リコリス・ラジアータ   作:暇を司りし神

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お手合わせ(禍津神砕過君視点)

 異変は終わり……いや、アレを異変と表すのかも甚だ疑問であるが、とにかく風見幽香の暴走は収まり……収まったのか? 最後に何故かぶん殴られた辺り非常に怪しいが、まあ、よしとしよう。

 

 とりあえず異変と(おぼ)しきものは無事解決され、一段落ついた我々は博麗神社に来ていた。元の世界に俺を返す為である。

 

 結界の専門家と言えば、世界が違ってもやっぱり博麗の巫女なのだ。別に俺を攫った張本人の八雲紫でもよかったのだが、呼んでも来ねえ。

 勝手にこんな世界に落としたから、姿を見せたら殴られるとでも思っているのだろうか。その通りだよ、先生怒らないから正直に出てきなさい。

 

「そっか。もう帰っちゃうですよね、砕過さん」

「あんまり長居してっと、あっちの霊夢が心配しそうだからなあ」

 

 そんなことをアッサに言いながら、こっちの霊夢を一瞥する。

 なるほど、あれは霊夢だ。気怠そうに此方を見ている感じがすごく霊夢みがある。霊夢といえば億劫・面倒・気怠げの三拍子。その条件さえ揃えていれば、それはもう霊夢だよ。

 

「そうですよね。残してきた人達がいるのに、あんまり引き止めるのも悪いですよね……」

 

 寂しげに気落ちするアッサ。そこにはないはずの耳や尻尾がしゅんと垂れ下がっているのを幻視する。

 なあ、気付いてるかよ。お前ですよねってもう三回も言ってるんだぜ?

 

「うーん、そうだな。じゃあ、最後に手合わせでもするか? 思い出作りってことで」

「あっ、それ良いですよね! 是非やりましょうですよね!」

「……さとり、お前の配偶者がおかしくなってるぞ」

「まあ、いつも通りですよね」

「か、感染してる……!?」

 

 恐怖でわなわなと唇が震える。

 いやはやなんとも、さとりまでもがですよねの毒牙にかかってしまうとは。俺もいずれ感染してしまうのだろうか。恐ろしくってたまらないですよね。

 

 閑話休題。なんやかんやありながらも、鳥居の前でアッサと向き合う。

 

「そんじゃ始めますか!」

「はい! 『アダマスの鎌』!」

 

 アッサが何処からともなく大鎌を取り出す。アダマス……征服されない鎌。

 

 レミリアは槍、フランは剣――そして、末っ子のアッサは鎌ときた。姉妹でそれぞれ得物が被らないようにしたのかね? じゃんけんで決めたとかエピソードがあったら萌える。

 

 俺は紐を解いて、背中に括り付けていた大太刀を前に持っていく。無論、鞘に入れたまんまだ。

 

「やっぱりその剣、抜かないんですか?」

「ああ、これは曰くつきの妖刀でな。お目にかかりたきゃ俺にコイツを抜かしてみな」

「へえ、それは面白そうですね」

 

 ニヤリ、といった効果音がつきそうな、吸血鬼らしい不敵な笑みをアッサが見せる。

 

 このしたくもない縛りプレイにも最早慣れたものだ。ガチルノはこれで倒したし、元の世界では白玉楼の庭師とも鞘越しの刀で相手した。

 アッサの実力を正確に測れているわけではないが、まあ問題ないだろ。(フラグ)

 

「先手必勝だ! おいさぁッ!」

「変な掛け声ですね!?」

 

 石畳を蹴り、アッサに向かって突っ込む。

 

 俺は基本、戦いでは先手を取るよう心がけている。相手が女の子だろうが関係ない。レディーファーストなんて紳士の言葉には知らんぷりする。

 理由は単純で、俺が五尺三寸の長物を使う以上、懐に入り込まれるのが嫌ってだけだ。

 

「はあっ!」

 

 横に薙いだ名月の下に潜り込むことで、アッサは俺の一刀を躱す。

 避けられるとは予想していたが、なかなかに鮮やかな身のこなしだ。箱入り娘だと思っていたけど、さては戦い慣れているな?

 

 さておき、俺の初撃を躱したアッサは流れるように攻めに転換する。ぐるんと背後に持っていた鎌が、地面すれすれに振られた。

 俺はそれに対して、縄跳びの要領でピョンと跳ねる。

 

「まだまだぁ! 私の相棒は曲者ですよー!」

 

 ガゴンッ、と機械的な音がいきなりしたので、俺は何事かと目を見張る。

 

 何処から音が発せられたのかは直ぐに分かった。

 なんと、アッサの鎌が変形していたのだ。刃の部分が持ち手に這うように折りたたまれている。何故そんなギミックを施したのか。いや、俺の思考を一旦止めたのは間違いないけれど。

 

 アッサがその奇妙な形状をした武器で切りかかってくる。俺は咄嗟に名月で防ぎ、コンッ、と小気味よい音が鳴った。

 

「まだ変形するのです!」

「そんなもんよく仕込みましたねぇ!?」

 

 再びガチャガチャとメカニックな音を鳴らして、アッサの鎌だったものが変形する。

 

「今度は薙刀かよっ!」

 

 お次は刃が持ち手の先に移動して、薙刀の形に変形した。その奇抜なアッサの追撃を、やはり名月を合わせて防いだ。

 

 鎌使いとやり合ったことはあるが、流石にこんなヘンテコな武器を使う相手とは戦ったことがない。少なくない動揺が、俺の動きを鈍くさせる。

 だが、段々分かってきたぞ。俺は洞察力は意外に鋭い方だ。トリッキーな武器であるが、刮目すればその構造上の弱点が見抜ける。

 

「防戦は嫌いな性分でな、攻守交代だ!」

「なっ!?」

 

 鋭鋒を思いきり突き出し、薙刀の刃と持ち手の隙間に差し込む。

 

「刃を開けば薙刀、折り畳めば大铡刀(だいさつとう)――大層な鎌だが、ウィークポイントはその繋ぎ目だな?」

 

 鎹に異物を差し込まれてしまっては、(つか)えてトランスフォームすることができない。

 

 深く、息を吸い込む。幼女の良い匂いを堪能しているのではない……。心を落ち着かせているのだ。

 これからほんの少し、災いを操るから。

 

「行くぜ、〝砲禍〟」




これでコラボは終わりです。
エタリオウさん曰く、勝敗が分からない方がが面白いだろ? だそうです。
ではまた次回
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