死神英雄譚   作:ちゃむこ

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更新遅くなりました!

それと感想ありがとうございました!ネロちゃんが人気でとても嬉しいです!
これから他の子たちもより好きになってもらえる様に頑張ります!




18話 一旦の収束

迷宮の孤王・ゴライアスの一撃を、片手で受け止めるほどの怪力をもつ鬼は、自身の右腕をゆっくりと上げた。

本来なら命を狩る獲物を握るその手にはなにもなく、ただ拳を握っていた。

 

 

死ぬ

 

 

誰かの声が漏れた。それはロキか、幹部か、それとも部下か。もしかしたら声に出さないだけで全員が、その拳に明確な死を幻想させられたかもしれない。

あれを喰らったら間違いなく死ぬと。

 

鬼は拳を握りながらゆっくりと歩く。コツッコツッと数歩歩き、己の主神の後ろに着く。鬼の主神たるハデスは、冷徹にそして冷酷にロキたちを玉座から見下ろす。

ギュッと鬼の握る力が強くなる。

 

フィンはなぜ鬼がハデスの後ろに立つのかわからなかった。

拳を振った所で当てれる相手は一人に限定される、ならばその一撃を振るうためには相手の近くに行かないとダメなのではないかと。

だが、そこでフィンは思い出す。

レベル8程の力を持てば、空気を殴って波動弾の様に広範囲にやれるのではないかと。

鬼、【鬼人】と呼ばれるベルクは戦闘の際、主に大剣を振るい数種類の技を使う。

その中には空気を切り、斬撃を飛ばす技まである。既に似た技があるならば、それを拳で再現するぐらい容易いのではないかとフィンは考えた。

攻撃をする際に、自分たちを抑えているティエリアやエルカ達なら、ほんの一瞬で回避する事が出来るだろうと。

 

フィンの親指が疼く。このままでは死ぬと警告する。

 

 

 

 

 

ベルクは拳を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ直ぐ()()

 

 

「いい加減にしろ」

 

 

ボガァン!

食堂に大きな衝撃音と煙が舞う。ロキ・ファミリアの誰もが予想外の状況に呆然としていた。

ティエリアは、はぁ…と額に手を当て呆れた様に息をこぼす。

煙が晴れると、先程まであった影の玉座は綺麗さっぱりなくなっていた。

そして己のファミリアの団長の一撃を喰らった主神は、綺麗に食堂の床に体をめり込ませていた。

だが、さすがは最強ファミリアの主神と言うべきか、あの一撃を喰らったというのに目に見える傷は、頭の上に大きく膨らむたんこぶ一つだけだった。

 

「一瞬天界へ昇る光が見えたではないか、ワレぇ!」

 

 

ガバッ!と身体を起き上がらせたハデスは、自身を殴ったベルクへと文句をたれる。

 

「少しやり過ぎだハデス。ここにくる前に俺とティエリアと約束した筈だ。制裁はクランが行ったから今回は忠告だけだと。俺とティエリアは分かってたぞ、お前が途中から少し楽しんでいたことを。このバカデスが」

 

 

ベルクはつま先で蹴りながらハデスをジト目で見下ろす。

 

「エルカ達はなんとなく察して、怒りを収めてくれていたがネロに関しては本気の怒りだったぞ。ネロは普段こそ落ち着いているが、怒ったときの己の制御はあまり得意ではない。ネロが本気になれば、いくら私とベルクと言えど、この状況で皆を守りながらネロを落ち着かせるのは厳しい。少数でも死人が出てしまい、そうなれば今度こそ戦争になりかねんぞ。

そこのところをちゃんと理解しているのかこの馬鹿者。馬鹿神。なんと言ってみろバカデス」

 

 

そしてティエリアもまた、ジト目で一瞬で出した自身の相棒である杖でハデスのたんこぶをバシバシと叩いていた。

 

その光景を困惑しながらもただ呆然と見ていることしかできないロキ・ファミリア。

それに気付いたベルクは、ハデスを蹴りながらも器用に頭を下げて謝罪した。

 

「お前たちには怖い思いをさせたな、すまない」

 

「痛い!先程から痛いぞベルク!ティエリアもやめろ!」

 

「いや、元はこっちが悪いんだけど…これは一体…」

 

 

フィンは未だに状況の整理がつかないでいた。

 

「俺らがここに来た目的は、あくまで『次はないぞ』って言う忠告だけだ。そっちも自分たちに非があることは認めていたからな。戦争をしに来た訳じゃない。

失言したベートはクランに痛い目にあったと知っている。だからこの件はこれでおしまいだ。

ネロも影収めろ」

 

「だから痛いと言っておろうが!やめろと言ったら「少し黙れ」…はい」

 

 

「でもベルク!ネロはまだ「やめろネロ」…ティエリア」

 

 

ネロはまだ納得できなかったのか、ベルクに影をしまえと言われてもそれを渋った。まだ自分は自分の英雄を馬鹿にした奴らを許せないでいると、横からティエリアがネロを呼ぶ

 

「すまなかったな。お前にこそちゃんと今回のことを伝えた方が良いと思ったんだが、その…伝える前にお前が飛び出して行ってしまってな。言うに言えなかった、これは私が悪い。お前の怒る気持ちを我々はみんなわかっているつもりだし、同じ気持ちだ。でもどうかここは一度見逃してやってくれないか、ネロ。()()()()()()()

 

「…ティエリアはずるいのだ。そう言えばネロは逆らえる訳ないのを知ってて言ってるゾ。このファミリアの中でその言葉を言われて、嫌と言える奴はいないのに。…分かったゾ、今日のことはもう良いのだ」

 

 

ネロは影兵を影に潜らせ、その後食堂に展開した影を縮ませた。

そして常日頃から大事そうに抱えるクマのぬいぐるみをぎゅっと抱えると、クルッとロキたちに背を向けた。

そしてネロは「最後に一つだけ言っておくゾ」と呟く

 

「君たちは団員の数とその連携が武器であり、自分たちの強みだと思ってるようだけど、その考えは改めた方が良いぞ。

…今日君たちが相手したファミリアには、誰一人として数で勝敗が変わる奴はいないゾ。

ネロたちの前では数の多さ=強さじゃないのだ。その事をちゃんと覚えておくんだゾ」

 

 

ゾクッと背筋が凍る感覚に襲われたロキ・ファミリア。

半見でロキたちを睨むその紅い眼はギラリと妖しく輝いていた。

そしてなによりも不気味だったのは、ネロの肩から不気味な笑顔でロキ達を覗く様に見るクマのぬいぐるみだった。

まるで生きてるかのではないかと錯覚するぐらい、ケタケタと笑う様に動くそのぬいぐるみはまるで呪いのようだった。

 

ロキたちが恐怖に呑まれているのも知らずに、自分はもう何も言うことはない。

とネロは口を閉じた。

すると今まで散々ベルクとティエリアにやられていたハデスは、パンパンと服の埃を落としてながらもベルクたちの前に立った。

 

「どうだ道化、今の気分は。先ほど貴様のとこの門番が自分たちを最強のファミリアだと我らに言ったが、これでどこが上かいい加減わかったか?

ロキ、フレイヤ、そして我がハデス・ファミリアの事を、みなは三大派閥と呼ぶが些か偏りが激しいように感じるのは我だけか?」

 

「…いや、自分の言う通りや。うちらとハデスのとこでは差が開きすぎてるっちゅうのは今回で嫌と言うほどわかった。あとでちゃんとうちの子たちにも言い聞かせとく」

 

「フッ、当然だ。後にも先にも『最強』は我らしかありえん。

それよりも我も幾つか言いたいことがあった。

…おい、今回の件の元凶である狂犬よ」

 

ハデスは腕を組み、その双眼にベートを写す

ベートは舌打ちをしながらも、多少自分に非がある事を認めているのか「…なんだよ」と呟く

 

「貴様が弱者を嫌い、強さに固執する理由は()()()()()

 

「…!どう言う事だてめぇ!俺の…何を知ってるってんだぁ!ああ!?」

 

「それをここで言うのは容易いが、いいのか?貴様の嫌いな弱さをみなに教えて」

 

 

ハデスの言葉にクソッ!と吠えたベート。八つ当たりに床を踏み砕くも、ハデスは全く気にせずに話を続ける。

 

「貴様の過去は確かに辛かっただろう。貴様の事だ、己の非力さを怒り、呪い、それを糧に(つよさ)を磨いていったのだろう。

クランがよく言っていた、『この世の不利益は全て当人の能力不足』だと。

まさしくその通りだ。1回目は貴様はただ弱く、2回目はただ貴様が遅かった。

全て貴様の能力不足が引き起こした結果だ。

その様な事が起きれば弱者を過去の自分と重ね、貴様は弱者に、過去の自分に向かって吠えている。『今の俺はお前(過去の自分)より強い』と。

まるで言い聞かせているかの様にな。

違うか、【凶狼】ベート・ローガ」

 

 

ハデスが言い終えると同時にベートはハデスの胸ぐらを掴み激しく吠えた。

ちなみにハデス・ファミリアの全員は心の中で(それほぼ言ってるじゃん)とつっこむ

 

「…俺がそこらの雑魚に昔の自分をかさねてるだぁ?バカ言ってんじゃねえよ!俺は過去のことなんかどうでもいいんだよ!俺が雑魚共に言ってることは全部そいつらに向けて言ってるだけだ!

力がねえ奴は全て失う、そんなのガキでも知ってる事だ!

だがそこらの雑魚はどうだ?!大事なもんを奪われてただ泣き喚くだけでなんもしねえ!泣けば失ったもんは戻ってくんのか?来ねえだろ!

だから俺は誓ったんだ!何も失われねえために誰よりも強くなる事を!二度と折れることのねえ(つよさ)を手に入れることをこの刺青に誓った!

いいかクソ神、もう一度そこらの雑魚と俺を一緒にしてみろ。

俺はここを出て行ってでもお前をぶっ殺すぞ」

 

「確かに貴様はそこらの者よりも強い。それは認めよう。

今現在まだ未熟な冒険者は貴様らの様な強い存在に憧れて冒険者になった者も少なくないだろう。だが冒険者とは常に限界を乗り越えられなければいけない、多くの者がその限界に押し潰され成長を停滞させている。そう言う意味では、貴様らは幾度も己の限界を超えて第一線で戦い、生き残ってきた強者と言える。

その中には貴様の様にただ純粋に力を求める者や、まだ見ぬ世界を見るために、そしていつか来る復讐のために強さを求めると言った様々な理由があるのだろう。目標を明確にする事は、そこに至る道のりをはっきりさせる」

 

「…なにが言いてえ」

 

「フッ、特に言いたいことはない。貴様が過去に囚われていないのなら、そうなのだろう。貴様が雑魚と言うのなら、其奴はどこか弱いのだろう。

だがこれだけは覚えておけベート・ローガ。

貴様は己が弱者と決めるとその弱い部分しか見なくなり、すぐに拒絶する傾向がある。ツンデレは中々人気があるが、貴様は少々ツンが多い。デレまでは行かなくともたまには少し甘さを加えることを勧めてやる。それとだな」

 

ハデスは自身の胸ぐらを掴むベートの腕を掴む。

普通の人と同じ身体能力しか持たない神の力など、第一級冒険者であるベートにとっては無に等しいのだ。

その筈なのだが、ベートの手はハデスの胸ぐらを離した。

 

「貴様の過去は我にとっては、この際どうでもいい。そこらの有象無象に雑魚と吠えたければ吠えるがいい。

…だが、我の眷属に吠えることは絶対に許さん。

我が眷属は我自身と心得よ。

もし、この様な件がまたあった場合、我は貴様をどんな手を使ってでも地獄を見せてやる。死ぬほうがマシだと思う様な地獄をな。

覚えておけ。下界に降り、力を失ったからと言って我ら神を甘く見ると…

 

いくら悔いても足りんぞ 雑種

 

 

ハデスの眼が淡く光り、髪がゆらゆらと逆立つ。微かにだが、神威を解放させた事を意味するその姿、その威圧に、目の前にいたベートや、フィン達第一級冒険者達は動く事が出来ないでいた。そしてこの場にいる、まだ冒険者として未熟だったんだろう複数人は、その威圧に耐えられなくなり泡を吹きながら気絶していく。

 

「これは此奴にだけ当てはまる訳ではない。ここにいる貴様ら全て、延いてはこの下界にいる者全てに当てはまる。

 

これからは発言に気をつける事だ。酒の席だとしても呑まれぬようにな」

 

神威を引っ込めたハデスは、くるっと回って出口へと向かう。

その後ろをネロが付いていき、部屋を出て行ったと思ったらひょこっと顔を出すハデス。

 

「確か貴様ら、ダンジョンで助けてもらった礼に飯をご馳走すると言ったらしいな?」

 

「あ、ああそうや。フィン達からそう聞いてるで」

 

まだ何かあるのかと、息を呑むロキ。そんなロキを見てハデスはニヤッと笑う

 

 

「その時は食料庫の貯蔵を怠るなよ。そしてソーマも準備しておけ。我はちんけな酒は好かんからな」

 

それだけ言うと今度こそ食堂を後にしたハデスとネロ。

 

「いい?ハデスの言った通り、もしまたあんた達の誰かがウルに変なこと言ったら骨も残さず燃やしてやるから!

だから…これからは気を付けなさいよ…」

 

「私はお前達がウルや私らより強いのなら、いくら言っても構わんぞ。“強いのなら”な。

もしそんな時があったら、是非とも一戦殺りあって貰いたいな。

その時は発言分、身体をこの朱槍で貫いてやる。

ではまたな、死神の鎌に囚われた愉快なピエロ達」

 

「二人とも待ってよ〜!

…あ、みんなを失わないで済んで良かったよ!

また今度遊ぼ〜ね〜!

ってちょっと、二人とも歩くの早いってば〜!」

 

 

エルカ、フェルナはそれぞれが言いたいことを言ってスタスタと帰って行き、それをエメは慌てて追いかけて行った。

そして最後まで残っていたベルクとティエリアは、今回は本当にすまない、とロキ達に謝罪した

 

「お前たちには本当に悪かったな。エルカやフェルナは言い方はあんなだったが、ただ少し恥ずかしいだけでお前たちと争わなくて内心安心してるんだ。エメに関しては言葉通りに受け取って良いだろう。ネロの事は、怖かったと思うが普段のあの子はとても良い子なんだ。どうかこれからも仲良くしてあげてほしい」

 

「…ああ、今回は全部僕たちに非があるから、君たちが謝る様な事じゃない。むしろこっちがしなければいけない立場だからね。

それに、口ではああも啖呵を切ったけど、実際は僕たちに勝ち目なんてなかった。こんな形で収まってもらえて助かったよ。だからありがとう

 

きっとみんなも彼女たちが優しいことを知っているし、仲も良い。今回の件でその関係が崩れる事はないと思うよ。どうかな?」

 

ティエリアの言葉を聞いたフィンは、後ろを振り返りネロたちと親交が深いアイズ達を見る。

 

 

「私は、大丈夫、です」

「あたしも全然気にしないよ!こっちが悪かった事だしね!」

「団長が気にしないなら私はなんとも思いません!」

 

アイズ、ティオナ、ティオネは頷く。それに良しと思ったフィンは、その3人とずっと一緒にいるレフィーヤに尋ねた。

 

「レフィーヤはどうかな?少し難しいかい?」

 

「私は…わかりません。まだハデス・ファミリアの皆さんとは、アイズさん達ほどそこまで仲良くなれていないですし…。

でも、仲良くなりたいとは思えど嫌いになったりとかはありません!」

 

レフィーヤ達の言葉に安堵の表情を見せたティエリアは四人に感謝を述べた。

 

「それじゃ俺たちはもう行く。

いつまでもここにいては、お前達があまり落ち着かないだろうしな。

行くぞ、ティエリア。流石に少し急がないとウルやクラン達が心配するかもしれん」

 

「ウルはともかくクランはしないだろうよ。

だが確かに急ぐ必要はありそうだな。

じゃあなリヴェ、また近いうちどこかお茶でもしよう。

レフィーヤもこれからよろしく頼むよ」

 

リヴェは「ああ、そうだな」と返事をし、レフィーヤは「こ、こちらこそ、よろしくお願いひましゅ!!」と嬉しさと噛んだことの恥ずかしさで顔が真っ赤に染まる。

それを見ていたティエリアは、ニッと笑顔で手を軽くふりながら、ベルクと共に食堂を出て行った。

 

 

こうして一先ずのハデス・ファミリアとロキ・ファミリアの抗争は何事もなく終わった。

 

 

 




終わり方がすっごい雑ですいません笑
どう終わらせたら良いのかわからなくなってしまったので笑


話の途中であったティエリアが話す前にネロが飛び出して行った所なんですがね、実は飛び出したには飛び出したんですが、小人族と言うことで歩幅が小さく、ハデス達はすぐにネロに追いついちゃいました笑
その事をネロは結構ショックで道中落ち込んでたりしました笑

って言うちょっとした雑談でした笑
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