死神英雄譚   作:ちゃむこ

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大変遅くなりました!すいません!

これからまた少しずつ書いていくのでよろしくお願いします!


16話 冥府の神と道化師

生存本能ゆえに、ハデス達へと向かっていったリヴェリア以外の幹部組は現在、ウォーシャドウよりもさらに人間らしい、騎士の様な見た目をした兵達に取り押さえられていた。 

 

(これは…あの時の影!?)

 

アイズはその兵の姿を瞬時に思い出した。自分たちの護衛をウル達がしてくれている時に、自分たちを守る様にモンスターを倒していた影兵。

 

『ウル、()()()()()()()()()…』

 

そしてアイズは、その影兵を操っていた人物を思い出した。

ハデス・ファミリアが助けてくれた時と同じように、クマのぬいぐるみを大事そうに抱えるも、その可愛らしい見た目に反してこちらを見る彼女の眼は誰よりも冷めている。

 

「誰が動いて良いって言ったのだ?

君たちは、自分たちの立場をちゃんと考えたほうがいいゾ。

 

…もし、考えた上でネロ達に向かってくるなら、残念だけど()()()()()

 

現在フィンたち幹部組を、見事に取り押さえている影兵を従えるレベル7のネロは、言葉とは逆に特に寂しそうにする事なく、ただ冷徹にフィンたちを見ていた。

 

「くっ…流石レベル7【血塗れの女王(ブラッディクイーン)】のネロ・ムーライトだね。この影の兵士の力はどうやら僕らと同等か、それ以上の様だ」

 

「いくら神であるハデスの殺気に当てられたからといっても、ネロ達に挑むほど余裕がなくなるとは思ってなかったのだ。

正直、ガッカリだゾ【勇者(ブレイバー)】。オラリオ()()()()()()()()()の団長が、たかが神の、それも神威が含まれていないただの威圧に生存本能が反応するなんて、拍子抜けにも程があるのだ」

 

ネロは影兵に頭を掴まれ床に取り押さえられているフィンの事を、見下す様に視線だけ向けていた。

そして明らかにフィンを馬鹿にした発言をする。

だが、フィンの事を悪く言うことに黙っていない者がいた。

 

「おいてめぇネロ!団長に向かってなに言ってんだ!」

 

フィンに恋心を抱いているティオネは、大好きな人を馬鹿にされた事で怒っていた。自分を抑えている影兵を馬鹿力で僅かだが抵抗していく。

 

「団長を馬鹿にする奴はいくらお前でも許さね「黙れ」…ガハァ!」

 

「「「ティオネ(さん)!」」」

 

ネロの言葉と同時に、影兵はティオネの力をさらに上回ってティオネの顔面を床に叩き抑えた。

バキィ!と音がした床は少しひび割れているが、レベル5のティオネに怪我はなかった。

 

「誰が喋って良いって言ったのだ【怒蛇】。…さっきから君たちは少し自分勝手すぎるゾ。少しは自分たちの副団長を見習った方がいいのだ」

 

ロキやフィン達は視線を自分たちの副団長へと向けた。

皆が知るロキ・ファミリアの副団長であるリヴェリアは、常に冷静で聡明、そして団長のフィンとはまた違ったカリスマ性を持つ、誰もが憧れ認める冒険者だろう。

 

だが、今の彼女は皆の知る彼女とは別人だった。

恐怖で震える身体を守るように自分で抱きしめ縮こまる姿は、皆から“ママ”と呼ばれる彼女とは遠くかけ離れた、例えるなら今にも泣いてしまいそうな少女の様だった。

 

「リヴェリアどうしたの!?」

「リヴェリア!?」

「「リヴェリア様‼︎」」

 

アイズやティオネ、レフィーヤなどロキ・ファミリアのみんながリヴェリアに声をかける。

 

「…私は大丈夫だ。お前達に余計な心配をさせてしまったな」

 

リヴェリアは震えながらも、なんとかアイズ達に大丈夫だと笑顔を見せた。

そのリヴェリアの様子にフィンは口を開く

 

「君がそれほど怯えるのは初めて見る…一体なにがあった」

 

「…「その話はリヴェリアちゃんには少しきついんじゃないかな〜?」エメ…」

 

リヴェリアがなんとか話そうとする、だがそれを止める様に割って入ったのはエメだった。

フィンはなぜリヴェリアが話すがのがきついのかエメに聞くと、エメはこの重い空気には似合わない明るい笑顔で説明した。

 

「少し前にディヤウス・ファミリアってあったの覚えてるかな?」

 

「確か30人の構成員がいて全員レベル3〜4の中堅ファミリアだったよね。

一年ほど前にダンジョンで20名ほどが命を落とし、残りの者は主神と共にオラリオを去った。それが一体…いや、まさか」

 

フィンは思い出す。

ある日のリヴェリアが一人でダンジョンから帰ってきて様子が少しおかしかったこと。それからすぐにディヤウス・ファミリアがオラリオを去ったこと。

そしてフィンは理解した。今この場でなぜその話をエメが出したのか。

アイズや他の団員もフィンの表情から段々と話の結末が見えてきて、体から嫌な汗が出てきていた。

 

エメはフィンや他の団員が気付いたことに、ニッコリと笑顔を向けて答えを告げた

 

「みんなが想像した通りだよ〜!

ディヤウス・ファミリアに所属していた30人のうちの20人、()()()()()()()()()()()()()()()()だよ〜」

 

エメのその明るく言われた言葉の内容に、その場にいた者は皆、ただ唖然としていた。

この話の流れからそうだろうとは思ったものの、やはり信じられないでいた。

 

「あの日亡くなったディヤウス・ファミリアの冒険者の20名のうち、17名はレベル4だった。その中にはファミリアの団長や幹部が含まれていた。

いくらレベル差が空いていたとしても、戦闘経験もかなりあるレベル4の17名を簡単に殺せるはずがない。

この影の兵を使えばそれは関係ないが、リヴェリアが恐怖を覚えているのはネロ自身だ。つまり…」

 

「そうだゾ。ネロが1人で20人を殺した。

ちなみにエメは関係ないのだ。

エメはその時ダンジョンを回ってて、ネロが殺すところを見てたリヴェリアに口封じしてたんだゾ」

 

フィンの言葉を肯定したネロ。淡々と答えたネロは、殺すのに何が悪い?と言いたげにあっけらかんとしていた。まるで殺すのが当然かのように。

フィンの頬にツゥーと汗が流れる。

 

「なんで自分そんなことしたんや」

 

ロキが疑問をこぼす。冒険者を20名も殺したのだ。それなりの理由があるはずだ。そう思って聞いたロキだったが、これが間違えだと気づくのが遅かった。

 

「…そんなこと?ネロの前でウル君を馬鹿にした事が、そんなことで済むはずがないゾ!

ただの私利私欲に溺れた冒険者のクズが、何か言っていい相手じゃないのだ!

ウル君はネロに命を、力をくれた!

地獄のような世界からネロを出してくれた唯一人の英雄だゾ!

それをあいつらは汚い口でベラベラと吐きながらも、汚い視線でネロを見ては慰めてやるだの、遊んでやるだの…

だからネロは望み通り遊んでやったのだ、コイツで」

 

ネロは影から自身の武器の一種であるタルリル(巨大なチャクラム)を8枚を出現させ、高速で回転させる。キュィィンと甲高い音が食堂に響いていた。

 

「なるほど。君がタルリルを使ったってことは、この影兵を使わず自分の手でその20人を殺したって事だ。君が昔からウルを大切に想っていたのは僕らも知っている、だから君が直接手を下した理由も怒る理由もわかるよ。

確かに、自分の恩人や憧れる人が馬鹿にされたら僕も怒っていると思うしね」

 

「…ほう?」

 

フィンはネロが怒る理由を理解していた。自身も過去に、小人族で信仰されている架空の女神『フィアナ』の事を、神に存在を否定されてただけでなく、小人を見下す冒険者達からも馬鹿にされた時に同じく怒ったことがあるから。

そんなフィンの、ネロの動機をすんなり認めた言葉に、いち早く反応した人物がいた。

 

「なにかな?神ハデス」

 

「ネロの気持ちを分かっているのならフィンよ、貴様の仲間である犬がウルを貶した事で起きているこの状況もわかるな?」

 

ハデスはネロが作った影の椅子に座ると、頬杖をつきながらもその赤い双眼をフィンに睨みつけていた。

ハデスはネロにフィン達の拘束を解く様に伝え、フィンに応えてみろと顎をクイッと動かす。

 

「拘束を解いてくれてありがとう。

それでね、その仕打ちは昨晩ベートがクランの手で直接裁かれてる。

また別日に謝罪はしに行くつもりだったけど、今回はこれで終わりにして貰えると助かるんだけどね」

 

「返事がノーならどうする?」

 

「君たちが僕たちの命を奪うつもりなら、抵抗させてもらうよ。オラリオ最強のファミリアを相手に無事でいられないのは分かるけど、黙って命を奪われるくらいなら僕たちは最後まで喰らい付くよ。

例えどんな手を使ってでもね」

 

フィンの言葉に応える様にロキ・ファミリアの面々はグッと拳を握り、まるで覚悟を決めている様な、勇ましい顔つきになった。

 

「…ロキよ。貴様のとこの団長はこう言っているが貴様はどうだ。こやつらと同意見で我らに歯向かうか?」

 

ハデスは今度はロキへと視線を移す。ロキはスッと眼を開いてはフィンやアイズ達幹部、そして自分の子どもたちの顔を一人一人見る。

そしてニヤリとハデスへと笑ってみせた。

 

「始めはうちらがやらかした事やしな。

ベートにはあとできつく言っとくてして、子ども達が覚悟を決めたんなら、うちがとやかく言うことはない。

うちも本気を出して、どんな手を使ってでもこの子達を生かして勝たす。

そしてハデス、自分をその最強という玉座から引き摺り下ろしたるわ」

 

「…フハハハハハ!

そうか、我らと戦うか!

潔く散るのではなく、最後まで足掻く事を選ぶか

それもまた一興

 

いいぞ、わかった。

ならば話はここまでだ、貴様らの事は我が記す英雄譚にちゃんと残してやろう」

 

手を前に差し出すハデス

 

「だから精々我を興じさせよ、道化」

 

パチンっと指を鳴らしたハデス。

その顔は今まで見せたどの表情よりも鋭く、冷めていた。

 

 

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