゃ効力が分からないわ。ほら、もっと集中して?」
あぁ、そう耳元で囁かれるとぉ〜。じゃない! 本当に早く止めないと! でもなんだが意識が少しずつ無くなってきてるような?
「《人》になろうよ」
な、なんだ今の声?! 誰だ! 誰だ! 誰だぁ〜!? (某アニメ)
「そんなことはいいからさ、《人》になろうよ」
そ、そんな訳にはいかないんですよ! 今は《人》になる気は……
「でも、力が欲しいんでしょ?」
そ、それはそうですけど。ですがこんな方法じゃ……インチキですよ! ズルいにも程があります!
「でも、相手もインチキ以上よ? ならばインチキに縋るしかないんじゃないの?」
相手がインチキ以上? あなた一体誰を敵と見て──
「まだ分からない? 私をある程度知ってるものかと思ったけど……どうやら私の見た目とかは知らなかったのね」
まだ分からない……? まさか、あなたは!
「あら、ようやく分かったのかしら? でももう遅いわよ。貴女の身体は乗っ取ったも同然。無理やり身体を《人》にしてやるわ。あの憎き闇乘弌一護と同じ《人》にね!」
やはり……タナトス! ここで殺して……
「無駄よ? あくまでも貴女の心の中にいるだけ。本体がいないなら出来ないわ。残念だったわね?」
クソッ!! こうしてる間にもドンドンと意識が……
「じゃあね〜征服された、征服されない吸血鬼さん?」
そのタナトスの言葉を最後に、私の意識は完全に無くなってしまった。
永琳side
「ふう、これでいいの?」
「えぇ、良いわよォ? これであの吸血鬼ちゃんもおしまいね」
まるで子供がイタズラに成功したかのような笑みを浮かべるタナトス様。これで私の能力を完全に引き出してくれるのなら別になんてことは無い。
「で、約束の件ですが……」
「もうとっくにやってるわ。それじゃあねぇ〜」
「ちょっ……はぁ。本当に子供みたいね」
そうやって私がぼやくと、またどこからが現れて「何か言った?」と聞いてくる。「いいえ、なんでも」と言うと、「そう」と言ってまた消えていった。
「これから、幻想郷はどうなってしまうことやら……やれやれ、大変ね」
どこか、他人事のようにそんな言葉がスラスラと出てくる。とりあえず、あの完全な人間はしばらくは来ないはずだ。もう、愛杉・アッサッスィーノ・スカーレットを止められるものはいない。
「まあ、スカーレットの名も使われなくなるのかしらね?」
なんて言いながら、私はその場を後にした。
完全に昨日まで読んでいた小説に引っ張られましたね……
さて、収集が着くか分かりませんねぇ……
ではまた次回