グレンがGBNを始めて、シアスタルという少女に敗北して一か月。
その間、グレンは文字通りにGBN漬けの生活を送っていた。ログインしている間はひたすらにガンプラバトルを行いソウルバーニングガンダムとユナイトシステムの経験値を溜め、現実では川崎のガンダムベースでサンタ――コウタと一緒にガンプラ制作を。
バトルに関してはコロシアムがメインとしつつも、メイジンおすすめのいくつかのソロミッションを熟し、短期間で順調にダイバーズランクがも上げていった。Cランクに達したため、これでグレンも一応必殺技の獲得資格をクリアしたことになるが、必殺技に関しては長くやっていてもなかなか発現しないこともあるので無視していいというのがメイジンのアドバイスだった。
グレンの個人的感想でいえばトップフォース虎武龍へ紹介してもらい、フォースリーダーのタイガーウルフとの修業は大きな経験だった。
トライバーニングを乗り続け、近接格闘のみでバトルを続けているグレンだが、これまでほとんど我流の喧嘩殺法だけだったところに武術を改めて学ぶことができたのだから。
しかしタイガーウルフというが虎要素はどこにあったんだろう。
ガンプラ作成に関しても、これまでガンプラを作ったことなどなかったのでとりあえず素組みから初めて、スミ入れや艶消し、ミキシング等の技術も学び始め、実際に自分で作ったガンプラをGBNで動かすことも試してみた。
もっともどんなガンプラを組み立てても、ソウルバーニングガンダム超えるものはできなかったのだが。
サンタとメイジン、それにメイジンの紹介でガンプラスキルについてアドバイスをくれたシャフリヤールというダイバー曰く、ソウルバーニングはGBNにおいても最高クラスのクオリティのガンプラであるため、そう簡単に超えるどころか同等のものなど作れないらしい。
何かというと愛を連呼する人だったが、何故そんなに愛を叫ぶのだろう。
なにはともあれ、一月でGBNというセカイに慣れて来たグレンは、
「……暑いなぁ」
「鬱陶しい時の君ほどじゃないよ」
「なんだとコラ」
サンタと共に日本の山陰エリアの砂丘をジープで走らせていた。
現実でいう鳥取砂丘が再現されたエリアなのだろう、見渡す限りが砂で覆われている。
「あとどれくらいだ?」
「んー、もうちょっとだと思うよ。いや、国内エリアだからって徒歩で来なくてよかったね。さすがに歩いたら手間だった」
「そりゃー砂漠を徒歩で歩く輩はいないだろう。ていうか、ガンプラで飛んでいけばいいんじゃねーの?」
「いや、初心者あるあるだよそれ。縮尺勘違いして砂漠歩くとか。場所によってはガンプラで入れない街があるし、そもそもこういう砂漠系エリアだと防塵加工してないと機体に砂が入って動かなくなるからね。だから僕たちもこうしてジープで来てるんだ」
「ふぅん。よくできてるなぁこの世界は」
空に輝く太陽の眩しさに目を細めつつ、
「おっ? あれか?」
視線の先、砂丘が終わり海と森。
そして、別荘が一つ。
「うん。あれが、フォースBUILD DiVERsのフォースネストだよ」
「なんでまたこんな砂丘に」
「なんかメンバーの一人が滅茶苦茶推したみたいな噂は聞いたかな。誰かは知らないけど。多分なんかの小ネタだと思うんだけどよく分らんや」
「はー、GBNそういう小ネタが多すぎなんだよなぁ」
「ここが例の男のハウスか」
「フォースネストね」
ジープから降りてフォースネスト、木製のログハウスを眺める。
いかにも別荘という風合いだ。ぱっと見だけでずいぶんと快適そうではある。
近くに海もあるし、砂丘が近いという立地上空も広く、夜になれば星も美しいだろう。
見まわし、
「……ん?」
ログハウスの影に小さな子供がいた。
紫の髪の中性的な顔立ち、年は10にもならない程度だろうか。花のような藤色の瞳をした子供だった。
明らかにサイズの合わない白と水色のジャケットを小さな両手で抱えている。
「えーと……あんな子供もGBNいるのか? あれも、BUILD DiVERSのメンバーなのか」
「子供がいるってことは聞いたことないけどなぁ。メンバーは5人だったと思うけど……あと、アバター的に見た目当てにならないからね?」
「あぁそうか」
じっとこちらを見つめてくる子供は何も言わない。
「あー……そこの君、君はBUILD DiVERSの子か?」
「…………」
返事はない。
じっと、藤色の瞳がこちらを見定めるように向けてくる。
どうしたものかとサンタと二人で頭を抱えかけて、
「アルス、どこだ? 何度も言うが私のジャケットを……むっ? 誰だ?」
ログハウスから黒髪の少女が出て来た。黒のノースリーブに胸が白い生地であり、クールな印象の随分な美少女。
目を引くのは―――左の二の腕に巻かれた翡翠のアクセサリー。
子供を探していたのだろうが、ログハウスの前にいたグレンとサンタを見つけ、視線が止まる。
エメラルドの瞳が二人を睥睨し、
「……あぁ、例のカミキ・セカイロールか。メイジンから話は聞いている。入るといい」
「はは、お客?」
「あぁ、そうだ。ヒロトのだがな」
「ちちの?」
「あぁ。……ジャケットを返してくれ」
「ん」
とてとてとアルスと呼ばれた子供が少女の下へ駆け寄り、足に抱き着く。
彼女はアルスの頭を優しく撫で、グレンたちに構うことなくログハウスの中へ戻っていった。
「……なぁ」
「……うん?」
残されたグレンとサンタは思わず目を見合わせ、
「GBNって子供もできるの?」
「結婚システムはあるけど……子供はできないはず」
「結婚はできるのかぁ」
「はじめまして、ヒロトだ。よろしくな」
フォースネストのログハウスの中、リビングのソファに座りポンチョの少年とグレンは向き合った。
少し離れたテーブルでは先ほどの少女――メイがいて、彼女の膝の上にアルスが座ってこちらを眺めている。
紺色の髪を後ろでまとめた落ち着いた雰囲気の少年。どことなく先ほどの少女、メイに似た雰囲気を感じた。
彼がBUILD DiVERSの有名ダイバーであり、同時にGBN屈指のビルダーでもあるという。
1年半前のエルドラミッション。
彼らがトライしたいうエルドラという星を舞台にし、そしてGBNでも大規模戦闘に発展した大規模ミッションだったという。
それらの動画はキャプテン・カザミというダイバーによって配信されており、グレンもそれを見ることによっていくつかの納得を得た。
彼のコアガンダムのプラネッツシステム。
それは確かにソウルバーニングガンダムのユナイトシステムのそれに似ているものだったから。
正確に言えばユナイトシステムがプラネッツシステムに似ているのだろうが。
「はじめまして、ヒロトさん! サンタです」
「グレンだ、今日は会ってくれて感謝す……します」
「いや、俺も君に会いたいと思っていたとこだからメイジンにはこちらこそ感謝している。……それと、敬語はいいよ」
「そうか? 助かるよ」
柔らかく微笑むヒロトはグレンのイメージと少し違った。
エルドラミッション関係の彼が映っている画像はほとんどが無表情だったからだ。
もっとも、それからもう1年半が経っている。雰囲気の変化があったのは当然だろう。
「色々ヒロトには話さないといけないことがあるんだけど……先に、一つ聞いていいか?」
「うん?」
「そのアルスって子――――ヒロトとメイの子供なのか?」
「違う」
「違う」
「そう」
三つの口から同じ言葉が二つ、違う言葉が一つ帰ってきた。
否定をしたのはヒロトとメイで、肯定したのはアルスだ。
ヒロトは眉を顰め困りながら、仕方なさそうに苦笑するというGBNの表情ジェネレーターのクオリティの高さを発揮させ、
「GBNじゃ子供は作れない。アルスは……その、なんというか。俺たちが保護しているELダイバーなんだ」
「ELダイバー……電子生命体ってやつか」
GBNについて学んだことの一つ、この世界にはこの世界だけに生きる電子生命体がいるということ。
自然発生したという新たな命はELダイバーと呼ばれ、この電子の中で生きている。中にはリアルにおいてガンプラの体を持つELダイバーもいるらしい。
「そうだ。私もELダイバーなんだが、この子は私や他のELダイバーと違って成長が緩やかでな。私とヒロト、というよりも私たちのフォースで面倒を見ている」
「パルさん。ヒナタさん。カザミ」
一人呼び捨てだった。
「ちち、はは」
「………………」
「何も言わないでくれ。みんな同じような顔をするんだ」
「ちち?」
「すまんなアルス。ヒロトが認知してくれないからな」
「メイ!? 何を言ってるんだ!?」
「今度ヒロトがアルスのことで違うって言ったら、ママがこう言えと」
「マギーさん……!」
ヒロトが頭を抱え、メイは無表情のままだった。
「パルが興奮するだろう!」
「あぁ……そういえばヒロトと話していると妙に興奮してるなあいつは。なんなんだ、ヒロト」
「お、俺に聞かないでくれ」
「ちち、はは。仲良し?」
「どうだろう、ヒロトにその気はないようだ」
「いや、それは語弊が」
「…………結婚されてます?」
「し、してないって!」
ヒロトが頭を抱えだす。その彼に下にアルスは寄ってきて、ポンチョの端を掴み、
「ちち、アルス嫌い?」
「い、いやそういうことじゃないよ?」
「ははと仲良し?」
「あ、あぁまぁ。うん」
「けっこん?」
「結婚はちょっと忘れてくれ……!」
純粋な瞳で真っすぐ見つめられ、ヒロトの冷や汗がすさまじいことになっていた。
「……」
まるで想定していない展開であった。
グレン的にはもうちょっとシリアスな展開を予想して、少しばかり緊張していたのに目の前で繰り広げられているのはどこからどう見てもラブコメだった。
「どういう人間関係で……?」
「……………………複雑なんだ。本当に」
アルスの頭をなでながら、ヒロトが海外ドラマの主人公みたいなセリフを呟いた。
グレンとサンタも惚け顔で頷くしかなかった。
「アルス、おいで。これでは話が進まないだろう」
「はい、はは」
「……すまない、本題に入ろうか」
アルスがメイの下に戻り、ヒロトが改めてグレンたちと向き合う。
「グレン。君が俺が作ったソウルバーニングガンダムを使っているんだな」
「あぁ」
グレンもまたヒロトを真っすぐ見据え、
「――――すまない」
「迷惑をかける」
グレンとヒロトが同時に頭を下げた。
「…………ん?」
「…………あれ?」
「お、なんかデジャブ」
グレンとヒロトは首を傾げ、メイがポツリとつぶやいた。
「えっと……なんでヒロトが謝るんだ? 俺は、ヒロトのソウルバーニングを勝手に自分のものみたいに使ってるんだからそれを謝りたかったんだけど」
「いや、あれはレンタル品としてベースに渡したものだから正当な使用だよ。文句なんてない」
むしろ、
「あんな扱いにくい機体をよく使ってくれて感謝しかないよ」
「そんな感じなのか?」
「あぁ」
一つ頷き、そして彼はどこか遠い目をして、
「……トライシリーズの実装記念に川崎ベースで開催されたコンテストのために作ったはいいけど作りこみすぎて、GBNじゃ動かすのが難しすぎたからな……。たまに使用状況聞きに行ったけど、半年誰もまとも使えていないってちょっと凹んでたくらいだ。だから迷惑をかけるし、むしろ使ってくれていて感謝しているよ」
「へぇ……そういうもんなのか?」
「あぁ。変な負い目を感じなくてもいい。むしろ、ちょっとテンションが上がったくらいだ」
「うん?」
「俺が置いて言ってたガンプラで君が戦う―――ファイターズトライそのまんまみたいだ。グレンのアバターやバトルスタイルも相まってな」
「あぁ……それ、タイガーウルフさんやシャフリヤールさんにも言われたよ」
そもそもそれがシアスタルとの戦いのきっかけだ。
熟練のビルダーの残したガンプラを近接専門の赤い男が使うというのはガンダム好きの琴線に触れるものがあるらしい。
メイジンの紹介というのもあるが、だからこそトップランカーの二人もグレンの相手をしてくれたのだろう。
「ふむ、それでいうとヒロトはイオリ・セイか。いいじゃないか」
「あぁ。うん、悪くない」
零れるのは苦笑だ。
その名前はグレンも知っている。というより、最近学んだばかり。ファイターズトライの前作主人公の一人でトライバーニングガンダムを作成した少年。中学生時点で世界最高クラスのビルダーだったという天才児だ。
そのポジションになるというのはヒロトとしても嬉しいのだろう。仕方なさそうだが、しかし口端は確かに緩んでいる。
「それに、この一月のグレンのバトル画像は見たよ。俺の想定以上にソウルバーニングを使ってくれている。今後も、君が使ってくれると嬉しい。なんなら川崎のベースのレンタルを解約して、君に託すよ」
「んん……感謝する、ヒロト」
「よかったじゃん、グレン。さっくり使うの認めてもらって、ガンプラまで貰っちゃって」
「あぁ……礼を言っても言い切れないな」
「いいさ。使ってくれたほうがソウルバーニングも喜ぶし」
「そんなもんか? ガンプラ、だよな?」
グレンもバトル中ソウルバーニングに話しかけることはある。だがそれは、ガンプラの心へ語り掛けているよりも自分への鼓舞という意味合いが大きい。
そう言うグレンに、しかしヒロトは柔らかく微笑み、窓の外を見上げた。
空の先、サーバーに設定された空の、その先の宇宙、銀河の果てまで見ているかのように。
「あぁ―――俺はそう思うよ」
「ヒロト、リクたちからメッセージだ。もう来るそうだ」
「あ、分かったよメイ」
ホロウィンドウからメールを着信したらしいメイの応じて、ヒロトが立ち上がる。
「誰か来るのか?」
「あぁ。メイジンから聞いたよ。グレンは勝ちたい相手がいて、そのためにGBNをやってるんだろう? だったら、強い相手と戦って、経験を積むほうがいいと思って。こっちで知り合いに連絡したんだ」
ヒロトに促され、ログハウスの外に出る。
視線を向けたのは砂丘の方ではなく海側に。
メイのセリフからサンタがどこかそわそわしているのを横目にしつつ、海と空の境界線に目を凝らし、
「――――ん?」
「来たな」
水平線の彼方の小さな点は、しかしすぐに近づいてくる。
白と空色のガンプラだった。
どこか、グレンに見覚えがあり、すぐに思いだした。
「シアスタルのSSクアンタ……に、似てる?」
「あぁ、元々がOOクアンタであれもダブルオーだからな。大本が親戚みたいなものなんだよ。あれは」
「ガンダムダブルオースカイメビウス!」
サンタがその名を叫んだと同時にメビウスが砂浜に着地する。
そしてガンプラの起動状態が解除され、中からダイバーが現れ、
「……んん?」
思わずグレンは目を見開いた。
ガンプラを格納すると中空からダイバーが地面に降り立つ形になる。それはグレン自身も経験したし、他のダイバーがそうなるのも見て来た。
だが、メビウスから降り立ったのは。
「お姫様抱っこ……?」
青年が少女をお姫様抱っこしながら降り立ってきた。
ほんの一瞬の浮遊であるが、そのまま二人が地面に降り立つ。
思わず周りを見るとサンタは面食らっているが、ヒロトとメイは当然のように見ている。
男の方は水色のシンプルな風合いの好青年。少女の方は清楚なワンピースに腕回りの空色のストール。先ほどまで出ていたメビウスとよく似た、というかそのままなカラーリングの少女だった。
「ありがと、リク」
「うん」
微笑み合いながら少女は地面に立ち、リクと呼ばれた少年は微笑み返す。
そして当然のように二人の手は指を絡め合って結ばれていた。互いの左手薬指には空色の宝石がはめ込まれた指輪が。
二人は足並みを揃えて、こちらに向かってくる。
一緒に手を振ってくるが、グレンは挨拶よりも前に思っていたことがそのまま出てしまった。
「結婚してる?」
「え? してるけど」
「改めて、BUILD DIVERSのリクです、よろしく!」
「私はサラ。よろしくね」
「あ、あぁ」
所戻りログハウスの中。
二人人数は増えて賑やかになり、グレンはリクとサラの二人と握手をするがその独特のオーラに圧倒されていた。
リクはなんというか、異常なまでな爽やかな雰囲気がある。好青年を絵にかいたというか、
「圧倒的光……」
隣でサンタが小さく呟くが、まったくその通り。
そしてその隣で微笑むサラはどこか不思議な雰囲気と透明感がある。
その上で二人並ぶとなんだろう。
完成されたというか、ただ並んでるだけで絵になるというか。
結婚していると言われて納得するほどの絵になるカップルだ。
「……GBNでも結婚できるのかぁ」
「あぁ、この二人が結婚第一号だよ」
二人の雰囲気に圧倒されていたグレンにヒロトが苦笑する。
「半年くらい前に結婚システムが実装されて、リクとサラが最初に結婚したんだ。その時はすごい盛り上がったな。GBNの結婚は二人のダイバーが申請して結婚ミッションをクリアしないといけないんだ。それで専用の合体必殺技とかが使えたりする。演出特化でバトルじゃああんまり使えないけど」
「カザミが上げた密着動画もずいぶんバズったしな」
「あはは……あの時はありがとね」
「あれは楽しかったねぇ」
苦笑するリクに、ニコニコとほほ笑むサラだった。
ただの理想的なカップルにしか見えないが、
「BUILD DIVERSのリク。GBNの№2のダイバーだよ。この数年不動のチャンプとソロで戦える数少ない人だ。というか、『一人だけ別ゲー』とか呼ばれるチャンプが例外ならほぼ今のGBN環境で最強のダイバーだよ」
「リクよりもそのチャンプが気になるんだが……」
「あはは、あの人は凄いよね。でも、今はそれよりもグレン、君の話だ」
「あ、あぁ」
「勝ちたい相手がいるんだっけ」
「――――あぁ」
問いかけに、確かに頷く。
その通り。
グレンがGBNを続けているのは、シアスタルに勝利するためだけ。
あの日、グレンの胸の奥底に敗北は焼き付き、その炎は未だ消えることなく彼を焦がしている。
「GBNは楽しい?」
「……どうかな。正直、今はよく分からない」
それがグレンの率直の想いだ。
バトルをしても、ガンプラを組んでも、そこにあるのは執念染みた衝動だ。そこに楽しいという感情は正直ない。
そして楽しもうという想いもまた生まれない。
焼け焦げ燻る敗北だけが今のグレンを突き動かすのだから。
寝ても覚めても彼女のことを考えるのだ。
メイジンは宿命だと言っていたが、そこに込められていたのは憎しみにも近い、決して明るくはないものだ。
「ただ、俺はあいつを倒さないと、あいつに認められないとGBNを本当に始めることもできない」
「そっか、わかったよ」
リクもまた確かに頷き、
「それじゃあトレーニングを手伝うよ!」
その朗らかな笑みはグレンの暗い感情を一瞬で吹き飛ばす。
あまりの光オーラに圧倒されつつ、
「……いや、それはありがたいけど……その、いいのか? 俺は初めて会った初心者で、リクはGBNのトップランカーなんだろう? なのに……」
「んー?」
彼は何を言われてるのか分からないというように首を傾げた。
「――――だって、俺もそうだったから」
彼は笑う。
光のように。
世界中の空をギュッと包み込むように。
「俺もGBN初心者で何も知らなかった頃、マギーさんやタイガーウルフさん、シャフリさん、ロンメルさん……いろんな先輩に色んなことを教えてもらって、GBNを楽しむことを学んだんだ。だから、今度は俺も、誰かにGBNの楽しさに伝えられたらなって思うんだよ」
「あぁ。それにグレン。俺は思うんだ」
リクの言葉を引き継ぐ様に、ヒロトが口を開いた。
「例え今は楽しめなくても、そうでしかないのならそうあるしかない。どうしようもない時は、どうしようもないんだ。そういう風にしかできないんだったら」
ヒロトが両の拳を握り合わせ、目を伏せる。
「それはもう、一人じゃどうしようもない。……だから」
目を上げ、メイとアルスへ視線を移す。
二人に、そしてメイの腕のアクセサリーを目に収め、柔らかく微笑む。
「いつか、その時が来たら周りを見るといい。一人だと辛いけど、誰かと一緒ならきっとどうなっていたって、もう一度……もう一度、やり直すことができるって俺は信じてるから」
一人一人じゃ生きていくのは大変だけれど。
その弱さは誰かと繋がるためにあるのだから。
傷ついても、誰かとの繋がりがあれば何度だって――――
「……リク、ヒロト」
「だから、グレンがGBNを楽しめるように俺は手伝うよ!」
「ソウルバーニングを頼む、グレン。見る限り、まだグレンは使っていないシステムもあるしな」
「え? そうなの!? なにそれ!」
リクの興味がヒロトに向けられ、サラとメイはそんな二人を微笑みと共に見守っている。そしてサンタもまた、隣でグレンを肘で小突く。
リクとヒロト、どちらもGBNでそれぞれの物語があって、その中で得たものを今グレンに伝えてくれたのだろう。
あぁ、それは。
「―――――燃えて来たぜ」
胸の奥が、焼き付いた奥底にさらなる熱量が注がれる。
今のグレンにはGBNを楽しむことも、本当の意味で始めることもできない。
けれど、だからこそ。
彼らの想いを応えるためにグレンは心を燃やすのだ。
サラリクサラリクサラリク!
ヒロメイヒロメイヒロメイ!