死神英雄譚 作:ちゃむこ
ハデスが女性陣にしばかれて数分が経ち、ウルたちはその場に来ていたミアハ達に挨拶を済ませた。
「久しぶりだねウル君!」
「…ヘスティアか。久しぶりだな」
ヘスティアはウルに微笑む。その姿を見てウルもヘスティアに微笑んだ。
「そうだ!怪我はないかい!?多分君のことだから大したことはないのだろうけど、それでも君は無理をするからね!君が遠征に行ってからそればっか考えちゃって、しばらく僕は生きた心地がしなかったよ…」
「心配させてたのならすまないヘスティア。一年前とはいえ、ヘスティアは俺の
今回のような長期遠征は当分ないだろうから、前に言っていた“休日に出かける”と言う約束なら、基本いつでも大丈夫だ」
ウルは身長差が凄いからかその場にしゃがみ込んで、しょんぼりするヘスティアの頭を撫でながら告げると、その最後の言葉にヘスティアはさっきまで落ち込んでいたのがまるで嘘かのように、今は目をキラキラと輝かせている
「ウル君!それはほ、本当かい!?いつでも
「フッ、ああ
「やったー!全然構わないよ!ありがとうウル君!やっぱり君は初めて会った時から素敵な子だよー!」
ヘスティアはウルに飛びついた。しゃがんでる状態での飛びつきに、他のものならバランスを崩しそうだが、さすがのレベル9のポテンシャルで難なくヘスティアを抱き抱えた。
ヘスティアを抱いたまま立ち上がるウル。ヘスティアは慣れた感じでウルの首に手を回しギュッと密着する。
嬉しそうにするヘスティアだったが急に何かを考えるように顎に手を添えた。
「…ん?ウル君。君は今、“ロキの所”って言ったかい?…もしかしてまたヴァレン何某じゃないだろうね?」
「そのもしかしてだけど…そう言えば、前からヘスティアはアイズに敵意を向けていたが、やはり何かあるのか?ずっと聞いても教えてくれなかったが」
ウルの言った通り、ヘスティアは前からアイズに敵意を向けていた。
敵意と言ってもそんなドロドロした感じのではないが。
何故ヘスティアがアイズをライバル視しているのか分からなかったウルは、良く主神であるハデスやミアハ、ヘファイストスにタケミカヅチといった神友に相談をしていたが、みんな口を揃えて「気にするな」と言っていたからウルは深く考えないでいた。
ハデスだけは、「これでまた1人増えたな!なんと愉快なことだ!その調子で頑張れウル!フハハハ!」と楽しそうにしていた。
「ぐぬぬ…ほんとヴァレン何某は厄介だね!僕の子にも影響を与えてくれちゃってさ!クソー!」
ヘスティアは昨日のことを思い出していた。自分の子であるベルが5階層でミノタウロスに襲われて、ギリギリをアイズに救われたこと。そしてそれがトリガーになりベルに成長系のレアスキルが発現してしまったことを。
「こうなったらヴァレン何某よりもたくさん一緒にいる時間を増やさないと…
ウル君!言質は取ったからね!僕とたくさん出かけていっぱい思い出つくって素敵な日々を送ろうぜ!」
ヘスティアは可愛くウィンクをしながらサムズアップする。
(相変わらず、太陽の様な
ウルはヘスティアに微笑み、それを間近で見たヘスティアは顔を真っ赤になり顔をウルの方に押し付ける。その時にふとヘスティアの耳あたりがキラッと光った。
「ヘスティア、そのピアス…ちゃんといつもつけてくれてるのか?」
「あ、当たり前じゃないか!君が
小さな赤い石が埋め込まれたピアス。これはウルが1年間だけヘスティア・ファミリアに所属していた時、ヘスティアのために作ったオリジナル魔道具。
ハデス・ファミリアは長期の遠征を行うため、なるべく出費を抑えるようにと自分たちで魔道具などを作ることがある。武器の調整は、鍛治のアビリティを持つエメが行うこともあり、魔道具に関しては公には発表していないがレアアビリティである『神秘』をウル、シャルル、マリルの3人が発現しているため、とても高性能な魔道具を作ることができていた。
ちなみに、このピアスにある魔石にはヘスティアの神血が素材になっており、ある魔法の術式と、ヘスティアが付けている時、このピアスは変幻自在になり、ネックレスにもブレスレットにもなるという便利性能があったりする。
特に変幻自在のところをウルはこだわったらしい。
「見てくれよ!この輝き!こんなに綺麗な物は君じゃなきゃ作れないと思うね!本当に本当にありがとうウル君!これは僕の一生の宝物だよ!!」
「フフッ、気に入ってくれてるなら良かった。
…さて、もうそろそろ行かないとな」
ウルはヘスティアをそっと下ろす。ヘスティアは、「あ…」と名残り推しそうにするも、すぐにウルが「またすぐ会える」と頭を撫でるとパァァ!と笑顔になっていた。
「そういえば、遠征前に倒れていた子は大丈夫だったか?」
「ウル君が連れてきてくれた子なら、僕のファミリアに入ってくれたよ!
昨日ミノタウロスに襲われちゃったらしいんだけど、なんとか逃げ帰ってくれたよ!なんだかそういう危なっかしい所は君に似ててね!もしかして兄弟とかじゃないだろうね〜?」
手を輪っかにして双眼鏡のようにしてウルを覗くヘスティア。
ウルは穴を閉じたり開いたりして遊んでいる。
ちなみにこの遊び、酔っ払ったネロも時々やっていて、
ネロの場合穴を閉じたら「ウ、ウル君が消えたゾ!どこにいるんだウルくーん!」
穴を開けたら「あ!ウル君が見えるのだ!ウルくーん!」と少しおバカになったりする。
一方でヘスティアは…
閉じたら…「うわ!ウル君見えないよ!真っ暗だ!」
開けたら…「見える…見えるぞウル君!僕はもしかしたら千里眼を持っているかもしれない!」
シラフで同レベルだった…。
その姿にハデスは今にも吹き出しそうに口元を抑え、他の3神は頭を抱えていた。
(昨日アイズが助けたのがその子だったのか。顔は見てなかったからわからなかったが、ヘスティアの眷属になったか、それならもしもの事がなくて良かった)
「そうだウル君!今度会ってあげてくれないかな?彼君に憧れてるみたいなんだ、ベル君って言うんだけどね!どうかな?」
「ああ、構わない。…それじゃこれ以上待たせるのは悪いからもう行くよ」
「そうだね、僕も今日はバイトの打ち上げがあるから帰らなきゃ!ウル君もまたじゃが丸くん食べに来てくれよ!」
「フッ、ああ。必ず行くよ」
ウルは優しくヘスティアを撫でる。ヘスティアは気持ちよさそうに目を細めた。その後我慢できなかったのかギュッとウルに抱きつくヘスティア。
「すぐに出かけるから空けておいてくれよ?約束だよ?」
「ああ、約束だ」
ヘスティアはウルから離れると、ウルの小指を自身の小指と絡めて指切りをした。
「それでは我が神友達よ!我が子のために良く来てくれた!改めて礼を言う!それではまた後日会おう!」
フハハハと笑いながらもハデスは歩き始め、それにベルク達もついていく。
最後まで手を振るヘスティア達、それに気付いたウルはクスクスと笑いながらも小さく手を振った。
やっぱいい子だなと4柱は改めて思った。