~~一時間後~~
「チートもいい加減にしろぉ!!」
わたしは、コックピットの床をばたばた蹴りつけ。じたじたコンソールを殴っていた。かー!! なんなんの! なんなんの、このミッション!! 数えて三回、わたしは、コックピットでブチギレた。GBNのアバターの身体能力は、やろうと思えばいくらでもパワーを上げられる。そんな感じで暴れてた。びくともしない。流石だぜ。全力で台パンできる。いや、そういうことじゃない。
「まあ、チートではないよね……」
ちょっと言い過ぎた。ごめん。居ないし聞いてもない相手に謝ってから深呼吸をして自分を落ち着かせた。それから新しく出現した2ndミッションの内容へ再び目を向けた。何度見ても内容は、変わらない。
1thミッションと同じ森の隙間、ビームスナイパーライフルは、1thミッションと同じものが置いたまま。空の向こうには、やっぱり目標がある。憎たらしい機械の造花。ラフレシアの改造機〈ブルーローズ〉が日差しを受けて、青く輝いている。
ミッション内容は、シンプル。〈ブルーローズ〉を落せ。
「……撃ち落せ、ってことだよね」
ビームスナイパーライフルが相変わらずあるってことは、そういうこと? いや、無理でしょ。撃ち落とせなーいんだが?
「ラフレシアって、Iフィールドとかあったっけ……」
あったわ。wikiにあった。まあ、肉薄する前に、メガ粒子砲雨霰で爆散してるんだけど。トランザムで突っ込む?。うーん、雑に撒かれたメガ粒子砲と拡散ビーム砲で、消し飛ぶのが早くなるだけになりそう。下からに強すぎでしょ。そういう風に作ったんだろうけどさ。いくらナノラミネートアーマーがあってもあの密度のビーム放射には、フレームだとかが耐えられない。
「Iフィールドあるならこのビームスナイパーライフルも駄目じゃん……」
Iフィールドあってもなくても一撃は、無理そう。しょぼげだしなあれ。使ってないけど。
「しっかし、あいつどうやって落としたんだ?」
狙撃脳だし狙撃しかできないって、事あるごとに自虐してたしなー。それは間違いないんだけど……駄目だ。何も分からん。
「取っ掛かり見つけたいな……」
このまま諦めて落ちるのは、簡単だけど何かなあ。ぼやいてから〈ヴィダール〉を仕舞うと地面に転がった。短い草が柔らかくて、気持ちいい。気候もいい感じに暖かい。眠くなる……。空をぼーっとしばらく眺めて、前髪をなびかせた風を受けてからふと私は思った。
「そういえば……」
周り見てなかったや。立ち上がって、森の方に踏み出す。今度は、時間制限が無いんだからちょっと見て回ろう。
+++
「なんかあった」
開けた森の空白地帯、というかなんだろう。樹々が生えてたところをふっ飛ばしたみたい。緑も途絶えていて、地面が剥き出しだ。その真ん中に突き刺さってる。……爪楊枝みたい。いや、爪楊枝じゃないけどさ。黒いし。そういうことではない。
「これ、ダインスレイヴだ」
遠目みると遠近感狂うよねー、これ。開けたところに、ぽつーんと突っ立てるしさ。長い、でかい。見上げるとやっぱすごい。これが大気圏外から降ってくるんだから鉄血本編は、やってらんないよ。
それでも立ち上がるのが〈バルバトスルプスレクス〉。痺れたねえ。
「ま、わたしが使ってるの敵側だけど」
〈ヴィダール〉は、徹頭徹尾、鉄華団の敵であるギャラルホルンだった。でもかっこいいと思ったからわたしは、今、こいつに乗っている。
しかし、このダインスレイヴなんだ? なんでこんなところに? 怪訝と周りを見ても深い森。だったらやっぱり空だ。青い空を見上げれば一番目立つ〈ブルーローズ〉がある。
「え、もしかして、ダインスレイヴ撃てるの?」
え~~……コワー……。鉄血要素入ってるもんねえ。撃てるかもしれない。これほんとに詰めて殴れるの? 少しイライラしてきた。溜息が出る。
「ムカつくなあ……」
とりあえず、ここにダインスレイヴが残っているってことは、ここに撃ってきたってことかな。でもなんで撃たれたんだろう。普通にうろついていても〈ブルーローズ〉は、撃ってこない。メガ粒子砲をばら撒かない。静かに浮いている。
「手を出せば撃ってくるのかな」
まだ〈ブルーローズ〉を狙撃していない。〈ヴィダール〉のライフルでは、届かないからあのビームスナイパーライフルをいい加減、あれに撃ってみるべきだけど。
「返しに、多分だけどダインスレイヴが来る」
……かも。メガ粒子砲かもしれないけど。まあ、そもそもあのビームスナイパーライフルでは、Iフィールドは破れない。
「……地形は、深い森。それを撃ち抜いて、突き刺さったままのダインスレイヴ。これ見よがしに置かれたビームスナイパーライフル」
答えが見えたかもしれない――本当に、全くもう。わたしは、大きく大きく溜息を吐いてから、
「ムカつくなあ」
小さく毒づいた。
+++
――正直なところ、もっと楽な方法はあったと思う。
ビームスナイパーライフルを掻き消すIフィールドが存在するのは、テストして分かった。手酷い反撃が〈
〈ブルーローズ〉は、手を出さなければ――つまり、ロックオンするまで――浮いているだけ。ならIフィールドを無視できる火力を用意すれば容易に落とせたはずなんだ。もしくは、Iフィールドをすり抜ける物理的な狙撃。それこそダインスレイヴ。ダインスレイヴを〈ブルーローズ〉は、結局撃ってこなかった、あれは、ダインスレイヴを撃てっていうヒントだったんだ。
「だけどさ。全部が全部、示された攻略法に乗っかるのは、ムカつくもんな」
〈ヴィダール〉を操作して、握ったワイヤーを引っ張った。このワイヤーは、設置してあったビームスナイパーライフルのトリガーに繋がっている。逆シャアでみたやつだ。正直なところ宇宙世紀は、映画しか見てない。
「トランザム!」
ビームが空を突き進むのを見たのよりも早くわたしは、叫んでいた。ワイヤーを引くのと同時くらいだ。
〈ヴィダール〉が赤く輝くのがわかる。スラスターペダルを踏み込んでいる。加速。地上と森が一瞬で、遠ざかった。代わりに、〈ブルーローズ〉へと近づいていく。一撃で仕留める。内心で呟いた。
ビームスナイパーライフルの元に、〈ブルーローズ〉のメガ粒子砲に拡散ビーム砲が降り注いだ。森が土煙と一緒に、削られていく。少しの間、ビームは、空に伸びていたけどあっと言う間に見えなくなった。
ナノラミネートアーマーは、ビームに対して絶対的な優位性がある。動力のエイハブリアクターから発生するエイハブ粒子と装甲に散布した金属塗料の反応がビームを無効化する――というのが鉄血本編の設定。
結論から言うとわたしの〈ヴィダール〉は、完成度が足りていない。普通の〈ヴィダール〉としてなら問題ない。けどGNドライブに動力を切り替えているのもあって、エイハブリアクターという動力を必要とするナノラミネートアーマーを完全に再現できていない。 だからあの大出力には、耐えられない。
「でも、当たらなければどうということもないってさぁ――!!」
〈ブルーローズ〉の花弁、プルーマが展開される。遅い。それを横目にしながら猛スピードで追い越して、〈ブルーローズ〉の真上に到達してから片足を振り上げる。ハンターエッジを振りかざす! さぁ、いこうか!
「チェストォォォッッッッッッッッ!!」
気合一閃! 確かな手応えとミッションコンプリートのシステム音声がわたしに、勝利の確信をもたらした。
――
「なるほど。最後はそう来るわけ……!!」
地上から差し込まれたビームをどうにか回避――いや、ちょっと掠った。トランザムを解除する。弱体化した後だとカモにされてしまう。それだけは避けたい。あの狙撃を前にして、無様を晒すなんて腹立たしい。
圧縮されたGN粒子の輝きは、綺麗なピンク。間髪を入れずに放たれる直線は、その色をしている。
本家大本。
「ああ、この動き――先読み、あいつのだ……!!」
本人ではないと思う。あいつは、GBNにいないのだから。だったらプログラムされたクリエイトミッション用のもの。デジタルに、行動を決められている。
しかし、わたしの癖を知っている挙動。ああ、あいつのライフルだ。いつも背後から感じていた視線を全身に感じている。わたしの周りの敵機の挙動を見張る鷹の目が、わたしを落とそうと見ている。デジタルな殺意がわたしを突く。
ゾクッとする。たまらない――だけどこれは、本物じゃない。
「本物を寄越せよ……!!」
噛み締めた歯を軋ませて、わたしは、呟く。偽物じゃ嫌だ。あんたは、今、どこにいる。
「そこだっ!!」
わざと粒子ビームを受ける。食らってはいない。GNフィールドだ。捕まえた。逃さない。ならやっぱりここはっ!
「トランザムッ!!」
叫び、加速。空から地上へ。狙撃をGNフィールドで対応する。加速と重力を受けたわたしが地上へ到達するのは、一瞬。わたしの世界が後ろに、伸びる――――着地。砂煙を巻き上げて、視界に映ったのは、
「これで、」
GNビームクローを開放し、指を揃える。〈ケルディム〉がGNビームライフルを投げ捨て、GNハンドガンを引き抜く――いや、抜かせない。肩から腕を落とすとGNハンドガンごと腕が転がった。振り上げた両手先の狙いを瞬時に固定。狙いは、勿論!
「終わり!!」
『All Mission Complete!!』
コックピットっ!!