死神英雄譚 作:ちゃむこ
「これが…最強ファミリアの力っすか…」
ロキ・ファミリアのラウル、そしてロキ・ファミリア一同は戦慄していた。
今目の前で行われてるのは冒険者とモンスターの戦闘などではなく、ただ一方的な殺戮。
50階層との戦闘を終えたハデス、ロキ・ファミリア一同は、団長のフィンが上層階までの護衛をハデス・ファミリアに依頼し、一同は着々と階層を登っていた。
その際、現れたモンスターはハデス・ファミリアが対処しているがその仕方が圧倒的すぎた。深層にもなるとモンスターの戦闘力も上がり、第一級冒険者とて命を落とす可能性も十分にある。
普通の第一級冒険者ならモンスターとエンカウントしたら進行をやめ、戦闘を始めるはず。
だが、未だにハデス、ロキ・ファミリアは
なぜなら…
「モンスターが出てきても、すぐさま爆発。一差し、バラバラ…挙句にはなんすかあれ…ウォーシャドウよりも人間な、黒い兵士が勝手にモンスターを殺すって…しかも何よりなんで無言であんな綺麗な連携が取れるんすか…意味がわからないっすよ…」
「ガッハッハ!あやつらに常識があると思ったか?冒険者は皆当たり前に力を、強さを求めるが、あやつらの場合は他よりも求めすぎておるんじゃ。わしらにはわからんがそうなる理由があったんじゃろうな。それ故にあやつらは力に固執し貪欲に求める。だが、そんなあやつらも口では言わないがお互いを家族として信頼しきっておるんじゃろう……………多分じゃがな」
ガレスはラウルの隣を歩きながら、ハデス・ファミリアに感じたことを言う。良いこと言えたと思い、フフンッ!とドヤ顔するガレスだったが、目の前には先ほども口論で騒がしかった3人組が言い合いをしていた。
その光景に、目の光が消え無心になったガレス。その隣でラウルはなんとかガレスを励ます奇妙な絵面があった。
「ウルは戦わないの?」
「ウルがわざわざ動くこともないのだ。こんな雑魚、ネロの兵たちですぐ終わるゾ。
それより【剣姫】も、【
「えー!だって1ヶ月ぶりにウルと会ったんだよ?たくさんお話ししたいじゃん!」
ティオナはウルの右腕に抱きついた。ウルの左側にいたアイズは、そのティオナの行動に、驚き目が大きく開く。一方でネロは普段の落ち着きはどこへやら、美しい黒髪が生き物ののように逆立つ。
「落ち着けネロ。ティオナやアイズ、他にもウルと話したい者は沢山いる。毎回そうなっては疲れてしまうぞ?」
「ネロはただウルの…側にいたいだけなのだ!ティエリアだってそう思ってるはずだゾ」
「ウルはハデス・ファミリアなんだ。ネロや私はいつでも話せる。だが他の者はそのタイミングがないんだ。他者と話すのもウルは楽しんでいる。それでもどこか気持ちが晴れないならウルと話して来い。それにもうそろそろ
「…わかったゾ。ティエリア、ありがとうだゾ」
ネロはウルの元へ駆け寄るとそのまま背中に飛びつく。
「あれー?ネロってばヤキモチでも妬いたのかな?さっきも私のこと名前で呼んでくれなかったしー」
「君は少しうるさいんだゾティオナ。少し眠たいから寝るだけだゾ。
…ウル、影は残しとくから次の
「わかった。ありがとうネロ、おやすみ」
「おやすみだゾ…ウ…ル…」
「ありゃ?ネロ寝ちゃったよ」
スースーと気持ちよさそうに眠るネロにそれをおぶるウル。その光景にアイズは少しいいなと思う。ティオナもネロの寝顔を可愛いなーとじっくり見ながらもちょっと気持ちよさそうかもと思う。
その様子を後ろから微笑ましく見守るのはハイエルフの2人。
「どうして私たちハイエルフというのは似たような立ち位置になるんだろうな」
「フッ、お互い面倒な立場になってしまったね。でもリヴェも話したければ話していいんだぞ?リヴェもウルのことは気に入っているだろう?」
「まあな。ウルは私をハイエルフとしてではなく、ただのリヴェリアとして接してくれる。フィンやガレス達とは違う、また別に気を使わなくていい、親しみやすい友人だと思っている」
「ウルは種族とかは気にしないからな。…それにしても“友人”か。なるほど、なるほど…」
ティエリアはリヴェリアの言葉を思い出し、ニヤニヤしながら笑う
「なんだその顔は…。お前は昔から私を揶揄う時その顔をするが、いつ見てもムカっとさせるな。それより私の発言のどこかおかしいんだ」
「“ただの”友人じゃないだろう?私は知っているんだぞリヴェ。ウルと冒険者なりたてのアイズとリヴェで、アイズの特訓のためにと定期的に簡単なクエストを受けていた時があっただろう?その時、アイズが疲れて寝て、2人も休息をとるとなった時、リヴェからウルに膝枕をしてあげたことをね」
「…な、なんで知っている!?ウルが言ったのか!いや、そんなことをする奴じゃない。ということはまさか…見ていたのか!?」
「あの時、ウルが寝た後そっとウルの頭を撫でている君の表情を見たとき、思わず驚いたよ。幼い時から真面目で高貴で、今こうして【
いつも凛としていたリヴェリアはどこへやら、ティエリアの揶揄いによって慣れない恥ずかしさでその目は少し潤んでいる。
リヴェリアはその恥ずかしいところを誰かに見られてしまったのでは!?と周りを見渡すも自分たちは陣形の最後尾にいたため誰にも見られていなかった。
そのことに一先ず安心したリヴェリア。
だがすぐにキッ!とティエリアを睨む。
「ハハハッ!私が悪かったからそう怒るな。別にウルに惚れるのは仕方のないことだ。性格も良く、実力もある。品もあるし、その容姿のせいか美の女神のように人は皆あの子に魅了される。変な輩ならまだしもリヴェやアイズやティオナ、その他私の気の許せる者達なら、たとえ他派閥でもあの子の側にいて欲しい。ハデスも言っていたしな」
ティエリアは前に主神に言われたことを思い出す。あの妙に見た目だけは良い、頭のネジが数本外れている駄神を。
『ハーレムは男の夢。英雄に必須の条件。
よってティエリアよ。あやつに相応しい娘をお前が定めろ。数は問わん、だが良い娘だぞ。ウルを心から愛し、支えられる者だ。種族は問わん!たとえ神でもだ。そしてお前もそれに加わり、我はそれを肴に酒を飲み傍観し、新たな英雄譚として記す。
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…フフ…フハハハ!よい!よいぞ!これほど未来を楽しみにしたことはない!そうと決まればティエリアよ!今すぐ探して来い!探して我を楽しませi……』
「待て、なんでお前はそれを了承した!?神ハデスがおかしいのは知っているが、そこまで馬鹿なことをお前が了承するはずが……………いやあるな」
「フッ、そういうことだ。だから応援しているぞリヴェ。君が加われば私もより一層楽しみが増える」
「お前は昔から私の前では貴族らしくなかったが、こうして大人になってからというものそれが増したな。
それより…保険として先に行っとくぞ。…私はいつかお前を刺すかもしれん」
「その時は是非とも君の最高級の魔法にしてくれ。もっとも死ぬ気はないが」
「…そこはまずやられないようにしてくれ」
今のリヴェリアをロキ・ファミリアの面々が見たら驚きの表情を浮かべるだろう。なぜなら今の彼女は普段見せないほどコロコロと表情を変えながら楽しそうに幼馴染みと話していた。
そして一向は着実に上層に登った。