発狂眼帯に転生!しかしそこはフォドラの大地だった……… 作:ナナシのG愛好家
「……ど、どうしてこんなことに…………。」
そう口にする、ワンピースの水着を着たピトーは顔を引きつらせている。
「えっと……その…………。」
その横には、毛並みの鮮やかな(ドロテアに整えさせられた)尻尾を抱えた、銀髪のまだ幼さの残る青年、パルヴィーズがおろおろとしている。因みに、来ている少しサイズの大きな水着は、フェルディナントが数年前に着ていた物らしい。
「心外だな。私達は、君たちとの親睦を深めようと、ゆったり泳ごうという話を提案しただけだという言うのに。」
と、腰に手を当ててフェルディナントが言う。
「…………どうして海になるのさ…………。」
そんなフェルディナントに、ジト目を向けるのはピトーだ。
「ん? 海はいいぞ、ピトー。思いっきり泳いで、思いっきり楽しんで、夜はバーベキューをして大いに楽しむ!! そうすることで親睦を深めようと」
「そうじゃなくて!! …………な、なんで、なんでボク達なんかと親睦を深めようとするのさ!?」
納得いや、理解ができないという表情で、ピトーはフェルディナントに問いかける。
「何故…………か。」
フォドラの外から来た、獣人の奴隷。そんな彼女の境遇を昨日聞いたフェルディナントは、そんな彼女に顔を向け、逆に問いかけた。
「それは、君が奴隷だから出た問いか?」
「え?」
そのフェルディナントの言葉に、ピトーは驚いたような顔をする。
「君は奴隷だから、優しくされるべきではないと、そう言いたいのか?」
と、その鋭い眼光で彼女を見据える。
「そ、それは…………。」
「君は、君が奴隷になるのは当然だったのか?」
「ち、ちが……それは…………」
と言ってから、ハッ、とした顔になる。それに、フェルディナントは微笑みかける。
「ならば、自分は奴隷だから、なぜそんな奴隷にやさしくするのか?などという問いはやめてくれ。この領地に流れ着いたからには、君の事は手厚く保護しよう!!」
「え? な、なんで…………なんでそこまでする義理があるのさ!!」
ピトーはそう問いかける。それに対し、フェルディナントは、笑みを向け、こう言った。
「私は、人は生まれた瞬間から、何か意味を持つと考えている。」
「…………どういうこと?」
その声に隠れた、ほのかな影に気が付かず、フェルディナントは、
「私は、貴族に、エーギル家の嫡子に生まれたのには、何か意味があると、私は考えている。それは、臣民を救い導くことなのだろうと私は考えている。この領地に流れ着いたからには、君をも救って見せよう!! …………どうしたのだ?」
下を向いて、こぶしを握るピトーは、プルプルと震えている。
「…………も意味はあるの?」
「……すまない、よく聞こえなかった。なんだって?」
「生まれたことすべてに意味があるんだとしたら、奴隷として生まれことにも、意味はあるの!?」
そう問いかけると、ピトーは、涙のたまった眼で、キッと睨んで、叫んだ。
「…………君は、奴隷として生まれたわけではないだろう?」
「ボクは奴隷の腹から生まれた子だ!!」
「ッ!?」
その声と言葉に、フェルディナントは気圧される
「ボクは生まれた時から、ずっと奴隷として生きてきた!! 痛くて苦しい記憶がほとんどだ!! うれしいとか、楽しいっていう感情が、どういうものかすらわからない!! …………そんなボクに生まれた意味があるっていうのか!?」
「そ、それは…………。」
「うぬぼれだよ……そんなのは…………。外の、あの世界を知らない、夢見がちな奴の戯言だ!!」
その言葉に、フェルディナントは気圧されるように後ずさりし、
「そうか…………。」
という言葉とともに、一つの岩に腰を掛けた。
「私の気持ちは…………君にはそんな風に映ってしまうのか…………。」
「ッ!!」
その言葉に、何とも言えないような表情をしたピトーは、走り去っていってしまった。
「ピトー…………。」
それを見て落ち込むフェルディナントに、
「どうしたんだい? フェルディナント。」
と、声をかけるものがいた。
「……リンハルト…………。」
顔を上げたフェルディナントの顔を見てリンハルトは、彼の隣に座った。
「らしくないね。そんなに君が落ち込むなんて、あの獣人の彼女と何かあったわけ?」
「…………。」
「(だんまりか…………こりゃ、相当きつかったんだろうな。)」
そんなことを考えながら、リンハルトが顔を抑えたフェルディナントを見ていると、ふと、フェルディナントが口を開いた。
「なぁ、リンハルト…………。」
「ん? 何?」
「私は…………間違っていたのか?」
「はい?」
「私は、貴族に生まれたからには、何かをなすべきだと思っていた。平民に生まれること、貴族に生まれること、人は、生まれた時から、そこに何か意味を持って生まれると考えてきた。」
「ふぅん。」
いつも通りの、抑揚のない声でリンハルトは相槌を打つ。
「私がエーギル家に生まれた意味は、臣民を従え、助け、帝国宰相として国を引っ張っていくことだと思っていた。」
「へぇ。」
「だが、この考えが正しければ、彼女が、ピトーが奴隷の子であるということに意味を持ってしまう…………!!」
「そうなるね。」
「私の考えは、間違っていたのか? 傲慢極まりない、身勝手な行いだったのか?」
そう言い、さらに落ち込むフェルディナント。それを見たリンハルトは。
「はああぁぁぁ。」
と、盛大なため息をついて、
「なんだ、そんなことか。」
と、ケロリと答えて見せた。
「なっ!? 私は真剣に悩んでいるのだぞ!?」
「いや、そもそも君、はたから見たらその物言い、かなり傲慢だよ?」
「なっ!?」
「自分だけならまだしも、他人の生まれに意味を求めるのも、確かに傲慢だ。」
「ぐっ!!」
「でもさ、それでいいんじゃないの?」
「は?」
次にリンハルトから放たれた一言に、フェルディナントは困惑した。
「な、何を言っている?」
「君は確かに傲慢だ。無理やり彼女を海につれてきたことも、そのプライドも、貴族が何たるか~って、いつも僕に言うそのエラそうな態度も。でもさ、その傲慢さは、君の優しさからくるものだって、僕はわかるよ?」
「…………。」
フェルディナントは、今度は至極まっすぐ、リンハルトの顔を見つめて言葉を聞いていた。
「そうやって彼女の言葉のために悩んであげるのも、その君の傲慢で、だけど温かい優しさから来てるものさ。もちろん、アレもね。」
「なっ!? アレ…………というのはまさか!!」
「ああ。覗かせてもらったよ。それに、君の考えも、案外間違っているわけじゃないかもしれないよ。」
「なんだと…………?」
「君は生まれながらの貴族で、ピトー君は生まれながらに奴隷だった。だけど、奴隷も貴族も、もともとは平民の中から出てものだ、前者は民を導くために、後者は民や金持ちに虐げられるために。でも、それは、どちらも平民達を沸かせるためだ。」
「どういうことだ?」
「簡単だよ。貴族は民を導くことで、民に安心感を与える。この人についていければ安心だ。ってね、そして奴隷は、虐げられることを市民が見ることで、彼らは心が安らぐ。自分は彼らよりひどくない。だから安心だってね。」
「…………。」
「案外、この二つの本質は、人の心の闇という部分に行きつくのかもしれないね。」
と言ってから、
「まぁ、これは哲学的な話だからね。彼女が生まれた意味、それは何も、生まれた時の動向で決まるものじゃないよ。大貴族も悪党も、生まれた時は赤ん坊だ。」
「…………。」
「人の意味は、どう生きようとするかで決まると思うよ。もし、彼女がその意味を見つけられなくて困ってるのなら、君が道を用意してあげればいいんじゃないの?」
「意味を……与える…………か。」
「うん。傲慢な優しさを持つ、君にピッタリなんじゃないかい?」
「…………傲慢でいい…………か。ああ!!わかった!!」
そう言って立ち上がったフェルディナントの顔には、輝きが戻っていた。
「ありがとうリンハルト!! 君のおかげで、憑き物が取れたような気分だ。早速、もう一度彼女に、私の意見をぶつけてくる!!」
と言い、砂浜を駆けていく。
「ふぅ。彼にはあれくらいがちょうどいいな。」
その様子を微笑みながら見送ったリンハルトは、
「なんだか頭を使ったら眠くなったな…………ふわぁ。」
とあくびをして、崖上から生えた植物が、程よく日光を遮るスポットで寝ころび、睡眠を始めるのだった。
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軽い素材でできたボールが宙を舞う。レオニー、カスパル、アッシュ、ペトラは、パルヴィーズを誘って色々な遊びをしていた。今は、ビーチバレーの真っ最中だ。その様子を、砂浜に座ったピトーが眺めていた。すると、
「隣、いいかしら?」
と、ドロテアが声をかけた。
「…………あなたは…………。」
「ドロテア・アーノルトよ、ピトーちゃん。」
と、ピトーに微笑みかける。
「見てたわよ、ピトーちゃん、フェル君との喧嘩。」
というと、ピトーの耳と尻尾がビクッ!! と動いた。
「お、お願い……ボクどんな罰でも受けるから……パルの、パルの命だけは………。」
そう震える彼女に、ドロテアは、
「奴隷時代は罰を受けるのが当たり前だった?」
と、やさしく問いかけると、コクリ、とうなずいた。
「理不尽な理由で、何度も、散々やられることも…………。」
そう言うと、ドロテアは、
「わかるわ。私もつらかったから。」
と言った。
「…………え?」
「奴隷じゃないけどね、孤児だったの、私は。」
と、微笑んだ。
「あなたも…………フェルディナントに拾われたの?」
と聞くと、彼女は、
「ピトーちゃん…………フェル君の事ハーレム野郎か何かと勘違いしてない?」
と言ってから、
「私たちは、同じ学校の同級生なの。今回は、フェル君が休暇に招待してくれただけなのよ?」
と言ってから、
「ガルグ=マクって言うんだけどね、そこに来る前は、歌劇団にいたの。」
「カゲキダン?」
「舞台の上で、物語の人物になってその物語を演じるの。その中で、歌ったり、踊ったりして観客を楽しませるのよ。」
「…………。」
「まあ、そこで輝けたのは、孤児だった私が、拾われたからだったんだけど。」
「そう…………なんだ。」
暗い声を出すピトーに、ドロテアは問いかける。
「何が…………あなたをそんなに苦しめているの?」
「……生まれてから…………ずっと奴隷として生きてきた。」
「…………。」
「ボクは…………ずっと、こんな苦しい日が続くと思ってた。今はないけど、僕にかけられた首輪と、奴隷の紋章が、ずっと訴えかけてくるんだ。お前は死ぬまで奴隷だって。」
「…………。」
「いろんな人たちが、僕に悪意を向けてきた。悪意のある視線しか、感じてこなかった。」
「…………。」
「わかるんだ。フェルディナントにはそれが無い…………全部、善意で言ってくれてるんだ。それが分かる…………でも、ボクは…………ボクには、どうそれを受け止めていいかわからないんだ…………!!」
顔を抑え、そう言って震える。
「そうなのね…………。」
「パルは、どこかの王族だったらしいんだ。」
悲しそうな顔をするドロテアに気が付かず、アッシュ達と話しているパルヴィーズを見ている。
「王族?」
「うん…………攫われて、僕の居たところに来たときは…………本当におびえてて、守らなきゃって、思ってた。」
種族も似てるしね。と、尻尾をプラプラさせて。
「…………そうなの。」
「うん。パルには、ボクと違って、幸せの受け取り方が分かると思うから…………ボクみたいに、フェルディナントを傷つけないで済む。」
「……傷つける…………ねぇ。」
ドロテアはそう言うとため息をついた
「いい? ピトーちゃん。よく聞いてほしいの。」
「え?」
急に声音を落としたドロテアに、呆けた顔を向けたピトーは、ドロテアにガシッ!! と肩をつかまれた。ドロテアのまっすぐ見据える彼女の瞳に、確かに恐怖の色が浮かぶのを見たドロテアは、
「(やっぱり、こういうのはトラウマよね…………でも、こういう時、こういう子と相対するときに、いちいち相手のトラウマを気にしていたら、いつまでもトラウマの地雷原を前に、ピトーちゃんに近づけない。だから、ここはあえて、踏み込ませてもらうわよ!!)」
という決意を胸に、口を開いた。
「幸せになる資格。なんて言葉は、使っちゃだめよ。」
「え?」
「いい? 幸せになる資格なんてものは、無いの。」
「ど、どういうこと?」
「幸せになるっていうのは、当たり前の事なのよ、ピトーちゃん。貴族でも、平民でも、それこそ孤児や奴隷にも、当たり前に、幸せになる権利がある。皆、おんなじ命だからね。」
「で、でも、」
「ええ。その他人が幸せになる資格を、平気で踏みつぶす奴らは、世の中に腐るほど溢れ返ってるわ。でもね、めげちゃダメ。そんな奴らに、負けちゃダメ。」
「ま、負ける?」
そう言い、ピトーが首をかしげる。
「ええ。喜び方が分からない? 幸せになる資格? そんな言葉を使う時点で、貴方はそういうやつらに負けているわ。」
「…………でも、ボクは、ホントに。」
そう言い震えるピトーに、ドロテアは笑みを浮かべる。
「安心して。ピトーちゃん。いい? よく聞いて。喜び方。なんて言うのは簡単よ?」
「え? ど、どうすれば…………。」
「ここよ。」
そう言って触れたのは、ピトーの胸の、中心だった。
「ここ?」
「ええ。正確には、ここだったり、ここだったり、ここだったりするのかもしれない。」
そう言って、彼女の手や顔、足と言った体の部分を指さす。
「どういうこと?」
「目に見えないし、医学的にあるわけじゃないけれど、確かにそこにあるんじゃない? 心は。」
「心?」
そうピトーはオウム返しに、自分の胸に手を当ててみる。
「ええ。心っていうのは、誰にでもあるの。私にも、フェル君にも、いつも無表情で何考えてるかわかりずらい先生にも、戦闘中暴走するザビーネ先生にも、それこそ貴方を奴隷として虐げた奴にも。そしてもちろん、貴方にもね。」
と言い、笑って見せる。
「資格や権利の問題じゃないの。あなたは『知らない』だけ。どう喜べばいいか、わからないだけ。でも、きっとわかる日が来るわ。それがいつになるかはわからないけど、心が教えてくれるはずよ。これが、喜びだって。」
「…………心が。」
「それじゃぁ、フェル君と仲直り、してきましょ?」
「え? で、でも、ボクは彼を…………。」
「大丈夫。あのフェル君よ。あなたの暴言の一つや二つ、正面から受け止めてくれるわ。それで悩んで、答えを出して、笑顔であなたのもとに向かってくるの。ほら。」
そう言い、ドロテアが指さした先には、走ってくるフェルディナントが。獣人特有のピトーの目は、彼の目が、自信に満ちていることを感じ取った。
「それじゃぁ、お邪魔虫は退散するわね?」
「え?ちょ、ちょっと!!」
さりげなーく去っていくドロテアを呼び止めようとするが、ドロテアはウィンクをしてレオニーたちのもとへ行ってしまう。追いかけようとしたピトーの背中に、
「ピトー。」
と、フェルディナントの声が刺さった。
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「ここで…………いいの?」
「ああ。」
その後、フェルディナントの提案で場所を移すことにした二人は、以前浮かんでいたピトーとパルヴィーズを彼とカスパルが救い出した、岩場に来ていた。
「あ、あのッ」
「ピトー。」
切り出そうとした二人の言葉は、お互いに阻まれてしまう。
「え、えっと、先に…………。」
「いや、すまない。言いたいことがあるなら言ってくれ。」
さらに、お互い譲り合ってしまう。
「……じゃ、じゃぁ、ボクから…………。」
切り出したのは、ピトーだった。
「え、えっとさ、その、ご、ごめん。」
「ピトー?」
「確かに、不安になってたけど、ボクの言った言葉、その、うぬぼれだとか、戯言だとか、言い過ぎたよ、ごめん。」
そう言い、頭を下げる。
「いや、いいんだピトー、頭を上げてくれ。」
フェルディナントは、そんな彼女の肩に手を乗せ、そう言った。
「君に謝られる筋合いは、私にはないよ。」
「え?」
顔を上げたピトーの前にあったフェルディナントの顔は、微笑んでいた。
「君のおかげで、私の考えを改めるきっかけが作れた!! むしろ、私は君に感謝をするべきだ!!」
そう高らかに言うフェルディナントに、思わず彼女は思った。
「(ああ、まぶしいな。)」
と。今からどんなことがあっても、こんな風に、前を向いて、ただひたむきに歩いていくんだろうな。と、生まれてからずっと奴隷として生きてきて、光に目を向けることが、希望を見ることが怖くなってしまった自分とは、大違いだと。そう思った時だった。フェルディナントが、目の色を変えた。
「ピトー!!危ない!!」
「え、キャッ!?」
そう言い、即座に彼女を抱き寄せ、岩肌に隠れる。その直後だった。岩肌に、矢が突き刺さったのは。
「これは…………。」
「矢? ど、どうしてボクに…………」
「その娘を渡してもらおうか、フェルディナント=フォン=エーギル。」
そんな声とともに現れたのは、見事な錫杖を携えた、純白に法衣に身を包んだ男。そして、その男を中心に、二人を取り囲む、白装束の兵士たち。
「西方…………いや、東方教会の祭司長殿!?」
その顔に。フェルディナントは驚く。
「如何にも。さぁ、その異端の鬼子を引き渡してもらおう。」
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「ど、どういうこと!?」
「何で東方教会が!?」
パルヴィーズを引きつれたアッシュ達は、そんなことを言いながら協会の追手から逃げていた。
「おとなしく鬼子を引き渡せぇ!!」
「すべては女神さまの為に!!」
矢や魔法が飛んでくるが、武器を少し離れたパラソルのところに置いてきてしまっているアッシュたちにできるのは、逃げたり、水を操る、アッシュの【キメリエスの紋章】の力で炎魔法を相殺したりする程度だ。
「すみません…………僕がもっと紋章の力を使いこなせればよかったんですけど…………。」
と、申し訳なさそうに謝るアッシュに、
「何言ってんだよ!! 数節前に目覚めたばっかの紋章の力をそこまで使えてる時点で凄ぇって!!」
と、レオニーが言う。
そして走っていくと、パラソルの位置まであともう十数メートルというところに、リシテアとリンハルトがいた。二人の足元には、彼らの武器が。
「武器持ってきたよー!!」
「皆さん!! こっちです!!」
と、手を振っている。
「ありがとなお前ら!!助かったぜ!!」
一番のりにカスパルが、自分の持ってきた武器である刃のついた手甲を取ってはめる。
他の皆も、武器を取った。
「パル君!! 僕の後ろに!!」
アッシュも弓に矢をつがえパルを背後にする。
「ここで食い止めるぞ!!」
レオニーが槍を構えてそう声を出す。
「「「「了解!!」」」」
そうして、襲い来る東方教会兵に、レオニーたちは向かっていった。
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「何度もは言わぬ、その鬼子を引き渡せ。」
そう言い、祭司長はフェルディナントに手を伸ばす。その答えは、
「ふざけるな!! 何が鬼子だ!!」
という、怒りの表情と拒絶だった。
「すべては女神さまの為なのだ。」
「彼女をどうするつもりだ!!」
彼女を背に、周りの兵士たちからかばうようにそう声を上げる。
「とぼけるな。その尾、その耳、その娘は、伝承にもある魔獣の巫女であろう!!」
「そんな伝承は知らん!!」
と、フェルディナントは、祭司長にそう声を上げる。
「小僧、いくらエーギル家の嫡子とはいえ、状況を理解しろ。あまり粋がると、痛い目を見ることになるぞ…………!!」
そういい祭司長はフェルディナントを睨むが、
「抜かせ!! 私の死体が見つかれば、君たちは困るだろうな!!」
と、自信気な目をするが…………。
「フン。残念だったな。では、フェルディナント=フォン=エーギルは海で泳いでいたところ、エーギル家抹殺をもくろむ賊徒に、仲間もろとも惨殺されるほかあるまい。」
そう言うと、武器を持った男が数人。じりじりと近づいてきた。
「ふぇ、フェルディナント…………。」
「ピトー、大丈夫だ。私は君を、見捨てはしまい!!」
そう言うフェルディナントは、足を高く上げた。それと同時に、緑色の、まるでボウガンのような形の紋章、きっほるの紋章が浮かび上がる。
「大地の躍動!!」
フェルディナントが地面に足をついた瞬間、地面の揺れが教会兵たちを襲った。
「地震結界!!」
キッホルの紋章の大地を操る力。それが、一定範囲に短い時間だが、突き上げるような揺れを起こす。そこまで大きなものではないが、体勢を崩すには十分だ。よろめいた槍兵に、
「そこだっ!!」
と、素早く肉薄して、男の槍を手に取る。そして、男の腕の力を利用して、
「ハアッ!!」
「ぐえぇ!?」
男に槍の先端を突き刺し、引き抜く。そのまま男の今までいた、彼によって空いた包囲網の穴を、ピトーの手をつかんで抜ける。
「急ぐぞ!!」
「え、ええ!?」
そのまま走っていく姿を、祭司長が許すはずもない。錫杖を右手に兵士たちに、
「追え!!」
と、追撃を命じた。
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「フェル君!! ピトーちゃん!! ケガはない!?」
そして、レオニーたちに襲い掛かってきた東方教会兵たちを返り討ちにした、パルヴィーズ護衛メンバーと合流を果たす。
「ああ。それより、東方教会の祭司長が、彼女たちを狙っている。魔獣の巫女…………だとか。」
「魔獣の巫女? それって、」
「わかってるよリシテア。古い文献に書かれてた、魔獣を従えた魔将の事でしょ? 確かに彼女の特徴は獣人に当てはまるけど…………魔獣の巫女の話は伝説であって聖典の一章ではないし、あの錫杖…………誰かに何か吹き込まれたね。」
「あの魔力…………聖なるものですが、なんだか禍々しい何かを秘めている気がします…………。」
と、追ってきた祭司長を前に、リンハルトとリシテアが分析をする。
「何はともあれ、だ。」
槍をクルクルとまわして、フェルディナントは柄の先端を地面に当てる。
「これは、エーギル領での問題だ。私なりに、満足のいく形で決着をつけさせてほしい。」
と、皆を見回して。
「…………いいだろう。今回は譲ってやる。」
と、フェリクスは刀の柄から手を離した。
「今回だけだぞ?」
と、不承不承といった感じでレオニーもため息をつく。
「フェルディナント、かまして来いよ!!」
カスパルも、ニカッと笑ってグーサインを出していた。
「ああ!!」
皆の期待を一身に背負い彼は前にでる。
「祭司長!! 貴殿と、一騎打ちを望みたい!! 誇り高き貴族として!!」
と、声を張る。すると、祭司長は、
「命知らずの若造め…………いいだろう!!受けてやる!!」
と、まっすぐこちらにやってきた。
互いに一定の距離を取り、祭司長とフェルディナントは向かい合う。
「いざ!!」
「参る!!」
フェルディナントが踏み込むと同時に、祭司長は錫杖を構えて魔方陣を展開する。そこから放たれたのは、長射程を誇る魔法、トロンだ。
「くっ!!」
「まだまだ青いな。」
それをギリギリで躱すフェルディナント。しかし、射程で利がある魔法に、フェルディナントはじりじりと追い込まれていく。
「フェルディナント!! このままじゃ………」
ピトーが声を上げるが、フェルディナントは、一瞬だけ彼女のほうに顔を向け、笑った。
「大丈夫だ、ピトー!!」
「一騎打ちの最中によそ見とは、舐められたものよ!!」
そう言い、祭司長が杖を掲げる。
「降り注げ、【アグネアの矢】!!」
そして、フェルディナントの頭上から、極大の光の矢が降り注いでくる。
「光属性最上級魔法!?」
「マズイ!!」
そうリシテアとリンハルトが声を上げる。しかし、
「大丈夫だ!!」
そんな言葉とともに、地面を蹴った。アグネアの矢の発動と同時に。
「何っ!?」
素早い動きで、フェルディナントはアグネアの矢の範囲から、逃れていた。そのまま一気に祭司長に距離を詰める。
「フッ!!」
「ぐっ!!」
フェルディナントの突きを、祭司長はかろうじて受け止める。
「アグネアの矢…………光魔法の魔法師でもほんの一握りしか使えないといわれるクラスの魔法だ。私の突きを受け止めたその反射神経と言い、からくりはその杖か?」
「貴様に答える道理などない!!」
そう言い、フェルディナントの槍を押しのける。
「フッ!! 八ッ!! セアッ!!」
すかさずフェルディナントの連撃が飛ぶが、それをも錫杖で捌いて見せる。
「あの動き…………
リンハルトがそう考察するが、
「でもよ、それってかなりの高等魔法じゃなかったっけ?」
「ああ。
「さっきの光魔法と言い、明らかに何か怪しいです。フェルディナント、気を付けてください!!」
と、リシテアも声を上げる。
「グッ!! 身体強化か、なかなかやるようだな!!」
「フン!! 貴様こそ、この
「あがいて見せるさ!!限界までな!!」
というようなことを言いながら、槍と錫杖をぶつけあう。
「ハアッ!!」
「ぐおっ!?」
そして、錫杖を大きく弾いてフェルディナントが祭司をよろめかせた。
「そこだぁ!!」
そのままフェルディナントの突きが飛ぶが、
「かくなる上は………」
槍が振るわれる直前、そう言い、錫杖をフェルディナントのほうに向けた。その瞬間、光が二人を包み、フェルディナントのスピードが下がり、祭司長が加速した。
「こうよっ!!」
「何!?ぐあっ!?」
フェルディナントは突きを躱され、錫杖で殴りとばされる。
「今の…………まさか!!」
その動きを見て、リシテアが驚愕した。
「リシテア? 何かわかったの?」
「あの杖…………ずっと、見た目や光の神々しさとは裏腹に、何とも言えない薄気味悪さを感じていました…………今それが分かりました。あの動き、明らかに生気を、【命を吸い取る権能】を持っています!!」
「まさか、アグネアの矢は高段階のエンチャントの魔力減は…………。」
「今更気が付きおったか。そう、信徒の命よ!!」
と、祭司長は声を上げる。
「馬鹿な………貴様!! 何をやっているかわかっているのか!?」
フェルディナントが指を向けるが、祭司長は
「ああ、当然だ。信徒たちはみな、気高き目的のために命をささげたのだ。魔獣の巫女を、異端の民を殺す。そのために、邪魔者を粛正するためにな!!」
そう語る祭司長の目。それは、まさに狂気だった。自分の行いが、絶対に正しいと信じる者の目。そして、それが間違っていると思うからこそ、おぞましく、狂気でゆがんだように見える瞳。
「貴様…………!!」
「そういうことだ、フェルディナント=フォン=エーギル。異端の小童に、魔獣の巫女に加担する悪徳貴族め!!」
まっすぐ向かってくるフェルディナントに、祭司長も錫杖を構える。
「この私が、粛正してやろう!!」
そして、薙ぎ払いを半歩下がって躱し、突きを避けると同時に背後に回り込んで、高らかに声を上げた。
「死ね!!」
「フン!!」
しかし、振り下ろされる錫杖よりも早く、一度突き出した槍を引き戻し。槍の柄で、祭司長の腹を突いた。
「ぐぼあぁ!?」
「いかに感覚と身体能力が高まろうとも、技も経験もないお前に、負けるわけにはいかん!!」
そう言うと、反転して、そのまま地面を転がった祭司長に向かっていく。
「こ、このっ!!」
とっさに祭司長は、トロンの構えを取ってしまう。それが命取りだった。
「何が異端だ!! 何が魔獣の巫女だ!! 彼女たちは、虐げられ、そしてこのフォドラに流れ着いた!!」
「くっ!!」
そう言いながら、祭司長の錫杖を弾き飛ばした。
「ぬおっ!?」
「彼女たちはもう、苦しんだんだ!! 苦しんで苦しんで苦しみぬいて、ここまで来た!! そんな彼女たちを、お前は更に、虐げ苦しめるというのか!!」
「があぁぁあ!?」
フェルディナント怒りの連続突きが、祭司長を襲う。全身から血を吹き出し、倒れこむ祭司長に、
「虐げられてきた奴隷を救い、民を導き、笑顔にする。それが貴族だ。それを阻むというのなら、私は容赦しない。」
と、冷めた瞳を向けながら。
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《数日後 大修道院》
その後、駆けつけてきたせいロス騎士団の元、東方教会の兵士たちはとらえられ、錫杖は没収となった。エーギル家にはレアから公式に謝罪が入り、ピトーとパルヴィーズの二人は、
「今日から
「同じく、パルヴィーズ=フォン=エーギルです。不束者ですが、よろしくお願いします!!」
と、パルは少し大きめの学生服に帽子を、ピトーは、フードのついた短めのマントのついた制服を身にまとい、尾と耳を隠して教室の生徒の面々に挨拶をしていた。
二人を拾ったあの日、フェルディナントは一枚の書面とともに、彼の父である、ルートヴィヒ=フォン=エーギルに、二人を養子とするよう頼み込んだようだ。二人の事は、エーデルガルトに事情を話し、カスパル、リンハルトも二人の親に頼み込み、話を通してもらうことになったらしい。
まぁ、リンハルトとカスパルの父は二人の種族などは知らないが。それもあったが、ベレトが話を聞いて二秒でグーサインを出したこともあり、ガルグ=マクへの途中編入も認められた。
「授業はどうだった? ピトー。」
寮へ行く前に、軽く散歩でも、とフェルディナントに誘われ、ガルグ=マクの中を歩いているピトーに、彼は声をかけた、
「ああ…………シルヴァンとか、ちょっとビックリしたけど、楽しかったよ、新鮮だったし。」
「まずは読み書きからだがな。」
「仕方ないなじゃいのさ…………。」
と、フェルディナントの茶化しに唇を尖らせるピトー。
「そうか。これからは、もっと楽しくなるぞ!! 君が、今まで奪われていたものを取り戻せるくらいにな!!」
そう言い、声を上げるフェルディナントの後ろで、ピトーは勇気を出して声を上げた。
「あ、あのさ!!」
「ん?」
「ど、どうして、君はそんなに、ボク達を大切にしてくれるの?」
救うだけならまだしも、なんで君の養子にまで? という質問に、彼は笑ってこう答えた。
「決まっている!! 私が、貴族だからだ!!」
誇り高く、自信満々に、たとえ笑われようと、さげすまれようと、自分はこの道を貫き通してみせるのだ。と、言う彼の姿に、ピトーは思わず涙を流した。
「はは…………何それ、意味わかんないよ。」
『きっとわかる日が来るわ。それがいつになるかはわからないけど、心が教えてくれるはずよ。これが、喜びだって。』
ドロテアの言葉が、彼女の脳裏によぎる。
「(ああ、この、胸にこみあげてくる、あったかい気持ち、これが、これがきっと、喜びなんだな。)でもさ、フェルディナント、」
涙にぬれた顔で、でも、その顔を前に向け、フェルディナントに微笑んだ。
「ありがとう。」
願わくば、ずっとこれが続いていきますように。そんな願いを、胸の中に秘めて。
ありがとうございました。かき始めた時はまさかこんなに長くなるとは思わなかった。いつもの三倍近くあります。
次回はもう少し必ず早く投稿するので、今しばらくお待ちを。それでは!!
次に登場するガンダムキャラは誰がいいでしょうか?この五人から選んでください。
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ニルス・ニールセン
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アンジェロ・ザウパー
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ヘルベルト・フォン・カスペン
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リボンズ・アルマーク
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ラウ・ル・クルーゼ