広がる青空。澄み渡る空気。何もかもがかつてはそこにあった。だがあのレトロなイメージがあった俺がいた基地は既にない。あるのは動かなくなったアンテナとパッシブレーダー。8年前から進歩した技術を使って作られた動作型のアクティブレーダー。そして…6角形の形をした様々な最新技術を詰め込んだ新しい俺の…俺達の基地がそびえ立つ。入ってみれば驚くべきほど技術は進化しているのがよく分かる。巨大モニターはホログラムになり観測員は現場に行く人員が少なくなったかわりに後方勤務の人員が増えた。だが同時に人工知能…AIがやってきた。観測員は数を減らす一方…なんてことはなかった。後方勤務とはいえ、AIと共にこれからの展望を考えるのが彼らの仕事だ。
え?俺?俺はそりゃあ…『パイロット』だからな!それも誰もが羨む天才パイロットさ!昔は調子に乗りすぎたのが懐かしいくらいだよ。今は名誉機長なんて、大人しくされるための足枷をつけさせられて散々な思いをしてる。こんな思いをするならメインチームのパイロットなんて辞退すれば良かった。
「お待ちしていました。キャプテン・デイビス名誉機長」
「…なるほど。お迎えってわけか」
「司令長官からの出頭命令です。私についてきてください」
「はいはい…ああ全く…いやな名誉だこと」
基地内を歩き、ほぼ頂上付近に施設されている司令長官室。そこには懐かしい顔が揃っていた。
「遅かったな。名誉機長どの」
「スコット!久しぶりだな!何年ぶりだ?ポートディスカバリーから離れて8年だが…」
「3年といったところだな。しかし、ポートディスカバリーも変わった。俺達の軌跡を示してくれるものは何一つとして消え去ってしまった」
「それは違うわ。キャプテン・スコット。消え去るのは時代の流れ。そして、私たちが新しい時代のCWCを再び見せる必要ができたと言うことにすぎないわ」
「司令長官!」
「お帰りなさいキャプテン・デイビス。あなたの活躍は前の職場からよく聞いています」
ポートディスカバリーから俺達は8年前、移転することになった。極秘任務の為に、人員を動かすことが決まったからだった。スコットは途中までは俺と同じ任務についていたが、5年後に別の観測所へ異動。ベース・コントロールの司令長官もまた別の観測所へ異動となった。ポートディスカバリー組として残された俺と何人かの観測員は、太平洋上にある秘匿された人工島へ残ることになった。
人工島にて始まったのはCWC最大のミッション。それはEF8と呼称される巨大ストームを消し去ることだった。ポートディスカバリー組と各国の選りすぐりの観測員やパイロットが集まり、ストームを消し去る為に尽力した。結果から言えば成功したわけだが、今日に至るまでは多大な犠牲と汗水垂らした技術者達、そして観測員達の仕事ぶりにある。EF8が観測されたのは異動から6年後。元々来ると予想されていたが、予想よりもそれは早くきた。ストームライダーを飛ばし、ストームディフューザーを撃ち込む。全てこれで終わるはずだった。だがストームはそれを許さなかった。あまりに大きすぎたストームは同僚のストームライダーを飲み込み、ストームディフューザーは効果を発揮しきれなかった。4回もの突入作戦が敢行されたが、どれも失敗に終わり俺達はストームライダー2機を失う甚大な被害を受けてしまった。そこで始まったのがストームライダーの強化だった。エンジンはより強力なものへ換装され、ストームの風圧に負けないほどにまで改造された。強度も桁違いに上がった。更に技術屋の連中がストームディフューザーMK-2なるものを作り出していた。まだ試験段階で投下式だったが、俺達に残された時間は少なかった。
かくして俺達はストームディフューザーMk-2を積んでストームに立ち向かったわけだが、そう簡単には行かなかった。時間がない中、現地改修で間に合わせた弊害なのか再編成された5機の内1機がエンジン不調で出撃不能。ストームディフューザーMk-2も3基しか作れず、失敗すれば二度とチャンスはない。通過する島の住民達を犠牲にしてストームディフューザーMk-2を開発するはめになる。しかしそれだけは避けなくてはならない。更には投下式だけに有線起爆しなければならない点があった。全て最悪の状況だった。観測員もまともにおらず、出撃には最低限の観測員のみが動員された。時間も人も機材も無かったが、俺達はストームに突っ込んだ。パイロットと観測員は全員命知らずのやつだけを動員した精鋭。死なすわけにはいかない。
そこからはひどいものだった。ストームに耐えられず1機は墜落。1機は雷に当てられ操縦不能。残る1機はストームディフューザーMk-2の起爆システムに異常が発生。撤退を余儀なくされた。残るは俺が乗る機体だけ。
『機長!ここまで来たんです!帰るわけには行きませんよ!』
『分かってるさ!観測員!覚悟はいいな!』
『ストームディフューザーMk-2。投下用意良し!タイミング合わせ開始!』
『投下!』
『投下!』
吹き荒れる嵐の中、ストームディフューザーMk-2は投下された。だがこれだけではダメだ。威力が半端ないゆえに、俺達は爆発の加害範囲から逃げなければならなかった。しかしストームは思った以上に速く移動していた。
『機長!予定爆破ポイントからズレが発生!このままでは…!』
『はぁッ⁈』
『クソ…!もう間に合わないぞ!どうするんだ⁈』
『どうするも何も…もう回収は不可能だ!』
『…爆破観測員。加害範囲から俺達はどこらへんにいる?』
『加害半径LEVEL2にいます!』
『了解した…!全観測員に告ぐ!各位、対ショック姿勢をとれ!爆破観測員!5秒後に起爆だ!』
『…!了解!ありったけの爆風をくらわせてやりますよ!』
『頼んだぜ!』
俺は操縦桿をしっかりと握り締めると、いつにまでなく集中した。そしてカウントが0になった瞬間、背中を思い切り押されるような感覚と共に爆炎が見えた。ショックでシステムはダウン。生きているのは操縦系統のみとなった。だが俺は一度体験している。爆風を乗り越えた覚えがある。もう一度。ストームライダー。もう一度だけでいい。俺に力を貸してくれと祈った。
墜落する中、祈りが届いたのか一瞬だけメインエンジンが作動した。俺は暴風とメインエンジンを頼りに滑空する形で暴風域を離脱。今度は海面にぶつかることなく、海面に不時着した。
こうして俺は名誉機長となり、伝説のパイロットなんて呼ばれることになった。称賛されるのは嬉しかったが、少し照れ臭いところもあった。
「デイビス。新しいポートディスカバリーはどうだ?」
「ああ。なんとかやっていけそうだ。何せ…かわいい観測員のかわいこちゃん達が増えたみたいだしな!」
「彼女達は広報だ。手を出すなよ?」
「分かってるって」
片手におやつのピーナッツを持ちながら、俺は静かに相棒に笑った。
ストーム。それは自然の脅威。人は自然には逆らえないのが常だった。だが今は違う。少なくとも俺達がいる限り、決して終わることがない任務だとしても、人は自然の脅威に立ち向かう力を得た。
そして今日もまた新しい観測員達がやってきた。
「俺は名誉機長。キャプテン・デイビスだ!おやつのピーナッツは持ったかな?」
てなわけで、ストームライダー2ができたらこんなあらすじになりそうってのを書いてみました。拙いけども、あったらいいはずだと思うんだ!俺はね!