NEW HORIZON〜蒼き炎〜 作:Eeny,meeny,miny,moe
1.優しい夢
ひとつ、またひとつと
命の灯火が消える
けれどまた、新たな産声が上がる
変わって、
終わって、
始まって、
そして、やがて夜は明ける
まだ夜の中を漂っていたくても
光を求めていても
平等に、必ず朝日は昇る
第一章「暁闇-ギョウアン-」
ほら、もうすぐ
________夜が明ける
*** *** ***
人口約28万人ほどを擁する三門市、その中でも東三門と呼ばれる地域の東側に
「じゃあこれ、買うもののリストだから」
「ありがとう、ママ」
「いいえ。お財布は持った?」
「うん、ばっちり」
高槻家の玄関には母親─高槻
その内紗蘭と話すのは、まだ14という年齢の割には大人びて見える梨子だ。
背中まで伸びる美しい栗色の髪と、光に透かすと青にも見える黒瞳。年頃の少女にありがちな背伸びした格好もそうだが、ハーフアップにされた長い髪や落ち着いた雰囲気が梨子をより大人っぽく見せていた。
待っているのは誠実で優しそうな少年である佑輔と、ぱっちりとした蒼い大きな目が特徴的な幼い海夕。
薄茶色の短髪と快活そうなブラウンの瞳を持つ佑輔は梨子と双子であり、しかし二卵性双生児であるため驚くほどそっくりという訳では無い。実際、色味も梨子は紗蘭に似ていたが佑輔は浩二に似ていた。
佑輔は色味もそうだが父の血が強いのか、同年代の中でも背が高い方であり、逆に海夕は小柄なため、二人が並び立つとその身長差はかなりのものだと言えた。
海夕はこれからの予定が待ちきれないようで、紗蘭と梨子が話しているのをうずうずしながら見ていた。
ただ外で遊ぶのも大好きだが、大好きな姉兄と共におつかいにいくのも同じくらい好きなのだ。特に最近は三人ともが大きくなった関係で、以前ほど三人で何かをする機会は少ない。だからこそ、たまに頼まれるおつかいは余計に楽しみにしていた。
「ね、早く行こうよ!おつかい楽しみ!」
「うん、もうちょっと待ってね」
「はは、海夕は元気いっぱいでいいなぁ」
佑輔は自分の服の裾を引っ張り、急かす海夕を宥める。浩二が海夕の様子を見て笑顔になりながら頭を撫でてあげれば、海夕は嬉しそうに目を細めた。
「父さん、元気じゃない俺は良くないって言いたいの」
「なんだ、拗ねてるのか?大丈夫、佑輔も可愛いからな」
笑いながら軽口をたたく佑輔と浩二。
「可愛いなんて嬉しくないし。そういうのは梨子と海夕に言ってくれ」
わざとらしく不貞腐れる佑輔にみんなが笑う。
笑いの絶えない、仲の良い理想的な家族の姿がそこにはあった。
「もちろん二人にも、紗蘭にも言ってるぞ」
真面目な顔を作って話す浩二は再び笑いを誘い、紗蘭は照れたように浩二をつついた。
そんな家族団らんのひと時だったが、海夕がやがて時計をみたりと、そわそわと落ち着かない様子になる。梨子はそれにいち早く気付き微笑むと、紗蘭に声を掛ける。
「ママ、そろそろ行くね。海夕が待ちきれないみたいだし」
「わかったわ。気をつけていきなさいね。特に車と、危ない人に注意するのよ」
念を押すように言う紗蘭だが、その実、そんなに心配しているわけではない。
おつかいをもう何度も経験していることもそうだ。それだけではなく、中学生とは思えないほどしっかりしている梨子と佑輔、無邪気でわんぱくだが、冷静に周りをよく見て考えられる頭を持っている海夕。
親である紗蘭達が少し寂しさを覚えるほどに、よくできた子供たちだった。
「うん、分かってるって」
梨子は心配性だなぁ、という風に苦笑して返事をする。その会話を聞いていた海夕が急いで扉を開けた。梨子と佑輔、紗蘭と浩二も後に続き外に出る。
「あ、三人ともちょっと待って」
「まま、どうしたの?」
送り出す時になってから紗蘭に言われた制止の言葉に、海夕は不思議そうに見上げる。おつかいを楽しみにしている海夕に、水を差してしまったことを紗蘭は申し訳なく思いながらも理由を話す。
「思っていたより日差しが強いから、帽子をかぶっていきなさい。ママが取ってくるからもう少しだけ待っててね」
「うん!わかった」
海夕は素直に頷き、言葉に従った。紗蘭はそのことに安心しながら、成長したな、と少し前までを思い出して嬉しく思う。
海夕は所謂典型的な「何でっ子」で、どんな些細なことにも理由や意味を知りたがった。言葉を覚え始めたのが早かったため何で何で攻撃が始まったのも早かった。聡かったため同じ質問が二度出ることはなかったが、それを引いても余りある質問の多さに苦労したのは間違いない。
しかし幼いからといってなぁなぁにせず、きちんと向き合って一つ一つ答えていった高槻家は本当に良い家族なのだろう。
海夕が5歳になった頃、浩二は海夕に疑問を覚えたらすぐに誰かに尋ねるのではなく、その豊富な知識から自分なりの答えを考えて、それでもわからない場合は自分で本を読むなどして探しなさい、と伝える。
それは決して答えるのが面倒になったからではなく、文字の読み書きができるようになってきた海夕に成長を促すための助言だった。
さっそく意見を取り入れて浩二の言葉をよく考えた海夕は自分なりに納得し、それからは家族への質問は劇的に減った。
それでも質問がある時はとことん疑問が解けるまで聞くのだが。
紗蘭がそんなことを考えながら帽子を取りに行っている間、玄関の先で海夕と話していた三人。浩二はもちろん幼い頃から頭の回転が早く博識な佑輔と、聡明で勉学に長けている梨子の二人もまた海夕の質問攻めにあっていたため、海夕の今の成長した姿を見て紗蘭と同じ思いを抱いていた。
*** *** ***
青い空、白い雲。
外はまさにそんな言葉が似合うような天気である。
戻ってきた紗蘭に帽子をかぶせてもらい、今度こそ三人は出発する。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃい」
玄関先で見送る紗蘭と浩二に手を振る三人。
二人は手を振り返し、子供たちが建物の角を曲がり姿が見えなくなるまで見守る。
紗蘭はふと、仲良く歩く三人の後ろ姿に物悲しさを覚えた。
それは、あるいは予感だったのかもしれないし、偶然だったのかもしれない。どちらにしろ、光に包まれて子どもたちが消えて行ってしまうような感覚を紗蘭が覚えたのは確かだった。
―――あと何回、こうしてあの子たちを見送れるのだろう。
子はいつか親から巣立つ。
それは必然であるが、紗蘭は何故か急にそれを実感したのだ。元々手の掛からない子たちだったが、一番下の海夕も最近はどんどんしっかりしてきていて、その内に今のような甘え方をしなくなるだろうことも予想できた。
温かさの中に寂しさを滲ませた紗蘭に浩二はすぐに気が付き、
「どうした?」
と優しく声をかける。
そこには純粋に妻を思いやる気持ちだけがあった。
「何でもないわ。ただ、子供の成長は早いなって思っただけ」
紗蘭は内心を全て語らなかったが、浩二はそれだけで充分わかっていた。
「確かになぁ。梨子と佑輔なんて、来年はもう高校生だ」
浩二も子供の成長の早さにしみじみと呟く。
しんみりとした空気になるが、それを吹き飛ばすように浩二が声を上げる。
「でも、俺たちにとってはいつまでも子供だ。だから俺たちはずっと、アイツらが心の拠り所に出来るようにしてればいい」
「そうね。…ありがとう、あなた」
はにかみながらお礼を言う紗蘭に、浩二は破顔する。
「お礼は紗蘭からのキスでいいぞ」
「しないわよ、もう。折角いいこと言ってたのに台無しじゃない。…お礼はハグで我慢してよね」
「やっぱり紗蘭は可愛いな!」
二人は仲睦まじく話しながら家の中へと戻っていく。
誰もが平和だと信じて疑わない、うららかな天気の日曜日。
数時間後にその平和が壊される事も、三門市の人間にとって未来の大きな分岐点に立たされる事も──
──もう、一生会えなくなる誰かがいる事も。
まだ、誰も知らない。
▽皆様へのご挨拶
お読み頂き、誠にありがとうございます。
初めての二次創作、並びに執筆ですので、至らない点やご都合主義に見えるような点、原作を読み込んでいるつもりではいますが矛盾がある点などあるかと思いますので、見つけたら鼻で笑って、皆様の寛大なお心によって大目に見て頂けると幸いです。
そして、こっそり教えてくださるとありがたいです。
また、原作にて詳細が分からないこと(描かれていないランク戦や、その他設定など)については、この作品独自の解釈やストーリーにしていきたいと思います。
後に事実が判明し、さらにこの物語で書いたこととはそれが異なっていても、あくまで私が書いた当時の考察と妄想による産物ですので、後のお咎めは無しでお願い致します。
また、今二次創作は一年前よりずっとネタを考え、原作最新話まで大まかな内容を詰めておりました。
が!!!
年末にそのネタをせっせと書き込んでいたスマホがぶっ壊れ、本体保存データの閲覧・取り出しが不可能になりまして…。一年がパーになりましたとさ。
他にバックアップを取っていなかった自分の責任ですので、心機一転、覚えてる限りでまた一から作ることに致しました。
そして、出来た順にすぐ掲載していこうとも思いました。
ということで、不定期更新にはなってしまうのですが、ご感想など励みになりますので、もしよろしければ書いていただけると嬉しく思います。
この作品が皆様のほんのささやかな楽しみになれば幸いです。これからもどうぞよろしくお願い致します。
皆さんが本作品を読んでいる媒体はどれでしょうか?読みやすさを工夫するための、 各話の文字数の参考にさせていただきます。
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その他(宜しければ媒体をお教え下さい)