死神英雄譚   作:ちゃむこ

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2話 ハデス・ファミリア

ロキ・ファミリアの面々は、驚愕していた。

 

先ほどロキ・ファミリアが戦闘していた新種のモンスター達。

芋虫型と人型の2種類のモンスターはロキ・ファミリアが勝利したものの、その被害は大きかった。

再び大群で襲いかかってきたモンスターに対抗するのは、ロキ・ファミリアの前に現れた一つのファミリア。

オラリオ最強のファミリア、その名もハデス・ファミリア。

その最強のファミリアは、ロキ・ファミリアの前でその実力を魅せつけていた。

 

「ちょっと何よこいつら!めちゃくちゃ気持ち悪いんですけど!?」

 

芋虫の見た目に顔を引きつらせながらも、芋虫をどんどん屠っていく。

彼女が指を鳴らすだけで、芋虫は炎に包まれ爆発していく。

彼女はエルカ・スカー。レベル6の第一級冒険者。

髪や眼、着ている戦闘衣もワインレッド色のドレス。そして炎を操る魔法。

ついた二つ名は【紅蓮姫(クリムゾン・ヘル)

 

「もう少し静かに戦えないのかお前は。お前の炎だけでも鬱陶しいのにさらにその煩さは一種の呪詛だな」

 

「はぁ!?それは一体どう言う意味かしら?その口を閉じるついでに焼いてあげましょうか、フェルト・サハールさん?」

 

「お前が私に魔法を当てれるならな」

 

フェルト・サハール。エルカと同じレベル6。

紫色の綺麗な髪に赤い瞳。深紅の槍を振るう彼女の白と紫色のドレスには一滴も血がついていない。優雅に踊るように芋虫を刺し殺す戦い方から、【串刺し姫(スクル・ヘル)】と呼ばれている。

 

そんな2人の目の前にそれぞれ一本の黒いナイフが通り過ぎ、目の前の芋虫が絶命する。

 

「危なっ!?どこ狙ってるのよチビ!燃やすわよ!」

「私に当てるなら容赦はしないが、あっちに当てる分には応援しよう。さぁ、もっとよく狙え」

「ぶっ殺すわよあんたら!」

 

芋虫を貫通して宙をまうナイフ。するとその場所に一瞬で姿を現したのは金髪に金色の目の少年。ナイフを空中で掴むと、シュンッ!と一瞬で姿を消してもう一本のナイフがある場所に、まるで瞬間移動のように現れる。

 

「狙ってないって、自意識過剰だなー。たまたま狙った場所に2人がいたんだよ」

 

「まだまだこんなに数いるのに、わざわざ目の前のを狙わなくて良いでしょ!」

「あとでゆっくり話す必要があるな」

 

「あはは!遠慮しとくよ!」

 

少年はマントの内側にしまっている大量のナイフを駆使して芋虫を倒していく。投げたナイフの場所に瞬時に移動しては斬り捨てまた瞬間移動。見る見るうちに数が減っていく。

 

「あはっ!こいつら弱すぎ!あの2人怒らせてあとで模擬戦してもらおうかな」

 

ニコニコ笑顔でナイフをくるくる回している少年、クラン・ティシャル。

見た目は中性的な美形の少年。

だがそんな彼の二つ名は【狂人形(バーサークドール)

レベルは4とハデス・ファミリアの冒険者の中では一番低いが、第一級冒険者と肩を並べられる実力を持つ。

 

「聞こえてるんですけど?私はいいわよ?骨も残さず灰にしてあげるわよ!」

 

「私は炎バカと違って子供じゃない。子供は子供らしく子供同士で遊べ」

 

「「誰が子供だ!(よ!」」

 

三人が睨み合って今にも戦闘が始まりそうになっていたが、三人の頭上からキュイィィィンと高い音が聞こえる。

三人が上を見ると、1人の犬人が弓を向けていた。だがその弓には、獲物を射るための普通の矢ではなく光り輝き、弓の前には魔法陣が浮き出ていた。三人はそれを確認するとものすごい速さでその場から離れる。

 

「一矢千撃♪二矢全め〜つ♪」

 

歌っぽい何かを終え、えいっ!と引いてる弦を離した。すると光る矢は魔法陣を通過した。その瞬間、光の矢は千本近く増え的確に芋虫を仕留めていく。

 

「終わった終わったー!」

 

スタッ!と着地を決めた犬人の少女。彼女も第一級冒険者でレベルは5。

名をエメ・アロイ。楽しそうに獲物を射る姿から付けられた

二つ名は【楽狩者(ハンター)

 

「あれ?…あちゃー何体か隠れてたかな!…でも大丈夫か!あっちにはあの子たちがいるし!やる気が出る魔法の言葉もちゃんと伝えたし!」

 

エメはロキ・ファミリアのみんながいる方を見るも平気!平気!とスキップしながら、先ほど、何やら楽しそうに会話していた自分の家族のもとへゆっくり向かった。

 

 

「団長!芋虫が数体こっちにきます!」

「わかった。僕たちで片付けよう。ティオネたちも戦闘準備だ!」

 

「「はi…「大丈夫ニャ!シャルたちに任せるニャ!」…え?」

 

「この数なら問題ない。…多分」

 

フィン達、幹部組が武器を構えて芋虫を迎え撃とうとした時、フィン達の上を大きなボールの様な影が二つ通り、目の前に止まった。

ボールかと思ったその影はよく見るとサポーターが持つ大きなリュックだった。

 

「近くで見たらブニョブニョで気持ち悪い…。あ…無理そう」

 

芋虫をよく見るなり顔を青ざめているのは、

黒髪黒目の猫人のマリル・ハース。

拒絶反応か身体はブルブルと震えている。

 

「行くにゃマリル!エメちゃんが言ってたニャ!これ倒したらウル君からご褒美が貰えるらしいニャ!」

 

そんなマリルを鼓舞するのはマリルと同じ黒髪で青目の猫人。

マリルの双子の姉のシャルル・ハース。

シャルルは姉らしく、怖がる妹を先程エメが教えてくれた情報でなんとか妹のやる気を上げさせようとした。だが彼女達はサポーター。しかも年齢はわずか10歳とまだまだ子供。いくら双子だからって性格が必ずしも似るわけもない。

姉のシャルルは好奇心旺盛で明るいのに対して妹のマリルは少し臆病で大人しい。そんな子がいくらご褒美が貰えるからと言ってすぐに戦えるまで気持ちが上がるわけが…

 

「行こシャルル。今なら何体来ても勝てるよ」

 

上がった

 

もの凄い上がっている。目に見えるほどマリルの体からはやる気の炎がメラメラしていた。そして2人はどんな手品を使ったのか一瞬にして自分の身体の倍以上ある武器ーーシャルルは大槌、マリルは巨斧ーーを出し、構えた。

 

「「せー…のっ!!」」

 

2人はそれぞれの武器を力一杯振り回し、芋虫を潰したり真っ二つにする。

その可愛らしい見た目に反しての豪快な戦い方に、フィン達は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「やったニャマリル!これでシャル達はウルにご褒美が貰えるニャ!」

 

「今のうちに何がいいか考えとかなきゃ…楽しみ」

 

2人の子供は楽しそうにご褒美の内容を考えていた。

ちなみに終始背負っていたサポーター用のリュックを見てフィン、リヴェリア、ガレスは、昔アイズがダンジョンについて行くためにあのでかいリュックでみんなの荷物を一生懸命背負っていたことがあったなと思い出していた。

 

ひとまず芋虫の大群は全滅したがまだ厄介なのが残っていた。レベル5のアイズでも苦戦した人型の新種。しかも三体。芋虫を殲滅しているハデス・ファミリアに目を奪われていたが、さっきからその人型のモンスターがいる方が静かだった。ふと全員が人型三体の方を向くと、三体ともピンク色の四角い結界の様なものに閉じ込められていた。

しかし芋虫達が全滅したとわかったのか突如として、その結界が消える。

 

刹那ーー三体のうち一体が真っ二つ、もう片方はバラバラに斬られた。二体は倒した証である爆発と腐食液が飛び散るも先程の結界がその爆発と腐食液を押さえ込んだ。

その一瞬の出来事にロキ・ファミリアの面々は開いた口が塞がらないでいた。

 

 

【数分前、バラバラside】

 

そこにはクマのぬいぐるみを大事そうに抱える少女がいた。濡れ羽色の髪に真っ黒のドレス。目は血の色の様に赤い。

そんな少女はじっと結界に入っている人型を見上げていた。

 

「なんでネロがこんなめんどくさいことしないといけないのだ…

レベル6(・・・・)で終わるだろうけど、それじゃこのイライラは収まらないゾ」

 

ネロ自身の影が広がると、その中から4本のチャクラムの様な武器が出てきた。

その武器はネロの周りを回転しながら浮遊している。

ネロは芋虫が出てきた方に視線を向けた。

 

「あっちは終わった様だゾ。てことはもうそろそろティエリアの魔法が解除されるはず…細切れにして遊ぶとするのだ」

 

ネロが右手を上げるとチャクラムが不規則に動きながら回転速度が上がる。

 

「ティエリアの性格上、ウル君は花として最後にするだろうから、ネロと一緒のタイミングは団長っぽいのだ。…と言うかネロが相手しないでティエリアがすればいいのに…なんでネロなのだ」

 

ぶつぶつと文句を呟くネロ。その時人型を閉じ込めていた結界が解除された。それと同時に、ネロは素早くチャクラムを操り一瞬のうちに人型をバラバラにした。爆風と腐食液が飛び散りそうになるも、再び発動した結界にそれらは阻まれる。

 

「新種だからどんなものかと思ったらこの程度。ネロの相手じゃなかったゾ」

 

そんな自信に満ち溢れるネロのレベルは、先ほどの彼女らよりも上のレベル7。

オラリオにレベル7以上は五人しかいない。そのうちの1人がこの少女だ。

チャクラムが自分の影に戻ると、ネロはスタスタとみんなが集まるだろうところへ戻っていった。

 

side out

 

 

【真っ二つside】

 

「…あっけなかったな」

 

大剣を振り下ろした状態でフリーズしている巨漢。

結界が解除された瞬間に振り下ろした一撃は、なんの抵抗もなく人型を真っ二つに斬り伏せた。

見事な一撃を放ったこの男こそ、

ハデス・ファミリアの団長、ベルク・ドラグス。レベル8の第一級冒険者だ。

210Cの巨体に鍛え抜かれた肉体。そして自分と同じぐらいの大きさの大剣を軽々振るい、時には素手でモンスターを撲殺するその戦い方から、

ついた二つ名は【鬼人】

 

「新種相手だから、油断せずに挑んだが。おそらくティエリアの魔法が強力すぎて、向こうの本量が出せなかったんだろう。新種とはいえ2対1は大人気なかったな、すまない」

 

真面目な男前の顔のベルクは、その見た目通りの真面目さで先ほどまで人型がいた方に軽く頭を下げた。

 

「またどこかで戦うことがあったら、その時はサシで殺り合おう」

 

ベルクは皆のもとへ向かうと、右の道から1人の女性が現れる。

 

艶のある深緑色の髪に緑色の目。そして特徴的な長い耳。そして見る者全員が美しいと答える容姿。彼女はハデス・ファミリアの副団長であり、ベルクと同じレベル8。名をティエリア・ストル・リールブ。

種族はエルフだが、彼女はエルフの中でも王族のハイエルフ。

ちなみにロキ・ファミリア所属のハイエルフ、リヴェリアとは従兄弟関係で凄い仲良しだ。

 

「お疲れベルク。相変わらず君は速いな。少し魔法の発動が遅れていたらあの腐食液は防げなかったぞ?」

 

「それを言うならティエリアこそ魔法の発動が速いじゃないか。さすがオラリオ一の魔導士だ」

 

「揶揄うのはよせ。それにオラリオ一の魔導士は私ではなくリヴェだ。彼女は【九魔姫(ナイン・ヘル)】、9つの魔法を使えるんだ。私とでは魔法の才能が違うし、そもそも私は純粋な魔導士ではないからな。所詮半端者だよ」

 

ティエリアはくすくすと笑う。

 

「それに私の魔法は他の者達と少し違うからな。比べることもないよ」

 

「…確かにお前の魔法には常識というのが欠けてると言えるぐらいにはずるいからな。詠唱が長いが、完成したらいくら俺やウルでもお前に勝つことは難しいだろう」

 

「少し大袈裟に言い過ぎだぞベルク?2人にかかれば私なんぞ一瞬だろう。

ベルクとは初期からずっと共にやってきたからある程度はお互いわかるが、ウルの場合、あいつは戦い方が多種多様すぎる。いくら私の魔法が変幻自在でもウル相手には難しすぎr「今ここでウル君の話をしてなかったか?」…地獄耳の域を超えてるなネロ。お疲れ様」

 

突如後ろから現れたネロに、特に驚くこともなく話すティエリア。

ベルクもネロに「お疲れだなネロ」と言うとネロも「ベルクこそお疲れだぞ」

と言葉を交わして三人で並んで歩く。

 

「ところでティエリア。いつまでウルの分を閉じ込めているんだ?」

 

「…ああ、ウルの魔法は美しいからな。なるべくゆっくり見たかったんだ」

 

「ウル君の魔法はどれも黒っぽいからな」

 

「ティエリアって意外にダーティなの好きだよな」

 

「私はエルフのいきすぎた価値観は好きじゃないからな」

 

「「ぶっちゃけすぎだな(だゾ)」」

 

ティエリアはハッハッハッと笑いながら最後の一体の人型の方を見る。

そして魔法を解除した。

 

「さぁ、今回はどんな色(・・・・)を魅せてくれるんだ?」

 

ティエリアは指を鳴らし魔法を解く。

またしても勝負は一瞬でついた。

 

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