天翔ける凶星と黒い悪魔   作:マイン

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RtB6話視聴…俺達のストパンって美しくないか?(感涙)

RtB7話視聴…俺達のストパンって醜くないか?(お目々ぐるぐる)

RtB8話視聴…やっぱり俺達のストパンって美しいわ(確信)

落差が…落差が酷い(褒め言葉)。前シリーズ通して屈指の出来である6話と8話で全シリーズ通して最狂の7話をサンドイッチするとか半端なかったですね。宮藤の淫獣っぷりはもはや公式が認めざるを得ないことに…発進します!の爪痕は大きかった。…いや、原作がアレだったから発進しますがああなったのか…どっちが元ネタかわかんねえなこれ

ではどうぞ。今回捕捉しまくってたら長くなってしまったのでダレるかも…


女帝からの贈り物

 とある日、ブリタニア連邦北部領土の屋敷にてエリザベート・タウンゼント公爵は今日も執務に励んでいた。つい先日に昴から頼まれて撃墜したネウロイの一件は軍の戦果として挿げ替えられてしまったが、それを不憫に思ったチャーチルから解体予定であった軍の巡視船を漁船として譲ってもらったので、それを中心とした大規模な漁船団の設立を計画し今現在その準備に追われているのである。

 

コンコン

「お嬢様、よろしいでしょうか?」

「…どうしたの?」

 そんな時、エリザベートの書斎のドアをかつて自分の教育係であったメイド長がノックする。

 

「お忙しいところ申し訳ありません。お嬢様に来客が見えられているのですが…」

「…?来客のアポイントメントは入っていない筈よ。どこの誰なの?」

「…お嬢様がよくご存じのお方です。わざわざ休暇を取って来られたそうで」

「……そう。追い返しなさい」

「は…ですが」

 

ガチャ!

「…もう入って来ちゃってるんだな~、これが」

 そっけない態度のエリザベートの意に反してずけずけと書斎に入ってきたのは、ブリタニアの同盟国であるファラウェイランド空軍の軍服を羽織り、ハンチングのような帽子を被った亜麻色の髪をした女性である。きっちりと着込んだエリザベートとは対照的に軍服の下はシャツ一枚であるためにスタイル抜群の肢体がはっきりとわかり、軽薄ともとれる軽い口調はまるで正反対と言ってもいい。

 彼女の名は、『ウィルマ・ビショップ』。ブリタニア本島南岸にあるワイト島の分遣隊に所属するウィッチであり、501のリーネの姉でもある人物であった。

 

「ウィルマ…何しに来たの?来るのならあらかじめアポイントメントを入れなさい。私は忙しいんです、501のお零れしか仕事のない貴女と違って」

「水臭いこと言うなよ~エリーゼ。私たち親友でしょ?親友同士が会うのにアポもなにも必要ないでしょ?」

「貴女と友人になった覚えはありません。貴女と私はただの腐れ縁…それだけよ」

「ぶ~…」

「まあまあ。…ウィルマ様、よくいらっしゃいました。今お茶を用意しますのでお掛けになってください」

「ありがとー!やっぱりメイド長だけは分かってるよね~」

 

 彼女たちの関係はエリザベートやウィルマが生まれる前にまで遡る。今から30年ほど前、欧州を中心に勃発した第一次ネウロイ大戦においてトップエースとして活躍したのがエリザベートの母であるマーガレット第二王女と、ウィルマたちの母であるミニー・ビショップであった。当時はウィッチの数も少なかったこともあって2人は意気投合して親友となり、プライベートでも大商家であるビショップ家が経営する店にショッピングに訪れるなど公私ともに深い付き合いを重ねていた。互いに上がりを迎えて退役し、家庭を持ってからも家族ぐるみの付き合いは続き、エリザベートとウィルマも幼少期にちょくちょく会っており、エリザベートのことを愛称の『エリーゼ』と呼ぶくらいには仲が良かった。

 …しかし、エリザベートの両親の没後は第二王女の死という混乱もあって中々会うことが出来なくなり、ウィルマがブリタニア空軍の煩わしさを嫌ってファラウェイランド空軍に入隊するため新大陸に向かってしまったので増々距離は離れ、再会できたのは数年前…ダイナモ作戦の際に欧州各地からの大量の避難民の受け入れ先としてエリザベートが名乗りを上げたことがきっかけであった。

 

「どうぞ、ウィルマ様。…それと、これは近々ここの名物として売り出す予定のビルベリーのタルトです。ご試食なさってください」

「やあどうも。…へぇ、こんなものを作るようになったんだ。手のひらサイズで可愛いし美味しそうじゃん!」

「今のところ我が領地は漁業による収益が基本になっているから、バランスをとる為にとスオムスから苗を仕入れて試験栽培してみたのよ。思った以上に気候が合っていたのか豊作だったから、アレの置いていったレシピを基に家の料理人が開発したの」

「ああ、話に聞いたウィザードの彼?リーネからの手紙に書いてあったけど、今は501に居るらしいね……ん、美味ーい!甘酸っぱくて紅茶によく合うよ。惜しいなぁ~…もうちょっとロンドンと近かったら私の実家でも取り扱いたかったんだけど…」

「心配は無用よ。私の魔法力で冷凍して保冷梱包するから、どこだろうと流通可能よ。近いうちにここの支店を通して貴女の実家にサンプルを送るから、一応伝えておいて頂戴」

「はいはい。…しっかし便利よねエリーゼの使い魔って。肉でも魚でも簡単にカチンコチンにできるから、遠い土地にでも販路を広げられるんだもんね~。…なあ、また鱗ちょっとだけ分けてくれない?」

「嫌よ」

「ちぇ~…」

 

 今でこそ気安い会話をしているが、再会した当初はウィルマの方が物怖じしていた。友人でありながら、エリザベートが一番苦しい時に会いに行くことすらままならず、何の助けにもなれなかったことを申し訳なく思っていたからだ。実際エリザベートも、ノウハウのない領地経営と制御できないイヴェルカーナの力に板挟みになっている頃に、夜中に一人涙を流しながらビショップ夫妻やウィルマに助けを求めたこともあった。

 しかし、昴の協力によってイヴェルカーナの力をコントロールできるようになってからは屋敷の外のことにも目を向けられるようになり、自分の母の死がブリタニアにとってどれほど大事なことであったということを理解し、一般市民でしかないビショップ家にはそう簡単に自分に関わることが出来なかったことも分かったので、ウィルマが思っているほどに気にしてはいなかった。

 ダイナモ作戦の避難民の移住の際、軍の特使として屋敷に赴いたウィルマは再会の挨拶もそこそこに手助けできなかったことを詫びたが、エリザベートは澄ました顔で謝ることではないと諭し、逆に今まで自分たちのことを想っていてくれたことに感謝し、めったに見せない笑顔を送った。普段の態度こそそっけないが、エリザベートはウィルマに対し確かな信頼を抱いていることは確かなことなのである。

 

「…それで、本当に今日は何をしに来たの?」

「ん、ああ…もう501に『例のヤツ』送ったんでしょ?名義を貸してやった立場としては、その後の進捗が気になるってもんでしょ?」

「そのことね…別に、予定通りよ。貴女と貴女の実家が名義と搬送ルートを貸してくれたおかげで、あの髭も私からのものだとは気づかなかったみたいよ。貴女の妹への仕送り…ということで、もうそろそろ501に届いている頃ね」

「そっか、なら良かった!いやぁ私もさぁ、何を送るのかと思えばまさかあんなもんを送り付けるとは思ってなかったから、正直怪しまれるんじゃないかな~…って思ってたのよ」

「むしろ逆よ。下手に当り障りのないものよりは、一目見てなんなのか分かるくらい目を引くものの方がバレにくいものよ。ちょうど501にはあの烏含めて扶桑人が3人いるらしいから、おまけの方もうまく使ってくれるわ」

「アレがおまけねぇ…。流石公爵様、発想がぶっ飛んでるね。あのザイン・ウィトゲンシュタイン大尉が一目置くだけのことはあるねぇ」

「…茶化さないで頂戴。それはそうと、貴女も貴女でもうすぐウィッチとしては上がりなんじゃないの?退役後のことは考えているの?」

「…ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました!実は私…ダーリンが出来ましたー!!…な~んちゃって…」

 

 

「……は?」

 

 

 その日、タウンゼント領全土の気温がほんの一瞬氷点下に下がったとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、501では監視班のレーダーにも昴の感知にもネウロイの反応が無かったこともあって、宮藤とリーネの訓練の総仕上げの一環として模擬戦が行われていた。

 

 

ガガガガガッ!!

ドンッ!ドンッ!

「どうしたどうしたぁ!かすりもしてないぞ、せめてシールドくらい張らせてみろ!」

「そ、そんなこと言ったってぇ…!」

「速過ぎて…全然狙いが定まらないッ…!」

 先日の例もあって高速型ネウロイと遭遇した際の仮想敵として選ばれた昴が縦横無尽に2人の周囲を飛び回る。宮藤もリーネもこれまでの訓練で培ったことを活かしてペイント弾を撃ちまくるが、その総てが虚しく空を切る結果となっていた。

 

「…流石にあの2人に岩城の相手は少し早過ぎたか」

「色んな意味でね。時期的にも、スピード的にもね」

 その振り回されっぷりに、地上で立会人を務めていた坂本とエーリカも肩を竦める。やがて2人が同時に弾切れを迎えた隙を突いて背後から一気に距離を詰めた昴が2人の手から得物を掠め取った。

 

「あっ!?」

「はい、チェック・メイト。残念だったな、2人とも」

「うう…また手も足も出ませんでした…」

 奪われた武器の銃口を向けられたことで、今回の模擬戦も昴の完勝という形で終わりを告げた。がっくりと項垂れたまま降りてきた2人に坂本が声をかける。

 

「残念だったなお前たち。今回の反省は…自分でも分かっているな?」

「はい…。私は、リーネちゃんの射線上に誘導しようとしたんですけど、途中でパニックになってめくら撃ちになってしまいました…」

「私は昴さんの進行ルートの軌道を予測しきれませんでした…」

「うむ。高速型のネウロイは、一般的なストライカーユニットの最高速度と同程度か、それ以上のスピードで飛行する。更に奴らはどういう原理で飛行しているのか分からんが、曲芸紛いの機動力を持つ個体もいる。そいつらを確実に仕留めるためには、確実な誘導と狙撃、そしてなにより動きを観察することで軌道を予測する勘がモノを言う。シャーリーのようにドッグファイトで競り合えたり、エイラのように動きを予知出来るならともかく、お前たちのようなひよっこは連携してネウロイに立ち向かうことを心掛けろ。1人で出来ないことも、2人なら、3人なら出来るようになる!仲間との信頼こそがウィッチの可能性なのだと心に刻むように!」

「「はい!」」

「…そういうこと言われると8年間ぼっち(ソロ)で戦ってきた俺は肩身が狭いんですが」

「む?まあ…それはそれだ!1人で出来ることが多いに越したことはないからな。お前はお前で頑張れ、ハッハッハ!」

「…少佐って誤魔化すときワンパターンだよね」

「それな」

 などと言いながら訓練を終えて基地に戻ろうとすると、基地の方からミーナがこちらに向かってきていた。

 

「ああ、居た居た。坂本少佐とリーネさん、ちょっといいかしら?」

「ミーナ?どうしたんだ?」

「二人に荷物が届いているの。ちょっと格納庫の方まで来てくれるかしら?」

「あ、はい!」

「私に荷物?土方からは何も聞いておらんし……もしやアレか?おお、やっと出来たのか!」

「…坂本さんなんだか嬉しそうですね」

「どったんだろ?」

 

 

 格納庫に来ると、そこには1メートルほどの長方形の木箱と横幅3メートルはある大きな金属製のコンテナが鎮座されており、皆が興味津々の様子でそれを取り囲んでいた。

 

「あ、少佐にリーネ!荷物届いてるよ。リーネの方はやたらでっかいな!」

「うわぁ、本当だ。リーネちゃん、中身ってなんなの?」

「…分からないの。そもそも何も聞いてないし…」

「一応、ここに送られるものは全部軍の検閲が入るから、危険なものではない筈なのだけれど」

「ふーん…ところで、少佐の方は何なの?」

「ああ。送り主は…やはりあの職人か!」

「職人って…もしかして、例の岩城君から貰ったっていう宝石を預けたブリタニアの装飾品のお店?」

「何だ、少佐そんなことしてたんすか?」

「まあな。折角の代物だ、相応しい形に仕上げて貰おうと思って…な!」

 坂本がワクワクしながら木箱を開けると、ぎっしりと詰まった緩衝材の中に布にくるまれた何かが入っており、その布を剥がすと中身が明らかになる。

 

「…おお!これは…」

「へぇ…」

 中にあったのは、坂本の扶桑刀に合わせて作られた鞘飾りと鍔であった。鞘飾りは鞘全体をがっちりと覆うような形状をしており、吹き荒れる烈風をそのまま形にしたような躍動感すら感じられる造形をしていた。鍔の方は扶桑刀の特徴を残しつつも西洋剣のような打撃武器としての役割も備えたやや重厚なものとなっており、その双方には坂本のパーソナルマークである眼帯をしたドーベルマンの絵柄が彫り込まれ、メインである赤色の龍氣玉はそれぞれの大きさに合わせたサイズに調整されて填め込まれていた。

 

「おー!カッコいいじゃん、良い趣味してんなその職人さん!」

「ああ、思った以上に悪くない仕上がりだ。私の注文もしっかりと叶えられている、これは良いものだ」

「カタナのことはよく分かりませんけど…凄く綺麗ですね。赤い宝石もとても似合ってます」

「少佐にとてもお似合いだと思いますわ!」

 質実剛健なその仕上がりに坂本は元より、シャーリーやサーニャなど造形や芸術に理解のある面々は感心していた。

 

「流石は本職さん、あの玉っころを上手い事使いますね」

「ああ、これでネウロイどもををたたっ切るのが楽しみだ。…それで、リーネの方は中身はなんなんだ?」

「あ、はい。えーと送り主は……わぁ!姉さんからです!」

「お姉さん…もしかして、ワイト島分遣隊にいるウィルマ軍曹から?」

「はい!ウィルマ姉さんからです」

「へぇ、リーネちゃんってお姉さんがいるんだ」

「そうだよ。うちは8人兄弟で、ウィルマ姉さんが一番上で、私が4番目なの」

「随分賑やかな家族だな…」

「…でも、一体なんなのかな?この間の手紙には何も書いてなかったんですけど…」

 嬉しそうに家族のことを話しながらリーネがコンテナを開けると、中には一回り小さな木箱が入っていた。

 

「ありゃ、また箱だね。随分しっかりと梱包してあるんだね」

「…うじゅ、なんかこの箱ヒンヤリする。氷でも入ってるのかな?」

 箱の中がまた箱であることに首を傾げつつリーネが開けようとするが、箱の蓋には釘が乱雑に打ち付けられており中々開かないでいた。

 

「んんッ…!はぁ…ダメです、全然開きません…」

「やれやれ検閲官め、仕事が雑過ぎるぞ全く」

「…しゃあない、強引にこじ開けましょ。バルクホルン、手伝ってくれ」

「ああ、任せろ!」

 業を煮やした昴とバルクホルンがリーネに代わって蓋に手をかける。

 

「「せー…のッ!!おりゃあああッ!!」」

 

バキバキ…ガキンッ!

 501きっての力自慢2人の手に掛かれば流石にひとたまりもなく、木箱は半ば半壊しつつもとうとう口を開いたのだった。

 

「ふう、開いた。さて、中身は……って、おお!?」

「こ、これって…」

 

 木箱の中に入っていたもの。氷のような冷気を放つ麻袋に覆われていたのは、真っ白に凍り付いた宮藤程の大きさの丸々と太った巨大な魚であった。

 

「デカッ!何これ、魚!?」

「こいつは…マグロだ!しかもこの大きさとフォルムからして…クロマグロ、所謂本マグロって奴だ」

「これマグロですか!?こんなおっきいの初めて見ました…」

「…ていうかこの魚、カチカチに凍ってるゾ。スオムスで真冬にこんな風になって落ちてた魚見たことあるゾ」

「でも今夏だよ?真夏にこんなカッチンコッチンに出来るの?」

「…あ、手紙がついていたので読んでみますね」

 奇抜過ぎるその中身に皆が首を傾げる中、リーネがコンテナに添えられていた手紙を読み上げ始める。

 

「『リーネへ。部隊に馴染んでこれていると聞いてお姉ちゃんはほっとしたよ。なんでも扶桑人の友達が出来たと聞いたから、扶桑人の大好きなマグロをプレゼントするね。親友からの貰いものだから気にせず部隊のみんなで食べてちょーだい。扶桑名物の『えのころ飯』にするといいってさ。それじゃあ、偶には家に帰ってパパとママを安心させてあげなよ ウィルマより』…とのことです」

「貰いものって…それはまた太っ腹な友人がいるんだな。これほどのマグロを買おうと思うと相当な高値がつくぞ」

「えのころ飯…?聞いたことが無いが、どんな料理なんだ?」

「えっと…それが、私も聞いたことが無くて…」

「宮藤も知らないの?じゃあスバルは知ってる……スバル?」

 エーリカが顔を向けると、昴が呆れたような笑みを浮かべていた。

 

「くっくっく…そういうことか。リーネ、お前には悪いがどうやらその荷物は俺宛みたいだ」

「え?でも、私の姉さんからなんですけど…」

「それはおそらくカムフラージュだ。その手紙に書いてあるマグロをくれたっていうリーネのお姉さんの友人とやらが、自分から俺に送ったものだと悟られないようリーネのお姉さんの名義を借りたんだろう。…この欧州で、えのころ飯の意味を知ってる奴なんざアイツ以外には居ないだろうからな」

「…で、結局なんなんダヨ、そのえのころ飯って?」

「えのころ飯ってのは大昔に鹿児島の一部で食べられていた郷土料理でな。ちょいと奇抜な料理だから前に話のネタにした時のことを憶えていたんだろうよ」

「どんな料理なんですか?」

 

「犬の腹掻っ捌いて内臓(モツ)抜いたところに飯を詰めて丸焼きにした料理」

「………へ?」

「犬の腹掻っ捌いて内臓抜いたところに飯を詰めて丸焼きにした料理」

 

「………」

 一同、ドン引きである。犬系の使い魔持ちに至ってはお腹を隠すようにしてガードしている始末である。

 

「……いやいや、大昔の話だかんな!今はそんなことしてるやつ居ないから!そもそも、子豚の丸焼きとかローストチキンとか似たような料理があるんだから別に異常な訳じゃないだろ!?」

「いや…流石に犬はちょっと、ねぇ…」

「…まさか最近おやつを作ってくれるのは太らせて食べる為だったんじゃ…!?」

「昨日のホットケーキはその為だったの!?美味しかったのに!」

「違ぇよ!むしろ食い過ぎだって注意してんのに3枚も食った奴が言うな!…ええい、話が逸れた。俺が言いたいのは料理法じゃなくて、えのころ飯がどういうものかっていう意味の方だよ」

「意味?」

「こんな立派なマグロでえのころ飯をやるなんざ、贅沢を通り越して勿体なさ過ぎる。それぐらいはアイツにだって分かるだろう。だからその文章は偽装…大事なのは、えのころ飯が『何かを詰めた料理』だっていうことだ」

「…もしかして、このマグロのお腹に?」

「そういうこった…よっと!」

 昴がマグロのエラの部分から中に手を突っ込み探っていると、分厚いナイロンの包みを引っ張り出した。

 

「どうやらこっちのが本命みたいだ。このマグロはただの包装紙だったって訳だな」

「こ、これが包装紙…どんな神経してりゃそんな発想が出来るんだよ…?」

「…それで、何が入ってるんだ?」

「どらどら…お、こっちも手紙だな。それになにかの文章…というより資料か?とりあえず手紙を読むぜ」

 

 

『御機嫌よう、扶桑の旅烏。美女ばかりの501の居心地はどんなものかしら?まあ、貴方のことだからいつも通りでしょうけれど。…貴方が501に、あのトレヴァー・マロニーの管轄下に入ったと聞いてどうしてやろうかと思いましたが、聞くところによれば501はあの髭から随分と冷や飯を食わされているご様子。ですので、貴方を仕置きするより501を手助けするほうがあの髭の嫌がらせになると考えたので、ビショップ家の方々の協力を得てこのような形で贈り物をさせてもらいました。…リネットさんには、ぬか喜びをさせてしまったでしょうから申し訳なかったと伝えておいてください。ウィルマには事情を説明してあるので、手紙自体は本人の物です。…添付しておいた資料は、ヴィルケ中佐に渡しておきなさい。どう使うかは、彼女に一任しますので。カムフラージュのマグロと保冷袋は好きにしなさい。貴方ならいくらでも使い道はあるでしょう。では…お膳立てはしてあげるから精々好きに暴れてきなさい。 ブリタニア連邦公爵 エリザベート・タウンゼント』

 

 

「…タウンゼント公爵!?」

 手紙を読み終えるなり、リーネが差出人の名に驚愕の声を上げる。

 

「リーネちゃん知ってる人?」

「知ってる人も何も…ブリタニアで一番有名な貴族の方だよ!今の女王陛下の妹の娘…つまり陛下の姪に当たる方で、ブリタニア本土の北部地方で一番広い領土を管轄する凄く偉い方なの!私のお母さんやウィルマ姉さんとは昔からの知り合いらしくて、私も小さい頃に会ったことがあるみたいなんだけど…あんまり憶えていなくって。でも、凄く優しい方だったってことは憶えてるの」

「…私も聞いたことがあるわ。ダイナモ作戦の時にブリタニアに移送された大勢の避難民の4分の1をご自身の領地で受け持って、住居から仕事から何から何までを手配したっていう凄腕らしいわね」

「私も知っていますわ!欧州で爵位を持つ者でタウンゼント公爵の名を知らない者なんてモグリ扱いされるくらいですのよ!」

 リーネは当然ながら、家格の高い要人と接する機会の多いミーナや自身がガリアの貴族であるペリーヌにとって、タウンゼントの名は衝撃的であった。ブリタニアという国家における影響力であれば、軍務以外であれば自分たちの上官であると同時に目の上のたん瘤でもあるトレヴァー・マロニー以上の権力を有する存在なのだから。

 

「…でも、その公爵様がなんでスバルにこんなものを送るのさ?お前今までずっと根無し草だったんじゃないの?」

「まあ基本はな。ただ、エリーゼ…エリザベートとは5年くらい前に出会ったんだが、それ以降欧州で色々と動き回る時にはアイツの領地で休ませて貰ってたんだよ。まあ…対価として色々手伝わされたりもしたんだがな」

「しかし…一体どういう接点があったんだ?年が近いとはいえブリタニアの公爵とそう簡単に知り合いになれるものではないと思うが…」

 坂本の尤もな疑問に、昴は少し考えた後に話だす。

 

「……ま、ここまでしてるんだ、もう言ってもいいかな。実を言うとな、アイツと俺には共通点があるんだ。それがアイツと知り合いになった理由なんだよ」

「共通点?」

 

「エリーゼも、俺と同じ『ドラゴン・ウィッチ』…ドラゴンを使い魔にしたウィッチなんだよ」

『………え、ええ~ッ!!?』

 衝撃的な事実に、格納庫にウィッチたちの叫び声が響き渡る。

 

「た、タウンゼント公爵がウィッチ!?しかも岩城さんと同じ…ドラゴンが使い魔なんですか!?」

「ああ。アイツの使い魔はイヴェルカーナ…氷の力を操る古龍だ。マグマすら凍らせるとんでもない冷気が武器で、アイツがその気になればブリタニア本土をスオムス並みの極寒の地に変える事だって出来ちまう。エリーゼはその力を使って、一人で自分の領地を守ってるのさ。ネウロイからも、自分を嫌うブリタニアの他の貴族や政治家連中からもな」

「じゃあ、このマグロがカチコチなのもそのイヴェルカーナっていうドラゴンの力で…?」

「ああ。それだけじゃなくて、そのマグロと一緒に入ってる袋の中にはアイツの鱗が入ってるんだが、そいつにはイヴェルカーナの冷気が封じ込められていて、バケツ一杯の水に落とせばあっという間に氷にしてしまうくらいだ。冷蔵庫に突っ込んどけば、電源入れなくてもバッチリ冷えるぞ」

「…またとんでもないことになったな。お前のような奴が他にもいるとは…しかもブリタニアの大貴族とはな。ということは、先日お前がネウロイの撃退を依頼したウィッチというのはタウンゼント公爵のことだったのか…」

「ええ、まあ。北から来るネウロイに関しては北部領主であるエリーゼにとっても他人事ではないですし、ちょっと手を貸してもらったんですぁ。勅命が出たのも、エリーゼが伯母の女王陛下に伝えたからだ思うぜ」

「…女王陛下はすべてご存じということね。なんというか…胃が痛くなる話だわ」

 只でさえ定期報告の際にチャーチルとマロニーというブリタニア軍部のツートップとの腹の探り合いで鬱屈させられているミーナにとって、協力者とはいえこの上王族でもあるブリタニアきっての大貴族まで関わってくるというのはプレッシャー以外の何物でも無かった。

 

「けどさ、その手紙にも書いてあるけど、その公爵様が私たちの味方になってくれるんだろ?だったら良いことじゃんか。ただでさえこっちはあのウィッチ嫌いの上官様のせいでカツカツなんだし、味方が多いに越したことはないだろ?」

「そうかもしれないけれど……ああ、そうだわ!タウンゼント公爵との連絡は岩城君にお願いしてもいいかしら?私よりも貴方の方がスムーズに交渉出来るでしょう?」

「おおう、キラーパスぶん投げて来たっすね…。まあ確かに、気心知れた仲っちゃあそうですしね…分かりました。エリーゼになんか用があるときは俺が掛け合ってみますよ」

「そう?ならお任せするわね!ああ…誰かに丸投げできるってこんなに気が楽なことなのね」

「…すまん、ミーナ」

 本来ならミーナに次ぐ階級として書類仕事や上層部との駆け引きにも応じる必要がある坂本ではあるが、本人の気質と不器用さ故に大部分をミーナに任せきりにしてしまっているが故にぐうの音も出ない。屈託の無い笑顔を浮かべるミーナに、坂本はポツリと謝罪を漏らす。

 

「…ふ~ん、気心知れた仲なんだ。随分仲よさげじゃんか、モテモテスバルさんよ~?ん~?」

「…何臍曲げてんだよ?」

「べっつに~?ふ~ん、ふ~~~ん?」

「あらあら…枕が恋人だと思っていたハルトマンさんが珍しいことですわね?」

「そ、そんなんじゃないし!大体それはむしろサーにゃんの方でしょ!」

「サーニャを変な目で見るんじゃネー!!サーニャの恋人は…わ、わわ…わたッ…!」

「エイラ?私がどうかしたの?」

「…な、なんでもない…んダナ…」

男子中学生(ちゅーぼう)かお前は。…ああそうだ、これにも書いてありましたけどこの資料は中佐にお任せしますね。アイツが態々ここまでして送ってくるくらいですし、なんかの役には立つものでしょうから」

「ええ、分かったわ」

「…ところで、このマグロはどうしましょう?」

「うーむ…とりあえず海水氷を作って解凍してから…寿司でも握るか。基地の職員全員が食う分は十分にあるだろう」

「スシ!スシが食べられるの?」

「なんだ岩城、お前寿司まで握れるのか?」

「手前味噌ですけどね。…ああ、でも米と酢はあってもワサビが無えか。レフォール(西洋ワサビ)で代用するしかねえか」

「じゃあ私酢飯いっぱい炊きますね!お寿司なんて久しぶりだなぁ~」

 

 

 その後、宮藤も手伝ってヘトヘトになりながらも数百貫にも及ぶ寿司を握り、職員全員にマグロの寿司が振る舞われた。生魚を食べるという文化に欧州人たちは最初は戸惑ったが、昴が前世で聞きかじった未来の魚食技術により既存のものより遙かに高品質な仕上がりとなった寿司は大好評で、巨大なマグロはその大半が皆の胃袋に収まることとなったのだった。




最近ネタの勉強のためにストーム、ノーブル、サイレントの小説を読んでいますが、それぞれ内容に個性があるので面白いですね。ただ…これかなり長くなるわ。どんだけネタ拾えるかな~?

ではまた次回
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