NEW HORIZON〜蒼き炎〜   作:Eeny,meeny,miny,moe

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11.休日でーとなう。

 

 

「──それで、ボーダー入るために帰ってきたんだ?」

 

 

 ショッピングモールの二階にあるフードコートの一席で、海夕と萌恵は話していた。偶然再会した時に取り付けた約束の日である。

 海夕はいつも通りオレンジの髪をサイドポニーテールにまとめ、丈の短めなパーカに黒スキニーを合わせている。対し萌恵はキレイめなトップスの上に薄いカーディガンを羽織り、ロングスカートとショートブーツのスタイルだ。

 

 二人は待ち合わせの後、このフードコートで軽食を食べてお腹を満たし、そしてようやく詳しい話をしている最中だった。

 

 

「うん。後はまぁ、さっき話した小学校の事とか、色々あってさ。最終的に叔父さんも許可してくれて、帰ってこれたって感じかな」

「なるほどね。……海夕はいつか帰ってくるだろうなって思ってたけど、予想より早かったから驚いちゃった」

「そうなの?」

「うん、高校入るくらいかなって。中学生で保護者の元を離れさせるってあんまり考えられないし、特にあなたの叔父さんはそうだろうなって思ってた」

「あー、まぁだいぶ渋られたよ」

 

 

 そう苦笑する海夕。そこには困ったような嬉しいような、叔父家族への愛が籠っていて、萌恵は大切にしてもらってるんだとひそかに安心していた。

 

 

「でも私の意志が固かったから、最後には折れてくれたんだ」

「じゃあ今は一人で暮らしてるの?」

「ううん、親戚の家に居候させて貰ってる」

「親戚?ならはじめから叔父さんじゃなくても……」

「あ、親戚っていっても少し遠いの。母方の親戚なんだけど、お母さんは一人っ子だったから、お母さんの従兄弟のお家になるのかな?うん。あ、その家のお子さんと私がはとこになる関係性」

 

 

 少しこんがらがっている様子の萌恵に海夕は付け足して説明し、それで何となく関係性を理解する。

 

 

「それは確かに少し遠いかも」

「うん、でしょ。でも三門に住んでる中では一番近い家だったから、むかしから交流はあったんだ。それでダメ元でお願いしてみたら温かく受け入れてくれて……ほんと感謝しかないよ〜」

 

 

 海夕は明るく話してはいるが、自分の家が無い、家族が居ないというのはやはり大変だと萌恵は思う。出来るなら萌恵がどうにかしてあげたい。と思っても、自身もまだ中学生であり出来ることはほぼ無い。もどかしさに軽く唇を噛んだ。

 そこでふと、ある事を思い出して尋ねる。

 

 

「あれ、そういえば海夕はもうボーダー入ったの?ボーダーなら住処も提供してくれるって聞いたことあるけど……」

「んーん、こっち来たのも4月入ってからだし、色々落ち着いた時には募集期間終わってたんだよね。だから次回以降の募集で目指そうと思ってるんだ。住処のことは私も知ってるけど、ボーダーが紹介してくれる所にしても、ボーダー本部にしても、年齢的にダメな気がするんだよね」

「そっか……ごめん、役に立てなくて」

「そんな事ないよ!萌恵ちゃんと再会出来ただけで凄く嬉しいのに!」

 

 

 目を伏せて悔しそうにする萌恵に、海夕は慌てて本心を告げる。役に立つとか立たないとかじゃなくて、友達とは一緒にいて楽しく安心できる間柄だろうから。海夕にとっての萌恵は、正しく友達であった。

 海夕は自分の事で悩んで欲しなくて、話題を萌恵に向けることにした。

 

 

「萌恵ちゃんはボーダー入らないの?」

「うーん、興味無かった訳じゃないんだけどね。一人でわざわざ入るほどのきっかけも無かったというか。今年は特に受験生だし、……一応六穎館目指してるから難しいかも」

「六穎館!すごいね、萌恵ちゃんなら行けるよ!」

 

 

 きらきらと輝いた目で見る海夕に、萌恵はようやく小さく笑みを浮かべた。

 

 

「うん、ありがと。頑張るね。でもだから、一緒に入るのは難しいと思う。私は早くて来年度になっちゃうから」

「そっかぁー、残念。いやでも来年でも……?」

「海夕は入れる時に入っちゃいなよ?」

「いや、うん、そうなんだけど。少し前に説明聞こうと窓口に行った時に、色々書類提出するって聞いて、親の同意書とかも必要らしいの。たぶん、一人で行ったから心配されたんだと思うけど」

 

 

 そう言いつつ海夕はムッとして不満を表すが、恐らく窓口の人は親切だったのだろう、それは形だけの可愛らしいものだ。

 萌恵は微笑ましく思いながら話の続きを聞く。

 

 

「それが今いる家のおじさん達でもいいのか、それとも一回帰って叔父さんに書いてもらうのか分からなくて。聞こうとしたらすごい子ども扱いされてちゃんと説明してくんなかったし」

「なるほど。それはたぶんその人も分からないんじゃないかな?海夕みたいなケースってあんまり多いわけじゃないと思うから……」

「そうなのかな」

 

 

 萌恵の答えに海夕は少し記憶を思い返して考えていたが、今はその話ではないと軽く頭を振り、思考を打ち切る。

 

 

「まあどちにしろ、そんな感じで次回申し込めるかも分かんなくて、そんならいっそ来年で萌恵ちゃんと合わせようかなって思った」

「そう?まぁ海夕がやりたいようにやりなね」

「うん。とりあえず次の募集始まったらまた考えるよ。それより萌恵ちゃんの話も聞きたい!」

 

 

 その後も話は盛り上がり、すっかり日が暮れるまで二人は話し続けたのだった。

 

 

 

 そして時は過ぎ、年が明けたばかりの寒い冬の日。

 海夕は、遂にボーダーの一員となる─────

 

 

 




次回よりようやくボーダー入ります。序章が長くなってしまいすみません。

年内の更新は最後となります。2022年も残り数日となりましたが、本当にありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。良いお年を!
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