魔法科高校の劣等生 if 桜井水波回復ルート 作:green-tea
もう少し話が進んでから順番は整理する可能性があります。
今回のお話は23巻でクラークがディオーネー計画を発表した時(5月12日)のお話です。
彼の
しかし超極秘プロジェクトであるエシュロンIIIの設計を主導したという裏の実績を考慮すれば飼い殺しの扱いだった。
彼が5月12日、魔法技術を平和利用するための国際プロジェクト『ディオーネー計画』を突如として発表した。
それは世界中で兵器として行使された数々の魔法が反魔法主義者のプロバカンダに説得力を与え、大規模な魔法師排斥運動を睨んでのこと。
世論に対するカウンターメジャーを意図した物。
と日本の大手メディアに出演したいわゆる有識者の方々は分析している。
USNA内のメディアでも同意見を報道する番組はゼロではなかったが少数派で、多数は日本と異なる分析をした。
その理由を簡潔に言えば『観点が違うから』となるだろう。
日本にとっての観点。
それは謎の天才魔工師トーラス・シルバーが、実は日本の高校生だと言う処に主眼を置いている。
どの高校に通う、どんな人物か。日本のメディア関係者は謎を暴き、スクープを撮りたい。
もしくは世界的な賞を獲った者やスポーツの国際大会で優勝した選手と同じで同国人が国際的に認められる事は愛国心を刺激するから、視聴率が獲れるはずだ。
そういった思惑の下では、ソースとなる『国際的なプロジェクト』に疑義を挟みにくい風潮があった。
一方のUSNAメディアの視点。
それは発案国ということも手伝ってトーラス・シルバーよりむしろエドワード・クラークに焦点が当てられた。
なぜクラークはこのような行動に 出たのか。動機は何か。
このプロジェクトはステイツにとって有益な物か。副作用は。実現可能性は?
大規模情報システムの専門家がどうして金星移住計画を?
多くのジャーナリストがこれらについて調査した。
ステイツらしく各放送局がそれぞれに意見を以って、言い換えれば偏りのある報道をした。
あるメディアは国家科学局の元職員のインタビューを引用して「能力は高いようだが目立った実績が無い」「あの個人オフィスは隔離に近い」「周りの評価に耐えられず功を焦ったのではないか」という論調を放送し、表の経歴しか知らない多くの視聴者の賛同を得る。
また別のメディアは「国家科学局ひいては自国の政府すら飛び越えて、全世界に向けて発信した夢物語」と断じた。
USNAの大衆が感じていた感触を政府の末端の職員も同様に感じていたが、政府高官となると話は違う。
特にNSA長官、CIA長官、国防長官の3人はエシュロンIIIを開発、運用、利用する立場で関わっているためにエドワード・クラークの裏の顔を知っている。故に彼が功名心で愚かな真似をしているとは考えなかった。
彼らは計画の発表を目にして直ぐに複数の分析官を呼びつけ、計画の裡に潜む意図を探らせている。
まさにNSA長官が分析官からの報告に目を通した時だった。
長官室の執務机の上に置かれた通知ディスプレイ。それに備え付けられた小さな右端のランプが点灯する。
長官は報告に来ていた分析官に目で合図をして退出させながら、ハードデバイスのボタンを押したままにして「何か?」と温和な声で問いかけた。
『カリフォルニア支局の局員より専用ヴィジホンでの通話連絡が来ておりますがいかが致しましょうか』
答えた声は扉の外、受付に座っている秘書の1人だ。
「名前は?」
『エドワード・クラーク』
「宜しい。こちらに回しなさい」
受付が応える声とほぼ同時に、通知ディスプレイと一体になったヴィジホンモニターが通電し、繰り返し今日のニュースに映っている顔が現れる。
先程まで目を通していた報告書にも彼の顔写真は載っていた。
『長官、お久しぶりです。
お忙しい中、お時間を頂きありがとうございます』
「やぁエディ、勝手な事をしてくれるから始末が大変だぞ」
エドワードの愛称にはエディの他にもエド、テッド、ネッドがあるが、長官は適当にエディを選ぶ。
その事にエドワード本人は口を挟まなかった。
あえて謝罪を交えずに『その件は支局長にもかなり絞られました』と代わりの言葉を吐く。
長官はそこから、彼が計画発表を悪い事ではなく胸を張ってUSNAのための活動だと考えているのだと察する。
「それで私は何をすれば良いだろうか?」
互いの表情と声、特に強い眼光に秘めた固い意志が長官とクラークに世間話ではないと思わせた。
NSA長官ともなれば話は早い。
その機転に目を瞠った後、長官はやはり遣り手だとクラークは心に刻み、核心だけを伝える事にする。
『トーラス・シルバーに圧力をかけてもらいたいのです』
「確か日本の高校生だと言っていたな」
『ええ。日本の国立魔法大学付属第一高校のタツヤ・シバという青年です』
「では駐日大使経由で私から日本魔法協会に手紙を送るとしよう」
「出来れば一高の学校長アズマ・モモヤマにもお願いしたく」
「ほう……」
「何か?」
「いいや。
必要ならばサー・マクロードへも協力依頼を出せるがどうかな?」
『そちらはご心配なく。
サーとベゾブラゾフ博士はこの計画に100%参加してくれます』
「君が確約を取り付けた、ということか?」
『はい』
これは嘘である。
クラークはマクロードと秘密の会談をしていてもディオーネー計画について話した事はなかったし、ベゾブラゾフとは挨拶すらしたことがない。
それでも両者がこの計画に参加することに確信はある。
NSA長官は真偽を見定めようとヴィジホン越しにクラークの目を見通す。
一瞬の間の後。
「そうか。
余り外務省を飛び越えて外交交渉すると嫌われるぞ」
NSA長官の中でどのような判断があったのかクラークには分からないが、偽りだとしてもそれが赦されたのだと理解する。
『表舞台に立つのはこれきりのつもりですから』
「おっと別の用件がきたようだ」
内諾を得たと理解したクラークは長官の話は終りだという意図を取り違えせず、『では失礼します』と返す。
それに笑顔で頷いて長官側からヴィジホンは切断された。
そして長官は切り替え用のボタンをタッチする。
すぐさま別の男がモニターに現れる。
『要求を受け入れるおつもりで?』
「マクロードとベゾブラゾフの2人が関与しているというのなら、もう暫く泳がせても良いだろう。
餌には相当の旨味があるらしい。
しかしどんな餌か知らぬというのもな。餌について徹底的に調べろ。
全て筒抜けだろうが、知らないよりは対応できる」
『イエス。ボス』
ヴィジホンがブラックアウトする。
机に肘を付き、口に握り拳を当てて数秒の間、親指と人差し指で上下の唇を抑えた長官。
その手が口元から離れると音が漏れた。
「クラークのような隠者を表に出させる何か。
イギリスや新ソ連、そしてこの合衆国が動く理由。
三国が同時にメリットとなるのは何だ?
いやデメリットだとすれば我らは何を怖れる?」
クラークの宣言通り、その日の内にウィリアム・マクロードが計画参加を表明。
USNA国内デバイスメーカーとしてマクシミリアンデバイスも協力するとの報道が行われた。
他国の戦略級魔法師と実体企業が計画参加となったことで最早、この計画を夢物語と断ずる報道姿勢は難しくなった。
--
表の世界では予想を覆して順調な船出となったディオーネー計画。
しかしながら、世間的なニュース的価値は加速度的に萎み、3日後には全世界のマスメディアでこの話題に触れる事はなくなった。
元々人口比0.1%の魔法師に対する興味が長続きする道理もなく99.9%の非魔法師が興味を持つネタが世間を賑わしていた。
クラークはその事に頓着しなかった。
しかけた策動は翌日の月曜朝には達也へと伝播し、順調に彼の生活を乱し始めている。
またNSA長官とアメリカ大使館の胎動はアメリカの高官、日本陸軍情報部および外務省、さらには東京に大使館を置くその他の国々に少なくない波紋を広げている、とエシュロンIIIは教えてくれる。
そしてモスクワでの動きも予想通りだった。
よってクラークは次のステップへと駒を進めることにする。
大西洋上に訓練航海中の空母エンタープライズが浮かんでいた。
その空母打撃群司令部指揮所には2つの入り口の周辺を除く全ての壁に何枚もの大小のモニターが並び、航空管制から海上・海中までの全ての情報が映し出されている。
周囲に展開する艦隊からデータリンクした情報で、複数の要員が海軍服とヘッドセットを身に着けて連絡と報告を繰り返す様は一種異様な風景ではある。
訓練の行き届いたクルーの動きにも艦長である海軍少将アンドリュー・バーンズは満足せず、不遜の表情のまま眼光鋭くいくつかの質問を投げかけ、副長がそれを復唱。クルーに必要情報をチェックさせた。
と、突然に艦長が席を立ち、副長の前へと移動する。
「訓練そのまま、副長任務引継ぎ」
「アイサー、訓練そのまま任務引継ぎ」
副長が敬礼し、艦長が答礼を寄越す。
1つ頷くとバーンズ艦長はきびきびとした足取りで指揮所を出て、自室に戻った。
彼は艦長室にだけある大きな執務机の上から2番目の引き出しを開け、シガレットケースを取り出して机の上に置く。
空いたスペースに顔を出した小さなタッチスクリーンに親指を押し付けると、机の天板中央が開いて指揮所と同じモニターがゆっくりと立ち上がった。
そしてモニターの左下で点滅するボタンを押下する。
モニター内で新たなウィンドウが開き、そこに作戦指示書が表示された。
「馬鹿な……」
鍛え上げられた海軍少将、それも護衛艦、輸送艦、潜水艦を合わせた10隻による空母打撃群を編成・展開し、1万人を超える水兵と航空要員を指揮する男が頭を抱え、弱音を吐く様など部下に見せられる訳がない。
命令に対して必要なのは「イエス、サー」と応じる事だけ。
それくらいのことは自分が下士官時代から理解している事だと、この海軍少将も理解している。
そうやって跳ねっ返りの部下を躾けた事もある。
だが、その艦長にしてこの命令の内容には承服しかねた。
「ディオーネー計画のためにD.Cからスターズ総隊長アンジー・シリウスとNSAの科学者が、さらには他国からウィリアム・マクロードとイーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフが集結、秘密会談を行うので既定の航路を変更し、指定位置で待機せよ」というのはあまりにも組織の論理を逸脱している。
「この空母をレンタル会議室か何かだと勘違いしているのか?」
思わずバーンズ艦長の口から零れた疑問。
参謀本部のお嬢さんですら艦の特殊性を鑑みれば本来は乗艦を許可できない。
それがよりにもよってNSAの科学者や他国の魔法師にまで着艦を許可するなど狂気の沙汰だ。
一体、
そういう思考順路を辿るのは艦長がマトモであるからこそだった。
だが結局、苦悩の末に指揮所へ戻った艦長は各要員に必要事項を伝えて進路をニューファンドランド島西500キロへと向ける。
この電文はUSNA北方軍司令官からの正式な電文として通達されていた。
発信元はエンタープライズの所属するUSNA北方軍からのもので瑕疵がない。
というより指揮所のシステムが正式な電文以外をフィルタするので、正式な電文でないと受付されない。
はずなのだが、これはクラークがエシュロンIIIを利用して送信した偽電だった。
尚、USNA北方軍は北アメリカ地域を担当している統合軍の内の1つだ。
基本的に統合軍は大陸に依存した形で区分けがされていて、大西洋はUSNA北方軍、USNA南方軍、USNA欧州軍、USNAアフリカ軍がそれぞれ陸地からの距離で東西南北を分担している。
だからこそ当然のことかもしれないが、USNA北方軍司令基地では騒ぎになった。
バーンズ艦長が命令に従って転進を指示した30分後、基地司令部付の管制官がエンタープライズの転進に気付き、空母指揮所に転進理由について問質す。
返答は『当艦は基地司令部からの指示に従っている。基地内の命令を確認されたし』だった。
「命令番号を照会せよ」『本命令は高い機密性を有したもののため一通信管制官では返答できない』
問答の後、機密がネックになっているとして北方軍基地司令官と艦長の直通回線での会話へと切り替わる。
艦長が艦長室に戻って軍令のユニーク番号を読み上げ、それに従って基地司令官が基地内情報を検索すると確かに該当の軍令が正式に発令してあった。
自らの名で発令されたそれを基地司令官は記憶していない。
なぜという疑問の解明よりも早く、基地司令官は軍令を無効とする新たな命令を直ちに発令。
エンタープライズは別途指示あるまで停泊待機となる。
続いて北方軍司令部は通信網および基地内のコンピュータの全チェックを即座に開始すると共に、自身に対して精神干渉系魔法が行使されていないかの鑑定をするよう指示。さらに命令内容に関連する部署――具体的には統合参謀本部とNSAに――この事態の影響について確認を依頼した。
空母打撃群側は基地司令部の重大な懸念事項に配慮し、停泊中に遂行可能な訓練を前倒した。
艦長の想像の通り、新規の命令は半日が経過しても下されなかった。
だが、それは艦長の想像した理由とは異なる理由の為だった。
この日、北方軍基地司令部が未明までチェック作業を行っている最中に太平洋の向こうにあるモスクワからのニュース映像の中継録画が大手メディアで放送される。
インタビュー映像には新ソ連アカデミーの幹部と国家公認戦略級魔法師、『十三使徒』の1人イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフが映り、インタビューワーの質問に彼が答えるという形で、内容としてはディオーネー計画参加の表明と計画の平和的な意義の主張、そしてローゼンとトーラス・シルバーを名指ししての協力要請。
これに呼応するように東西EU連合からローゼンを主軸にした企業連合体での参加の動きがあるとのスクープがメディアを騒がせた。
命令書の偽電、それに関連した2つのスクープに対してUSNAのトップが動きを見せたのは、彼らが無能の集団ではない証だろう。
そうして某所で国家安全保障会議が臨時に招集される。
席には副大統領、国務長官、国防長官、エネルギー庁長官、統合参謀本部議長、国家情報長官、その他補佐官の固定メンバーに加え、NSA長官が同席を許されていた。
隣同士、小声で話をする各高官だったが、最後に主席補佐官らのスタッフを従えた大統領が入室すると、ピタリと部屋は静まる。
そして大統領が最も奥の席に座り、各席毎に据え付けられた個人用のモニターに会議資料が映し出される。
テーマは北方軍内および統合作戦本部にて下された偽の軍令とディオーネー計画の関連について。
首席補佐官からの説明が終わり、
「現在、偽電と侵入経路は捜索中です」
と最初に口火を切ったのは統合参謀本部議長。
それを受けて「実際に基地に保存されたデータまで改竄されているのだからな」と返したのは国家情報長官で、両者を取り持つように
「犯人は新ソ連であると仮定して動くべきだ。
今回は海軍が被害に遭った訳だが、空陸両軍の命令にも注意が必要かと」
と繋げたのは国防長官だった。
そのべき論に軍を統括する統合参謀本部議長が頷く。
「イギリスも動いている場合、イギリスと新ソ連は共犯だろうか?
それとも我々の側に居ると考えるべきか」
空気を察して次の話題を持ち出したのは副大統領で、
「そもそもの動機はなんだ?
なぜ今、
そう大統領が疑問を呈する。
「作戦レベルで考えると、新ソ連がイギリスと我が国を同時に相手にしようとするほど愚かとは思えません。
ディオーネー計画で平和を訴えたばかりのところでそのような暴挙に出れば、世界からの孤立は免れない」
答えたのは統合参謀本部議長だ。
しかし国家情報長官は、「全てがこちらを油断させるための謀略だろう。孤立を恐れているタイプとも思えない」とあくまで新ソ連の可能性を否定しない姿勢を見せた。
だが「情報長官、CIAがその手の動向を掴んでいるという事かね?」という国務長官の厳しい指摘が続くと、
「いえ、そのような事は」
と口ごもるに至る。
会議メンバーは先の情報長官の言葉が統合参謀本部議長に対するセクショナリズム的な隔意による反応に過ぎないと理解した。
空気が淀み、停滞となった処で手を挙げて発言を求める者が現れる。
「発言をお許し願えますか?
大統領」
それはこの場に普段、姿を見せない
皆の視線が彼に集まる。
一方のNSA長官が見つめる大統領は五本指を揃えた形で手を差し出したジェスチャーで許可を示す。
「実はディオーネー計画を発表した時点でエドワード・クラークの身辺を洗っております」
「あの計画か。
余程の正義漢なのだろうが国内の政治屋やマスコミの動きの鈍さには失望しただろう」
「科学者的な態度で政治は動かせませんよ」
国務長官とエネルギー庁長官が相次いで小声で呟く。
が、その圧をどうにか乗り越えてNSA長官は続ける。
「彼はその……エシュロンIIIの主任設計技師でして。
表のメディア情報はどれも見当違いな物です」
「待ちたまえ。
エシュロンIIIは通信傍受システムだったな?」
とスタッフからの口添えを受けた副大統領が言葉を挟む。
「はい。
設計と開発は国家科学局ですが、運用と利用は国防総省とCIAで担当しています。
そして彼はエシュロンIIIにバックドアを仕込んで、彼自身が操作できるように」
「フリズスキャルヴ」
一言、国防長官が言葉を発し、「ご存知でしたか」とNSA長官が感心する。
「国防長官、フリズスキャルヴとは?」
そう尋ねたのは大統領だ。
「エシュロンIIIを上回る能力を持つと噂される幻の
喜ばしい事にそれはエシュロンIIIの追加拡張システムですから我が国の資産ともいえましょう」
国防長官は律儀に応えた。
「話は見えてこないが、その彼がなんだというのだね?」
大統領が腰を折ってしまった話の軌道修正を副大統領が行った。
「恐らく彼は被害者ではなく、加害者だろうと思われます」と意を汲んだNSA長官が要点を謳う。
「つまり今回の偽電やデータ改竄はエドワード・クラークがフリズスキャルヴを使って行ったと?」
統合参謀本部議長がそう問質せば、「おそらく、その通りです」とNSA長官は推測の言葉を頭につけてはっきりと断言した。
2人の会話が始まる。
「開発者なら通信を傍受して別の物に差し替えるなどということも可能かもしれんが、北方軍の基地に侵入してデータの改竄が行えるシステムだったか?」
「本来であればそのような事はできません。
ただ通信を傍受する関係であらゆるネットワークに侵入する事ができます」
「それは我が北方軍の基地にもかね?」
「寧ろ
この手の技術者ならば偽装通信データを送ってコンピュータの脆弱性を悪用し、自分用のバックドアを作る事も難しくありません」
「エシュロンIIIにすらバックドアを仕込む男だ。
そのような事もしているのだろうな」
納得を態度で示した統合参謀本部議長が腕を組み、何かを考える素振りをした。
話の切れ目を見計らって情報長官が割って入った。
「それで、彼はマクロードとベゾブラゾフに何を話す?」
「ディオーネー計画、エシュロンIIIの利用履歴、直接話してみた内容から総合的に判断すると」
NSA長官はそこで会議メンバーの注意を引き付けるように言葉を区切った。
「狙いはトーラス・シルバーです」
「たかが日本の高校生だとか?」
思わせぶりだったNSA長官の言葉にやや肩透かしだったのかエネルギー庁長官が軽口を返す。
「トーラス・シルバーはループキャストシステムと加重系魔法の技術的三大難問の1つ『常駐型重力制御魔法』を開発した人物。
我が軍の兵器にもその術式が採用されている超一流の魔法工学技師です。
またトーラス・シルバーの正体であるタツヤ・シバは日本で最も危険な魔法師一族ヨツバの直系であり、先頃のニジェール・デルタ解放軍が大亜連合軍に対して行使した戦術級魔法『アクティブ・エアー・マイン』の開発者でもあります」
滔々と説明された超重要情報が一瞬、会議室に空白を齎す。
そして長官らを補佐するスタッフらがNSA長官を除く全出席者にそれぞれ耳打ちする。
「
「ヨツバ……ダーハンを崩壊させたあのファミリーか」
と口にしたのは誰だったか。
しかし、最も大きなリアクションをしたのは「タツヤ・シバだと?」と立ち上がって驚いた統合参謀本部議長だ。
「どうしたのかね参謀議長」
無礼を窘める副大統領。
「いえ……それは」
説明すべきかを迷った統合参謀本部議長は補佐官と目を見合わせて固まる。
「大統領閣下、私からご説明いたします」
代わりに口を開いたのは国防長官だった。
促す大統領。
「昨年冬のことです。
軍はタツヤ・シバに対してアンジー・シリウス隷化スターズを極秘派遣して敗北を喫しました。
また今冬にも秘密作戦軍が座間基地周辺にてタツヤ・シバと思われる日本の魔法師と交戦、無力化されています。
そのような経緯を以て我々は、彼を非公式戦略級魔法師、通称グレート・ボムの最有力候補とみなしております」
「付け加えるならばエドワード・クラークも同じ見解です」
そう言葉を添えたのは当然だが、NSA長官だった。
大統領はこれらの情報を聞いて押し黙る。
「……アンタッチャブルの直系で超一流の軍事魔法開発者でかつ超強力な戦略級魔法師というのか」
「ヨツバは日本政府の指示下にありません」
「それはそうだ。
結局、ダーハンを崩壊させて大亜連合を強化したことが日米の極東でのプレゼンスを低下させた。
そんな一族が独自戦力として戦略級魔法を持っているだと?」
「しかも威力や射程はトゥマーンボンバやヘビィメタルバーストと同等かそれ以上と思われます」
と間を埋める如く情報長官とNSA長官の間で言葉が交わされた。