天翔ける凶星と黒い悪魔   作:マイン

23 / 26
転勤が決まってしばらくドタバタして続きが遅くなって済みません。


そして…マガイマガドが倒せねぇぇぇぇ!スイッチの操作に慣れてないのもあるけど、火力が半端ないね…2発で確定墜ちなのに起き攻めしてくるし。
牙竜種にありがちなモーションの隙が大きい弱点があるから攻めることは出来るけど、爆発するガスのせいで攻めきれないのがジンオウガより厄介だね。オマケに時間が15分しかないからソロでは討伐出来なかったヨ…
もうちょっと操竜アクションを使いこなせればなんとかなるかも…届いたら練習ですね

ではどうぞ


紅のサムライ

 カールスラント上空の巣『ウォルフ』より出現した超大型の飛行船型ネウロイ。鈍足ではあるが強力なロケット弾と無尽蔵の光線を放つこの強敵を501はパワーアップした魔法力と巧みな連携によって追い詰めていた…追い詰めた、筈であった。

 止めを刺そうとした昴を撃墜した特大の光線と共にネウロイを内側から食い破るようにして現れたのは、全長200mを超える巨大な龍の首のような怪物…同化しているネウロイと同じ黒い身体を持ったオストガロアの触腕であった。

 

「な…なんだぁ、ありゃあ…!?」

「ネウロイから…あれは、ドラゴン…?ドラゴンの首が生えてきた…!」

「さっき岩城さんを攻撃したのはアイツの仕業ですの…!?」

 何が起こっているのか理解が追いつかないウィッチ達を前に、オストガロアの触腕…『オストガロア・(パラサイト)』は彼女たちを値踏みするように一瞥した後、再び金属音のような雄叫びを上げてネウロイごと躙り寄り始める。

 

『■■■■ーーーッ!!』

「…ッ!総員、構えろッ!奴はこれまでのネウロイとは桁が違う、気を抜けば死ぬぞ!!」

「は、はいッ!」

「待ってよ少佐、昴がまだ…」

「…今は目の前の敵に集中するんだ!勝手な行動は許さんぞ!」

「でもッ…!」

「落ちつけハルトマン!…岩城がそう簡単にくたばる奴じゃないのは、お前が一番分かってるんじゃないのか?アイツを信じているのなら、今は自分が生き残ることに集中しろ!」

「トゥルーデ……ッ、分かったよ。気を使わせてごめん」

「分かってるならいい…来るぞッ!」

 

 身構えるウィッチたちに、オストガロア・Pはありったけのロケット弾と光線を撒き散らすように撃ちまくり始めた。まるで狙いを定めていない攻撃は自身すら巻き込み、自爆により装甲が砕けてボロボロになっていくが意にも介さず攻撃を続ける。

 

「うおおッ!?…くっ、アイツ滅茶苦茶過ぎるぞ!」

「エイラの予知のおかげでなんとか躱せるが、まるで狙いを定めていないようだ…」

 直接の攻撃だけでなく誘爆による爆風も相まって先ほどより苛烈さを増した攻撃であったが、エイラの予知のおかげでどうにかシールドを駆使しながらも防ぐことは出来ていた。そこに…

 

「…!上よトゥルーデッ!!」

「ん…?」

 ミーナの声に反応したのも束の間、突如視界が薄暗くなったバルクホルンが上を見上げると、鎌首をもたげたオストガロア・Pが大きな口を開けて自分に迫って来ていた。

 

「な…ぐ、おおおおッ!?」

 慌ててストライカーを突き動かして間一髪のところで躱したが、今しがた自分が居た場所で空振ったオストガロア・Pの口が、明らかに自分を『食べようとしていた』ことにバルクホルンは背筋が凍るような感覚を覚える。

 

「トゥルーデ、大丈夫?」

「あ、ああ…助かったぞミーナ。全く気が付かなかった…」

「攻撃の勢いが強まったのは、あのドラゴンの首の方から注意を逸らす為のようね。…けれど今の動き、まさかネウロイが人間を食べようとするだなんて…」

 ネウロイは『金属』を好む性質を持ち、それ故に人の多い市街地を狙ってくるというのは軍人にとって基礎知識である。…だが目の前のネウロイは、明らかにバルクホルンを捕食しようとしていた。数多くのネウロイと対峙してきたミーナとバルクホルンであるからこそ、その事実が信じられなかった。

 

「…良かった、バルクホルンさんは無事だったみたい」

「そっか、ならいいけど…」

「…エイラ、やっぱり見えないの?」

「うん…またあのドラゴンの動きが予知できなかった。今までこんなこと無かったのに…他の攻撃は全部予知できるのに、アイツの動きだけは靄がかかったみたいに何も見えないんダ…!」

 一方でエイラは、またしてもオストガロア・Pの動きを予知できなかったことに動揺していた。当然ながらエイラの予知を共有している他の皆も同じで、先ほどまでのように予知に任せた動きは出来なくなっていた。

 エイラだけではない、サーニャも含めこの場の全員が皆個人差はあれど、あのオストガロア・Pの出現後固有魔法や魔法出力に不調をきたしていた。

 

(…何なの、この感覚?力が思ったように出せない…。私自身…というより、私たちの使い魔との同調が乱れている…?まるで、あの怪物に脅えているような…)

 …ウィッチたちにとって使い魔は身近な存在であるためにあまり感じないが、使い魔…精霊は見た目こそ動物そのものだが実態は神として祀られることもある高位の霊的存在である。…故に、自身より遥かに強い存在であるオストガロアを前にした時の反応は人間よりも顕著であり、戦おうとする契約者との意識のズレがシンクロを乱し、魔法力を低下させているのであった。

 

「う…ぐ、あああッ!?」

「芳佳ちゃん!…きゃあ!」

「宮藤、リーネ!…くっ、私が奴を引き付ける!ミーナとペリーヌは宮藤たちのフォローに回れ!」

「少佐!?」

「美緒、無茶よ!」

 この場で一番未熟な宮藤とリーネに狙いをつけたように攻撃が集中しだしたのを見て、坂本はミーナたちに援護を託して抜刀するとオストガロア・Pへと向かっていく。

 

「うおおおおッ!」

 

ガキィィィンッ…!

 光線の雨を掻い潜って接近し、気合一閃。特別製の扶桑刀に魔法力を流し込んでオストガロア・Pの首の付け根…第2のコアへと振り下ろした。これまで数多のネウロイを切り捨ててきたそのひと振りは装甲に深く切り裂いたが、コアにまでは届かなかった。

 

「チッ、想像以上に装甲が固い…!しかもコアはもっと内部…一太刀では届かないか」

 決められず舌打ちをする坂本に、ほぼノーダメージとはいえコアを狙われたオストガロア・Pは顔を向けると大きく口を開く。

 

「ッ!さっきの光線か!?」

 先の一撃の規模からシールドでは到底防ぎきれないと判断した坂本はオストガロア・Pに貼りつくように接近し、撃てば自身を巻き込む状態にして回避しようとする、が…

 

 

ドバァァァァッ!

 オストガロア・Pはお構いなしに自身ごと坂本へと吐きつけた。…光線ではなく、青く発光する不気味な液体を。

 

「ぬおッ!?…な、なんだ?光線ではないのか?」

 咄嗟にシールドを展開して直撃は免れたが、シールドやオストガロア・Pの身体によって反射された飛沫が坂本の肌や服に付着する。液体は思っていたより粘度が強く、全身に油をぶちまけられたような不快感に坂本は混乱しつつ眉を顰める。

 オストガロア・Pはそのまま首を大きく振るい、粘液を噴水のように辺り一帯へと撒き散らし始めた。

 

「…奴は一体なにがしたいんだ?水流で攻撃するならともかく、ただこの青い液体を撒き散らすことに何の意味が…」

 

ズンッ…!

 そこまで言いかけた坂本を、突然の脱力感が襲う。

 

「な、何…!?」

 ウィッチになって以来久しく罹ったことのない風邪にでもなったような倦怠感に戸惑う坂本を更なる異変が遅う。ウィッチたちの攻撃やオストガロア・Pの自爆によって辺りに飛散していたネウロイの装甲の欠片が、坂本に付着した粘液に纏わりついていたのだ。思わず全身を振るわせて剝がそうとするがなかなか取れず、それどころが動けば動くほどに欠片が纏わりついて塊が肥大化していき、その分だけ重みが増していく。

 

「…これが奴の狙いだったのか!皆、奴の吐き出す青い液体に触れるな!この液体を浴びると力が出なくなる上に、奴の破片が体にくっつく!下手に動き回ると逆にこちらが動けなくなるぞ!」

 液体の危険性を察した坂本が慌てて無線で警告を発するが…

 

『…ご、ごめんなさい…坂本さん…。もうみんな、あの液を浴びちゃいました…』

「…なんだと!?」

 無線越しに聞こえる宮藤の弱弱しい声に振り返ると、皆が体を染める粘液と同じくらいに顔を青くして苦痛の表情を浮かべていた。力自慢のバルクホルンやサーニャに至っては、持っている機関砲やフリーガーハマーの重みに手放しかけているほどである。

 

「し…まった…ッ!まさか、ネウロイがこんな手を使ってくるなど……せめて、このことを軍に伝えなくては…ッ!」

 まんまと敵の術中に嵌ってしまったことを悔いながらも坂本は行動しようとするが、全身を覆い始めたネウロイの欠片と粘液の脱力感のせいで体も思考もどんどん鈍くなる。それに加えて、坂本自身の魔法力も他の皆に比べて限界が近くなっていく。

 

「くそッ…こんな時に、魔法力が底をッ…まだ、私は…こんなところでッ…!」

 徐々に高度が落ちていく坂本。…オストガロア・Pはそんな彼女を見下ろし、もう反撃の余力も残っていないと判断すると再び口を開けて坂本へと迫る。こんどは吐き出すのではなく、その口の中に取り込むために。

 

「…ッ!少佐…逃げてくださいましッ!」

「美緒ぉ!!」

 皆が坂本を助けようとするがもはや動くことすらままならず、悲鳴を上げることしか出来ない。坂本は迫る虚空のような暗闇に、せめて心だけは負けるものかと目を瞑ることも背けることもせず睨みつけ…

 

 

 

バシャァァァンッ!!

「…せらぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 突如海面に弾ける様な水柱が立ち、それを突き破って飛び出した真紅の光がオストガロア・Pのした顎を突き上げて坂本へと向かっていた軌道を逸らした。

 

「ッ!?」

「い、今のって…!」

 その光のスピードと聞こえてきた声に皆が顔を上げると

 

「…ギリギリ、セーフだったか。よくもやってくれやがったな…このイカ野郎ッ!」

 先ほど撃墜された昴が、坂本が無事だったことへの安堵を、次いでオストガロア・Pへの憤怒の表情を浮かべてそこに飛んでいた。

 

「スバル!!」

「岩城、生きていたか…!」

「当然!…まあ、シールドはギリギリ間に合ったけどちょっと喰らっちまって墜ちた衝撃で気絶しちまったけど、あの程度でくたばりはしねえよ。それよりも…皆、これを!」

 昴は数本の竹筒を取り出すとそれを皆に向かって投げる。

 

「これは…?」

「その粘液を弾き飛ばす薬品だ!それを体にかけてくれ、そうすれば破片もとれるし力も戻る!」

「ま、マジか!?」

 半信半疑で竹筒の中身を体に振りかけると、全身を覆っていた粘液がくっついた破片ごとするりと滑るようにして剥がれていき、それと共に全身に力が漲ってくる。

 

「ホントにとれた…!サンキュースバル!」

「礼は後だ!少佐、今のうちにこっちに!」

「あ、ああ…!」

 昴に引っ張られるようにオストガロア・Pから距離を取る坂本がちらりと振り返ると、昴の不意打ちから立ち直り、取り逃がした獲物を忌々しげに見つめるオストガロア・Pの下あごに2メートルほどの長さの『槍』が突き刺さっているのを見つけた。

 

「岩城、あの槍は…まさかお前が?」

「ええ、そうです。…あれは俺の固有魔法『夢幻換装』で作った槍です。魔法力を使って武器を作ることが出来るって能力でして…ぶっちゃけ、シールドを変形させて武器の形にしてるようなもんです」

「シールドを武器に…菅野が拳にシールドを圧縮させて攻撃に使っていたが、それを槍の形にしたのか。…相当な魔法力コントロールが無ければ出来ん芸当だな、器用な奴だ…」

「そりゃどーも。…ま、あの野郎にとっちゃ爪楊枝みたいなもんでしょうけどね」

 口を縫い合わせるつもりで突き立てた筈が下あごを貫いてすらいないことに苦笑しつつ後退した昴と坂本に、粘液から解放された皆が集まってくる。

 

「坂本さん!大丈夫ですか?怪我があるなら治癒をしますけど…」

「ちょっと宮藤さんどきなさいな!…少佐、お怪我はありませんの?」

「ああ、心配をかけて済まない。特に怪我はしていないから治癒は必要ないぞ、宮藤」

「…無事でよかったわ。岩城君も…美緒を助けてくれてありがとう」

「…ま、お前があれくらいでやられるとは思ってなかったけどね」

「ハッ、よく言うよナ。岩城が墜ちたときあんだけ…」

「エイラぁッ!余計な事言うな!」

「まあまあ…それにしても、どうして岩城さんあの液を落とす薬を持ってたんですか?」

「そうそう、私も気になってた。ちょっと準備良すぎじゃないか?」

 リーネとシャーリーが当然の疑問を問うと、昴は回復の為に動きを止めているオストガロア・Pへと視線を向けて呟く。

 

「…奴のあの粘液のことは知っていたからな。奴を倒すと決めていた以上、その対策はしておくのは当然だ。材料集めが大変だったけどな」

「知っていた…って、お前あの化け物のこと知ってんのか?」

「ああ。…奴はオストガロア、かつて俺の使い魔のバルファルクと相撃ちになった筈の超古代の古龍だ」

「オストガロア!?それって、お前が前に言ってたカールスラントに居るっていう…」

「ああ、どういう訳かネウロイと一体化しちまってるみたいだけどな。…ネウロイに取り込まれたのか、それとも取り込んだのか…どっちにしろ、オストガロアがなんらかの形でカールスラントを支配しているネウロイと手を組んだのは確かみたいだな」

「…聞きたくは無かった、最悪の情報だということはよく分かったぞ」

 バルクホルンやミーナが苦虫を嚙んだような表情を浮かべる。図らずも人類の敵と昴の敵が一致してしまったが、それはつまりいずれ戦うべき相手がとてつもない存在へと化してしまったことを意味するのだから。

 

「…そういえばスバル、さっきものすごい光線喰らってたけど大丈夫なの?」

「ん…ああ、それなら大したことはない。さっきも言ったがギリギリでシールドが間に合ったし…そもそもあの光線は『龍属性』だからな。同じ龍属性使いの俺には効果が薄いんだよ」

「龍…属性?」

「オストガロアやバルファルクが使う、竜種が苦手とする特殊なエネルギーだ。分かりやすい火や冷気と違って純粋で不安定なエネルギーで、使い手次第で様々な形に変わる。奴のように光線として放ったり、俺のように飛行の為のエネルギーにしたり、果ては雷や大爆発だったりな…共通してんのは、赤黒い色をしてるってことぐらいか」

「龍属性なのにドラゴンに効くのか…ややこしいナ」

「…それで岩城君、対策はあるの?」

「…生憎、さっきの薬…『消散剤』は今ので品切れになっちまった。だからもう粘液も光線も喰らわずに倒す…それしかない。ネウロイと一体化している以上、奴もコアさえ破壊すればくたばる存在になったのは間違いないはずだ。だが…」

「だが?」

「奴の光線を喰らってから龍気の出力が下がっている。短い距離なら問題なく飛べるけど、フライトブラストや龍気砲みたいな高出力の技は当面使えそうにない…囮ぐらいにしかなれそうにないな」

 

(…俺の力というより、バルファルクの能力そのものが制限されてるみたいだ。この力…まさか『龍封力』か?予想外…でもないな。イビルジョーやネルギガンテがドラゴン喰いまくって龍属性持ってんなら、オストガロアにも同じ理屈は通るわな…)

 

「げ…マジで?」

「こちらの最大火力が封じられたか…」

 昴の弱体化に皆の表情が歪む。どうにか敵の攻撃を躱したところで、今の彼女たちにはオストガロア・Pのコアを破壊し得る決定打が欠けていた。魔法力の低下によりゴリ押し戦術は使えず、火器もサーニャのフリーガーハマーですらあの巨体の前では火力不足となってしまう。光線や粘液の対策もない現状、じり貧となるのは目に見えていた。

 

「…だが、それでもここで退くわけにはいかない。このまま奴を放って撤退したところで、確実に奴はブリタニアまで追ってくるだろう。もし本土上陸を許してしまえば、取り返しのつかないことになる…!なんとしてでも奴をここで足止め…いや、絶対に倒さなくてはならない!」

 絶体絶命の窮地に、坂本は皆と己を奮い立たせるように吼えると残された魔法力の全てを扶桑刀に籠め、決死の突撃をかけようとする。

 

 

 

ドクンッ…!

「…ッ!?うぁっ…」

 その時、魔法力を流した筈の刀から逆流するように自身に流れ込んできた『何か』に、坂本は吐き気を覚えて口元を抑える。

 

「ど、どうしたんですか坂本さん!?今治癒をかけますから…」

「…す、済まん…」

 傍にいた宮藤が慌てて治癒を試みるが、坂本の感じた違和感は無くならない。それどころか、体力も魔法力も尽きかけた筈の身体にほんの僅かだか治癒の影響以外の力を感じていた。

 

(これは…治癒が効かないということは、悪影響ではないのか?それにこの力…もしかしたら…!)

「…宮藤、治癒はもういい。それより少し離れていろ」

「え…あ、はい」

 宮藤を下がらせると坂本は刀を正眼に握りなおし、再び魔法力を流し込んだ。

 

「…ぐ、うう…ッ!」

 送り込む僅かな魔法力と裏腹にとめどなく流れ込んでくる『何か』の反動に耐えながら、坂本は魔法力を送り込み続ける。やがて刀から赤黒い稲妻のようなものが発生し、それが坂本の身体からも出始めると皆も異変に気付き始めた。

 

「うぇぇ!?な、なんか少佐がペリーヌみたいにバチバチいってるよ!」

「赤黒い光…岩城さん、あれって…!」

「ああ、龍属性エネルギーだ!なんだって急に…あの刀からか!」

「美緒、何しているの!?すぐにその刀から手を放して!」

「悪いが…それは出来ん!あと少し、あと少しでッ…おおおおおおおッ!!」

 ミーナの制止を振り切って残った魔法力を一気に注ぎ込むと、刀の鍔に填め込まれていた『赤色の竜氣玉』が一際赤く輝いた直後に音を立てて砕け散り、その輝きが刀を伝って坂本の全身を包み込んだ。

 

「しょ…少佐…?」

「坂本さんが…赤く、光ってる…!」

 燃え盛る火の玉の如き真紅の輝きを纏った坂本。何が起きたのか分からない一同は呆然とするが、昴は坂本から感じる自身がよく知るエネルギーの感覚に何が起きたのかを察した。

 

「その光…俺と同じ龍気を…!まさか、『龍気活性状態』になったのか!?」

「龍気活性状態?」

「多量の龍気を蓄積した状態でダメージを受けると、そいつの生存本能に呼応して溜め込んだ龍気が全身を循環し始めるんだ。…そうか、少佐の刀についていた龍氣玉の龍気が、少佐の魔法力に反応して解放されたんだ」

「そんなことが…」

「だが龍気が循環するということは、大量の龍属性エネルギーを浴びたのと同じことだ。俺はともかく、ドラゴンウィッチじゃない少佐がそんな状態になったら何かしらの影響が出る筈…」

「それを早く言ってくださいまし!少佐、お体の方は大丈夫なんですの?」

「…成程。だからさっきから私の魔眼が機能しなくなっているのか。コアどころか、何も見えなくなっている…本当の隻眼になった気分だ」

「…!ウィッチが龍属性やられになると、固有魔法が使えなくなるのか…」

「だったら猶更無茶だ!ただでさえ消耗しているのに片目が見えないなんて…」

「…だが」

 坂本は薄く笑むと体に力を籠める。すると坂本を包む輝きがより一層強いものとなっていき、それに応じるように弱まりかけていたストライカーの回転が爆発的に加速する。

 

「だが…よく解らんが、とてつもない力が湧いてくる!魔法力はほぼ空だった筈なのに、ストライカーもすこぶる調子がいいぞ!今ならどこまでも飛んでいけそうな気分だ!」

「み、美緒…?一体どうしたの?」

「…もしかして、俺と同じで変換された龍気が魔法力の代わりになってんのか?」

「そんなこと出来るんですか?」

「分からん…ストライカーが龍気で動くのか俺は知らんし。…だがそうだとすれば絶好調の理由も頷けるぜ。俺は呼吸によって魔法力を龍気に変換してるんだが、龍気の魔法力からの変換効率は『約5倍』…数字に換算すれば10の魔法力で50の龍気を生成できる。増して龍気活性状態になると龍属性やられになる代わりに身体能力と攻撃への耐性がパワーアップする。下手すりゃ平常時よか調子いいだろうよ」

「マジで?随分都合のいいエネルギーだけど、なんかデメリットとか…」

 

『■■■■■■ーーーッ!!』

 エーリカの疑問を掻き消したのは、坂本の変化に脅威を憶えたオストガロア・Pの咆哮である。装甲の修復もそこそこに再び動き出すと無数の光線を坂本へと放った。

 

「坂本さん危ないッ!」

「心配…無用ッ!はぁッ!!」

 前に出てシールドで防ごうとした宮藤を制し、坂本は自身と同じく真紅の輝きを纏った刀を振るう。刀から溢れた光…龍気が軌跡を描き、迫る光線を薙ぎ払うように掻き消してしまった。

 

「…嘘ぉ」

「そんなものか古の龍よ!今度はこちらから行くぞ!」

 坂本のストライカーが聞いたことのないほどの爆音を上げてオストガロア・Pへと向かっていく。次々に放たれるロケット弾や光線を時に紙一重で躱し、時に纏った龍気で弾き返して先ほど傷をつけたコアの元へと一気に詰め寄る。

 これ以上近づけさせまいとオストガロア・Pも自爆覚悟で再び龍属性光線を放とうとするが、その判断は今の坂本の前では遅すぎるものであった。

 

「はぁぁぁぁぁッ!!」

 再度の気合一閃。纏う龍気がまるで刀身の延長のようになった刀を振りぬくと、迸った光の軌跡をなぞるように飛行船の尾翼部分がずれ落ち…両断されたコアと共にオストガロア・Pの首が根元から切り落とされたのだった。

 

「……うっそぉ…」

「ぶ、ぶった切っちまったぞ…少佐」

 唖然とする皆の眼前で切り落とされたオストガロア・Pが怨念の籠った叫びをあげて霧散する。しかし破壊されたのは2つ有る内のコアの一つ、未だ健在なゴンドラ部分のコアを有するネウロイは目の前の脅威を滅ぼさんとありったけの火力を坂本にぶつけてくる。

 

「チッ、そうは…」

「させません!!」

 再び龍気による切払いで対応しようとした坂本であったが、その前に間に割り込んだ宮藤、ペリーヌ、リーネのシールドが坂本への攻撃をシャットダウンする。

 

「お前達…!無茶をするな!危うく巻き込む所だったぞ!」

「…それはこっちの台詞ですよ!いきなり一人で切り込むなんて坂本さんらしくないですよ!」

「もっとご自愛なさって下さいまし!」

「それは…」

「…美緒、今回は宮藤さんたちが正しいわ。無事だったから良かったものを、あんな特攻みたいなことをするなんて貴女らしくないわよ」

「ミーナ……済まん」

 守られたとは言え行動を制されたことに声を荒げる坂本だったが、宮藤とペリーヌ、そして追いかけてきたミーナの静かな怒りを前に、急速に頭が冷えて力なく謝罪を返す。

 

「いいとこ持ってき過ぎだって少佐。ちょっとはアタシらにも見せ場残しておいてくれよな!」

「なんか調子悪かったのも急に良くなったし…後は私たちでやるよ!」

「ああ、ここで仕留めるぞ!!」

 オストガロア・Pの消滅により魔法力が復調し、エイラの予知も機能した以上最早眼前のネウロイはただの大きな的でしかない。先ほどまでのうっ憤を晴らすかの如きエース軍団の総攻撃によりネウロイの装甲はみるみる削られていき、やがてゴンドラ部分の最奥に隠されていたコアが露出する。

 

「トドメは任せろ!汚名返上の…神槍(グングニール)ッ!!」

 コアが露わになった瞬間に一気に懐に入り込んだ昴の伸びた翼脚がコアを貫き、ネウロイの巨体諸共はじけ飛ぶようにして砕け散ったのだった。

 

「…終わった、わね」

「つっかれたぁ~…」

「だらしないぞ…と言いたいが、今回はかなり冷や冷やしたな…」

 ネウロイの反応が完全に消滅したのを確認すると、全員が思わず大きなため息を吐く。初めての古龍との戦い、そして危うく全滅しかかったことの緊張感が解け、心身の疲労が一気に押し寄せたのだ。しかし、一息ついて間もなく…

 

ガガッ…ガ…ガ…

「…む?」

 

ボンッ!

 今まで絶好調だった筈の坂本のストライカーが軋む様な音を立て始め、やがて機体のあちこちから破裂音と共に煙を上げると完全に停止してしまった。それと共に坂本が纏っていた真紅の輝きも消失する。

 

「うおおおッ!!?」

「へ…さ、坂本さんッ!?」

「少佐!」

 真っ逆さまに落下していく坂本に皆は一瞬面食らうが、直ぐに助けに向かおうとする。だが、坂本が落ちるのとほぼ同時に飛び出していた昴が下で待機しており、落ちてきた坂本を抱き留めた。

 

「っと…大丈夫ですか少佐?」

「あ…あ、ああ。済まん岩城、助かった」

「少佐~!無事か~?」

「岩城さんよくやりましたわ!…でもちょっと近いですのよ!」

「ペリーヌさん、今回くらいは…」

 坂本の無事に皆はひとまず胸をなで下ろした。…しかし、未だ煙を上げる坂本のストライカーはまるで数年近く動かし続けたかのように酷使されており、とてもではないが再起動など望めそうにはなかった。

 

「わっちゃー…やっちゃったなぁ。こりゃ直すより買い換えた方がマシだぞ」

「ニパの奴が雷に打たれた時より酷いナ…」

「…美緒、危ないからそのストライカーから降りて頂戴。あまり良くないけれど、途中で何かあるといけないからここで捨てていくわ」

「むう…仕方がないか」

 機械に精通したシャーリーととある理由で壊れたストライカーを見慣れたエイラから見てもスクラップ同然と判断されたことで、坂本は渋々ストライカーを外して真下の海に投棄した。

 

「…美緒、本当に大丈夫なの?顔色が悪いわよ?」

「宮藤に治癒をして貰った方がいいのではないか?」

「いや…おそらく、無意味だろう。これは怪我や病気とは別物だ、魔法力もだが…全身に全く力が入らん…」

「…やっぱそうなったか。流石に無茶が過ぎたみたいだな」

「やっぱって…スバル、少佐がこうなるの分かってたの?」

 昴の腕の中の坂本は先ほどとは真逆に青ざめるほどの疲労感と魔法力が底を突いたことで、息をすることがやっとなほどにぐったりとしていた。

 

「分かっていたというか…そもそも龍気エネルギーはバルファルク以外にはコントロール出来ないものなんだよ。普通の生物が龍気を浴びると、闘争本能が刺激されて好戦的になり、身体のあちこちが龍気によって一時的に発達する『獰猛化』って呼ばれる状態になるんだ。さっきの少佐は意図的に龍気活性したというより、おそらく使い魔が龍気の影響で獰猛化状態になったのが原因だと思うんだよ」

「私の使い魔が…それで妙に精神が昂ぶっていたのか」

「それでなんだが、さっきエーリカが言いそびれてたけど龍気エネルギーにもデメリットはある。龍気エネルギーによる身体能力の向上は、言っちまえば薬物の服用…ドーピングに近い。使い続ければその分ウィッチと使い魔自身を磨り減らしていくことになる。…ウィッチとしての寿命、最悪人としての寿命を縮めることになるだろうよ」

「そんなッ…!!」

「おいおい…洒落になってねーゾ」

「しょ、少佐死んじゃうの?私ヤダよぉ…」

「落ち着いてルッキーニちゃん。…岩城さん、まだ少佐は大丈夫なんですよね?」

「ああ、今回は短時間だったから魔法力を使い果たした程度で済んでる。…精々10分、それがウィッチの龍気活性状態のリミットラインだ。それ以上の使用は一秒ごとに寿命を縮めていくと思ったほうがいいな」

「…坂本少佐、隊長として今後一切の龍気活性の使用を禁じます。もし命令に背くようなら、戦闘隊長の貴女であっても厳罰…場合によっては軍法会議にかけることもあり得ますので、肝に銘じておきなさい」

「…了解した。私も早死にはしたくないからな、気をつけるさ」

「分かっているなら結構よ。…それじゃ、帰還しましょうか。今日はもうゆっくり休みましょう」

「そうですね。土方さんも心配しているでしょうし」

 

 

 その後、ペリーヌの精神的安定のためにミーナとバルクホルンに坂本を預け、皆は土方とアイルー達の待つ基地へと帰投していった。

 

 

 

 

(…しかし、オストガロアがあんなことになっていたとはな。あれだけ苦戦したのがオストガロアの『脚一本』でしかないなんて…皆には言えねえよなぁ、今はとても…)

 オストガロアという生物の全容を知るが故に、アレがオストガロアの力のほんの一部でしかないことに気づいた昴は今後の過酷な戦いを予感しつつ、それに立ち向かうための覚悟を秘めるのであった。




今回出てきたオリジナル設定について

オストガロア・P…オストガロアが自身の脚を自切し、それをネウロイに寄生させた存在。オストガロア自身の能力である龍属性光線や粘液を使うだけで無く、ネウロイと同化することでその特性を得て、切り離した脚自体にもコアがあるので複数のコアを有したネウロイという異質な個体へと変貌する。寄生したネウロイとは別の意識を持って動き、どちらかのコアを破壊した場合もう片方のコアが残った部分の全てを支配する。…仮に今回、坂本がネウロイ側のコアを先に破壊していたら、オストガロア・Pがネウロイの能力を引き継ぐことになっていただろう。
何故このような能力をオストガロアが得たのかは不明だが、ネウロイに寄生したオストガロア・Pはウィッチだけでなく周囲のあらゆる生物を補食することを最優先とし、ある程度捕食するとネウロイを操って本体の元へと帰還する。それが何を意味するのか…


ウィッチの龍気活性…生命の危機を感じるほどに消耗したウィッチが、高濃度の龍気を取り込むことで起きる現象。本来龍気エネルギーは一部のモンスターしか精製出来ず、よほど近づかない限り直ぐに空気に霧散してしまうのでほぼあり得ないことだったが、坂本が龍気の塊である赤色の龍氣玉を所持していたことが原因となった。この状態になると取り込んだ龍気を魔法力の代わりに使うことになるが、龍気が魔法力より遙かに燃費が良い為に必然的にウィッチとしての能力が向上することになる。坂本に至っては刀に龍気を流し込むことで烈風斬のようなエネルギーによる斬撃を放つことも出来る。
…ただし当然デメリットはあり、龍気活性中は龍属性やられ状態になるので固有魔法が封じられ、また身体への負担が大きいため長時間の使用は命の危険を伴う。更にストライカーも一時的に龍気で動かせるが、ガソリン車を軽油で強引に動かしているようなものなので魔導エンジンに大きな負荷がかかり、ウィッチが潰れるより早くストライカーが壊れてしまうこともある。


もっさん、一時的にパワーアップ。尚使えば使うほど上がりが早まるので二律背反な模様。

ではまた次回
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。