まあ、なんとかなっちゃうんですけどね。
それではどうぞ
三人称side
アッサッスィーノが眠りについて、しばらく。紅魔館が存在していた場所は瓦礫の山となっていた。
加えてその近くにあった霧の湖も、常にかかっていた霧は晴れ、さながら海のように溜まっていた水も乾いてしまい、もはや見る影がない。
その様子を遥か上空から境界を操って覗いていた八雲紫は、スキマを一旦閉じ、紅魔館に近づけようとしたところ、開いた瞬間にそれはあっけなく壊れた。
今までこのようなことはなかった為、目をぱちぱちと瞬かせ驚いた表情をした。
「もしかして、吸血鬼姉妹の末っ子か次女がやった事なのかしらねぇ……」
「紫様、どうかなさったのですか?」
今回の事件の黒幕を頭の中で思案している時に、後ろから八雲紫の式神である八雲藍が話しかけてきた。
一応、今の状況を八雲藍に伝えたところ、吸血鬼姉妹の次女であるフランドール・スカーレットがやったのではないかと八雲藍は進言する。
「でも、どうにも引っかかるのよねぇ……。次女だとしてら能力が暴走するような素振りは一切無かったから。それを考えると、ここ最近暴走気味だった末っ子ちゃんの仕業な気がするのよ」
「だとしても……彼女の能力はありとあらゆるものを殺す程度の能力。壊すことは出来ないのでは?」
八雲藍の言っていることは確かに正しい。殺すだけなのだから、ありとあらゆるものを壊す程度の能力を持つフランドール・スカーレットの方が今回の事件の黒幕の可能性が高いのだ。
だが、八雲紫はだけどと切り出して、末っ子である愛杉・アッサッスィーノ・スカーレットを犯人だと推定する理由を述べる。
「今回の事件、さっきも言ったけど、犯人は末っ子ちゃんな気がするのよ。いくらなんでも壊せるからって僅か数分で紅魔館の中の住人と紅魔館を壊せると思う?」
「ですが、壊すだけなら次女でも出来るのでは?」
「まあ、それもそうなんだけどね。でも普通なら紅魔館壊してからの方が手っ取り早いでしょ?
それに、最初に死んだのは長女であるレミリア・スカーレットよ。普通、仲のいい姉を能力を使って殺すのかしらね?」
「そ、それは……そうですけど」
「それに、死に方もそれぞれ違ってたのよ。それを加味すると末っ子ちゃんがやったのかなぁってね」
「……というか、そこまで見ていたのなら紫様が」
「多分それは出来なかったわ。あそこに行ったら私でも死んでると思うから」
「それはどういう、――ッ!?」
突然飛び込んできた光景への驚きのあまり、八雲藍は言葉に詰まる。主人である八雲紫の左腕が無くなっていたのだ。まるで、そこには元から何もなかったかのように。人体錬成に失敗でもしたのだろうか。
「さっき、紅魔館の近くにスキマを開こうとしたら、左腕を持っていかれたわ。咄嗟にスキマを閉じたからよく見えてなかったけど、多分末っ子ちゃんは今眠っているわね」
「ね、眠ってるって……眠っていることと、紫様の左腕は関係してるんですか!?」
「関係は無いけど……せめて言うなら、彼女の殺す程度の能力はただ殺すだけじゃなくなってきてるかもしれない。
それに加えて、殺せる範囲も広くなってるわね」
「そ、そんなことが……範囲が広がっているとなると、もし幻想郷の外まで広がってしまったら――」
「まあ、その前に幻想郷が無くなるわね、確実に」
八雲藍からしたら、八雲紫の発言はどこか諦めているように聞こえた。だが、八雲紫の能力なら何とかできるのでは無いのか? と、どこかで淡い希望を抱いている八雲藍であったが、次に紡がれた言葉により、その希望はあっさりと打ち砕かれた。
「それに、私の能力じゃ出来ても生と死を曖昧にするしか出来ない。つまり、末っ子ちゃんに殺されちゃうのは確実ってところね」
あまりにも平然と、諦観した様子で言う八雲紫。それに対して八雲藍は動揺しか生まれない。
「な、なら別の場所でまた幻想郷を作り直せば……」
そんな、訳の分からないことを口走ってしまうくらいには八雲藍は動揺していた。
我が式の支離滅裂な発言に対して、八雲紫は冷静にぴしゃりと返した。
「それは無理ね。末っ子ちゃんの能力の範囲、少しずつだけど、確実に広がっているもの」
八雲紫はちゃっかり、愛杉・アッサッスィーノ・スカーレットを犯人にしている。
その上、能力の範囲が広がっていると突き止めている。そう考えると己が主、八雲紫はやはり恐ろしいものだと認識させられた八雲藍である。
「それにしてもですよ? 為す術が無い訳ではないですよね?」
「まあ、その方法は結構単純なんだけど――」
「まさか能力の範囲外から集中攻撃……なんて言いませんよね?」
八雲紫はそれを聞いて、目を見開いた。その様子を見ていた八雲藍は呆れた顔をしながら話す。
「なんとなくそんな気はしてましたが、まさか本当にそうだとは……」
「正直、現状これしか末っ子ちゃんを攻撃出来る方法がないのよ。もっと言うなら―ー」
「能力でその攻撃すら無効化……いや、殺される可能性もあるってところですか?」
「よく分かったわね。でも、今はこれしか殺れる方法がないのよ」
八雲紫は一瞬おどけた様子を見せたが、その後真面目な顔になった。
それほどまでに愛杉・アッサッスィーノ・スカーレットが幻想郷を揺るがす、非常にまずい状態にあるということだろう。
八雲藍は渋々といった様子で、八雲紫の策に賛同したのだった。
「それにしても、本当にやるのか? こんな無茶苦茶な作戦を……幻想郷に残ったほぼ全員で、あのアッサを攻撃するなんて」
「仕方ないでしょ、魔理沙。愛杉が暴走したんなら、妹分みたいなもんだから私達で止めてあげないと」
「なんで霊夢がアッサにそこまで情を向けてるのか分からんな……もっと私にも情をよこせ!」
「そういうところよ」
今この場に集まったのは、幻想郷に残った数少ない有力者ばかりである。
その顔ぶれは八雲紫は勿論、摩多羅隠岐奈もいる。西行寺幽々子等の霊界組も、古明地さとり等の地底組も、本当に様々な重鎮が揃っている。
その中でも異色なのは、やはり博麗の巫女である博麗霊夢と、普通の魔法使いこと霧雨魔理沙だろう。
二人はそんなことなど知ったことかと言わんがばかりに、口喧嘩をしている最中であるが。
なんなら、いつ手が出て本当の喧嘩なってもおかしくないほどだった。
「第一な! 私がアッサのことを妹分だと思ったんだぜ? 霊夢より先にな!」
「なによ! 私はそんな愛杉のことを考えてないような考えはしてないわよ!」
「はんッ! そっちはどうせ大した理由は無いんだろ?」
「そっちこそ、単純すぎる理由じゃない?」
「「ぐぬぬ……」」
「ま、まあまあ…今はそんなことで喧嘩しなくても……」
「「そんなことだって!?」ですって!?」
「……ご愁傷さまです、紫様」
一発触発の雰囲気に八雲紫が止めに入ると、今度は霊夢と魔理沙に、愛杉・アッサッスィーノ・スカーレットがどれだけ素晴らしい妹なのかと説明を食らう羽目になってしまった。
周囲はその様子を見て、笑ったり温かい眼差しを飛ばしているのが殆どであった。だが、これによって周りの緊張感は取れたも同然になったわけである――。
「さてと、いい加減いいかしら?」
「……はい」
「……すいませんでした」
その後、八雲紫にこってりとお灸を据えられた霊夢と魔理沙は、今回集められた理由を再度八雲紫に問いかけるのであった。
「……本当にやるのね?」
「勿論、やらなきゃ末っ子ちゃんの能力で私達が死んじゃうから」
「まあ、こうなったら一種の腕試しだな。私の新しいスペカが効くかどうか――」
「今回、スペカでどうのこうはなしよ?」
「な、なんでだよ! ……ってことは殺す気でやれってことか?」
「残念ながら……ね」
魔理沙の問いに、残酷とも言える返答をした八雲紫。事実、それほどまでの力が暴走しているのだ。
「事実は受け止めるしかないのよ……それじゃあいくわよ」
「わ、分かった……ぜ」
「気を落とさないで魔理沙。それもこれも、能力を暴走させたやつのせいよ」
「それもそう…か」
そして、全員の力が一点に募る。海を蒸発させ、山一つは優に消し飛ばせるほどの、明らかにやり過ぎな光が解き放たれた。
それは確実に愛杉・アッサッスィーノ・スカーレットを殺せるレベル――いや、明らかにオーバーキルな……はずであった。
その攻撃がある範囲に入った途端、光が吸収され、範囲が明らかに広がったのを全員が感じた。
瞬間、全員は死を覚悟した。
そして……後には肉片と血しか残らなかった。
どうでしたかね?
まあ、今回には希望がないんですがね。
次回もお楽しみに