リコリス・ラジアータ   作:暇を司りし神

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社畜さん

「……やっちゃったなぁ」

 

 闇乘弌さんはとても惜しげに話を始める。

 曰く、最強は最強でなければいけない。だからこそ努力は惜しまなかったと。

 曰く、私たちを育てるのもその一環だったそうだ。そして、それは今のタイミングで遺憾無く発揮されてはいたとの事。

 曰く、だから私達が負けてしまって悔しいのもあるが、自分の力が及ばなかったことがもっと悔しいと。

 曰く、最強でない自分は自分ではないと。

 私はそんなことは思わなかったし、負けたのはある程度仕方ない部分があると思っている。

 けれどそれを言ってもなお、認めようとはしなかった。

 

「闇乘弌さん……言いたい事は分かりますが、それでは──」

「分かっている。でも思うんだ、あの見えない手を使うやつみたいなことを言うけど、怠惰だと。そう思うんだ」

「久々に聞きましたよそれ。でも、最強でしたよ? さっきだって私達を助けてくれた時、最強に見えましたし──」

「見えるだけじゃ意味が無いんだよッ!!!」

 

 それは、今まで強靭な心を持っていたと思っていたのにその瞬間だけは……ただの外見相応の男子の心に見えた。

 まあ見えたとしても何か出来る訳では無いんですけどね、ハイ。でも、最強には違いないのは確かだし……

 

「そう言ってもらえるだけでも嬉しいかな、うん。じゃあ僕は寝るよ」

「闇乘弌さんって寝るんですね……なんか意外です」

「僕は寝るからね……? まああの空間にはまだ居てて良いからね。じゃあ──」

「ちょっと! まだ修練は終わってないわよ!」

「えぇ……君が言うとは思わなかったよね。フランドール・スカーレット君」

「事実ですもの。それに貴方が言ったのじゃない! 私達を強くするって」

 

 まさか闇乘弌さんをどこか毛嫌いしていたフランお姉様から修練を求めるとは思ってなかった。それは闇乘弌さんも同じなようで、大層驚いていた顔をしていた。

 まあ、フランお姉様って修練とかやらない感じだから私的な驚きはそこにある……というか、話に乗れるんですねフランお姉様。今まで話を切るのは無意識でやってるものかと思ってましたよ。

 

「アッサ君がいつも通り、失礼なことを考えてるのはいいとして」

「いいのでしょうか、それを無視して……」

「もう今更だからね。まさかフラン君に喝を入れられるとはね……驚いたものだよ、じゃあ僕もそれに応えてあげなきゃね」

 

 そう言うと闇乘弌さんは先程のような容姿相応の心の弱さ等見せてないかのように振る舞い始めた。でも決して無理はしていない……と思う。私はそこまで分かってないけどなんとなく無理はしてないと思う。

 なら私がとやかく言う必要なんてない筈だ。取り敢えず、また私達は面倒な修練をする必要があるのだから。

 ……私も大概人のこと言えないなぁ。修練面倒だなぁって思う派閥だし。まあやる時はやりますけどね?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、さっきので目に見えたと思うけど圧倒的に攻撃力、防御力。それに応用力が足りてないのがわかったと思う。だから今後は全てを織り込む形でいこうと思うんだけどいいかな?」

「ですが、全てを織り込むとはどうやって……?」

「簡単だよ。僕が攻撃を今後君達が攻撃している間に仕掛けるから、避けてね☆」

 

 なんとも、無茶なことを言う。闇乘弌さんの攻撃は私でも未だに見えないほどの速さだ。

 それを避けろだなんて無茶にも程がある。特にお姉様達とさとりさん達姉妹には無茶を通り越していると思う。

 

「まあ最初は、皆に見えるようにゆっくり攻撃するから安心してね」

「そう言ってマッハで攻撃してくるんですね分かります」

「え? 本当にして欲しいって?」

「言ってないですごめんなさい」(土下座)

 

 困った時はDO☆GE☆ZA☆が一番ってそれ一番言われてるから。それにしてもよくここまで精神が大人びたなぁ……いや、普段の行動は全くもって大人びてないけど。

 それでも少なくとも私なんかよりは全然大人びてる。まあだからあの人と重ねちゃう時があるんですけどね☆

 

「そういえば、アッサさんが言っているあの人って誰なんですか?」

「さとりさんには話してませんでしたっけ? 確かあの人は……ごく普通の社畜さんでした」

「ごく普通の社畜さんって……社畜な時点でごく普通ではないと思うんですけど…」

「まあまあ、ここからですよお話は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 社畜さんは、元々私にはよく分からない企業で働いていた人なんです。

 私を拾ったのも、あまりのブラックさで海に飛び込んで死のうとしていたところに私が流れてきて、それで拾ってもらったんです。

 社畜さん曰く、なんとなくだったそうです。それから私は幼い頃を社畜さんと一緒に過ごしました。

 社畜さんは、私を拾った後AITUBEという動画配信サービスで動画配信者になりまして、私の存在を世間そのサービス内に広めていって、遂には自分でアバターを作り、そのアバターで配信をするようになりました。

 世間ではそれをVtuberと言うらしく。まあ、私が幼い頃の話なのであまり覚えてはいないんですが。

 とは言えど、私のネタは大抵が社畜さんの受け売りです。むしろあの人がいなければ私は日本語を喋ることが出来なかったでしょう。ちなみに社畜さんはアバターで配信を始めたあたりから会社は辞めました。

 もう配信で食べていけるようになったからですね。私もその頃には日本の文化にすっかり染ってまして……お姉様達が私のところに来た時にはもう既に私は腐女子……? ってやつになってましたね多分。

 それにお姉様達が話す言葉を理解するのが大変でしたね。なんせ、産まれて三年もしたら海に流されたんですから。

 え? 海に流されたら吸血鬼だから死ぬんじゃないかって? そこは流石に配慮したのか木の船で私を流したそうです。

 なんだかんだで一番楽しかったのはあの頃かもしれないですね。まあでもさとりさんと過ごすのも楽しいですよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って感じですかね?」

「社畜さんって結構な方だったのね」

「さとりさんが涙している!?」

 

 思っていたよりもイイハナシダナーしてたんですねこの話……。

 まあとにかく、修練しますか……したくないけど。




なんか稀によくあることになりましたね()
また次回
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