天翔ける凶星と黒い悪魔   作:マイン

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…お久しぶりです。言い訳になってしまいますが、リアルの方でちょっと色々心が病みかけになってしまいまして小説を書くモチベーションがダダ下がってしまってました。
なんとか多少は持ち直せたのでどうにか書き上げましたが、正直自信ない…後で後半部分書き直したりするかもです

お詫び代わりにおまけネタも載っけてみたので良ければ見てって下さい。ではどうぞ

…発進しますの続きもルミナスも延期でストパン界隈が静かなのが残念。早くライズでアマツマガツチとグラン・ミラオス実装されないかな~…


扶桑男児、秘めたる思い

 オストガロア・Pと飛行船型ネウロイを撃破してから数時間後、各々の疲労と支えられたままの坂本への負担を考慮した故にかなりゆっくりと飛行したため、日が暮れる間際になって皆はようやく基地に帰還した。

 

「お帰りなさい皆さん!お疲れ様でした!」

 出撃してから律儀に滑走路で待機し続けていた土方が敬礼を以て皆を出迎える。…しかし、何時になく疲弊しきった様相のウィッチたちとその中でより一層元気のない上にストライカーに乗っていない坂本を見て目を見開く。

 

「…み、皆さんどうなさったのですか?それに坂本少佐のストライカーは…」

「…土方、か。出迎えご苦労だった…な、基地の中で待っていれば良かっただろうに…」

「いえ…皆さんがネウロイと戦っているのにのうのうとしていることは出来ませんので。それよりも、一体何が…?」

「…土方さんには悪いが、その話は後にさせてくれ。今は休息が必要だ…中佐、俺はまだ体力的に余裕なんで報告書の準備と今日の夜間哨戒は任せてください。皆はひとまず休んでくれ…じゃないと明日が持ちそうになさそうだぞ」

「そうね…申し訳ないけれど、お願いするわ。報告書は今回のネウロイの要点だけ纏めてくれたら、起きてから私が仕上げるわ。…それと、分かっていると思うけれど」

「心得てます。…奴のことはまだ内密にしておきますね」

「ふぁぁ…んじゃスバルー、後はヨロシク~…」

「御免なさい岩城さん…哨戒任務、頑張って下さい」

「…そういうわけだ。済まんが土方…今日はお前も休んで良いぞ。私は…今日はもう、何も考えられそうにない…」

「は、はい…」

 状況を飲み込めない土方を余所に、ウィッチ達は格納庫でストライカーから降りると揃っておぼつかない足取りで自室へと戻っていった。

 

「…あんな皆さん、初めて見ました。今までどんなネウロイとの戦いの後であっても整然としていらっしゃったのに…」

「今回はちょっと色々あってな…。いくら軍人とはいえ、あの年頃の女の子にはキツかっただろうよ」

「一体何があったというのですか?」

「ん…まあ、土方さんには知っておいて貰った方がいいわな。実は…」

 

 

 武器の整備や報告書の用意を整備班に混ざって行いながら、昴は土方に先ほどの戦いの一部始終を説明した。

 

「…そんなことが。超大型のネウロイに加えて、古代の怪物がネウロイと融合して襲って来ていたとは…」

「少佐のおかげでなんとか倒せたんだがな。…でもその後、カールスラント組がオストガロアを倒せたからカールスラント解放に近づいたって喜んでてなぁ…。正直気は進まなかったんだが、ぬか喜びさせたままの方が後でキツいと思って教えちゃったんだよ。『さっき倒したオストガロアは、10本ある脚の内の一本分でしかない』…って」

「それは…なんと言って良いか。皆さんの心中、お察しします…」

 昴からオストガロアの全容を知らされたウィッチ達のショックは想像以上に大きかった。全滅寸前にまで追い込まれ、坂本が文字通り死力を尽くして倒した相手が、人間に例えれば指一本程度の力でしかなったという事実。それは欧州解放という最終目的を遙か遠くへと追いやってしまうことであり、かろうじて残っていた気力を吹き飛ばすに足るものであった。

 そんな訳で現在、ストライクウィッチーズは精根尽き果てた状態で揃って泥のように眠りこけていた。普段は好き勝手遊んだ挙句その場で寝ているため自室で寝ることの方が珍しいルッキーニが、シャーリーと一緒になってベッドに潜り込んで寝ている程である。ここ最近寝床にされているロッキーはルッキーニが来ないことを不思議に思いながら代わりにやって来たミルシィと寝ている。

 

「…ですが、納得しました。坂本少佐があれほどまでに憔悴しているのも、それほどの強敵を打ち倒されたからなのですね」

「ああ。…少佐の無茶がなかったら俺らも無事じゃ済まなかったかもしれないな。だからって何度もやって貰っちゃ困るものではあるんだけどな」

「龍気活性…と言いましたか。そんなものになって、少佐は本当に大丈夫なのですか?少佐への負担がかなり大きいと聞きましたが」

「どっちかって言うと獰猛化に近いんだけどな。…どちらにしろ、代償ありきの自己強化だ。短時間の使用なら負担も最小限で済むが、だからってなんともない訳じゃない。消えかけの蝋燭みたいなもんだ。ほんの一時激しく燃えて…いつ消えてしまうかも分からない、そんな博打みたいな力なんだよ」

「そう、なのですか…」

 手を動かしつつも見る間に曇っていった土方の様子に、昴は居たたまれなくなって声色を上げて切り替えようと続ける。

 

「ま、まぁよ!ミーナ中佐から使用禁止令が出たし、もう二度と少佐が龍気活性を使うことはないと思うぜ。そもそも今回みたいなのはイレギュラー中のイレギュラーだから、もう使う必要なんて…」

「…自分は、そうは思いません」

「ん?」

「断言してもいい。…少佐は何かしらの理由があれば、必ず再び龍気活性を使うでしょう。例えミーナ中佐に裁かれることになったとしても…」

「…なんでそう言い切れる?」

「…少佐は、強い方です。扶桑から遠く離れたこの欧州でずっと戦い続け、数多くの戦果を挙げてきました。ですが少佐は、それをひけらかすようなことはしません。それは少佐がその手のものに拘らないのもありますが…それ以上に、共に戦う仲間を守れたという事実の方が少佐にとっては大切なのです。故に、もし宮藤さんたちが危険に晒されるようなことがあれば、少佐は迷わず龍気活性を使うでしょう。…その果てに何があったとしても」

 神妙な面持ちでそう話す土方に、昴は坂本の想いの一端を垣間見たように感じた。坂本は一緒に戦う仲間に…とりわけ自身が連れてきた宮藤に対して強い責任を感じており、それを守ることを誇りとしている。それが坂本が師である北郷章香から受け継ぎ、今の彼女のウィッチとしての根幹を成しているのである。

 

 

 静かに話を聞いていた昴に、土方は僅かに逡巡した後に意を決してずっと心の奥底に仕舞っていた事を話し出した。

 

「…岩城さん、この際ですので言わせて下さい。正直な所、私は…貴方のことを受け入れられていませんでした。もし自分の態度に不快な思いをされていたのなら、それは気のせいではありません。申し訳ありません」

「ん…やっぱそうだったか。なんとなく余所余所しいからそんな気はしてたんだ。別にそのことは気にしちゃいないが…態々話したって事は、理由を教えてくれるのか?」

「…はい。今更言うまでもありませんが、我々軍人の多くは志願兵…己の意思で戦うことを選んだ者です。私もいざとなれば刺し違えてでもネウロイと戦う覚悟は出来ています。…ですが、実際に最前線でネウロイと戦うのはウィッチの皆さんばかりです。それは激戦区であればあるほど顕著なものとなり、魔法力のない男性兵の多くはウィッチのサポートに回ることが殆どとなります。…ウィッチとそうでないものにどれほどの力の差があるのか等ということは重々理解しては居ますが、ウィッチと共に戦うことが出来ないもどかしさは…私には痛いほど分かります。もし少佐の受ける代償をほんの少しでも肩代わりできるのなら、私はいくらでもこの命を懸けましょう」

「…!」

 ふと見渡せば、こっそり聞いていたのであろう整備兵達の多くが同じ思いだと言わんばかりの目を向けていた。彼らもその優秀さを買われてこ501の基地へと編成されたエリート揃いなのだが、それ故に…下手をすれば自分の娘と同じくらいの少女達に人類と自分たちの命運を託さなくてはならない現実に密かに苦悩していた。

 

「そんな折に…貴方のことを少佐から聞きました。男性でありながら魔法力を持ち、民間人であるにも関わらず戦場で多くのネウロイを屠ってきたという扶桑人のウィザード。…それを知ったとき、私はこの胸の奥に嫉妬の感情を抑えることが出来ませんでした。戦いたいと願った私たちではなく、何故民間人の貴方に戦う力が与えられたのかと。戦う必要のない貴方が少佐と共に戦場に赴き、軍人である私は何故安全な場所で待つしか出来ないのか…と。その思いが、本来歓迎すべき貴方という存在を…認めきれずにいた。なんということはありません…私の矮小な心の弱さが原因だっただけなのです」

「土方さん…」

 昴は、土方の吐露した内心に複雑な感情を抱いた。今まで昴は、ここが『ネウロイという侵略者と戦う世界』なのだということを知っており、バルファルクという絶大な力を得たことで自分と同じ思いをする人々がいなくなる為に戦ってきた。極論ではあるが、『それが出来るからやった』だけであった。

 だが土方と周りの皆が抱いていた思いを知り、魔法力がないために…男であるが故に『そうしたくても出来ない』人間がどれほど多く、どれほど苦悩しているのかということに想いを馳せ、自分の戦う理由が酷くちっぽけなように感じてしまったのだ。

 

 

「…なんか、軽い気持ちで接しちまって済まん。皆がそんな想いをしていたなんて思わず、俺は同性だからって気楽に仲良くなろうなんて思ってまってよ…」

「謝らないで下さい、岩城さん。貴方は何も悪くない、貴方が本気でネウロイと戦っていることは理解しています。…ですが、その上で…勝手な物言いかもしれませんが言わせて下さい。貴方は私…俺達の、いいや世界中の男性兵にとっての希望なんだ!ウィッチと共に戦場に立ち、彼女たちを守ることが出来るのは貴方だけなんだ!俺達の代わりになんて言わない、だけど…貴方の背中には、貴方が思っている以上に多くの人々の想いが託されていることを、憶えていて欲しい。それが…それだけが、俺が少佐にして差し上げられる、唯一のことなんだ…ッ!」

 

 その言葉は、土方の紛れもない本心の叫びであった。坂本美緒という扶桑が誇る英雄に誰よりも近く居ながら、彼女の戦いになんの助力も出来ない自分の無力さを昴に押しつけてしまう悔しさ。それを秘めることなく恥を忍んで誠実にぶつけることが、土方の誠意の証明であった。

 そんな魂の叫びに、昴はしばしの沈黙の後に口を開く。

 

 

「…俺はバルファルクを…古龍を宿したドラゴン・ウィザードだ。俺自身は人間である以上、人間を守るために戦うという意思と覚悟はある。不本意な命令をされたとしても、人命が懸かっているのなら従うさ」

「…?」

「だが…俺たちの使い魔は、古龍は違う。古龍はただの生物ではなく、この星に於ける生態系の頂点…自然現象や災害そのものを司る自然の意思のような存在だ。普通の使い魔はウィッチとの絆によって契約しているからウィッチの意思に従順だが、古龍がネウロイとの戦いに協力してくれるのは奴らが『地球を脅かす侵略者』であるからに過ぎない。勿論俺の意思はある程度尊重してくれるが、古龍が守るのはあくまで『地球』であって『人間』ではない。…故に、俺達は人間の都合のためには戦わない。俺が正式に軍に所属しないのはそういう理由もあってのことなんだよ」

「…それはつまり、状況次第では戦わない…ということですか?」

「そうだ。仮に…有って欲しくはないことだが、何らかの理由で人間同士で争うことを強いられた時、軍人である皆はどんなに嫌でもその命令に従わざるを得ないだろう。だが、俺はどちらにも肩入れするつもりはない。俺が戦うのはネウロイだけだ、人間同士の争いにドラゴン・ウィッチの力を持ち込むつもりはない」

「…何故、そんなことを話すのです?」

「これが俺なりの…アンタ達の『覚悟』に対する答えだ。俺は俺に与えられた力の責任として、そのルールだけはどんな時であっても遵守させてもらう。だから『軍人』としての彼女たちの戦いの全てに関わることは出来ない。…だが、『人類』としての、この星を守るための戦いに於いてならば、この命が尽きるまで皆と共に戦い、力になることを誓おう。彼女たちの勝利を信じる、アンタ達の願いと期待に応えるためにな」

 力強い眼差しを向け、昴は土方に…そして周りの整備兵達に宣言する。それが昴にとっての、彼らの誠意に対する最大限の答えであると。土方は一瞬面食らったような顔になり、やがてその意図を理解すると薄く笑みを浮かべる。

 

「…その言葉が聞けて、何よりです。それだけで、私はここに来て良かったと心底から思います。こうして言葉を交わさなければ、私は貴方によからぬ誤解を抱いたままだったかもしれません」

「それは俺も同じさ。…アンタが本音を話してくれたおかげで、俺は俺の戦いに意味を得ることが出来た。こいつが有る限り、俺は何度だって翔べる。ネウロイどもがこの星を諦めるまで、俺が奴らにとっての『凶星』で有り続けてやるよ」

「ええ。…私にも何か力になることがあればいいのですが」

「んー…なら、ひとつ頼みがあるんだが」

「はい?」

「土方さん、士官学校を出てるんだろ?俺は剣には少し憶えがあるんだが近接格闘に関しては俄仕込みも良いところなんでな…その辺り、正規の軍人であるアンタにご指導願いたいんだが…どうかな?」

「…分かりました。私も剣では少佐には遠く及びませんが、柔道と空手には多少自信があります。それで貴方の助けになるのなら、喜んで協力しましょう」

「それは助かる…」

 

「ヘイ、ちょっと待ちなドラゴンボーイ」

 土方が頼みを快諾したのを見計らったかのように、整備兵の中から数人が前に出てくる。人種はバラバラだが、揃って体格が良く隙の無い動きをしていた。普段ストライカーも銃火器も使わない為に殆ど接点の無い整備兵達が絡んできたことに昴は思わずたじろぐ。

 

「へ?お、俺に何か?」

「そういうことなら、俺達にも一枚噛ませてくれ。…俺達もネウロイ共と戦う為に鍛えたはいいが、ウィッチの嬢ちゃん達のサポートしか出来なくて持て余してた所なんだ。俺達の技がお前の助けになるってんなら、その努力も報われるってモンだぜ」

「我がブリタニア発祥のサイレント・キリング…憶えておいて損は無いですよ」

「祖国での戦いでは役に立てなかったが、オラーシャ秘伝の格闘術であるシステマを伝授してやるぞ」

「俺はサンボの元師範代だ。柔道よりも遙かに実践的だからきっと役に立つぜ」

 彼らもまた、ネウロイに故郷や大切なものを奪われ、その無念を晴らすために前線へと志願した兵士達だ。しかし、ウィッチ以外まともにネウロイと戦う術の無い現状に歯噛みしつつもそれを抑えてサポートに徹する他なかった。その想いを自身の鍛え上げた技と共に昴に託せるのなら…人種は違えど、土方と同じ真っ直ぐなその気持ちは昴に確かに伝わっていた。

 

「…ああ、願ってもねえ!こっちからお願いしたいぐらいの申し出だぜ」

「ハッハー!ずいぶん張り切ってるが、途中で音を上げたって容赦しないぞ?」

「はっ…上等ッ!こっちは爺さんと相棒のおかげでスパルタには慣れっこなんだよ。そっちこそ途中でネタ切れして拍子抜けさせないでくれよ?」

 やる気満々で軽口を叩き合う整備兵達と昴に、ノリ遅れた土方は一瞬キョトンとするが…やがて噴き出すように笑い、次の瞬間には坂本を彷彿とさせる鋭い表情となって檄を飛ばす。

 

「ふっ…ならば岩城隊員!これより我々が貴様の師範となる!自分で望んだ以上、投げ出すことは許されない!最後まで着いてこいッ!!」

「…ハッ!望むところであります、土方二等兵殿!」

 土方の檄に敬礼を以て応える昴。

 

 そうして男達はそそくさと残った仕事を片付けると、ウィッチ達を起こさぬよう静かに…しかし迸る気合いを抑えきれない様子で基地近くの森の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 …翌朝、疲労のために朝食の支度に遅れてしまった宮藤が大急ぎで食堂へと駆けつけると、グランマたちに混ざって準備をしていた顔面の腫れ上がった昴に思わず大声を上げてしまった。その声に驚いて次々に目を覚ましたウィッチ達も昴の現状に驚き問いただすが…

 

「あ~…これはその、何というか…可愛がり、ごっちゃんです!…的な?」

 と、答える昴に首を傾げるばかりであった。

 

 

 その後、任務を終えて扶桑に帰還する土方を見送りに出たのだが、昴だけで無く土方や集まった整備兵達も揃って顔や身体に瘤や痣をこしらえており、殴り合いの喧嘩でもしたのかと思えばそんな雰囲気も無くそれどころか互いの傷を誇りあうような様子に、ウィッチ達はますます訝しむしか無かった。

 

「…では、後のことは頼んだぞ。昴」

「おう。そっちも頑張れよ、圭助」

 坂本に別れの挨拶を済ませた後、いつの間にか名前で呼び合うようになって固い握手を交わす2人。自分たちの寝ている間に何があったのか…それはその様子から何かを察した坂本を除いて、ウィッチ達には知る由の無いことである。

 

 こうして土方圭助は、来た時よりもずっと晴れやかな気持ちで扶桑へと帰っていった。友へと託した、ウィッチ達への希望を信じて。




公式も二次創作も土方があんまり掘り下げられてないので今作では男の友情枠としてちょっと出張ってくるかもです。…ぶっちゃけクソ真面目以外のキャラが分からんから殆ど創作ですけど

ではまた次回。そろそろ本筋を大幅に進めて行く予定です。ガリア編が終わってからが本番なので
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