天翔ける凶星と黒い悪魔   作:マイン

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あ、ありのまま…さっき見たことを話すぜ!俺はストパンを観ていたと思ったらガルパンを観ていた…な、なにを言ってるのか(ry

…以上がベルリン編5話の感想です。時代背景的には何も問題は無いんですが、ストパンで戦車が本格的に動いているとガルパンを意識してしまいますよね。これは来年の最終章3話でガルパンにも大戦時の戦闘機が出てくる前振りか……それは流石に無いでしょうけど。
しかし今回のネウロイは色々とモチーフがぶっ飛んできてますよね。1,2話は銀英伝のアルテミスの首飾り破壊作戦を彷彿とさせる氷山一体型、3話は特撮に出てくるような三位一体の戦闘機型、4話はどっかで見たような高速戦闘機型、そして今回のガメラ型…どんどん現実離れしてきてますね。元々が空想上や未来の兵器をモチーフとしているので正当な進化といえばそうですが
そして今作ではどうやらウィッチたちの成長や背景に関する描写が多いっぽい感じがする。それを引き立てるのが濃厚なおっさんキャラたち…なんでしょうか?今回出てきた庭師のおっさんどもも、なんかナウシカの城オジみたいなキャラでよかったですね

長々と失礼しました。ではどうぞ


マッハ・フライヤーズ

 先行してネウロイの元へと向かうシャーリーと昴、そこに地上の坂本からの無線が入った。

 

『シャーリー、岩城、聞こえるか?』

「少佐!どうしたんだ?」

『たった今、監視班から情報が入った。岩城の言ったとおり、敵は南北からロンドンを目指して進行中だ。敵のスピードから換算して、既に南のネウロイは内陸付近に到達している。市街地に到達する前に追いついて、直ちに撃破しろ!』

「了解!」

『…しかし岩城、お前一体どこに連絡を取ったんだ?監視班から、北のネウロイは放置して問題ないとブリタニア王室からの勅令があったと言われたぞ。政府や軍からならともかく、王室から我々に勅令が出るなど前代未聞だぞ?』

「あ~…まあ、その…ちょっとばかし伝手がありまして。ともかく、そっちのネウロイはなんとかなると思うんで気にしないで大丈夫っすよ」

『…?まあ、それは後で聞かせてもらうぞ。今は目の前のネウロイだ!他の連中が追いつくには時間がかかる、お前たちのスピードに任せたぞ!』

「「了解!」」

 返事と共に、2人はネウロイに追いつくべく一気にスピードを上げる…と、ここで昴があることに気づく。

 

「…んお?シャーリー、お前なんかいつもより速くね?もう800km超えてる筈なのについてこれてるぞ」

「ああ。なんか今日はストライカーの調子がいいんだ!まだまだ上げられる気がするぞ…!」

「調子がいいって…この加速はそんなレベルじゃないと思うんだが」

「ようし…一気に行くぜ!岩城、着いて来いよ!」

「お、おいシャーリー!?」

 

ギャンッ!!

 シャーリーはストライカーの回転を一気に上げると、いつも追いかけている筈の昴を置いてけぼりにしてかっ飛ばしていった。

 

「うおッ!?…おいおい、加速が今までとはダンチじゃんかよ。どんだけ魔法力籠めてんだ?もしくはストライカーの安全装置ぶっ壊れてんじゃ……」

 そこまで言いかけて、昴は急いで坂本へと無線を繋ぐ。

 

『岩城、どうした?』

「少佐ッ!昨日の夜中から朝までの間に格納庫に出入りした奴は居るか!?」

『…な、なんだ、急にどうした?』

「シャーリーの様子がおかしい…!とっくに900km超えてやがる、昨日まで850超えられなかったって言ってたのによ!本人が気づいてないところからして、多分ストライカーの方がどっかイカれてるんだ!あのままじゃネウロイ倒すより前にシャーリーが潰れるぞ!」

『何!?…だが妙だぞ。昨晩は今日の海上訓練の為にサーニャたちも夜間哨戒を休んでいるし、そもそも出撃予定はないから整備兵も出入りしていない筈だ。あのシャーリーが整備を抜かるとは思えんし、もし何者かの工作によるものなら、無断で立ち入った者がいるとしか考えられない…一体誰が…?』

 

 

 

「…あ~、もう行っちゃったんだシャーリー。あのままで大丈夫かなぁ…?」

「…なんだと?」

 一番沖に居たために最も遅れて格納庫にやってきたルッキーニのそんな呟きを、坂本とミーナは聞き逃さなかった。

 

「…ルッキーニ、今のはどういう意味だ?詳しく話を聞きたいんだが…」

「し、少佐!?え、ええとぉ…な、なんでもないよ~?」

 

ボキンッ!

 白を切るルッキーニの目の前で、魔法力を発動したミーナが手にしていたペンを握力だけでへし折った。

 

「ぴぃッ!?」

「話しなさい、フランチェスカ・ルッキーニ少尉。…さもないと、次に私が何を握ってしまうか分からないわよ?」

「あ、あわ…あわわわわ…ッ!」

 

 

 

 一分後…

『岩城、聞こえるか!?今すぐシャーリーを連れ戻せ!』

「少佐?どうしたんで?」

『ルッキーニのせいだったんだ!今朝まで格納庫で寝ていて、起きた時にシャーリーのストライカーを誤って壊してしまったと白状した!適当に組み上げたらしいが、ストライカーの構造に詳しくないルッキーニが正しく組み上げられるとは思えん!』

「…むしろ、よく適当にやって飛べるように出来たな。シャーリーのチューニングを間近で見ていてなんとなく憶えていたっぽいのは不幸中の幸いだぜ」

『だが、いつ異常をきたすか分からん!万が一ネウロイと会敵した時にストライカーが壊れることがあればひとたまりもない、その前にシャーリーを連れ戻してくれ!』

「了解…!マッハで追いつきますんでお任せあれ!…ただ、その間は無線が多分通じないでしょうから後で連絡します!」

『頼む!追いついたら、直に宮藤とリーネが追いつくだろうから、シャーリーは2人に任せてネウロイを追ってくれ!私もシャーリーの方に呼び掛けてみる!』

「アラホラサッサー!」

 無線を切ると同時に、昴は溜め込んでいた龍気を全開にし、微かに見えるシャーリーを目標に捉える。並のストライカーであれば追いつくのは不可能に近いが、昴にとってはシャーリーの現在のスピードも彼我の距離も、さしたる問題ではない。

 

「さあ…ハンティングタイムだ!暴走兎を捕まえてやらぁ!」

 文字通り、逃げ回る兎目掛けて襲い掛かる隼の如き勢いで昴はシャーリーへと向かっていく。

 

 

 …その一方、ターゲットとなった兎…シャーリーは後方から迫る昴も、ノイズ混じりにかすかに聞こえる坂本からの通信も、遥か前方にいる筈のネウロイのことも気に留めず、ただひたすらにストライカーの出力を上げることに集中していた。ルッキーニによって弄られたストライカーは、本来ウィッチのガス欠…もとい魔力欠を防ぐために標準装備されている『魔法圧計』のリミッターが壊れてしまったことで、ウィッチの魔力を際限なくストライカーに送り込むようになってしまった。元々シャーリーの改造により限界ギリギリまで引き下げられていたため、シャーリーはリミッターの故障に気づくことなく出力は上がり続け、機体は制御しきれないパワーに悲鳴を上げる。

 

(この感じ…似てる、あの時と…!あたしが地上最速記録を出した、あの時の…限界だと思っていた感覚を、乗り越えていく感覚!いける、今なら…もっと行ける!)

 しかし今のシャーリーにとっては、愛機の悲鳴も念願の瞬間を迎えるドラムロールにしか聞こえない。既に飛行速度は時速1000kmを超えている。シャーリー悲願の領域まで、あと一息。その瞬間の為に、シャーリーは残された魔力をフル稼働させる。

 

 

 そんなシャーリーの頭上から、マッハ一歩手前にまで加速した昴が羽交い絞めしようと急速降下しながら腕を伸ばす。

 

「シャーリー、そこまでだ!観念し…」

「いっけぇぇぇぇぇッ!!」

 昴の腕が絡まる寸前、固有魔法の『加速』の発動と同時に限界以上の魔力を送り込まれたストライカーがすさまじい勢いで回転し、以前の昴と同じようにソニックブームをまき散らして急加速した。

 

「どぉぉぉぉッ!!?」

 至近距離からソニックブームをもろに喰らった昴は吹き飛ばされ、(ファルク)の爪は神速の兎を捕らえる事が叶わなかった。

 

「…い、今のはソニックブームか!?ってことは…シャーリーの奴マジで音速超えやがったのかよ!事故みたいなもんとはいえよくもまあレシプロで……って、今更だけどアイツ水着のままで手ぶらじゃねーか!武器も無しに単機先行してどうするつもりだよアイツ!?」

 今更ながらまともに戦えるのが自分だけであることに気づいた昴がシャーリーを目で追うと、音速でかっ飛ぶシャーリーの先にロンドンを目指すネウロイが飛んでいた。ネウロイの方もかなりのスピードだが、今のシャーリーの速度には遥かに劣る。1分と掛からずに接触するであろうことは目に見えていた。

 

「おいおい、こんなタイミングで追いついちまったよ…!あのスピードじゃ激突しちまう……仕方ねえ、やるしかねぇか…!」

 もはやなりふり構ってはいられないと腹をくくった昴は、奥の手を解放する。

 

 

「固有魔法…『夢幻換装(イマジン・アームズ)』、発動!」

 

 

 

 

「…ストライカーの音しか、聞こえない…!あたし、音より速く飛んでる…これが、超音速の世界!やった、やったぞ!あたしはついにスバルに追いついたんだ!!」

 一方シャーリーはというと危機的状況が目前であることにも気づかず、音速を超えた事実に歓喜し打ち震えていた。昴のことを思わず名前で呼んでしまうほどに浮かれていると、そこでやっと無線に通信が入っていることに気が付く。

 

『…シャーリー、シャーリーッ!応答しろ、シャーリー!!』

「少佐!?あたし、やったよ!とうとうマッハを超えたんだ、今あたし…スバルと同じ世界を飛んでるんだよ!」

『そうだ、岩城だ!すぐに合流しろ!!敵にぶつかるぞ!!』

「…へ?」

 敵、というワードに冷静になって正面を見ると、進行方向にネウロイの赤い光が見える。その距離はシャーリーが気づいた時点で約2km。ネウロイの速度は時速約800km、シャーリーは時速1200km超。衝突までの時間は、4秒足らずである。

 

「う、ひ、ぇえええええッ!!?」

 回避など当然間に合うはずもなく、シャーリーは咄嗟にシールドを張って衝突の衝撃に備えようとした…その時。

 

ギュィンッ!!

 超音速のシャーリーの後方から、それを超えるスピードで真っ赤な光がシャーリーとネウロイの間に割って入ってきた。そして

 

 

 

 

 

 

「…チェストォォォォォォッ!!」

 

ズパァァンッ…!

 シャーリーの眼前でその光よりも眩しい何かが閃くと同時に、その軌道に沿ってネウロイが縦真っ二つに両断され、赤い光とシャーリーは両断されたネウロイの間をすり抜けていった。

 

「えええ……え、え…?」

 思わず目を瞑ってしまったシャーリーであったが、予想していた衝撃が来ないことに恐る恐る目を開けた時には既に両断されたネウロイの間を通り抜けた後であった。

 

「なに…が、ぁ…?」

 あまりの出来事に困惑するシャーリーが事態を把握する前に、強い眩暈と意識の混濁が彼女を襲う。限界以上の魔法力を消耗した反動である。魔法力が尽きたことでストライカーも停止し、背後でネウロイが砕け散る音を聞きながら意識と共にシャーリー自身も落ちていきかけた時。

 

…ポスッ

 何者かが落ち行くシャーリーを抱き留め、その体を上着らしきもので包み込んだ。

 

「やれやれ、間に(おう)たか。大事(でし)にならずによかったじゃ…」

(…誰?てか、何語…?)

 全く聞いたことのない言葉に正体を確かめようとするシャーリーだったが、魔力切れによる強烈な疲労感で瞼がどんどん下がっていく。そのまま睡魔に身を任せかけた時、視界の端にちらっと見えた物…自分を抱える何者かの左手に握られたそれの記憶を最後に、シャーリーは意識を手放したのであった。

 

 

(…あれ、扶桑刀…?少、佐……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはよー!」

 

 その後、合流した宮藤らと共に帰還したシャーリーはベッドに放り込まれるなり大いびきをかいて眠りこけ、夕食の支度が整った時間を見計らったかのように復活し元気よく食堂へとやってきたのだった。

 

「あ、シャーリーさん!目が覚めたんですね」

「いやー悪い悪い、心配かけちまったみたいでさ」

「全くだ!宮藤とリーネに抱えられて戻ってきたときには何事かと思えば、飛ばし過ぎて魔法力切れとは…自己管理が出来ていない証拠だぞ!いかにネウロイ相手の戦場だろうと、己を律する心構えをだな…」

「…と、ついこの間まで自暴自棄気味だったトゥルーデさんが言ってますが、どう思いますかシャーリーさん?」

「んん~、そうですねぇ…。こういうの、扶桑でなんて言うんだって?確か、『人の襟見て我が襟直せ』だっけ?」

「襟じゃなくて振りだ。『人の振り見て我が振り直せ』…他人に注意する前に、自分自身を見直せという戒めの諺だ。…そういうことだぞ、バルクホルン」

「う…そうだったな」

 いつものように気楽な態度のシャーリーを窘めようとするバルクホルンであったが、つい最近までの自分を引き合いに出されて何も言えなくなってしまった。そこに、いつもならエーリカやシャーリーと一緒に食事を心待ちにしている筈のルッキーニがしおらしげにシャーリーの前に出てくる。

 

「ん、ルッキーニどうした?」

「シャーリー…。あの、あのね…ごめんなさいッ!!私が変なことしたせいで、シャーリーが危ない目に遭ったって…それで、謝らなくちゃって…うじゅ、うぅ…」

 涙目でたどたどしく謝るルッキーニに、シャーリーは苦笑しながら目線を合わせて語り掛ける。

 

「…そうだな。今回はたまたまアタシのストライカーを壊しちまったからあんなことになったけど、そうじゃなかったとしても人の物を…まして戦場で命を預けるストライカーを壊して、黙っていたっていうのは良くないことだよな。それは、ルッキーニもちゃんと分かってるんだよな?」

「うん…。中佐にも怒られたし…すっごく悪いことしたんだって、反省してる…」

「そうか、反省してるんだな。…なら、今回は許す!もう同じことをしないって約束できるのならな」

「…シャーリー、ホントに?」

「ああ。誰も怪我しなくて済んだんだ、本人が反省してるんならそれ以上とやかく言う気はないよ。…それに、実はちょっと感謝してたりするんだぜ?ルッキーニのチューニングのおかげで、目標だった音速を超えた世界を見ることが出来た。偶然だったけど…すっごく気持ちよかったんだ!そこんところはありがとな、相棒!」

「シャーリー!」

 勝気な雰囲気の中に包み込むような母性を含んだシャーリーの笑顔に、ルッキーニは破顔一笑して飛び込み、全身で喜びを表現する。そんな二人に皆が微笑ましくなる中、坂本は緩みかけた顔をすぐに正して咳ばらいをしながらシャーリーに話しかける。

 

「…まったく、あまりルッキーニを甘やかすなよシャーリー。今回のことは、軍人として相当な罰が下って然るべきものなんだからな」

「分かってるって。でも、ミーナに散々叱られたんだろ?だったらアタシがそれ以上怒っても、ルッキーニが可哀そうじゃんか。ワザとって訳じゃないんだしさ」

「そうかもしれんがなぁ…」

「…ああ、そうだ!それより少佐、ネウロイの方は結局どうなったんだ?」

「む、そのことか。それはな…」

「北のネウロイに関しては、もう倒されたって連絡が来たわよ」

 シャーリーの疑問に答えたのは、遅れて食堂に入ってきたミーナであった。

 

「おお、それは良かった。…それで、一体誰が倒したんだ?やはりブリタニア空軍なのか?」

「…それが、よく分からないのよ。警報が出た以上軍もネウロイの存在は認知していた筈なのだけれど、誰がどうやって撃墜したのかを答えなかったの。連合軍の方にも問い合わせてみたけれど、領海内で包囲網を張っていたけれど一向にネウロイが現れなくて、その内ブリタニア本国に方から『もうネウロイは倒された』…って連絡が来て、それっきりだそうよ」

「…何ソレ?ネウロイが出たのに知らない間に倒されてたって、まるでスバルの仕業みたいじゃん」

 

「…ま、しゃーねーんだよ。ブリタニア本国としては、アイツの功績を大っぴらにはしたくないんだからさ」

 怪訝な顔で首を傾げる皆にそう言ったのは、宮藤と共に夕食を運んできた昴であった。ちなみに今日のメニューは天丼とスバルが捕まえたカツオのたたきである。

 

「おー!もしかして扶桑のテンプラって奴?うまそーじゃん!…って、スバルそれどういう意味なんだよ?」

「…スバルぅ?」

 シャーリーの呼び方の変化に気づいたエーリカが眉を顰める中、昴は少し言い辛いのか慎重に言葉を選んで話し出す。

 

「あ~…詳しくはちと言えないんだがよ、その北のネウロイを倒したのは多分俺が連絡したウィッチなんだが、アイツはブリタニア政府…というよりトレヴァー・マロニー大将と仲が悪くてな。基本的にアイツの交戦記録はもみ消されるか、ブリタニア軍のスコアに書き換えられてるんだと。だから今回のネウロイも、アイツが関わったことを隠すために口を噤んだままなんだと思うぜ」

「なんだそれは…!?いくら空軍大将といえど、そんな無法が許されるはずがないだろうッ!!」

「…ええ、流石にそれは酷過ぎるわ。こちらから抗議を入れてもいいくらいよ」

「まあまあ、落ち着いてくださいな。お気持ちは分かりますが、アイツにとっちゃ織り込み済みなんですんで。あのブリ〇スが良いようにあしらわれて終わりにする筈がありませんから。ええ、絶ッ…対に」

「そういうもんかぁ…?まあ、北の奴は分かったけどよ、アタシらが見つけたほうのネウロイはどうなったんだよ?アタシあんまり憶えてなくってさ」

「あれ、シャーリーさん憶えてないんですか?」

「そのネウロイなら、お前が音速を超えた勢いで『ぶつかって倒した』と岩城から聞いているぞ」

「え?そうだっけ、スバル?」

「…ああ。いっぺんお前のソニックブームで吹っ飛ばされて大急ぎで追いつこうとしたら、目の前でお前がネウロイの後ろから追突かましてコアをぶち抜いたんだよ。シールドがギリギリで間に合ったからよかったものを、下手したら大惨事だったんだぞ」

「あれぇ…?そうだっけ…そうだったような…そうだったかなぁ…?」

 シャーリー自身、あの時は興奮と混乱で本能的に動いていた部分が多かったため、明確にその時のことを憶えているわけではなかった。ネウロイが眼前に居てギリギリのところでシールドを出したことまでは憶えているが、それからのことはぼんやりとしか憶えていない。故に、昴の言ったことは実際そうであったかもしれないと思えた。…しかし、シャーリーの記憶の端に微かに残る、自分を抱きかかえた人物が持っていた『扶桑刀らしきもの』の存在が、そうであったと断定しきれずにあった。

 

「…なあ、あん時アタシを拾ってくれたのってお前なんだよなスバル?少佐じゃなくってさ」

「ああ、そうだが」

「…?何故私なんだ?あの時私が基地に居たのはお前も分かっているだろうに」

「いや、そうなんだけどさ。…じゃああの時見たのって…」

 

「…ちょいちょい、シャーリーさんや?いつからスバルのことを下の名前で呼ぶようになったのかにゃ~?」

「…へ?」

 きょとんとするシャーリーに、口調こそ砕けているが心底面白くなさそうな顔のエーリカが詰め寄る。

 

「ど、どうしたよハルトマン?」

「いやさぁ…今朝までシャーリー、昴のことファミリーネームで呼んでたじゃん?それがさっきからファーストネーム呼びになってるからさぁ…どーいう心境の変化なのかな~…って、そう思っただけなんだけど~」

「そ、そうだっけ?いやいや、別に大した意味はないって。ほら、スバルのファミリーネームってなんか堅っ苦しい感じじゃん?だから前々から呼びづらくってさ、テンション上がった拍子につい…な」

「ふ~ん…ま、いいけど~。私は別に気にしないけどねぇ~」

「…なんでお前が俺の呼び方のことを気にするんだよ」

 眉間の険こそ取れたが拗ねたような調子のエーリカに昴が呆れる中、思ってもみなかったことを聞かれたシャーリーは困惑しつつも雰囲気を変えようと昴に話を振る。

 

「あ、そ…そういえばスバルさぁー!アタシを拾った時アタシの水着間近で見たんだろ?さっきは周りに皆が居たから冷静ぶってたけどさ、流石に至近距離でこのグラマラス・シャーリーのナイスバディを見たら心臓バクバクだったんじゃないの~?」

「え…いや、別に」

「またまた~、意地張ったって潔く…」

「いえ、私たちと合流した時も岩城さんとても紳士でしたよ。シャーリーさんが冷えないように上着に包んであげてましたし、あまり嫁入り前の女性に触れるのは良くないって私たちに運んでくれるようお願いまでしてましたから。…むしろ、芳香ちゃんの方がシャーリーさんの胸に興味津々だったっていうか…」

「あ、あれはその…えへへ…」

 リーネがその時のことを説明すると、シャーリーだけでなく皆が目を丸くし…やがて独りでに昴に背を向けて固まる。

 

「…なあ、流石に淡泊ってレベルじゃないだろアレ?自分で言うのも何だけど、アタシの身体に興味がないって普通の性癖じゃないぞ」

「そうですよね…!シャーリーさんみたいなおっぱいに興味が無い男の子なんていませんよね…!」

「宮藤、少し落ち着こうか…。それはともかく、こうなると本当にハルトマンの考えが現実味を帯びてくるな…」

「…もしあっちのほうだったら、私ちょっと怖いんだけど…」

「いや、どっちでもドン引きダロ…」

「…うん、私聞いてみる。幼馴染として、スバルの歪んだ性癖を放ってはおけないし。じゃないと天国のスバルのお父さんとお母さんに合わせる顔が無いもん…!」

「…ミーナ、あのハルトマンがあんな立派なことを…!」

「ええ、感動だわ。…理由はともかくだけれど」

「ご武運祈りますわ…」

 意を決した表情で、エーリカが一人ポカンとする昴に声をかける。

 

「…ねえ、スバル」

「ん?」

 

 

「スバルってさ…ロリコンなの?それともゲイ?…もしかしてED?」

 

 

 

 

 

ギリリリリリリッ…!!

「みぎゃぁぁぁぁぁぁッ!!?」

「ふわッ…!?」

 エーリカの問いかけへの返答は、彼女の頭を万力の如く締め上げる片手アイアンクローであった。100㎏近い握力を持つ昴の掌に掴まれたエーリカはまさに猛禽の爪に捕まった小動物の如き状態であり、その悲鳴が食事前だというのに寝落ちしかけていたサーニャを起こしてしまった。

 

真面目(めんぼ)な顔して(ない)言い出(ゆだ)すのか(とも)えば…人を捕まえて鬼畜外道かホ〇野郎か不能なのかだとぁ、脳味噌(のみそ)捏ねて(こねって)練り直して(ねなおっせて)やろうかエーリカどんよぉ…!」

「あ痛だだだだッ!!分かったから、悪かったって!ていうか何言ってんのか分かんないよ!」

「おっといかん、つい素が出てしもたか」

 青筋立てて共通語にできない方言丸出しで喋りだした昴であったが、エーリカのギブアップで冷静になってアイアンクローから解放した。

 

「はぁぁぁ…潰れるかと思ったよ…。トゥルーデ、私の頭変形して無いよね?」

「大丈夫だ、なんともない。…まったく、少し見直したと思えばあの聞き方は無いだろうに」

「…岩城、今の言葉…鹿児島弁か?お前鹿児島出身だったのか」

「坂本さん、知ってるんですか?」

「ああ、訓練生だったころに九州から指導に来た師範代の方が居てな。その方の喋り方が独特だったんでな」

「あ~…生まれは富山なんすが、知り合いに鹿児島の人が居ましてね。その人との付き合いが長かったんで喋りが移っちゃいまして、興奮するとつい訛りが出てしまうんですよ」

「そうなのか…それにしてはやけに流暢な言葉遣いだったが」

 ちなみにその知り合いとは他でもない前世の自分である。

 

「それよかエーリカ、お前いきなり何を聞きだすんだ。割と真面目にムカついたぞ?」

「だって…シャーリーに興味ないとか、普通の男の反応じゃないじゃん。そんなのロリコンかゲイかEDかにしか思えないって」

「短絡的が過ぎるだろう…。というか、そもそも俺は別にシャーリーを意識してない訳でも、興味がない訳でもない。俺の使い魔…バルファルクの性質上、そういう反応が表に出てこないだけなんだっつの」

「え…?それってどういう…」

「も~!いい加減お腹減ったよ~!早く食べようよ~!」

「…皆さん、お気持ちは分かりますが食事が冷めてしまいますわ。話は食事の後にしたらどうですの?」

「そうね…。せっかく宮藤さんたちが作ってくれたご馳走ですし、先に食べてしまいましょう」

「は~い」

 

 

 

 その後、昴がバルファルクが『無性生物』であり、その影響で性的欲求が減退して生物として最低限の反応しかしなくなっているということを説明したことで、昴の諸々の疑惑は払拭されたのであった。

 

 

 

(…さっきのスバルの喋り方、どこかで聞いたような…?……まいっか、天丼うまいし!)

 そしてシャーリーの疑念は天丼の美味しさに埋もれることとなったのだった。




オリ主は前世では鹿児島生まれ鹿児島育ち、ついでに祖父が剣術道場の師範だったという根っからの薩摩隼人です。なのであのチェストはにわかではなくガチのチェストです。…刀キャラはもっさんと被る?その辺は…なんとかなるやろ
あと、鹿児島弁はにわかですんで間違ってても許してね

ではまた次回。…カニ解禁で仕事量が増えまくって連日死にそうです。なんであんな面倒な生き物が旨いんや…
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