今回と次回はあのタグが…
ではどうぞ
さて、今まで語ったのは、まだ私がおかしくない時の話であった。
そう、最近の私は何かがおかしい。春を集めていた亡霊の所へ行った時も、ずっと宴会をしていた時も、月が偽物になった時もetc……。
兎に角、私はおかしかった。前よりも力が増してきているような気がして、能力の制御も日増しに難しくなってきていた。まあ、まず使うことがほぼないですが……。
使う機会は少ないが、家の中で能力の制御を高めようとして、間違えて妖精メイドを殺しちゃったことがあった。
だけど、あの時はお姉様達が何とかしてくれると思っていた。心の中では、まだ大丈夫だと楽観視していた。
そう、あの時までは─―。
私がいつものように、地下にある自分の部屋で能力の制御の練習をしている時だった。
今日はいつもより力が溢れてきているような気がするな、と思っていたその時。
「アレ? なんでまた妖精メイドを……え?」
何故か、その場にいないはずの妖精メイドを殺したという感覚が、ふいに分かってしまった。
その妖精メイドのことを、特に思い浮かべていたわけではないにも関わらず、だ。
ここ最近、遠くにいる相手でも殺せるようになったとはいえ、無意識で殺したことは無かったので、流石に焦りを覚える。
「と、取り敢えず落ち着かないと……」
「アッサ? さっきから妖精メイドがばったばった死んでるんだけど……最近、能力の制御が出来て無さすぎじゃないかしら?」
私に小言を言いにきたのはレミリアお姉様だ。
レミリアお姉様がわざわざ地下室にまで来たということは、すでに相当な量の妖精メイドが死んでしまっているのだろう。少し制御出来てないどころでは無いのかもしれない。
「……レミリアお姉様」
「どうしたの? そんなに深刻そうな顔をして……もしかして、今ほとんど制御が効かない状態なの?」
「うん……はっきり言って、危ない。せめて、今からでもみんなを連れて外に逃げて欲しいってくらいに、危ないの」
「――そんなことはしないわ、アッサ。あなたは私の……いえ、私たちの家族なのよ。家族の危機を、そう易々と見逃せるもんですか!」
「レミリアお姉様……」
でも実際、レミリアお姉様達だけではどうにもならないのが事実だ。
ただ、一縷の希望もある。妖怪の賢者と呼ばれている八雲紫さんに頼れば、なんとかしてもらえるかもしれない。私はそう思ったが、すんでのところで思い留まる。
安易に借りを作るのはマズいのではないか? というのと、単に家族間でなんとか出来ないだろうか? と楽観視してしまったからだ。
今思えば、これが間違いだった。
「レミリアお姉様、運命はどうなってる?」
「そうね……、正直、あまり良くないわ。でもまだなんとかなりそうね」
「良かった……」
そう安堵したのも束の間、次の瞬間であった。
レミリアお姉様が、一瞬にしてバラバラになったのは。
その細切れになったレミリアお姉様から、血溜まりができたのは。
「……え?」
あまりの出来事に、私の思考は完全に停止した。だが、もうレミリアお姉様ともとれない肉片が運ぶ血の匂いを嗅いで、そして目の前に広がった赤色で、脳は残酷に現実を受け止めだした。
「嫌、嫌ァァァァアアア!!!」
そうだ、目の前で、姉が死んでしまったのだ。普通ならバラバラになる前に、驚異的な再生力で元通りになるハズの吸血鬼の体が、バラバラになったまま動かない。
それはつまり、死んだということであった。
「アッサ!? 何があった…の……? ねぇ、アッサ、この肉片は何?」
図書館からパチュリーがやって来たのだろう。困惑した声が聞こえる。だが、今はそれどころではない。私は声を張った。
「逃げて! パチュリー!! 私の能力が――」
暴走し始めてしまった。言い終えるより先に、パチュリーはさながら竹のように真っ二つになってしまっていた。
「そ、そんな…どうすればいいの……?」
あまりの出来事に、考えが巡らない。頭が嚥下した惨劇を受け止めきれないと、何度も何度も戻してしまっているかのようだった。しかし、現実はあまりに残酷で、時間は、もう止まらない。次々に紅魔館の住人は私の能力のせいで殺害され、今残っているのは私とフランお姉様だけだった。
「アッサ……もう、みんな死んじゃったんだよね」
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
もう私は謝ることしか出来なかった。もうこれ以上、親しい人が死んでいくのを見たくなかった。だから私はずっと下を向いていた。
けれど、私とフランお姉様が居る地下室の床は血塗れだった。それが、私の罪を自覚させるように見えた。
「大丈夫…アッサは悪くないよ……。悪いのはアッサの能力なんだから。
謝らなくてもいいよ……ゴフッ」
「……フランお姉様」
もう、フランお姉様の方は向けなかった。どんな死に方をしてしまうのか皆目見当もつかないが、想像もしたくなかった。
「皆に代わって言うけど……皆、アッサのことは家族として大好きだったし、今も変わらない。それだけは…忘れないで……ね」
「フランお姉様……分かりました。覚えておきます」
そう言ったはいいが、それでも恨まれているんじゃないかと、不安に思ってしまう。
そんなことを考えていたら、フランお姉様に頭を撫でられた。
「アッサは…一人で思い詰めちゃうところがあるから、気を付けてよね……。
私達に…相談して欲しかっ……たよ…………」
そう言ったっきり、フランお姉様から声を聞くことは出来なかった。
思えば、昔っから私のことをレミリアお姉様以上に気にかけてくれていた。
そんな、心の支えだったフランお姉様を、自分の能力のせいで殺してしまったのだ。もう私は……
「うわぁぁぁぁああああ!!!ああ!!ァァァァ…」
泣き叫ぶことしか出来なかった。
気が付いたら、泣きつかれて眠ってしまったようだ。
さっきまで地下室にいたはずなのに、風が私の頬を撫でる。見上げてみれば、紅魔館が崩れていた。
けれど、もう何もかもどうでも良くなってしまった。
私はもう一度寝ることにした。
これ以上は何も失いたくないと思いながら。このことは夢なんだと思いながら。静かに目を閉じた。
どうも。見た方ならわかったと思いますが…
まあ、そんなグロくないことをなるべく意識してやっていきました多分。
では次回もお楽しみに