散乱   作:とーしん

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パル「モルジアーナ…イヴヒナは尊くないかい?」
モルジアーナ「そんなカプ知らない」

誤字報告ありがとうございます





GBNにようこそ/師匠降臨

 黒い空、星が光る夜に、ぽつりとひかる部屋。

 

 灯りがついてるその部屋には一つのプラモと一つの動画。

 

 

 HG GN-001 ガンダムエクシア

 

 それが部屋の机に立っているプラモの名前。 

 機動戦士ガンダムシリーズ に登場する兵器、モビルスーツを模したプラモデル、いわゆる[ガンプラ]と呼ばれる物だ。

 

 辺りにはニッパーでパーツを取り出す際に出たプラスチックの破片や既にパーツが取られたランナーが散らばっている。

 

「……これ捨てていいのかな? 何ゴミだろ?」

 

 そのガンプラは、たった今完成した。

 

 ガンダムエクシアを作ったきっかけは今タブレットで流れている、あるオンラインゲームの映像だった。

 

 世界中の人が、機動戦士ガンダムに出てくるMSに乗って異次元から来た敵を倒す……そんなゲームのイベントミッションの動画。

 

 すでに3000万回は再生されており、その動画が人気なのがわかる。

 

 この動画の影響で、ガンプラを初めて作った。

 

 

 

 

 

 

 

 そして明日、今の時間は午前2時なので今日ではあるのだが、気分的には明日

 

 作ったガンプラで空を飛ぶ日だ。

 

 

 

 

 

 

 

「……お腹すいた」

 

 目を擦りながらゆっくり2階の部屋から1階へ降りていく。

 

 昨日徹夜してガンプラを作ったからだろう、体が怠くてしょうがない。

 

 目なんて毛の大きさに負けるぐらいの開き具合だろう。

 

「おはよぅ……お母さん……」

 

「おはよう……って眠たそう、昨日何時に寝たの?」

 

「あ……えーっと……10時ぐらい……とか?」

 

「少なくても1時までは明るかったですが?」

 

「うっ……タブンキノセイダヨ……」

 

「ふーん……今日初めて行くんじゃないの? G()B()N()って所」

 

 そう……先週誕生日を迎えるえて14歳になった俺は、誕生日プレゼントにガンプラを貰ったのだ。

 ずっと行きたかった《ガンプラバトル・ネクサスオンライン》

 通称GBNというオンラインゲームで遊ぶ為だ。

 

 GBNは自分の作ったガンプラに乗り、動かせる場所。

 

 ガンプラがなくてもログインできるらしいが、どうせなら自分の作ったガンプラに乗って色々な事をしたかった。

 

 

「うん、ガンプラ完成したから早く行きたいんだ」

 

「もう完成したの?」

 

「まあ結構ミスったけど、なんとか朝までには」

「……昨日遅くまで起きてたのね?」

 

 墓穴を掘ってしまった

 

「なるほどねー……いつも遅くまで起きるようになるんなら……わかるよね?」

 

 

「起きません! 起きません! はい! 規則正しく生活します!」

 

 偶に威圧的になる母の眼、これには逆らえない……逆らったが最後、どうなるかは簡単に想像できる。

 

 ……少なくてもエクシアはタダではすまないだろう。

 

 遂に遊べるタイミングで取られる訳にはいかない。

 

 

「よろしい。じゃあ、ご飯どうぞ」

 

「はーい! 頂きます!」

 

 必死さが伝わったのか、なんとか無事に乗り切れた……

 

「……楽しみだな、GBN」

 

 

 味噌汁と鮭と白飯、いつもより少し光ってる気がした。

 

 朝ご飯、美味かった。

 

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 青い空、太陽が少し照りつける昼下がり

 

 

 

「エクシアよし…………電車賃もある……お昼ご飯も大丈夫……よし」

 

「あ、もう行くの?」

 

「うん、いっぱい遊びたいから」

 

「そっか、行ってらっしゃい! ()()()!」

 

 

「お母さん! 行ってきます!!」

 

 

 

 

 最寄りの駅から5分ぐらい

 

 

 赤レンガ倉庫と等身大のエールストライクガンダムが立っているのが印象的なガンダムベース横浜

 

 

 ここは初めてガンプラを買った場所だ。

 店員さんも優しかったし、近くの飲食店も美味しい場所がある。

 

 GBNの筐体も置いてあって、

 プラモを作る事のできるスペースもあって、

 GBNを遊ぶにはうってつけの場所だと思う。

 

「あ、カイト君いらっしゃーい! 遂に今日初めての?」

 

「はい、GBNやりに来ました!」

 

 入店したら早速マツムラさんが笑顔で話しかけてくれた。

 

 マツムラさんはこの店の店長で、よく笑っている気さくな人、

 この店が柔らかい雰囲気なのはこの人が居るからだろうと思わせるような人だ。

 

「いやー……この前ガンプラを買いに来たと思ったらもうGBNデビュー……時の流れは早いね……初めてのおつかい見てるみたいだ」

 

「初めてのおつかい」

 

 マツムラさんは昔家が近所だった事もありそれなりに昔からの知り合いだった。

 それこそ初めてのおつかいに出れる年齢から知り合ってる。

 

 昔勧められて00を見たな……そんな思い出も気がつけば10年くらい前の事になっていた。

 

 昔から明るいのは変わらない、腰の辺りは変わってきたようだけど。

 

「よし登録完了! いってらっしゃい!」

 

「ありがとうございます! 楽しんできますね!」

 

 

 

 

 

 

 ガンプラ売り場の奥にある部屋に入る。

 

 そこにはGBNの筐体が置かれていた。

 

 早速マツムラさんに言われた通り、専用のヘッドセットを装着して、

 角が丸い三角形の小型端末、ダイバーギアを筐体にセットする。

 

『ID data confirmed please scan your Gunpla』

 

 エクシアをダイバーギアの上に載せる。エクシアが光に包まれて、エクシアのデータが読み込まれる。

 

『log in data confirm. 』

『Are you ready?』

 

 

 

 

『Dive start now!』

 

 自分の作ったガンプラで飛ぶために

 

 熱くなるバトルを自分も出来たら。

 

 いっぱいの期待が膨らんでいく。

 

 思いは重りになって

 

 電子の海に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 目を開けば、そこは本当の現実のようだった。

 

 電子で構成されたとは思えないような、柱だったり道だったり、人間、猫……猫? 

 

「えっと……店長が確かミッションカウンターでミッションを選べって言ってたな」

 

 GBN はとてつもなく広い。各ガンダムシリーズに出てくる町、草原に海、宇宙にはコロニーや基地、軌道エレベーターなど様々な場所に行く事ができる。

 店長はそこで練習用のミッションを選んで

「自由にガンプラを動かしたり、弱いNPC相手に肩慣らしをしたり、好きな事をしなさい」と言っていた。

 

 ミッションカウンターはログインしたら最初に入るロビーの中心にあり、そこの受付でミッションを受注する。

 ミッションも、戦闘するミッションから戦闘が必要無いミッションまでいろいろある。らしい。

 それにしても……

 

「人多いな……」

 

 GBN は世界中で人気のオンラインゲームだ。

 

 アクティブユーザーは2000万人以上居るらしく、人が多くて当然ではあるのだが、ミッションカウンターに大勢の人が並んでいる。

 

 初めてのミッションは、まだ時間がかかりそうだ。

 

 初心者用のカウンターとかないかな……ないみたい……

 

 

 仕方がないので近くの椅子に座って時間を潰す事にした。

 

 周りを見渡すと、みんなミッションカウンターに並んでるか、上のモニターで流されている中継の映像を観ている。

 

 モニターにはエールストライクガンダムとガンダムAGE1がベースだろうか? カスタマイズされた青いAGEが戦っている。

 

 両肩に付いているCファンネルが印象的なその機体は、敵対しているストライクの持っている、本来はソードストライクの武装である対艦刀シュベルトゲベールと、背中に付けていた大剣で鍔迫り合いをしていた。

 

 白熱するバトル 激しく動くガンプラ 

 

 繰り広げられる大迫力のバトル、思わず見惚れてしまう。

 

 

 

「━━━━━━━お? 見ない顔だな、お前初心者か?」

 

 戦闘を見ていたら突然他のプレイヤーに話かけられる。

 

 ザフトの制服を着た、オレンジ色の髪の男性だった。多分ガンダムSEED Destinyのハイネ・ヴェステンフルスがモチーフのアバターなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 猫耳を付けている。

 

「今日は人が多くて大変だよな……」

 

「あ……そうですね。いっつもこうなんですか?」

 

「いや、いつもはそこまでだよ。ただついさっき新しいイベントが始まってな、みんな早く遊びたいのさ」

 

「あ……そうなんですね」

 

「……もしかしておまえ、今日が初めてか?」

 

「え? ……あ、はいそうです。今からミッション受けようとしたら……」

 

「なるほどねぇ……そうだ! いい事教えてやるよ、まずはコンソールパネルを開きな」

 

「えっと……これか」

 

「そう、そして設定画面を選択して

「設定を選択……」

 

 そして左から四つ目の項目をタッチ

「左から四つめをタッチ……」

 

 二番目のタブの上から五つ目の項目を選択して

「……よし選択」

 

 で、OKを選択だ」

 

 言われた通りに設定をいじっていく。

 

「……これでどうなるんです?」

 

「これでいつもは制限されてる動きが出来るようになるんだ、

 初心者用のリミッターみたいなやつだな」

 

「なるほど……ありがとうございます」

 

「なぁにいいって事よ。俺、ハイネスって言うんだ、よろしくな! GBNにようこそ!」

 

 あ、名前スをつけただけなんだ

 

「カイトです。よろしくお願いします」

 

「おう! GBN、楽しんでくれよな!」

 

 

 そう言った後に彼は去っていった。

 ちょうど受付も空いたようだった。

 

 親切な人に会えた事を感謝しながら受付へ向かう。

 

 早速受付の前に来ると、受付の女性が話しかけて来た。

 

「ようこそ。ミッションを選んでください」

 

 現れたモニターを見て参加できるミッション一覧を見てみる。

 

 自由にフィールドで戦うフリーバトル、初心者向けのチュートリアル。今日限定の特別なサバイバルミッション。

 

 いろいろなミッションがあった。

 

 上のモニターで流れているのは、さっき説明を受けたイベントミッション、今週限定のサバイバルミッションの映像のようだ。

 

 どのミッションを受けようか、とりあえずばーっと最後の方までミッションを見ていると、一つのミッションが目に留まった。

 

「……採取は誰の為に?」

 

 そのミッションはワールドマップを移動してヤナギランを回収して戻ってくるという。花の採取ミッションだった。

 これなら花を探す間にエクシアの試し乗りも行えそうだ。

 

<OK>

 

 今日飛ぶ空が決まった。ワクワクしながら……

 

 

「……どうやって出撃するんだ?」

 

 

 

 少し手間がかかったが、無事出撃できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青い空に、青い天使が飛ぶ。

 

「……お──……」

 ガンプラが本当に動いている。小学生みたいな感想というか、自分の作った物がちゃんと動いて達成感と感動が生まれてくる。

 

 まっすぐ、横に、上に、下に、縦横無尽に空を駆けるエクシア

 

 森を下に、空を上に、川を見下げたり、街を見上げたり。

 

 プレイ動画を見てはいたがこんなに自由に動けるとは思わなかった。

 

 さっきもらったアドバイスのおかげだろうか。

 

「風が気持ちいい……気がする」

 

 エクシアに乗っているので風は当たらないのだが、このスピードで飛んでいるとそんな気がする。

 

 そうやって空を飛びながら花を探しているが、一向に見つからない。

 

 場所を間違えただろうか? 体感だが20分ぐらいは飛んでいる気がする。

 

 そう思い横を見た次の瞬間、草原の奥、地平線の下に綺麗なピンクのような、紫のような花がいっぱい咲いていた。

 

「もしかしてあれが……< caution >……へ?」 

 

 突然けたたましいアラートが鳴る。前方には巨大な木。

 

「うわぁ⁈」

 

 なんとか木は避けたが、気がとられて操作が狂ってしまう。

 

 

 気がづけば地面に突撃していく。辺りは一面は草原

 

 ────そして、少女が1人。

 

「───ッ!!」

 

 おもいっきり操縦桿を左にたおす。

 

 視界の先の少女に落ちないように全力で。

 

 

 

 

 草原に、固くて重い音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!!!」

 

 どうしよう

 

「ごめんなさい……つい余所見をしてしまって!」

 

「ぶつかってないし大丈夫だよ?」

 

 自分より背の低い、紅葉色の長い髪を揺らしながら彼女はこちらを向く。

 いきなり飛行機が自分に向かって突っ込んでくるようなものだ、相当恐かったとおもったが、彼女はけろっと、何もなかったように話す。自分なら多分泣く。

 

「この子かわいいね〜」

 

 隣には頭から地面に突っ込んだエクシアがあった。

 ところどころが草と土で汚れてしまった。

 

 

「かわいい……えっと……ありがとうございます」

 

「ん〜? あ、敬語はいいよ〜」

 

「えっと……はい」

 

「この子楽しそうに笑ってて、こっちも楽しくなるね〜」

 

 エクシアが笑っている。自分にはエクシアがアンテナ一つ動いていないように見える。

 

「笑ってる……?」

 

「うん〜、今落ちるのが楽しかったって」

 

「案外エクシアってタフなのかな?」

 

 彼女はまるでエクシアと、ガンプラと話せるようだった。

 不思議な子だ。不思議ちゃんだった。

 

 

「……ガンプラって何か考えたりしてるの?」

 

「うん! もちろんだよ〜」

 

 自分に聞こえない、きっと大体の人が聞こえない声が、彼女には聞こえているみたいだった。

 

「ここで一緒に飛ぶの、すっっごく楽しみにしてだんだよね。初めてのGBNが嬉しくて」

 

 初めてのGBN──彼女には一言も初めてだって言ってない。

 

 まるでエスパーか何かのようだった。

 

「ねえ君〜名前は?」

 

「えっと……カイト……」

 

「私()()! 、ちょっと行きたい所があるんだ〜。

 マップだと直ぐって描いてあるから多分すぐ終わると思う……多分」

 

 GBN初日、言葉が常時ふわふわしてる子と会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」

 ──────────────────────

 

 

 

 

 

 自分が受けたミッションの目的地であるヤナギランの群生地に彼女も行きたいらしいが、道に迷い、自分のガンプラも出せないらしく、エクシアに一緒に乗る事になった。

 

 

「地図みれたんだ……」

「知らなかったの〜?」

「しらなかった……」

 

 モカとエクシアに乗りながら地図の出し方を教えてもらう。

 これでヤナギランの群生地にたどり着けそうだ。

 

「ヤナギランがいっぱい生えてるところで、師匠と待ち合わせなんだ〜」

「師匠って?」

 

「師匠は……師匠だよ?」

 

「あ、うんそうなんだけど……じゃあ何であそこに居たの? 結構遠いよ?」

「なんか気がついたらあの草原に居てね〜」

「方向音痴?」

「そうそれ〜!」

 

 彼女はマップが見れても迷ってしまうようだ。

 それに対して自分はマップの出し方も分からなかった。

 

 

 おかげで採集ミッションを無事クリアできそうだった。

 

「あれだー! 見えてる〜?」

「おぉー……! 綺麗な花畑だね」

 

 モニターの先に広がるのは、一面に広がる赤紫のヤナギラン。

 一つ一つが綺麗に立派に咲いていた。

 

 

「ありがと〜助かったよ〜」

 

「いや、こっちも助かったよ。ありがとう。……いい場所だね、ここで待ち合わせするの、なんかいいね」

 

「おー! 同志だ〜! 師匠もここ好きなんだって〜!」

 

 綺麗な花、青い空、偶にはここに来て遊んでみたりしてみたいなんて考える。

 遊ぶといっても花を見るだけになるだろうけど。

 

「あ! そうだ〜! フレンドになろー! フレンド!」

 

「あ、フレンド登録?」

 

「そー!」

 モカに指摘され、フレンド申請を送る。彼女からもフレンド申請が来て、お互い承認する。

 

「フレンドになるとログイン状況とか、フレンドバトルとか出来るんだよ〜」

 

「へー……バトル強いの?」

 

「いや、私も最近始めたからまだまだなんだ〜。

 バトルは師匠の下で修行中なのだ〜」

 

「師匠か〜……俺も師匠欲しいな〜……」

 

 ついさっきGBNを始めたばかりで知識もバトルの経験も無い自分にとって、いろいろな事を教えてくれる師匠のような人が居てくれると助かる……という意味で行ったのだが、

 師匠が欲しい。その言葉に彼女が反応する。花が咲いたような笑顔、さらに咲いて満開になる。

 

「あ! じゃあ弟子になるのはどう〜!?」

 

「モカの師匠に?」

 

「そうだよ弟弟子〜!」

 

「弟子入りするって言ってないけど???」

 

「フレンドになったから修行に遅れる時は師匠にまだログインしてないとか言っとくね〜」

 

「強引な宗教勧誘かな?」

 

 

 

 

 どすん、とエクシアが着陸する。

 

 ━━━━━━その時

 

 突如前方の花々が爆発した。

 

「「⁈」」

 

 後ろからのビームによって目の前のヤナギラン達が燃えている。

 

 さっきまで綺麗に咲いていたヤナギランは、一気に飛び散った。

 

 綺麗な紫が、黒い塊、焦げた何かになり果てる。

 

「あ……ヤナギラン……」

 

 モカの悲しそうな、小さな声が、耳に入る。

 

 さっきまでの嬉しそうな、楽しそうな顔は花と一緒に吹き飛んでいた。

 

「一体……何が⁈」

 

<caution >の警告が鳴り響く。

 

 後ろからの攻撃に反応している。

 

 

 後ろを振り返る。

 

 後方には二機のガンプラがこちらに銃口を向けていた。

 一機は機動戦士ガンダムSEED に登場するザフトの量産型MS、ゲイツ。

 

 そしてもう一体、こちらはSEED DESTINYの機体、オレンジ色のグフ、グフイグナイテッドをベースにカスタマイズした機体と思われるガンプラ、デスティニーの光の翼が付いている。

 

『やっと見つけたぜ……カイト君!』

 

「その声……ハイネスさん⁈」

 

 グフイグナッイテッドの改造機から、さっき助けてもらったハイネスさんの声が聞こえてきた。

 

 何故彼が襲ってきたのか、訳がわからなかった。

 

『さっきお前に弄ってもらったのはフリーバトルの設定でな、俺達に狩られてもらうぜ!』

 

「なっ……!」

 

 さっき、というのは彼と話した時の事だろう。

 

 彼が裏ワザのように言っていたあの設定変更がフリーバトルの設定だったんだと気づいた。

 

 気づいた時には もう花は燃えていて

 

『つまりお前を撃墜して、ポイントを稼ぐってわけよ!』

 

 グフイグナッテッドの改造機がバックパックについているディスティニーガンダムの装備、高エネルギー長射程ビーム砲をこちらに向ける。

 

 銃口が輝き、赤い光が飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花弁が舞う、風に乗って舞い、上がって、上がって、上がって、光に焼かれる。

 

 花が焼けていく。空気が熱を帯びる。

 

 二体一、しかもこちらは今日始めたばかりの初心者、逃げる事しかできない。

 

 

 話しかけてきた優しいお兄さんと思っていたが、初心者狩りだった。

 

 ここはネットの世界、GBNも例外ではなく、もっと警戒するべきだったと後悔する。

 

 

 

 展開される弾幕

 

 逃げる 逃げる 逃げる 

 

 森に入って、川を越え、大きな岩壁を盾にして。

 

 

 だけど、意味を為さない。

 

 

「そろそろ決めちまうぜ!!」

 

「━━っ! 逃げきれない!!」

 

 エクシアが右腕に装備しているGNソードをライフルモードにして構える。

 

 照準を合わせビームを放つがグフは残像を残しながら簡単に避けていく。

 

「経験が違うんだ! 簡単にはやらせないぜ!」

 

 オレンジ色の光の翼を展開しながら高速で接近してくるグフ。

 

「俺がカスタムしたグフヴェスティージ!!! 

 素組みとは違うんだよ! 素組みとは!!!」

 

 すれ違いざまにグフの腕に付いている鞭、スレイヤーウィップで盾を奪われ、そのまま近くの谷に飛ばされる。

 

 

「そこだぁ!」

 

 グフヴェスティージが再度、高エネルギー長射程ビーム砲を構える。

 

「堕ちろぉッ!」

 

 赤色のビームの激流が放たれた。

 

 空に流れるその激流は、全てを飲み込もうとする龍のように迫ってくる。

 

「カイト!」

 

「っ!!」

 

「させるか!!!」

 

 

 エクシアの回避行動に合わせて、ジンがアサルトライフルを放つ。

 

「しまった⁈」

 

 エクシアの動きに合わせて放たれたその銃弾は引き寄せられるようにエクシアの太陽炉に命中する。

 

 空中で動けなくなったエクシアは、赤の波に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 谷に落ちたボロボロのエクシアを、グフヴェスティージとジンが見下す。

 

 

 エクシアの盾は少し遠くに刺さっていて取れない。

 

 谷に墜落した際の衝撃で体が痛む。

 

「カイト!!!」

 

「大丈夫……まだ……こいつ……動く!」

 

 先程のビームでエクシアは足を失い、盾も使えず、太陽炉も破損していた。

 

 GNソードも先の攻撃で壊れている。

 

 太陽炉がやられたので太陽炉搭載機の切り札とも言えるトランザムも使えないだろう。

 

 けれど、まだ、きっと動ける。

 

 まだ……まだ……何とかして、何とか

 

 操縦桿を必死に動かす。

 

 前へ 上へ アイツらへ

 

 けど、聞こえるのはエラー音だけ。

 

 無慈悲に銃は向けられる。

 

「避けられると思うなよ!!」

 

 ハイネスがグフのビーム砲に光を収束させ、こちらに向ける。

 

「まだ……!」

 

 どんなに必死に動かしても、エクシアは動かない。

 

 既に限界のエクシアはこれ以上動けない。

 

 悲しませてしまった。

 

 彼女のお気に入りの場所を、綺麗だなと思った場所を、自分が騙されたせいで消してしまった。

 

 せめて、彼女が かわいい と言ってくれたこいつだけでも守れたら良かった

 

 

 

 

「……カイト」

 

 

 モカが祈るように手を合わせる。

 

 奇跡を祈るように。

 

 ────────────────────────

 

 赤い光が、飛んでくる。

 

「避けられると思うなよ!!」

 

 高エネルギー長射程ビーム砲に光が溜まる。

 

 谷でボロボロで寝ているエクシアに銃口が向けられる。

 

 ━━━━次の瞬間

 

 ビーム砲が、撃ち抜かれる。

 

「なにぃ……⁈」

 

 咄嗟にビーム砲をおもいっきり前に投げ捨てる。

 

 次の瞬間にはビーム砲は爆発し、爆煙を上げながら下に破片が落ちていった。

 

「緑のビーム……⁈」

 

 さっきのビームは上空から降ってきた。

 

 すぐさま上空にビームライフルを向ける、だが上空には何もなく、ただ青い空が広がっていた。

 

「どこに行きやがった……⁈」

 

『ハイネス! 後ろだ!!!』

 

「は……⁈」

 ジンからの警告、一瞬遅れてグフヴェスティージの警報も作動する。

 

 だがその時には

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 グフは胴体を真っ二つに切られていた。

 

 

「ハイネェェェェェェス!!!」

 

 下半身と上半身に分かれたグフが爆散する。

 

 倒されたハイネスの名を叫んだジンに乗っているダイバーがグフを切ったガンプラに照準を合わせようとする、だが

 

「また……消えた?」

 

 さっき確かにグフヴェスティージをすれ違いざまに切った機体は、既に視認できなくなっていた。

 

「あの速さ……あの光にあの色……まさかトランザムか!?」

 

 TRANS-AM(トランザム)システム、機動戦士ガンダム00 に登場するGNドライヴ、太陽炉とも呼ばれるこの装置に搭載されているシステムで、太陽炉本体、GNコンデンサーに蓄積されていた高濃度圧縮粒子を全面開放することで機体が赤く発光し、一定時間MSのスペックを3倍以上に上げることができる。

 

 

 トランザムで加速したガンプラの目で追えない程の高速移動に翻弄されながらも、なんとか食らいつこうとするジン。

 

「そこだ!」

 

 紅い機影に対してアサルトライフルを撃ち込むが、気がつけばもうそこには何も居ない。

 

「また居ない……? 機体が量子化したのか!?」

 

 まるで最初から居なかったと錯覚させるほどの高速移動、ジンも、ジンのダイバーもその速さについて行けなかった。

 

 

「<caution>上か!!!」

 

 ジンのセンサーが上方向からの攻撃を察知する。

 

 急いでライフルを上空に向けるが

 

 

 その瞬間には、頭を緑のビームが撃ち抜いていた。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 上空で起こった出来事に、ただ驚いていた。

 

 グフとジンを超スピードで圧倒したあのガンプラ

 

 

「あれ……は……」

 

 

 そのガンプラを、見た事があった。

 

 

 自分がGBNを始めるきっかけになったミッション

 

 ━━あの大戦で、ボスへのラストアタックを飾った2機のガンプラの内の一体。

 

 

 

 そのガンプラの太陽炉から放出されているGN粒子が、鳥のような、蝶のような羽を形作っていた。

 

 

 上空に佇んでいる機体が、トランザムが切れて燃えるようは紅から、元々の色に戻っていく。

 

 そのシルエットはまるで、フリーダムガンダムやデスティニーガンダムの要素を加えた

 

「白い……ダブルオーガンダム……」

 

「師匠〜!!! 師匠遅いよ〜!!!」

 

 モカがエクシアの通信を使って、白いダブルオーを駆るダイバーに話しかけ……

 

「え? 師匠?」

 

『モカ、大丈夫?! 君も!』

 

「大丈夫〜!」

 

 モニターにダブルオーのダイバーの姿が映る。

 

 茶髪で、空色の服を着ている、自分より背の高そうな青年。

 

『モカは大丈夫そうだね……俺、リクって言うんだ、うちのモカが迷惑かけてない?』

 

「えー師匠〜!?」

 

「……カイトです…………」

 

「ん? カイト何で緊張してるの〜?」

 

「いや……見た事ある人だったというか……憧れててた人の1人だったというか……」

 

『あ、俺を知ってるの?』

 

 

 これが師匠と、師匠のダブルオースカイメビウスとのファーストコンタクトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ、赤色の空にダブルオースカイメビウスが照らされていた。

 

 草原に跪くダブルオースカイメビウスは絵になるというか、ガンプラの完成度がそのまま美しさに直結しているようだった。

 

「そっか……モカが道に迷ってるのを助けてくれたんだ」

 

「はい……ただ……モカを乗せてる時に初心者狩りに絡まれてしまって」

 

「やっぱりか……モカからのメッセでエクシアに乗せてもらってるのは分かってたし、あのガンプラ、最近初心者狩りが乗ってるガンプラだって話題になってたんだ。取り返しのつかなくなる前に何とか出来て良かった」

 

 モカの師匠━━フォース〔ビルドダイバーズ〕のリクさんはモカとの約束の場所に向かう途中に、エクシアに乗って逃げてる間にモカが送ったメッセに気づき、急いでモカの居る所に来たらしい。

 

「あ、そーだ師匠〜!」

 

「モカ?」

 

「あのね! カイトを弟弟子にしたいのです!」

 

 モカがついさっきから言っている弟弟子の話をリクさんに切り出す。

 

「いやそんな急に……」

 

「あの……俺からもお願い出来ませんか?」

 

「……え?」

 

「お⁈カイトもやる気だ〜!」

 

「さっき、自分が騙されたせいで、モカの好きな花が目の前で燃やされてしまいました……それに、エクシアだって……だから、もっとGBNの事を知って、エクシアもと一緒に強くなりたいんです! あんなにボロボロにならないように……したいんです。だから……お願いします!」

 

 今思ってる事を、後悔を言葉にする。

 

 

 

「……そこまで言うなら……モカは?」

 

「ん〜?」

 

「弟弟子は「欲しい!」……よし! なら決まり!」

 

「……いいんですか?」

 

「うん! いいよ。あんまり教えるの、上手くないかもだけど……」

 

「っ━━はい! よろしくお願いします!!!」

 

 そして

 

 

「……モカ、あの花……ごめんね……もう何輪残ってるのか」

 

「? ……明日にはまたあるよ??」

 

「え……?」

 

「うん、明日には元気に生えてるよ、24時間周期で町とか、花とか、元に戻るんだけど……」

 

 顔が一気に熱くなる。さっきの独白は何だったのか。

 

「……」

 

「……しらなかったんだ〜……あ、今日がGBNデビューなんだったね〜」

 

 

 考えてみればここはゲームの世界。

 

 ましてやガンプラが本当のMSのように動いたりビームを出したりする世界だ。

 

 グラフィックは凄くリアルだし、感覚もあるが、基本はすぐ元に戻るに決まっていた。

 

「……まぁ気持ちは分かるよ! アップデートがあってから、匂いとか味とかもっと本物みたいになったし! 感覚がフィードバックされるようにもなったし! 俺も偶にびっくりするぐらい!」

 

 リクさんが必死にフォローしてくれる。

 

 優しい……けど痛い……

 

 

 

 

「けどそっか……今日初めて……よし! じゃあとりあえず─────

 

「あ、私も言う〜!」

 

 え? じゃあ……一緒に、せーのでいこう、せーの」

 

「は〜い」

 

「「せーのっ────

 

 ──GBNにようこそ! これからよろしくね! カイト」君!」

 

 

 GBN初ログインは、何かと踏んだり蹴ったりだった。

 

 けど、最初の仲間が出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公 シラトリ・カイト

紅髪の兄(姉)弟子、モカ

師匠、ミカミ・リク
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