【悲報】転生したらツンツン頭で知らない部屋にいたんだけど   作:現実殺し

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前回も言いましたが、掲示板ではありません。
しかし、皆さんが考察してきた、鬱条の過去について明らかにしていきます。
え、何故サブタイがドラゴンストライクなのか?それは、まあ……実際に読んでいただければ。




偽典:とある科学の竜王の顎(ドラゴンストライク)

 最初に言っておこう。

 この物語は、皆さんが知るものとは、些か異なっているだろうから。

 

 これは、幻想を殺す少年の物語ではない。

 これは、悲劇を塗り替えるヒーローの物語ではない。

 これは、傷つき倒れる少女が、救われる物語ではない。

 

 そして。そして。そして。

 

 これは、足掻いても誰も救えない、悲劇の少年の物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――

 

――――――

 

―――――――――

 

 7月17日。

 

 その少年、上条当麻は世間一般から見れば不幸である。

 道を歩けば通り魔に狙われ、金を下ろしに銀行に行けば偶々強盗が居合わせ、近道をしようとすればスキルアウトに絡まれる。

 だが、そんなことは、()()()()()()()()()、不幸のうちに入らない。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ぁ…あぁ……」

 

 上条当麻は、己の両手を見る。それは、健康的な人間が見せる肌色ではなく………()()()()()

 何故そんな色をしているのか?……答えは簡単だった。

 ()()()()()()()()()()()()()、その少女に触れたことで、彼の手が血で汚れてしまったのだ。

 

「あああああああああああッッッッッ!!!!!」

 

 上条が悲鳴にも似た叫びをあげ、額を地に付け、ただ言葉を紡ぐ。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 まるで呪文のように……、そして、心の底から許しを請うように。

 上条はただ、目の前の死体となった少女に謝り続ける。

 すると、何かが、上条の頭に触れた。

 思わず顔を上げる上条だが、直ぐに後悔した。

 

『―――』

「ぁ――」

 

 先ほどまで転がっていた少女が起き上がり、まるでゾンビのように腐敗した顔をし、爛れた手で上条の両頬に触れていた。

 その恐怖で、金縛りにあったように動けなくなる上条。

 

『貴方の……せい――ッ!』

『貴方が、ちゃんとしていれば――ッ!』

 

 しかし、その怨嗟の声は、目の前の少女()()()()()()()()()()()()()()()()

 ギギギ、と壊れかけのブリキの人形のような動きで、ゆっくりと首を後ろに向ける上条。

 

「―――」

 

 そこには、女性がいた。

 自分より年下の常盤台の制服を着た少女がいた。

 自分より年上の研究者の白衣のようなものを着た女性がいた。

 いや、女性だけではない。

 自分より年下の少年がいた。

 自分と同い年くらいの青年がいた。

 いろんな人がいた。そして、その全員が、血塗れで、口から呪詛を吐き出していた。すべては、上条当麻を呪う為――

 

 

―――――――――

 

――――――

 

―――

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁあああああああ―――ッッッ!!!」

 

 凄まじい絶叫とともに、上条当麻は目覚める。

 これが上条の一日の始まり。悪夢によって起こされ、最悪の気分で朝日を拝む。

 

「……くそ、不幸だ」

 

 なんて事のない言葉……、にも拘らず、重みがあった。

 全身冷や汗でびっしょりと濡れている。幸いなのは、昨日から着替えていないため、洗い物が減るということだけだろう。

 

「……飯……食うか」

 

 上条は冷蔵庫を開け、適当に食材を取り出し、朝食を作っていく。

 あっという間に日本の一般家庭のような食卓となり、一人でそのご飯を食べながらテレビでニュースを見る上条。

 

『続いての事件です。第九学区のビルで謎の爆発事故が起こり、9名の学生が重傷を負い、6名の死傷者が出ました。警察はこれをビル側の不備による不幸な事故として捜索を進め――』

 

 ピッ、と。リモコンを操作しテレビを消す上条。その表情は、どこか苛ついているようで、どこか悔しそうだった。

 そして、朝食を終え、上条は学校へ向かう支度をして、早々に家を出る。

 

「……はぁ」

 

 自分の右手を見て、ため息をつく上条。

 今朝の夢で見た血が、その光景が、いまだに離れないのだ。

 

「……分かってるんだよ。あんなのは俺の妄想だって。本当は誰も俺の事なんて恨んでないって」

 

 呪詛を吐き出した人物たちの事を思い出し、そう呟く上条。

 

「……し……!」

「お……しろ!」

 

 すると、路地裏から叫び合いのようなものが聞こえた。

 

「……はぁ」

 

 ため息をついた後、上条は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 すると、警備員(アンチスキル)の恰好をした集団と、幼い少女が交戦していた。少女の髪は白く、まるで色素が抜け落ちたかのようだった。

 

「くそっ!この……大人しく我らの正義の鉄槌を受けろ!」

「正義の鉄槌ねぇ。そんな小さな女の子に銃乱射して言っても、説得力はないと上条さんは思いますことよ?」

 

 すると、上条の声を聞いた警備員(アンチスキル)は、彼の方を向き、言った。

 

「君、ここは危険だ。暴走能力者が暴れている。ここは我々が抑えるから、君は早く――」

「そう言うのいいから。確か、DAって言ったっけ?」

「……我々の存在を知るものか。……暗部の人間か?」

「生憎、上条さんは一般人のレベル0なんだよな。取りあえず、その子から離れろよ。今なら見逃してもいいぞ」

 

 どこか脅すように、上条は言う。

 しかし、先ほどまでと違いあからさまに態度が急変し、強気になる警備員(アンチスキル)

 

「ふっ、無能力者(レベル0)のような存在が何を。君の方こそ、早くこの場を去ったどうかね? 今なら見逃してもいいぞ」

「……あくまでその子を傷つけるつもりだと?」

「ふん。すべては正義の為だ。彼女には、正義の礎となってもらう。引かぬというなら君も……」

「……もういい。……じゃあ、呪えよ」

 

 すると、上条はDAに右手を向けて、言った。

 

「テメェの不幸をな」

「は……?」

 

 その瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()、DAに襲い掛かる。

 突然の事態に反撃できないDAは、あっと言う間に殲滅させられた。ただし、()()()()()()()()

 

「……大丈夫か、お前?」

「……貴方は?」

「俺は上条当麻。取りあえず大丈夫そうだな。本物の警備員(アンチスキル)にこいつらのこと言えば、直ぐに助けてくれると思うぞ。それじゃあな」

 

 それだけ言った上条は、少女の名前を聞くこともなく、そそくさと路地裏を出ていこうとする。

 

「……待って」

 

 しかし、少女が上条の腕を掴み、その行く手を遮った。

 

「……なんだよ」

「お腹空いた」

 

 直後、ぐぅ~という音が、路地裏に鳴り響く。

 暫くの間、二人は沈黙していたが、先に動いたのは少女だった。

 

「……お腹空いた」

「それはさっき聞いた」

「奢って」

「いやなんでだよ!?……くそ、不幸だ」

 

 結局、売店でホットドッグを奢らされた上条。

 しかし、少女はよほどお腹が空いていたのか、ドンドンお代わりを要求していく。

 

「……不幸だ」

「ねぇ……どうして、とうまは私を助けてくれたの?」

「あん?……別に、偶々だ。特別な理由なんてない」

「? 私が『暗闇の五月計画』の被験者だからじゃなくて?」

「……なんだと?」

 

 少女のその情報は、上条には無視できるものではなかった。

『暗闇の五月計画』

 学園都市第一位、一方通行(アクセラレータ)の思考方法・演算パターンを分析し、人工的に植え付けることで、能力者の「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を強化、能力の性能向上を目的とした実験。

 その被験者は、「置き去り(チャイルドエラー)」と呼ばれる、その名の通り、学園都市に置き去りにされ、捨てられた子供たちが使われた。

 上条からすれば、とても胸糞悪い計画だった。そこの被験者と言うなら、放ってはおけなかった。

 尤も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……お前、名前は?」

鈴野(すずの)(えい)

「どんな能力を?」

「……劣化反射(デグレイトカウンター)……元々、私の能力は、一方通行(アクセラレータ)と系統が同じだったの。……だから、一方通行(アクセラレータ)のベクトル反射だけを、本物(オリジナル)から劣化した状態で再現することが出来た。研究者たちは予想外だったみたいだけど」

「へぇ……ま、能力についてはどうでもいい」

「えっ……?」

 

 確かに、本来一方通行(アクセラレータ)の演算パターンを植え付けて性能を強化するはずが、まさかの劣化コピーを生み出すことになるとは、誰も予想しなかっただろう。

 そういう意味でも、彼女は学園都市の闇に狙われやすい。

 例えば、第二位などは、一方通行(アクセラレータ)を倒し、統括理事長都の直接交渉権を狙っているようだが、その目的に、鈴野は尤も使いやすいと言える。

 本人と同系統の能力で、演算パターンも同じ。寧ろこれから彼女は狙われる可能性が高い。

 

(だからどうした? 俺が一人抗ったからって、こいつを守れる保証はないし、むしろ失敗する可能性の方が高い。()()()()()()()()()()()()()()()‼)

 

 苦悶の表情で悩む上条。その様子を見かねた鈴野が、上条に声をかける。

 

「大丈夫?」

「えっ?……ああ、飯代なら気にする――」

「震えてるよ?」

「!?」

 

 ふと、自分の右手を上条は見るが、鈴野の言う通り、ぶるぶると震えていた。

 彼女に関わったことで、自分が死ぬかもしれないことに怯えているのか?違う。むしろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これは……怒りだ。

 少女に対して何もしてやれない、自分に対しての怒りだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、自分に対しての怒りだ。

 

「……なあ、お前はどうしたい?」

「えっ?」

「このまま一人でいたって、どっかの研究機関に捕まってモルモットだぞ?」

「……分からない」

 

 俯いたまま、鈴野は答える。

 

「私は……ついこの間までは、研究所にいたの。なのに、突然追い出された」

「……追い出された?」

 

 それはおかしな話だ。

 研究機関側からすれば、本来二人といない一方通行(アクセラレータ)の能力を、一部とはいえ再現できるものがいるのだ。寧ろ喉から手が出るほど欲しいはず。

 それを追い出したというのは、些か奇妙だ。

 

「……あー、喉乾いたな。ちょっと飲み物買ってくる」

「……ん」

 

 取りあえず一度頭を整理したい上条は、そう言って席を離れる。

 

「……とうま……か」

 

 何処か、不思議なものを見るような眼で、上条の後姿を観察する鈴野。

 

(あんな目をしてる人は今までたくさん見てきた。そう言う人は決まって、嫌なことを平気でする人だった。でも、とうまは……)

 

 鈴野から見た上条の目は、何かに絶望した目であった。

 彼女出会ってきた人物は皆そういう目をし、実験と称して非人道的な行いをし、彼女の価値はその能力だけしか思っていなかった。

 だが、上条は違った。彼はそんな目をしているのに、何の目的もなく、鈴野を助けてた。そんな人間は、鈴野は見たことがなかった。

 何故だかは分からない。しかし、鈴野は確実に上条の「何か」に惹かれていた。

 叶うなら、彼とともに居たい。そんなことを無意識に思った鈴野。

 

警備員(アンチスキル)だ」

 

 しかし、鈴野の思考は突如呼びかけられた声によって遮られた。

 

「皆さん、落ち着いてください。家出少女の保護活動を行っています」

 

 警備員(アンチスキル)が、突然の事に戸惑う周囲の一般人に事情を説明した。

 そして、鈴野に近づいた一人の男性が、彼女の腕を掴むと、

 

「さあ、ついてこい。お前の力は、我々の正義の礎となるのだ」

「……行かない」

「貴様の意志は関係ない。――対象を保護した。――ああ、問題ない……な――!?」

 

 突如、男性の手が、物凄い力で引き剥がされ、逆に握られる。

 誰がやったかは疑うまでもなく……、鈴野だ。

 

「――しつこいンだよ。行かねェつってンのが分かンねェのかクズどもがァ!」

「ぐぎゃ――ッ!?」

 

 鈴野は思いっきり男性の腕を握る。

 瞬間、何かに弾かれたように男性が吹き飛ばされた。よく見ると、男性の腕はひしゃげて、クシャクシャにした紙のようになっている。

 

「はン。この程度かよォ。期待外れ共が。もうちっと楽しませてくれてもいいンじゃないですかねェ?」

 

 狂気的な笑みを浮かべ、そんなことを挑発気味言う鈴野。

 先ほどまでの大人しい様子とはまるで別人のようだ。

 

「この……! 調子に乗るな!――がッ!?」

 

 鈴野に挑発されたこと、仲間の一人をやられたことに対する怒りに身を任せて発砲するDAの一人。

 しかし、銃弾は彼女に直撃する瞬間に突如進行方向を真逆に変え、DAの方へと向かっていく。

 幸い、防護服を着ていたため、ダメージは最小限に抑えられたが、銃弾が跳ね返ったという事実に、DAは驚愕していた。

 

「これが、第一位の反射の力……!」

「おい。人が飲み物買ってる間に何やってんだ」

 

 すると、突如DAでも鈴野でもない人物の声が周囲に響き渡る。

 DAと鈴野は一斉にその声の方を振り向いた。

 そこには、上条当麻がいた。

 

「ったく……ほらよ」

「あァ?」

 

 上条は鈴野に持っていた二本のペットボトルのうちの一本を投げ渡す。

 

「何者だ?」

「そいつの保護者」

「えっ?」

 

 当然のように言い放つ上条に、鈴野は少し困惑した。

 

「生憎、彼女は我々が保護し、更生することになっている」

「いらないっつってんだよ部外者ども。研究機関がソイツ捨てたからって集ってんじゃねえよ。ゴミを漁るカラスかテメェら」

 

 挑発するようにDAに言葉を投げかける上条。

 その言動に苛立ったのか、DAは一斉に上条に銃を向ける。

 

「……おいおい、仮にも警備員(アンチスキル)なんだろ? 一般人相手に銃向けるのか?」

「安心しろ。不良学生鎮圧用のとても安全な模擬弾だ」

「は?」

 

 上条は一瞬、目の前のDA達の言動が理解できなかった。

 

「そう、安全なんだ」

「なにせ性能試験では何発浴びせても的になった学生は死ななかった!」

「ちゃんと生きたまま罪を全身で理解させることが出来る、安全な武器だ!」

 

 口々に狂気的な笑みを浮かべてそんな事をのたまうDA。

 

「的になった学生?……お前ら、学生を的にしたのか……?」

「すべては正義のため! そして、正義を理解できないお前のような子供を正しく導くのも我々の役目‼」

 

 そういったDAが、上条に向けて発砲した。

 上条はそれをまともに受けるが、

 

「な――!?」

「……当たっても死なねえんだろ? なんで驚いてんだよ」

 

 僅かにたじろいだ後、DAへと歩いていく。その動きには何の変化もなく、まるで効いていないかのようだ。

 が、実際は

 

(痛ぇぇぇぇぇぇえええええ―――ッッ!!! こいつら頭おかしいだろ!? なんで躊躇無く銃弾ぶっ放すんだよ!? やっぱ頭おかしいわ!)

 

 そう、効いていないかのように見えるのは、只のやせ我慢だった。

 散々大見得切っている手前、簡単にやられるのは上条のプライドが許さない。

 そして、今回はその余分なプライドが功を奏した。

 

「バカな……効いていないのか!?」

「そ、そんなはずは……」

「もしや、何らかの能力で?」

「くっ……! なぜだ!? そんな力を持ちながら、なぜ我々の邪魔を――」

 

 完全に狼狽え、焦りが出ているDA。

 

「最初に言っておくぞ。俺はレベル0だ」

 

 その発言に、逆に困惑するDA達。

 上条の言葉は、DAに確実に精神的な動揺を与えているようだ。

 

「それこそバカな、無能力者(レベル0)だと!?」

「そんなちっぽけな存在が、我々の正義の鉄槌を受けて無傷でいられるはずがないッ‼」

「知らねえよ。……もういいか?」

 

 一歩ずつ。確実に上条は歩みを進める。そのたびに、DA達は一歩下がっていく。

 

「落ち着け同士たちよ。相手は超能力者(レベル5)でもない、ただの学生だ」

 

 すると、後方から屈強な体格の男がアーマーのようなものを装備した状態でやってくる。

 

「私に任せろ。銃弾が効いていないのではなく、ただ耐えているのなら、耐えられない攻撃を行えばいい」

「随分と派手な格好だな。特撮ヒーローか? にしては柄が悪いな」

「哀れな子供よ。せめて我々の正義の礎となるがいい」

 

 そういって、サスマタのようなものを取り出した男。だが、その先端から凄まじい電流が流れていた。

 

「……はぁ、今度は殺す気か。つくづく救いようがねぇな」

 

 呆れたようにため息をついた上条は、目の前の男に右手を構える。

 

「ふん。そんな陳腐な細腕で何が――」

 

 その男の言葉は続かなかった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、彼を噛み砕き()()()のだ。

 幸い、完全に噛み砕いたわけではないので、死んではいない。だが、全身骨折、全治数か月はかかるだろう。

 そして、恐らくその男はリーダー格だったのか、他のDAがあからさまに狼狽えだした。

 

「さて、と」

 

 また一歩。上条は踏み出す。DA達は悲鳴を上げて銃を乱射するが、よく狙ってもいない攻撃は上条には当たらず、偶に当たったところで、上条は倒れない。

 そして、その場のDAが殲滅させられるのは、僅か数秒の事だった。

 

「大丈夫か鈴野?」

「うん。……ねぇ、さっきの、なに?」

「さっきの? ……あぁ、右手の? えーっとな、『()()()()()』……つっても分からねえか。まあ、凄い右手とでも思っとけ」

「でも、さっきレベル0って」

「あー、あれな。俺は無能力者(レベル0)じゃなくて、強度(レベル)不明なんだ」

 

 その上条の言葉に首を傾げる鈴野。

 

「どういうこと?」

「なんていうか、俺の能力を調べようとすると、機械がぶっ壊れるんだ。だから強度(レベル)を測ることが出来なくて、観測できない。観測できない=力がないという方針が学園都市(ここ)だから、俺はレベル0なんだよ。全く、酷ぇ話だ」

 

 言うほど酷いと思ってなさそうと、鈴野は思った。

 普通に考えれば、学園都市の最新機器を破壊するほどの力がある上条は、もっと研究するべきと考えるはずだが、学園都市上層部が、なぜか上条当麻の能力について調べることだけは禁じるのだ。

 なので、上条はそんな滅茶苦茶な理由を押し通され、今のままでいる。

 

「じゃ、行こうぜ」

「……どこに?」

「俺ん家。どうせ家ないんだろ?しばらくは泊めてやる」

「ホント……?」

「ああ。上条さんに二言はねえよ」

 

 そして、上条が学校の存在を思い出すも、面倒だから休もうとし電話をするのは、数十分後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これが最後だ。もし今回も救えなかったら、俺は……」

 

 空を見上げ、誰へ言うでもなく、上条は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある研究所。

 車椅子に腰掛ける女性が、手元のタブレットの画面を見て呟く。

 

「まだ「諦め」てなかったんですね。上条当麻。……やはり、この子を使わざるを得ないようですね」

 

 その女性、()()()()は底知れない闇に見えるような眼で、タブレットの画面に映る上条当麻を見て笑い声をあげた。

 

 上条当麻が『死ぬ』タイムリミットまで、あと2日。

 

 

 




え、上条さんのキャラが違う?鬱条さんなんだから当たり前。ストーリーは「とある科学の未元物質」と「旧約1巻」を元にしています。
何で木原病理が出たのか?アイツ新約で死ぬし、別に今出してもいいよね?って感じで出した。色々と使いやすそうだと思った。
にしてもDAってホント使いやすい。分かりやすい悪党だし、いつ出しても不自然に見えない。まあ、時系列的にはこの鬱条はイッチになる二日前なんですがね。
あと、前回の続きですよ?鬱条さんがこの話をしているんです。何故他の話をしないのかはこの話が終わったら本人に説明してもらいます。
え、記憶のある上条は神浄の討魔について知っているのか?作者の予想では知っていると思っています。根拠は色々ありますが、ここでは語り切れないのでまたいつか。
それではまた次回。


キャラ紹介。

鈴野影:暗闇の五月計画の被検体(という設定、もちろんオリキャラ)。一方通行の能力の一部、あらゆる「向き(ベクトル)」の()()を再現できるので、学園都市では重宝されていた。
    しかし、どういう訳か、研究所から追い出されてしまい、放浪していたところをDAに回収されそうになり、交戦。上条に助けられる。
    自身の能力にしか自分の存在に価値を見出すものがいなかったから、単純に鈴野本人を見て能力に興味を示さない上条に興味を持っている。
    普段は不愛想な少女という感じだが、能力を使用すると一方通行の感じが表面に出る。

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