NEW HORIZON〜蒼き炎〜   作:Eeny,meeny,miny,moe

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帰郷-キキョウ-
7.決意の光


 

 

幸せの記憶がある

蹂躙の記憶がある

 

温かな感情がある

底冷えするような感情がある

 

綺麗なモノもそうじゃないモノも

その全てが大切で。

 

 

第二章「帰郷」

 

 

ありのまま、全てが詰まった故郷(ふるさと)

 

 

*** *** ***

 

 

 曙の色がほのかに東の空を染める頃。

 

 薄茶色の髪色の青年は、かけていたサングラスをおろして一息つく。現れた瞳は少し眠たげで、そして飄々としている。

 

 青年はいかにも気が抜けたような様子だが、彼が座っているのは白い化け物──所謂近界民(ネイバー)と呼ばれているものだ。

 その山の上から器用に降りると青年は歩き出し、立入禁止の看板や有刺鉄線が張り巡らされた区域内から外へ出る。目的地は明確なようで、その歩みは迷うことなくどこかへと向かっていく。

 

 看板と有刺鉄線からそれほど離れていない所で、青年はこちらに向かって歩いてくる一人の少女の姿を認めた。

 

 歳は十ほどだろうか。明るい茶──というよりはオレンジにほど近い、夕焼け色の長い髪。まだ幼さの残る、愛らしくも整った顔立ち。ぱっちりとした大きな瞳とキュッと上がった口角が、どこか人懐っこい犬を彷彿とさせた。

 

 そんな幼い少女だったが、その表情は凛としていて声をかけるのを躊躇うような近寄り難い雰囲気を出していた。けれどその存在自体は儚く、辺りの明暗も手伝い今にも消えてしまいそうな危うさを孕む。

 全てがちぐはぐで、まるで噛み合っていないはずなのに、少女はその全てが違和感なく同居していた。

 

 明け方の時間帯と少女の年齢も然ることながら、少女が目指しているであろう場所の危険さに青年は声を掛けようとする。が、その瞬間青年は少女と目が合い、()()()光景に声を掛けるのをやめた。

 自分よりも深く青い瞳が印象的だった。

 

 目が合ったのはほんの一瞬で、直ぐに興味を無くしたかのように目を逸らし歩いて行く少女とすれ違った青年は、そっと口許に笑みを浮かべる。思わず零れた笑みだった。

 

 太陽は昇り、この地に朝を運ぶ────。

 

 

*** *** ***

 

 

 あれから数日、海夕と萌恵は順調に仲を深めていった。

 会ったばかりで直ぐに打ち解けられるというのは、もちろんこの二人の相性が良かったのもあるだろうけれど、子ども特有の特技と言えるのかもしれない。歳を重ねるほど、難しくなっていくものだから。

 

 そんな折、父方の叔父が海夕を引き取りにやってきた。

 元々父は三門の人では無く、一人っ子だった母に婿入りした関係で父方の実家は三門より遠く離れた地にあった。だからその家を継いでいる叔父が来るのも時間が掛かったのだ。それでも知らせを受けてから、最大限急いで向かってきてくれたその気持ちだけでも海夕は嬉しく思っていた。

 

 海夕と会い、本当に海夕以外が犠牲になったと実感し、叔父はひとしきり涙したあとに優しく言った。

 

「家に帰ろうか」

 

 元々叔父一家とは家族ぐるみの付き合いで仲は良かったが、この瞬間叔父は海夕を家族として向かい入れることを決めていた。

 そして海夕はその厚意に乗る形で、萌恵との別れを惜しみつつも三門を離れたのだった。

 

 そんな中で海夕がボーダーという存在を正式に知ったのは、三門市で起きたあの惨事からそう経たない頃だった。名前だけならば萌恵から聞いていたが、良くは知らなかった。引っ越した後、テレビのニュースで聞いたのだ。

 世界初の界境防衛機関というのは、三門市外でもかなりの話題性を持って取り上げられていた。それも、ボーダーという組織が設立されるという事から基地が完成したときの会見まで、何回も取り上げられていて、それが決して一過性の話題では無いことを示していた。

 

 そしてあの日、海夕の運命が変わった。

 

 あれは、ボーダーの基地が完成したというニュースから数ヶ月後の、とあるイベントの様子だった。新しく加わったという二人の隊員への質疑応答が流れていた。

 様々な質問が飛び交い、関係ないような質問やいやらしい質問、真っ当な質問などがあったが、二人はその全てに上手く対応しているようだった。

 

『次に大規模な襲撃があったら、街の人と自分の家族どっちを守りますか』

 

 それは、あまりに非道な質問だった。どっちと答えても揚げ足を取る気の悪意ある質問。髪が短い少年の方は、やはり動揺したようだった。しかし。

 

『それはもちろん家族です』

 

 黒髪の少年は何のためらいもなく言い切った。ざわつく記者たち。しかしそんなものは意に介さず、真っ直ぐと自分の意見を述べ、そして。

 

()()()()思いっきり戦えると思います』

 

 眩しいほどの笑顔で、たった中学生かそこらの少年が覚悟を伝えた時、海夕の心にはひとつの考えしか無かった。

 もはやその後の少年の上手い対応などはどうでも良く、三門から遠く離れた地で一人の少女が覚悟を決めた瞬間だった。

 

 

 




お久しぶりです。
こんな供養のための自己満小説をお気に入りしてくださってる方がいらっしゃって有難いです。
少しでも楽しんで頂けるよう、これからも精進して参ります。
 
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