俺の嫁の応募が多数だったので勝ち抜き戦で決めることになったが参加者全員♂なので俺が優勝する 作:ビックリマン2000の円盤はよ出せや
第一話 2.14はうまい棒の日!!!!!
これまでのお話
マウス国王の第一家来バオバブは男と結婚を拒否するために
∩(´・ω・`)つ―*'``*:.。. .。.:*・゜゚・*
予選の準備にてんてこまいのステージからロープの張られた向こう側、青く瑞々しい芝生のエリア。人がすし詰めぎゅうぎゅうの観客席では当選確率117分の1な、ソシャゲガチャの超激レア!ばりの観覧チケットを一発で引き当てて一か月分の運と給料を使い果たしたつわもの達が実質無料配布のガイドブック片手に握りしめプロが撮った風の画像をSNSにあげて自慢しがてら選手の下馬評を肴に花を咲かせている。観客席と隣り合うチキンエッグ王国内各地のご当地有名店ばかりを集めた屋台のグルメに舌鼓を打ちながら観客全員笑顔でまだ始まってもいない選手権を満喫している。そんな観客席ののんびりとしたムードに感化されたのか、参加者達も和気あいあいとぺちゃくちゃおしゃべりをしている。とてもとても一人の男性を取り合っているとは思えない雰囲気だ。
その喧騒にうまく溶け込んだバオバブは怖い顔をして考え込んでいた。
明らかに、おれ目当てって奴じゃないのが何人も参加してるな。絶対に何かあるだろう、これは。
出来ることなら一生お近づきになりたくないどころか金輪際眼中からシャットアウトしておきたい自分に好意を寄せてくださってる皆様を見るふりをして視界の端で悟られないように場にそぐわない参加者をじっくり観察しながら、バオバブはますます不信感を募らせていく。その中にいる高確率で事情を知っていそうな一人に当たりをつける。
綺麗な濡羽色の豊かでまっすぐな長い髪。形のいい眉にしゅっとしたヒゲ。長いまつげが縁取る切れ長の釣り目。それにパリッと糊のきいたきれいな詰襟軍服を着こなす16番の札を付けた男前。ハートマークになった目をぎんぎらぎんにぎらつかせた大量の女性達に境い目のロープを引きちぎらんばかりに迫られながら白い歯を輝かせて手を振ってる様がとても目立っている明らかに浮いている細マッチョ男子。いつも普通に美青年だけど今日も元気に光り輝く美青年の平常運転にバオバブは羨望混じりに鼻を鳴らした。
キワノめ、なんでこっち側にいるんだアイツ。声をかけるとヒゲを縮らせて逃げるくらい怖がってるのに。おれが好かれてる要素ないだろ。
そこまで思ったバオバブの口の端がかすかに上がった。
隙を見て少し締め上げるか。
そんな高ぶる加虐欲を自覚し心を落ち着かせようと一度大きく鼻で深呼吸をした。
それにしても。キワノをはじめ王宮勤めは何人もいるが、
本当にいないよな?と神経を研ぎ澄ませて同僚たちの気配を探った。
やはり命令通り全員国王の護衛についているな。しかし、不特定多数の前に無防備で長時間居続けるリスクを考慮に入れても、家来全員で護衛をする必要があるだろうか。末端ぐらいは王宮に留守番させてもいいぐらいだが。末端……末端?
そんなバオバブの意識が自分へ向かったことに気が付いたサンレンはくりくりの真ん丸な目を輝かせる。
「バオ先輩、何ッスか?」
そういや末端が参加してたんだったな。でも味噌っかすだし。王宮に置いておいても役に立つかどうか。
そんなバオバブの心を察したサンレンがぷりぷりして詰め寄った。
「今超失礼なこと思ったでしょ!」
そんな後輩をごまかすように、無言でそのぱやぱやくりくりの触り心地のいい坊主頭をバオバブはわしゃわしゃと撫でまわす。もみくちゃにされながらサンレンは顔を真っ赤にしてますます怒った。
「そうやってすぐ誤魔化すからぁ!」
怒鳴ったところで所詮わんこ系後輩。大好きな飼い主様とのスキンシップは雑でも嬉しいようで。誰が見てもぶんぶんとちぎれんばかりに振られる犬の尻尾の幻が見える。ついでに飛行機形になったふかふかの犬の耳も……
……犬か。
ふいに頭にフラッシュバックした件の男、尖塔の下で目の合った南方の男へ、バオバブは思いをはせ苦笑する。
観戦目的でもこんなおふざけに不釣り合いな人種だったな、あれは。
そう思ったバオバブは眼球にちらりと写ってしまった茶色の三角形に思わず驚き、はずみでサンレンを頭からぽいっと参加者の群れの奥へと投げ飛ばす。「ちょちょ先輩……せんぱいーーーーーー」と情けない言葉を残してサンレンはあっという間に人垣に押し出され向こうへ消えていった。
見えた方向に警戒しながら振り返ると突如背後から髪を掴まれ引き寄せられる。ぴったりと密着した犬男は誰にも悟られないよう耳元に押し当てたマズルを微細に動かした。
「なにか? わたしにようがあるのか?」
件の犬男が怒りに染まった顔でバオバブを見上げる。
「……いえ」
その返答が気に食わなかっただろう男の手に一層力が籠もり太い爪がバオバブの頭に食い込む。巻き添えで持っていかれたヘッドバンドが髪の毛を巻き込みギリギリギリと嫌な音をたてる。
「じゃあなぜずっと見ている?」
「意外だなと思って」
顎が上向き呼吸が阻まれ息があがるバオバブは苦しげに吐き出した。
「あなたが、わたしの妻に、なりたいなんて」
その言葉に犬男は苛立たしげに顔を歪める。突然掴んでいた手を離したのでバオバブはバランスを崩してつんのめった。体勢を整える前に件の男はくるりと背を向け混雑の中へ戻っていく。将来に備え頭皮をマッサージしながら頭髪へのダメージをなんとか軽減しつつ人を押しのけ追いかけようとした矢先、『予選の競技はああああああ!!!!』とマウス国王の声がでかでかと響いた。
ステージに目をやると人海戦術でも下ごしらえにもたついていた裏方達がビシャモンに乗って颯爽と舞台から去っていくところだった。後に残されたのは外側に沿って取り囲むように設置された番号のついたアイランドキッチンが九つとその真ん中に所狭しと整然と並べられた多種多様な山盛りの食材。肉も魚も製菓食材も虫すらもあり、内容もバラエティに富んでいる。その予想だにしない光景にざわざわとささやき合う参加者。
全員からの大注目の中マウス国王が大きく息を吐いた。
『手作りチョココンテストォオオオオオオオオオ!』
競技場に音割れスレスレの出力で競技名が発せられると同時に、壁面の高精細LEDディスプレイが手の込んだ動画演出で予選の雰囲気を醸し出し、レースクイーン風のピチピチ衣装を来たワガママボディの綺麗なコンパニオンがハイテンションな飾り文字で競技名が書かれた大きなボードを高らかに掲げ、舞台を一周した。予想だにしなかった勝負に選手達も観客もあんぐりと口を開ける。
『それじゃ予選の説明をするぞよ』
なんかつまんなさそうという会場の戸惑いやら白けやらを意に介さずマウス国王はとぼけた顔で競技のルールを述べ始める。
『時間内にカカオを使った料理を一品、ジャッジマンまで持って行ってください!
ジャッジマンは見た目、味などで料理を評価し100点を満点として採点します!!
制限時間は3時間!
競技が終了するまで何品出してもOK!
ただし最も評価の高かった品だけをその人の得点としまーす!
終了時に点数が最も高かった8名が本戦に出場じゃ!』
「あの……」
参加者の一人が体を縮こまらせながら手を上げて問う。
「ジャッジマンはどなたがするのでしょうか?」
「もちろんジャッジマンは景品のバオバ……」
「出場者が審査したらダメでしょ!?」
マウス国王の言葉で参加者の群れからバオバブが大慌てで飛び出る。そんな第一家来に「単純に甘いものが嫌いなだけだろ」とマウス国王は突っ込んだ。
「うん。しかし。しかしだ。素朴な疑問だがそこまでのお菓子嫌いでバレンタインデーは毎年どうしておったのだ」
「チョコ貰ったことないですよ」
第一家来が苦笑いで答えた言葉にマウス国王は真ん丸なお目目をさらに真ん丸にさせて驚き戦慄いた。観客席も一瞬ざわついた後、全員がため息をつき可哀相な物を見るような痛々しい目でバオバブに哀悼の意を示した。
「で、でもホワイトデーは大勢の男性から缶酎ハイをカートンで……」
「止めよ。余計惨めじゃ」
周囲の憐憫に耐え切れずつい墓穴を掘ったバオバブをマウス国王は止め咳払いした後嫌そうな顔で口を開く。
「まあ選手に評価させて不正されても白けるだけじゃしのお。わしがジャッジをしよう。料理が準備できたらわしの所へ持ってくるんじゃぞ」
そう宣言した後マウス国王は手に持ったマイクを口元へ持っていく。その瞬間予選の開始を察した参加者たちの顔つきが変わる。
『それでは!よーい…』
マウス国王が可愛がるペットのニワトリが大きく胸を膨らませてコケコッコー!!!と元気よく東天紅を猛ったのを皮切りに出場者達は我先にと競い合ってどうっと動く。
「いいか! 貰った人を笑顔にするカカオを使ったたべものを持ってくるんじゃぞーーーーーーー! 間違っても愛情だけがこもった毒物や恋だけが詰まった劇物を持ってくるなよーーーーーーーーーーー!」
そんなマウス国王の叫びは喧騒に上書きされ誰にも聞こえなかった。