そして次回はいよいよ決戦でしょうか。タイトルからして静夏が鍵なのは間違いないでしょうが、ついに彼女の固有魔法が覚醒するのか…楽しみなところですね。…ここの静夏は原作とはちょっと変化をつけるつもりなので、その辺も踏まえて待ち遠しいです。
今回は戦闘無しでちょっと短めです。ではどうぞ
エリザベートから送られたマグロが骨すら出汁を取られて文字通りの出汁ガラとなった頃。普段通りの日常を過ごす皆とは裏腹に、執務室の坂本とミーナは何時になく神妙な面持ちで机の上の資料…エリザベートがカムフラージュしてまで送ってきたものに視線を落としていた。
「…この資料に書かれているのは、本当のことなんだな?」
「ええ…。私の権限で立証することは出来ないけれど、この内容に関しては信憑性は十分にあるわ。それに、あのタウンゼント公爵がここまで手をまわして根拠のない出鱈目を送ってくるとは思えないもの」
「だが…しかし、信じたくは無いものだが…」
エリザベートから送られた資料。そこには、ミーナですら初耳のマロニーの『ある疑惑』に関する情報が記されていた。その内容は信じられないものであったが、マロニー派に忍ばせているというスパイから得たという情報は関わっている人物の名や施設の位置は正確なものであり、それが事実であることを裏付けるには十分な根拠があった。
その内容は、『マロニーが鹵獲したネウロイのコアを研究して兵器らしきものを建造しようとしている』…というものであった。
「…確かに過去にも何度かコアを破壊しきれず完全に消滅したのを確認できないまま撃墜したネウロイはいた。だがそれらの大抵は奴らの苦手とする海に墜ちていった為に問題ではなかったし、地上であっても軍による掃討で確実に消滅されていた筈だった。…まさか、その軍がネウロイのコアを破壊せずに回収し、あまつさえそれを使ってよからぬことを企んでいたとは…ッ!」
「この資料によれば、その研究の存在はマロニー大将以外の上層部は元より、チャーチル閣下や女王陛下にも極秘にされているようね。…まあ、当然よね。いくらコアだけとはいえネウロイを使った兵器の開発なんて危険すぎるわ。露見されれば、いくらマロニー大将といえど軍法会議ものでしょうからね…」
「……理由は、私たちへの当てつけ…か?」
「でしょうね…。もちろん、人類の存亡を案じてというのが大前提ではある…と、信じたいけれどね」
この報せには、直情的な坂本だけでなくミーナですらもショックを隠し切れない。彼女たちは軍人としての責務だけでなく、ネウロイに大切なものを奪われた土地を取り戻すため、何より故郷を追われ大切な人たちを失った人々の希望となるために集い、命がけの戦場に身を投じている。
…そんな自分たちの努力の裏で、同じ志を抱いているはずの上官がウィッチへの嫌悪感だけで怨敵であるネウロイを利用した兵器を作り出そうとしているなど、信じたくはなかった。まして資料によればその資金はブリタニア空軍の予算…正確には本来501に割り振られるはずだった金がつぎ込まれているという。この事実を知れば隊員たちやブリタニア政府は当然のこと、自分たちから集めた税金が危険な実験に使われていることを知らされたブリタニア市民からの反発は必至だろう。
「…ミーナ!すぐにこの事実を公表すべきだ!私はともかく、最前線で命を懸けて戦う皆をここまでコケにされるのは我慢ならんッ!今すぐマロニー大将を…奴を引きずり降ろさなければ、死んでいった者たちに合わせる顔がない!」
「落ち着いて美緒。…今はまだ駄目よ。この程度の証拠だけじゃ、間違いなくしらを切りとおされるわ。もっと明確な、言い逃れのしようのない証拠がなければ、私たちの立場を更に危うくするだけよ。…現にタウンゼント公爵はこれだけの情報を得ていても行動を起こしていないのよ」
「ぐぅっ…」
「それに…方法はともかく、ネウロイに対抗するための兵器を作っているということは確かなことよ。どんな思惑があろうと、それが人類にとって有益なものであるのならいくらでも詭弁は出来るわ。以前に貴女が宮藤さんに言ったように、人類の為であればどんな無法も許容される場合がある…それが軍隊という組織なのよ」
「だがっ…よりによってネウロイだぞ!そんなものを使った兵器など上手くいくはずがない!仮に制御できたとして完成にどれだけかかるか…その間にどれだけのウィッチが傷つき、飛べなくなっていくか…!私とて、悠長にしている暇など…」
「分かっているわ!私だって、分かっているのよ…!あれだけ私たちに無体を押し付けておいて、それをダシにしてこんなもののために血税を使っているだなんて…許せるはずがないわ…!」
「…すまん、熱くなりすぎた」
「気にしないで、私も同じ気持ちなのだから。…ともかく、今は任務をこなしながらマロニー大将側の動きを探るしかないわ。タウンゼント公爵が私にこの情報を託したのも、最前線にいる私たちにしか知りえない何かがあるのだと思ったからの筈だわ。その期待に応えられるよう、全力を尽くしましょう」
「ああ、当然だ…!」
マロニーの企みを阻止するためにも、501の存在を確固たるものにすること。そしてその中で必ず尻尾を掴んで見せることを誓い、ミーナと坂本は互いに頷き合った。
その一方で、頭を抱えているのは501側だけではなかった。目下彼女たちの目の敵にされているマロニーもまた、思い通りにならない現実に眉を顰めていた。
「チッ…あの小娘どもめ、予想以上に粘りおって…。本来なら今頃もう少し締め上げてやれる筈が、あれだけ削減した予算でここまでの戦果を挙げられては付け入る隙が無いわ…。これでは素人2人を放り込んでやった意味がないではないか…!」
501が創設された当初、マロニーは空軍大将としてお目付け役となったが、それは軍務としてだけでなく各国のエースウィッチが所属することでそれぞれの母国より寄贈される物資や軍資金を管理できる立場が目的でもあった。ネウロイ大戦の初期から第一線で戦い続けてきたマロニーからすれば、自分が下士官だった頃と同じぐらいの年齢で最前線に赴き、華々しい活躍を遂げるウィッチの存在は疎ましい以外の何物でもない。これまでの戦線を維持してきたのは自分たちの戦いの成果であるのに、それを年端もいかない少女たちに委ねるというのは、生粋の軍人であるマロニーにとって看過しがたいことであった。
無論当初は妨害してでも…とまで考えてたわけではない。しかし実力は確かではあるが自分からすればとても軍人とは思えないウィッチたち、自分の半分も生きていない癖に真っ向から反発してくるミーナ…そして何より、自国だけでなく各国から供与される高々十数人程度の部隊には潤沢過ぎる予算が、マロニーのプライドを間違った方向へと向かわせた。今では501の戦果のみならず非戦闘時の活動にまで冷や水をかけ、何かにつけてミーナへの小言や経費の削減を押し付けるにまで歪んでしまった。そうして巻き上げた予算は空軍の戦力増強に用い…今では、秘密裏に行っている実験にもつぎ込まれていた。
「くそっ…忌々しいのはあのウィザードの小僧だッ!ドラゴンだかなんだか知らんが、たかがトカゲもどきが余計なことばかりしてくれる…!」
マロニーの手元にある資料…ここ最近の501の活動報告には、歴戦のウィッチたちに引けを取らない戦果を挙げる昴のことも記されていた。特にマロニーの気に障ったのは、昴の戦闘における損耗率である。如何にエースウィッチといえど、一度出撃すればストライカーの整備から弾薬の消費、時には銃器の損失によりある程度の損耗が出る。しかし…昴は基本的にほぼ身一つで出撃し、飛行から攻撃まで全てを自身の能力で賄う。経費らしい経費といえば食費程度であるが、これも昴自身が宮藤たちと協力して無駄なく食材を使うよう工夫し始めたためにむしろ削減されており、浮いたお金が昴の給料となっている。
結果的に、501はタダ同然でエース級ウィッチを一人抱え込んだようなものなのだ。それはガリア解放を目的とするブリタニア政府や連合軍にとっては喜ばしいことではあるが…その功績をウィッチではなく自身の手によって成し遂げたいマロニーにとっては邪魔者でしかない。
「これ以上の予算の削減は難しいか…。下手に難癖をつければむしろ上げるように閣下から言われかねん上に、あのタウンゼントの小娘に口実を与えることになる。ここは触れずにおくのが得策か…ええい、腹立たしいッ!!」
先日のネウロイの一件でエリザベートの戦果を挿げ替えたことについて、本人が気にしていないということで罰則こそ無かったが女王から『やり過ぎるな』という忠告を受けたことが、マロニーのプライドを更に逆撫でさせていた。
「…例の実験を急がせるしかないな。新入りの2人が使い物になる前に、我々だけでもガリアの奪還が可能であることを世界に知らしめねば…!そうだ、ブリタニアを…人類を救うのは我々人間だ。獣混じりのウィッチなぞに任せてなどおけるものか…必ずや、我々の手で人類を救うのだ…!」
(…トレヴァー・マロニー。501の想定を超える活躍に焦りの色あり。件の研究にこれまで以上に力を入れると思われ、情報の漏洩が期待できる。引き続き監視を続ける。…我らの親愛なるエリザベート様の為に)
天井裏に潜んでいた掃除夫…エリザベートが送り込んだスパイに筒抜けになっていることに気づかぬまま、マロニーは己の野望の為に新たな策を練り始めるのであった。
「…ニャ~、どこに行ったんだニャ~?ニンゲンに見つかる前に早く帰るんだニャ~」
そんな渦中の501に、奇妙な来訪者が訪れようとしていた。
おそらく二次創作界隈で最速のマロニーちゃんの計画バレかも。流石にアレの存在そのものは確認できてませんが、研究員の会話や運び込まれる資材の出どころなどから推測された模様。
次回はちょっとモンハン要素強めになるかも。
ではまた次回