天翔ける凶星と黒い悪魔   作:マイン

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ストパン…終わっちゃったね。やっぱり宮藤+震電の組み合わせは最強なんやなって。しかしラスボスが都市型ネウロイとは…イゼルローンかな?前皇帝が発案したことになってましたが…ということはかのチョビ髭殿がそのポジションだったのか。…アイツ、こっちの作品にも出そうかな?居ても不思議じゃないし…

しかしまだ続きそうで続かなさそうな終わりでしたが、実際オラーシャ編とかやるのかな?まだ宮藤パッパの詳細とかネウロイの謎も分かってないのでやりそうではありますが…その辺は待つしかないですね。
来週から年末の感動をセルフでぶち壊す発進しませんと、色々未知数なルミナスウィッチーズが控えているので、当面は話題が尽きそうにないですしね。

ではどうぞ。


アイルーズ、全員集合!

「おおおおー…でっけー!」

「これが生きた本物のドラゴンか~…まだ子供らしいけど、流石の迫力だな」

「でもでも、なんか丸っこくて可愛いよ!触ると暖かいし!」

 その後、基地まで連れてこられたバサルモスは早速ウィッチたちの興味の対象となっていた。自分よりも遙かに大きなバサルモスに驚きつつも、ルッキーニを筆頭に無邪気に接してくるウィッチたちに、バサルモスもひとまず警戒を収めてされるがままにされていた。

 

「…ぜーっ、ぜーっ…!お、重かった…岩竜持ち上げるとかイビルジョーでもやらねえよコンチクショー…」

「お、お疲れ様です」

「ニャー、ありがとうございますニャお兄さん」

 その横では、基地入り口の検問を誤魔化す為に推定500㎏近くはあろうバサルモスを全力のジェット噴射で持ち上げてここまで空輸してきた昴がダウンしていた。最初は買い出し用の大型トラックで運び込もうとしたが、乗せようとしたら荷台が悲鳴を上げ始めたためこうするしか無かったのである。

 

「皆さんもありがとうございましたニャ!やっぱりボクのラッキーは正しかったですニャ、ボク一人だったらこんなに早く見つけられなかったし、もしかしたら大騒ぎになってたかもしれませんニャ」

「まあ、無事に見つかって良かったよ」

「…それで、あなたこれからどうするおつもりですの?お友達が見つかったのはいいですけど、こんな大きな身体で出歩いたら今度こそ見つかって騒ぎになりますわよ」

「ニャニャ…一応、暗くなるのを待ってから皆の所に戻るつもりですニャ。なんとか朝になるまでにはたどり着ける筈ですニャ」

「皆…やっぱりまだ仲間のアイルーが居るのか?」

「ニャ。ボクたちは元々、大陸の方であちこち旅をしながらひっそりと暮らしてましたニャ。その時にこのバサルモスのお母さんのグラビモスと出会って、しばらく一緒に暮らしてたんですニャ。こいつとはタマゴの時からの付き合いなんですニャ」

「…鎧竜グラビモスか。いくら滅多なことじゃ人里近くに現れないとはいえ、よくもまああの図体で今まで見つからなかったもんだ」

「グラビモス?この子バサルモスっていうドラゴンじゃないんですか?」

「あー…所謂出世魚みたいなもんでな。バサルモスは成長するとグラビモスって呼ばれるようになるんだよ。育った環境によっては真っ黒な姿のグラビモス亜種になることもあるんだが…どっちにしろ20メートルを超える飛竜種の中でもかなりの大きさにまで成長するんだ」

「でっか!?大型ネウロイクラスじゃんか、そんなんならネウロイとも戦えるんじゃないの?ビーム…ていうか炎のブレス吐けるんでしょ?」

「確かにグラビモスの熱線なら大抵のネウロイは消し炭に出来るだろうが…見ての通りバサルモスもグラビモスも身体が重すぎて動きが鈍いからな。空も飛べる上に数の暴力で圧倒してくるネウロイとは相性が悪かったんだろう…そうだろ?」

「…そうですニャ。1匹2匹なら返り討ちに出来たけど、欧州のあちこちにネウロイの巣が出来てだんだん襲ってくるネウロイが増えてきたせいで、ボクたちは住処を追われて大陸の端っこにまで逃げてきたんですニャ。人間達はそこから船でこの土地まで逃げていたけど、ボクたちは船になんて乗れないから途方に暮れていたんだニャ…」

「じゃあどうやってブリタニアまで?」

「それは…グラビモスのお母さんがこいつとボク達を乗せて海を飛び越えてくれたんですニャ」

「グラビモスが…海を!?おいおい…ティガレックスやナルガクルガならまだしも、グラビモスの飛行能力なんてタカが知れてるだろうに。それでバサルモスとアイルー数人を乗せてブリタニアまで飛んできたっていうのかよ…?」

 昴も前世でプレイしたゲームの中では、グラビモスは飛竜種に分類されてはいるがエリア移動はもっぱら歩行か地面に潜っての移動、飛べたとしてもちょっと浮き上がって墜落する程度であった為、欧州本土からブリタニアまでの海峡を飛び越えることなど不可能としか思えなかった。

 

「ニャ…確かにボクたちも最初は無茶だと思いましたニャ。でもグラビモスのお母さんはボクたちを乗せて夜通しで飛び続けてくれたんですニャ。…でも、途中で流石に限界だったのか海に落っこちてしまったんですニャ。それでもグラビモスのお母さんは諦めずに、こいつとボクたちを背負ったまま必死に泳いで…そして、こいつが自力で陸に上がれるくらいの距離まで辿り着いたところで力尽きて、そのまま海に沈んでしまったんですニャ…」

「そんな…」

「…大変、でしたのね。貴方も、この子も…」

『…クァァァ…』

 自らを犠牲に我が子とその友人達をブリタニアまで送り届けた母の愛。そこに自身の両親を重ね合わせたペリーヌが感極まったようにそう呟き、気遣うようにバサルモスを撫でる。バサルモスもペリーヌの慈愛の気持ちを感じたのか、喉の奥から甘えるような鳴き声を発する。

 

 ラッキー達の境遇をひとしきり聞き終えた所で、昴がふと尋ねる。

 

「…なあ、聞きたいんだがお前の仲間たちはちゃんと生活できているのか?今のブリタニアは避難民が大勢いるから人口過密状態になっているし、旅をしていたころのように人目につかずに生きていくのは難しいんじゃないか?」

「う…まあ、ちょっと大変なのはありますニャ。ボクらは最悪猫のフリをすればやり過ごせるけれど、こいつの食料を集めるのだけは苦労しますニャ。今回もそれが原因でこうなった訳ですしニャ…」

「確か、岩を食べるんだっけ?よくそんなもんを栄養にできるな」

「うじゅ…それは食べたくないかも」

「でも石ころくらいならその辺にいっぱいあるんじゃないの?」

「石ならなんでも良いわけじゃないんだよ。…グラビモスの本来の主食は火山地帯で産出される硫黄や炭素を多く含んだ鉱石で、体内のバクテリアがそれを分解して栄養に変えてくれるんだ。バサルモスはそのバクテリアの数が少ないから岩だけじゃ栄養が足りなくなるから、偶に小動物や昆虫なんかを食べてバクテリアを増やす必要があるんだが…火山の少ないブリタニアじゃ、そう簡単にそんな鉱石なんか手に入るもんじゃないわな」

「…はぁぁ、お兄さんグラビモスのこと詳しいんですニャ。ボクらでもそこまでは知らなかったですニャ」

「お前なんでそんなことまで知ってんだヨ?バサルモスもグラビモスも見るの初めてなんダロ?」

「えっ?…あ、あー…ば、バルファルクが教えてくれたんだよ。バルファルクは元々グラビモスと同じ時代に生きていたからな。そういうことも知ってたんだよ」

「そうなんですか」

 嘘である。ソースは生前読んだゲームの資料集である。

 

「ともかく、だ。いくらアイルーが器用な連中でも、バサルモス一頭養うのには限界があるだろう。…けど、俺の知り合い…まあエリーゼのことなんだが、アイツならバルトランドやスオムス方面からその手の鉱石を仕入れることは出来るだろう。なんなら、俺がひとっ飛びしてどこかの火山から集めてきたっていいしな」

「…ニャ?そ、それって…」

「この子たちを岩城さんが面倒を見る…ってことですか?」

「ああ。ここで出会ったのも何かの縁だろう。こいつらの生態を知ってる俺が手を貸すのが一番安全だしな」

「ほ、本当ですかニャ!?」

「…ですけど、どこでこの子たちの面倒を見るおつもりですの?岩城さんも仮隊員である以上、そう軽々に基地の外に出るわけにはいきませんのよ?」

「ああ、それは…」

「…ねえ、ここじゃダメなの?」

 昴が答える前に、ルッキーニがきょとんとした顔でそう言う。

 

「ここって…まさか、この基地のことか?」

「うん。ここなら私たち以外にはちょっとしか他の人いないし、いっぱい空いてる場所あるし、食べ物だってあるじゃん」

「そ、それはそう…かも、ですけどぉ」

「…私も、この子たちと一緒に居られるならいいな…」

「サーニャまで!?」

 先ほどからラッキーを触りたそうにしていたサーニャまでもが乗り気になってしまう。

 

「ちょ、ちょっといいのスバル?なんか変な方向になってきてるけど…」

 流石にどうすべきか判断に迷ったエーリカが昴に問うが、昴はというと何故か笑みを浮かべていた。

 

「…まさかルッキーニに先に言われるとは思ってなかったな。案外ちゃんと考えているもんだ」

「え…まさか岩城さんも、この子たちを基地に連れてくるつもりだったんですか?」

「ああ。ルッキーニの言ったとおり、この基地は安全性、秘匿性、そしてバサルモスの食料を備蓄できるという観点からも最良の場所だ。軍事基地だから民間人の出入りもほぼ無いし、戦略物資の石炭や硫黄が運び込まれても不審に思う奴はそうはいないだろうしな」

「…っつってもなぁ、ミーナや少佐が居ない時にそんなこと決められないだろ」

「まあな。…最低でも中佐たちにはきちんと事情を話しておく必要はあるな。それは俺が責任をもってやるさ。…代わりと言っちゃなんだがシャーリー、お前トラック出してラッキーの仲間を迎えに行ってやってくれないか?その間に中佐たちも帰ってくるだろうから、こっちは俺に任せてくれ」

「おお、それならお安い御用だ。ラッキー、道案内してくれよ」

「分かったニャ!」

「じゃあ私はバサルモスちゃんの隠れられそうな場所を探しておきますね」

「ああ、頼む。…割と乾燥肌な奴だから水場の近くにしてやってくれ」

「じゃあ私バサルモスの上でシエスタするー!」

「…大丈夫なんでしょうか?」

「さあ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…てなことがありまして、なんとかなりませんかねぇ…?」

「……帰ってきて早々になんて話を持ってくるのよ、貴方は…」

 その後、基地に戻ってきたミーナと坂本に昴は心なしか腰の低い態度で話を切り出した。ロンドンでマロニーに有りもしない腹の内を散々に探られて疲労困憊な所に予想だにしない頼み事をされたミーナは、呆れたような口調で溜息を吐くしかない。

 

「妙に基地が静かだと思ったら、そんな客人が来ていたとはなぁ…。喋る猫の一族に火を噴く岩の竜の子供とは、まったくお前が来てから退屈しないな!ハッハッハッハ!」

「俺が連れてきたわけじゃないんですがねぇ。…それと少佐、アイルーは見た目こそ猫ですけど一応俺達と同じ人間に近い存在ですんで、猫扱いすると失礼になるんで気をつけてください」

「む、そうなのか。なら気を付けるとしよう」

「…それで、そのアイルー族の方々はどこにいるの?」

「ああ、ついさっきシャーリーのトラックが戻ってきたみたいなんでそろそろ…」

 

コンコン

ガチャ

「ただいまー!ラッキーの家族を連れてきたぞー!」

「ニャー、お邪魔しますニャ」

「お邪魔しまーす!」

 そのタイミングを見計らったかのようにシャーリーがラッキーたちを連れて執務室へと入ってきた。ラッキーと同じオーソドックスなアイルーにまぎれて、何人か明らかに雰囲気の違うアイルーの姿が混ざっており、その姿に見覚えのある昴は声にこそ出さないが目を見開いて驚く。そして最後に入ってきた…どう見ても人間にしか見えない『2人の少女』を見た時、今度こそ昴は声を出してしまった。

 

「んなッ!!?」

「ど、どうしたスバル?」

「あ…い、いや…ちょっとな。ひとまず話を聞いてからでいい…」

「…それじゃあ、失礼して私が」

 

 アイルーたちの中から歩み出た…エプロンのような服装に丸眼鏡をかけた温和そうな雰囲気の老アイルーが話し始める。

 

「どうも、初めまして。ミーナ中佐に坂本少佐…でよろしかったかしら?ラッキーちゃんとバサルモスちゃんを助けてくれてありがとうねぇ」

「え、ええ。貴女は…?」

「私はこの子たちの親代わりをしているの。みんなからは『オバーチャン』と呼ばれてるわ。だからあなた達も気軽にそう呼んでもらえると嬉しいわ」

「う、うむ…。なんというか、本当に普通に人間と会話しているようだな」

「あたぼうよ!俺たちをその辺の猫と一緒にしてもらっちゃあ困るぜ」

「ミィたちは人間の社会の中で生きていく知恵を身に着けていきましたのですニャ。姿は違うけれど人間の常識は理解してますニャ」

「私らは気にしないけど、お母ちゃんを馬鹿にするやつは許さんニャルよ?」

 老アイルーに続くようにその後ろに控えていたアイルーたちが声を発する。個性豊かな性格のアイルーたちにミーナたちは動揺しっぱなしで、昴も顔にこそ出さないが改めてその顔触れに驚いていた。

 

(…セリエナの料理長にアステラ料理長、ニャンコック、我らの団のコックアイルー…おいおい、キッチンアイルー勢ぞろいかよ!どんだけメシウマな一団なんだよ。他にもどっかで見たようなアイルーがちらほら居るが…それよりなにより、あの子たちだよ!)

 昴の視線の先には、先ほど思わず声を上げてしまった2人の少女。雰囲気からして姉妹のようで、姉らしき方は不安そうに話の推移を窺い、妹の方は物珍しそうに辺りをキョロキョロとしていた。一見して普通の人間しか見えないが、昴はその子たちの『尖った耳』と『4本指』という特徴をしっかりと確認し、その正体を確信していた。

 

「…ところで、少しいいか?そちらの2人も貴方がたの連れなのか?見たところ人間のように見えるのだが…」

 と、坂本がタイミングよく2人のことをアイルーたちに尋ねる。

 

「ええ、そうよ。この子たちはアイルー族じゃないけど、私たちの大切な家族なの。さあ、挨拶しなさい」

「は…はい!どうも、カティ…といいます」

「ミルシィでーす!よろしくね!」

「カティさんにミルシィさん…ね。失礼ですが、何故この子たちと一緒に?」

「…なにか誤解をされているようですニャので言っておきますが、ミューズとその妹様は我々が旅を始める前からずっと一緒で、この中では一番の古株ですニャぞ」

「元々お母ちゃんはお嬢様たちのご両親のお世話係をしていたニャル。お二人がネウロイに殺されてしまったのをきっかけに、私らは放浪の旅を始めたニャルよ」

「…そうだったのね。辛いことを思い出させてしまったようで、ごめんなさいね」

「…気にしないでください。もう40年も前のことですから」

「そっか…40年もよく…………あんだって?」

 何やら耳を疑うような数字が出てきたことにミーナ、坂本、シャーリーが首を傾げる。

 

「…今、40年前と言ったのか?4年前でも、10年前でもなく…?」

「そうだよ。私がまだずっと小っちゃかった頃に、ネウロイから私たちを逃がすために戦ったの」

「…ちょっといい?2人とも…今いくつ?」

「私ですか?今年で…『81歳』になります」

「私は『65歳』だよ!」

「超絶年上ッ!!?」

 見た目からは想像もできない姉妹の年齢にミーナ達はギョッとするが、昴は特に驚いた様子もない。

 

「へぇ、まだそんな歳なのか。ってことは、ご両親は200歳くらいだったのか?」

「ん~、パパはそれくらいだったかな。ママは人間だけど元ウィッチだったんだよ!」

「成る程ね…」

「…おいスバル、お前驚かないのかよ?こんな小さな子が80歳とかあり得ないだろ」

「普通の人間ならな。…この子達は人間と竜人族のハーフだ、そうだとしても不思議じゃないさ」

「りゅうじん…族?」

「あら、貴方竜人族のことまで知ってるの?」

「ある程度はな。…かつての大戦のことはバルファルクから聞いているしな」

「…その、竜人族というのはなんなのかしら?」

「ああ、竜人族っていうのは大昔に存在した人類の遠縁に当たる種族でして。人間とドラゴンの遺伝子を持っているんで、普通の人間より寿命も長くてその分成長が遅いんですよ」

「人間とドラゴンの遺伝子を…!?そんなことが…」

「まあ信じられないのも分かりますが…尖った耳と指の数が4本っていう特徴が有るので直ぐに分かったんですよ。どうやら竜人族とウィッチの混血だと竜人族の性質が強く出るみたいですね」

「…成る程、人前に出れなかった理由はそういうことだったのか」

「はい…耳はともかく、指の数は直ぐに分かってしまいますので」

 同じ人間同士でも偏見や差別が起きるというのに、耳や指が違うともなればその風当たりはますます強くなって然るべきであろう。アイルー達が居たとはいえ長年そんな目に晒されてきた2人の気持ちは察するに余り有る。

 

「…それで、ミーナ中佐。彼らをここで匿うことを…許可して貰えないっすかね?」

「ミーナ」

「ハァ……駄目なら態々ここに呼んだりしないわ。それに、そんな事情を聞かされたらそれこそ放っておけないもの」

「じゃあ…!」

「ええ、あなた方を当基地で受け入れることを許可します。…最も、あくまで私の権限における許可ですので、外部には内密にする必要があります。外部に情報が漏れた場合、またあなた方が当基地や我々の活動の妨げになると判断された際には、退去してもらうことになりますので」

「勿論です、皆さんにご迷惑をかけるつもりはありませんよ。…ありがとうねぇ、中佐さん」

「ミーナで構いませんよ、ええと…なんとお呼びすればいいのかしら?」

「ほっほ、皆と同じようにオバーチャンと呼んでくれればいいですよ。私にはもう、呼ばれるような名前はありませんから」

「お、オバーチャン…?なんだか呼びにくいわね」

「発音や意味は扶桑の言葉に近いからな。ミーナたちには少し言い辛いだろう」

「…んじゃ、欧州風で『グランマ』でいいんじゃないすかね?」

「ああ、それいいな!…そんじゃあ、よろしくなグランマ!」

「はいはい、よろしくねぇ」

 こうしてアイルー一族とバサルモス、カティ達は501の基地で生活することになったのだった。

 

 

 

 …それから、一週間後。

 

「おーいラッキー、7番のスパナ持ってきてくれ!」

「はいはい、分かりましたニャ!」

「寝室とトイレの掃除終わりましたニャー」

「おう、ご苦労さん。そんじゃあ次はユニットの燃料補給を頼むわ」

「了解ですニャ!」

 ラッキーを始めとしたアイルーの多くは、整備班の手伝いや清掃等基地内の雑務を任されていた。あらゆる国家に属しない統合戦闘航空団の性質上、スパイ防止の為に外部の人間を雇うことが出来なかったが故に今までは隊員たちの持ち回りとなっていた仕事であったが、アイルーたちがタダ飯で済ませるわけにはいかないと申し出たために彼らの仕事として与えられたのだ。

 当初こそ『冗談じゃなく猫の手を借りるなんて』…と皮肉っていた整備班たちであったが、アイルーたちの知能と手先の器用さは並ではなく、仕事を教えるとあっという間に憶えてしまい、愛らしい見た目も相まって完全に心を許してしまっていた。

 

「…凄いな、この蔵書はまさに宝の山だ。よくこれだけの資料を今まで守り続けてきたもんだ、大したもんだよカティ達の一族は」

「はい!お父様からも、この資料だけは絶対に後世に残すよう言いつけられてますので。いつか必ず、必要になる日が来る…と、ずっと前のご先祖様が言われたみたいです」

「重いしかさばるし、ホントは邪魔なんだけどねー」

「そう言うなミルシィ。…必要になる日が来る、か。案外そう遠くないかもしれないな…」

 カティとミルシィは先祖代々受け継がれているという大量の書物を持ち込んできており、それによって部屋の大半が埋まることになってしまった。中身は全く未知の言語で書かれておりカティ達にしか読めなかったが、その内容は遥か以前に遺失した道具や薬の調合法や太古の動植物、更には古龍と思わしき存在が記されたものばかりで、昴が暇を見てカティに解読してもらいながらウルスラ仕込みの翻訳作業に追われていた。

 

「しゅぴー…しゅぴー…」

『zzz…』

「…あ、ルッキーニちゃん。またロッキーの上でお昼寝してる」

「あんなところで寝て落ちないのかな…?」

「梁の上でも器用に寝ているんですから、心配するだけ無駄ですわ。まったく…」

 バサルモスは『ロッキー』という名前を与えられ、基地の一角を縄張りにして安らかな日々を送っている。最初は沢山の人間に脅えていたが、宮藤やペリーヌに世話をされることで徐々に人間に慣れ、今ではルッキーニが背中で寝ていても気にしなくなっていた。

 

 そんな風に501の基地に馴染んでいったアイルーたちであったが、彼らが最もその本領を発揮したのはやはり厨房であった。

 

「…はいよ!竜田揚げ定食お待ち!」

「ミィ特製のタンドリーチキンをご所望の方はいらっしゃいますかニャ?」

「鶏チリソース出来たニャル。熱いうちに食ってくれニャル」

「食後にプリンがあるからね。みんな仲良く食べるんだよ」

『はーい!いただきまーす!』

 世界中を渡り歩いて人間社会の中で料理の腕を磨いてきたというグランマとその実子である3兄弟は当然ながら厨房に配属され、限られた食材の中で各々が得意とする分野の料理を振舞い、皆の胃袋を今までになく満足させていた。…彼女らの作る料理は元貴族であるペリーヌですら唸るほどの美味であることに加え、ウィッチたちにとって想定外の『おまけ』が付随していた。

 

「いやー、前にも増して食事の時間が楽しみになったよな!スバルや宮藤の料理も美味かったけど、やっぱ本職さんは一味違うって感じがするよ」

「全くだ、流石は師匠たちだ。俺もまだまだ精進がいるぜ…なあ、宮藤?」

「はい!私も先生からもっと教えてもらわないと…」

「おいおい、お前たち本業のことを忘れるなよ?…しかし、未だに信じられんな。まさか食事をするだけで一定時間とはいえ魔法力が強化されるなんてな」

「ええ。一体どういう理屈なのか…想像もつかないわ」

 グランマが先祖から受け継いできたというアイルー族秘伝の調理法には、食べた者の運動能力や魔法力を一定時間底上げするというとんでもない効果があったのだ。最前線で戦う彼女たちにとってそれはこの上なくありがたいものであった為、坂本やミーナの根回しにより食材も弾薬や銃火器並みに重要な物資としてより良いものが扱われるようになったのだった。

 

 こうして十全なバックアップと既存戦力の強化を得た501は以前にも増して目まぐるしい戦果を挙げるようになり、連合軍からも年内のガリア奪還を期待される程となった。当然ながらマロニー大将にとってそれは面白くないことであり、彼の計画を増々早める事へと繋がっていく。

 

 

 …それが、眠れる獅子の目覚めをも早めさせることになることに、この時点では誰も気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ガリッ…ボリッ…

 

 …深夜、北リベリオン大陸で最も大きな河川であるミシシッピ川。その奥地にある大きな沼の淵で、一匹の巨大な怪物が無残な姿を晒していた。その怪物の名は『ジュラトドス』、バサルモスと同じく遥か太古の時代から存在する魚竜種であり、かのコロンブスがリベリオン大陸に辿りつく以前から現地の住民たちに『人喰い怪魚』として恐れられていた。実際ジュラトドスは旺盛な食欲と非常に強い縄張り意識から近づく生き物を食い散らかし、また他にライバルとなる生物も居ないためにミシシッピ川のみならず沿岸を経由してアマゾン川にまで縄張りを広げようとしていた。

 

 しかして、その野望は半ばにして阻まれることとなる。より強大な、捕食者の存在によって。

 

ボリッ、ボリッ…!

 ジュラトドスの岩のように固い骨や鱗がスナック菓子の如く噛み砕かれる。『彼』の本来の獲物はジュラトドスよりはるかに硬い外皮や鱗を持つ生き物であるため、この程度の強度は何の問題にもならない。そもそも『彼』にとってジュラトドスはわざわざ好き好んで食料にする程の存在ではない。

 今そうせざるを得ずにいるのは、悠長に本来の獲物を探している時間がないほどに『彼』が衰弱しきっていたからだ。

 

 ジュラトドスの肉を喰らうたびに、飢えた体に力が漲る。数多の戦いを潜り抜けた強靭な肉体が、徐々に力を取り戻していく。ジュラトドス以上の大食漢である『彼』の食事は明け方まで続き、空が白やむ頃には15m程もあったジュラトドスは牙や鰭の一部を残して食べ尽くされてしまった。

 

 しかし、それでもまだ足りない。かつてあらゆる生物に畏れられ、かの『黒き太陽』を自らの命と引き換えに封じ込めた『彼』の飢えを満たすには、この程度ではまだまだ足りない。

 

『■■■■■ーーーッ!!!』

 沼地を震わす咆哮を上げて、『彼』は翼を広げて朝焼けの空に飛び去って行く。更なる獲物を探し求める為に…己の本能が告げる、戦いの時に備えるために。

 

 

 その『彼』が飛び去った後には、まるでジュラトドスの墓標であるかの如く数本の『棘』が地面に突き刺さっていた。




ちなみに3兄弟は上からアステラ料理長、ニャンコック、我らの団の料理ネコとなっており、それぞれ得意料理のジャンルから『大将』、『シェフ』、『張(チャン)』と呼ばれています。グランマは何でも出来ます。別格だからね、仕方ないね。

ラストのヤツの出番はもうちょい後になります。ヤバいからね、仕方ないね。


同時更新の今作の裏設定の話も見てね。ではまた次回
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