死神英雄譚 作:ちゃむこ
ハデス様は、本当はとてもカッコいい神様なんです。本当です。
嘘はついてないです。
チチチ…チチチ…
朝日が廃教会を照らす。
その教会には地下室があり、その朝の始まりを知らせる朝日も、鳥の鳴き声も届かない場所で1人の少年は起床した。
「…んー5時ぴったし…」
いつもソファーで寝ているのか、少年は起き上がりダンジョンに潜る準備をしながらも、自分の主人が寝ているであろう一つしかないベットを見る。
(あれ?神様がいない?)
「おや?おはようベル君!」
「わぁっ!」
後ろから急に声をかけられたことに驚く少年。髪は白く赤い目を持った少年。誰もがその見た目をウサギに連想するだろう。
「神様!おはようございます!今日は早起きですね?何か用事ですか?」
ベルは自分を驚かした存在に挨拶をする。見た目は幼女っぽい美少女。艶のある黒髪をツインテールに結びその長さは腰まで届いている。髪を結いてるリボンには銀色の鐘。丸い顔と頬は幼い容貌を形作っているが、その幼さとは不釣り合いに豊かに成熟した双丘は、誰もが目を引き寄せられるだろう。
彼女の名はヘスティア、ベルが所属する『ヘスティア・ファミリア』の主神。
「ちょっとお昼ぐらいに用があってね。僕の友神の子たちがダンジョンから帰ってくるんだよ!その中に僕の大切な子もいてね!1ヶ月ぶりに会うんだよ!
…あ!ベル君、もしダンジョンに潜るにしても、その子達が帰って来てからの方がいいと思うよ?」
「そうなんですか?」
「もう少ししたら広場が人や神でいっぱいになるだろうからね。午後になったらみんな散るだろうからその時がおすすめだぜ!」
「わかりました!神様の言う通りダンジョンは午後行こうと思います!」
「うんうん!僕は少し寄るところもあるからもう出るよ!それじゃベル君気をつけていってくるんだぜ?」
「はい神様!いってらっしゃい!」
【ダンジョン入口・
ここには大勢の人が集まったいた。
オラリオに住む一般人や冒険者、神様など様々な人。
主に女性が多いその人だかりの中心には数名の有名
「ヘスティアにヘファイストスではないか!なんだお前たちもハデスに呼ばれたのか?」
「やあ!タケにミアハ!ナァーザ君も!…ん?いや僕たちは違うよ?ほら、ハデスのところには1年間だけだったけど
「私はヘスティアに呼ばれてついて来ただけよ。もっともハデスの子たちは、うちのお得意様でもあるからね」
「なるほどな。私もハデスに呼ばれたからだが、ウルには良くうちの商品を高く買ってくれたり、依頼も受けてくれたりと世話になりっぱなしだからな。元々ナァーザを連れて来ようと思っていたんだ」
「あそこは見かけによらずお人好しが多いからね。主神は微妙だけど」
ヘファイストスの言葉に、ヘスティア達は頭に
「おー!よく来たな我が神友よ!」
するとそこへ、フハハハハと笑いながら歩いてくる全身を黒いローブに包みフードをかぶっている神が歩いて来た。
大勢いた人々や神達はザザァーとその神に道を開ける。
「やはり我が愛しの子を迎えるには賑やかな方が良いからな!だが1番に労いの言葉を送るのは我だからな?そこの順番は守ってくれよ?」
真っ黒の神は歩き喋りながらヘスティア達の前に行くとフードを取った。
フードの中身は黒髪赤目の誰もが認める美青年だった。
彼こそがオラリオ最強派閥【ハデス・ファミリア】主人の神・ハデスだ。
「ところで我が神友達よ!元気か?まぁ元気だろうよ!なんせお前達とは一昨日も飲んでいるからな!フハハハ!」
ハデスのテンションの高さに頭を抑えるヘスティア達。
神ハデスは見た目は良いが、機嫌がいいととことんうるさくなることから一部の神達からは“残念な神”と呼ばれている
「相変わらず君はうるさいな!?自分の子が帰ってくるから嬉しいのはわかるけど!あと、一昨日だけって言ってるけど、ウル君達が遠征に行ってる間の1ヶ月間ほぼじゃないか!」
「何をそんなに怒っているヘスティア?我はお前に1ヴァリスも出させていないのだぞ?感謝はされど文句を言われる筋合いはない!」
「そうだ、そのことに関しては私も礼を言わなくてはな。いつも私とナァーザを誘ってくれてありがとうハデス、お前やウル達には本当に世話になっている」
「ありがとうございますハデス様」
ミアハとナァーザはハデスに頭を下げた。
ハデスはよくヘスティアやミアハ達にご飯をご馳走する。
それは決して性格の悪いとかではなく、ハデス曰く一緒に話をしたいからと言う自分のわがままだから相手の時間を買っていると言う解釈らしい。
それにミアハには時々、無料でポーションをもらっているとウル達から聞いているため、そのお礼も兼ねているが本人には伝えていない。
ミアハは毎回遠慮しているが、ハデスが半ば無理やり支払っている。
一方でヘスティアはその店の高いやつをちゃっかり頼んだりしている。
「良い良いミアハ、ナァーザ!お前達は我が友だからな!あやつらも友だから一緒にいるだけで、世話をしてるなどと思ってないだろうよ。
またいつでも我がホーム【夜空の邸】に来るがいい!
ヘファイストス、お前もまた椿を連れて来い!あやつとは飲み比べの勝負が負け越しだからな」
「それは別にいいけど。それよりもあなたのホームの名前決まったの?
前にも名前つけては女性陣に批判されてなかった?確か【黄泉夜邸】だっけ?」
「男どもには大好評だったがな。まぁ今回は無理やりにでも通す!
…それよりもあやつら遅いぞ!一体なにをしている!」
殺されないようにねとヘファイストスは呆れた表情で言う。
ハデスはそんなヘファイストスの言葉は届いてなく、まだかまだかと落ち着きがなくなっていく。
するとダンジョンの入口から複数人の足音と騒がしい声が聞こえて来た。
黒いマントに包まれている集団は、特に疲れている様子もなく何名か言い合いをしながらも出てきた。
オラリオ最強【ハデス・ファミリア】が姿を見せると、そこに集まっていた大勢の者が騒ぎ始めた。
「あれが最強のファミリアかよ…」
「オーラがちげえ…」
「なんて迫力だよ…」
一瞬でその場は、一種のお祭り騒ぎになるもハデス・ファミリアの連中は特に気にすることなく、自分たちを待つ主神の前へ進む。
ハデスは全員無事か数えると9人。1人足りなかった
「…?ベルクよ、ウルはどうした?ここにいない様だが」
「途中どっかの冒険者が危ない状況になってて、それを助けに行った。
すぐ戻って来ると……ああ、来たようだ」
ダンジョンの方からコツ…コツ…とこちらは歩いてくる人影。肩には救出した冒険者だろう者達を担いでいた。その場にたまたまいたギルド職員に冒険者を預けるとベルク達の元へと向かう。
みんなと同じマントを羽織り全身黒かったが、ウルはさらにダンジョンではつけていなかった黒い仮面の様なものもつけていた。
「【死神】のウル…」
「オラリオ最強のレベル9!」
「やべえ…俺足の震えが止まんねぇ…」
「「「ウル様ぁぁぁああー!」」」
「女はすげえな…」
ウルは真っ直ぐベルク達の元に着く。
するとベルク達は一斉にハデスの前で片膝をついた。
その光景にその場にいたものは一気に静かになった。
「神ハデス、あなたの名に恥じぬよう、我ら10名無事帰還しました!」
先頭のベルクの言葉に、ハデスは目を瞑りフッと軽く笑った。
先ほどまでのうるささはどこへやら、ハデスはゆっくりと目を開けベルク達一人一人を見る。
「ああ、その様だな。…此度の遠征もご苦労であった!すぐにでも話を聞きたいが…まずはお前たちの休息が優先だ!
一先ず帰るぞ!我らのホーム【夜空の邸】へ!」
ハデスは腕を組みフハハハと高笑いする。ベルク達は挨拶を済ませて立ち上がり、先ほどハデスが言ったホーム名を呟いていた。
女性陣はゆっくりとハデスを囲み周りからはハデスの姿を見えない様にした。
「フッどうだ?今回の名はなかなか良いだ…ろぅ…やめ、やめろ!そんな目で見ても変えないからな!?変えなぃ…から…あ…やめtぎゃあぁぁぁ!」
その場にいた者たちの耳には、先ほどまでかっこよかった神からは想像もできない悲痛な叫び声しか聞こえなかった。
一方でベルク、ウル、クランの男性陣は「おぉ…!」と密かに目を光らせていた。
ちなみにウル君の仮面をつける理由は、騒がれると恥ずかしくて照れてしまうかららしいです。
クラン君も一時期、ウル君の真似して仮面つけると言うブームがありましたが、うざったいって理由でつけなくなったらしいです。
ちなみにそのマスクはウル君から貰った物らしくお部屋に大事に飾っています