とある東京の運転・能力使い(ドライブテクマスター)   作:KBS滝原

16 / 20
突然の願いに戸惑いを見せるあずま。大覇星祭は元々学生が主役の祭りだ。なぜモータースポーツが出てくるのか。あずまは疑問を持っていた。瞬く間にその噂は広まるのだが、あずまはどっちに決断が転がるのか。


第16話 決断

「その件に関しましては、お断りいたします。」

 

所長と女性は驚いた。こんな重要なことを逃すとはと。あずまは更に続ける。

 

「大体、大覇星祭は学生の普通の運動会に能力を一部解禁するということで開催されているんですよね?一般の部がそもそも設けられることなどおかしい。本当に設けられたんですか?」

 

すると女性は、大覇星祭のプログラム用紙を見せてくる。そこには、一般の部、モータースポーツと書いてある。だがあずまはどうしても納得いかない。

 

「いくら本当であっても、学生に事故とかそういうものを見せることになるんですよ?一歩間違えればモータースポーツは死亡事故につながる恐れがある。そんなものを見せていいとおっしゃるんですか?それに私たちは、臨時便の兼ね合いだってあるんですよ。運転士一人欠けたらどうなるかお分かりですか?その話をされるんだったらもう用はございません。お引き取りください。」

 

そういい、あずまは応接室を出る。所長は女性に謝罪をする。

 

「すいません。入社4カ月でして。走りたくないって言ってるでしょうけど、本音は走りたいんだと思います。」

 

あずまはバスに戻った。あずまの脳裏には、またしても悲しい経験が。前の世界でのこと。あずまは友人に誘われ、富士スピードウェイに向かった。自分のハチロクを走らせ、10周ほど走っていたが、友人の車はヘアピンカーブの壁に高速で突っ込んだ。それも尋常じゃないスピードで。友人の乗っていた車両は、クラウンだった。クラウンの前面は大破した。さすがのあずまも、車を降りた。その友人は、搬送先の病院で亡くなった。これ以降、あずまはサーキットで走るのをやめ、同時にモータースポーツから引くことになった。あずまのトラウマがまた蘇ってしまう。

 

営業所から帰宅したあずまは、涙子と大覇星祭の話になった。

 

「あ、そういえば、大覇星祭が今年も開かれるんだけど、、今年から一般の部が開かれるみたいで、その中にモータースポーツが入るみたいなのね。あずま君にもしかしたらオファーがかかったんじゃないかなぁって思ったの。」

 

「俺はモータースポーツには出ない。モータースポーツがやりたいなら、勝手にしてほしい。」

 

そういい、部屋に戻った。モータースポーツの言葉を聞いた瞬間、あずまの様子がおかしくなる。

 

翌日。4人は公園で大覇星祭の話をしていた。その中で、あずまの様子がおかしいことも伝えた。

 

「あずま君、大覇星祭でモータースポーツの話をした瞬間、様子がおかしくなったの。何があったのだろう・・・。」

 

「たぶんトラウマがあるのかな・・・。」

 

涙子の家に到着した4人は、あずまの部屋から、資料をあさる。各々が資料を探していく。すると、美琴が何かを見つけた。そこは、静岡県の新聞が。

 

「1998年10月8日の新聞だわ。富士スピードウェイで1人が死亡。スピードの出し過ぎかという記事があるわ。午後2時13分頃、静岡県富士市の富士スピードウェイにて、レースをしていた1人が壁に激突した。病院に搬送されたが、その後死亡した。」

 

4人はこれではっきりした。あずまがモータースポーツに出場しないわけが。あずまは同期を亡くした悲しみと、サーキットで友人を亡くした悲しみが。あずまはそれを背負っている。営業所では、あずまが一人佇んでいる。蘇ってしまったトラウマ。営業所からの帰り、あずまは公園に寄った。その近くには、サーキットが。すると・・・

 

「ここにいたのね。」

 

「君たち…どうして…。」

 

後ろを振り返ると、美琴、黒子、飾利、涙子の4人が。

大覇星祭のモータースポーツについての話をすると、

 

「だから参加しないって言ってるだろ。君たちにはその参加しない意味が到底分かるまい。俺は帰る。」

 

「分かってるわよ。参加しない理由。11年前に起きた、富士スピードウェイでの事故でしょ?」

 

どうしてそんな話をと思った。

 

「あずまさんの部屋を調べさせてもらいましたの。新聞の切り抜き。そして、あの写真に写っていたのは、あずまさんと親しかった友人、弁天町 博光(べんてんちょう ひろみつ)。」

 

あずまは4人がたどり着いた真実に何も言い返すことができなかった。空き缶を握りしめ、ゴミ箱に捨てたあずまは・・・。

 

「そうだ。俺の車好きの友人で、元々そいつは身寄りのない、施設で育った子だったんだ。高校時代、博光は俺にいつも車の話をかけてきた。俺自身も小さい時から車が好きで、いろいろ話が噛み合ってた。高校卒業するとき、博光は言ったんだ。一生モータースポーツを楽しもうぜって。高校時代はあまり口数も少なかったけど、久しぶりに会った時はかなり明るくなってた。俺は心から喜んだ。だが、富士スピードウェイで勝負しようという話になった時、俺は止めたんだ。ケガをしたら、万が一死亡でもしたら・・・でも博光はな、その時はその時って、言ってたんだ。それは、自分が死を覚悟しているようなものだった。だが俺はそれに気づけず、バトルした。10周してヘアピンカーブを曲がる時だった。博光が先行で走っていた時、ヘアピンカーブの壁に、時速150kmで突っ込んだんだ。救急車を呼んで、搬送されたけど、戻ってくることはなかった・・・。それから俺は、もうこんな思いはしたくないと、モータースポーツを一切見ることはしなかった。だから俺は、大覇星祭のモータースポーツなんて出ないんだ!俺はそんな死亡事故を起こさせたくない!」

 

あずまが過去の記憶を話した。

 

「あずま君の気持ちは分かったわ。でも、その博光さんと言う方は、モータースポーツをしないあずま君の姿を見て、どう思うのかしら?一生モータースポーツを楽しもうって言った博光さんの思いを踏みにじることになると思うよ?」

 

そういい、美琴はなんと、あずまを抱きしめる。黒子がその姿を見て、なんと!驚く。

 

「それに、学園都市の皆は、あずま君のハチロクを見たいと思ってるわよ?その思いを背負って、走り続けるあずま君を、博光さんは望んでると思うわ。佐天さんに言ってたでしょ?出発信号機が、進行表示になったって。」

 

涙を流すあずま。そうだよな。34歳が涙子に言っておいてこれはさすがになとあずまは思う。

 

「ほら。一緒に言おう。あずま君が言った、あの言葉。ほら。」

 

「出発進行!」

 

気を取り直したあずま。今考えてみれば、あずまと仲良かった、博光の思いを踏みにじっているようなものだった。それを考えれば、こんなところでくよくよしてはいけないと、気づかされた。あずまの思いを受け入れてくれた4人に感謝するあずま。だがあずまたちは、知らなかった。この大覇星祭で、大変な事件が起きようとしていることを。

 

翌日、あずまは出勤をした。すると、朝から営業所長に呼ばれる。

 

「あのモータースポーツの件は、もう一回考えてくれたかな?」

 

「はい。出場します。」

 

「本音は走りたかったんだろ?素直に言えばよかったのに。」

 

そんな会話があった。今日はこの学園都市トラフィックサービス東で、ある訓練が行われるという。それが、大覇星祭前に新設される路線だ。それは、第七学区、学舎の園を巡回するルートで、本数は1時間に1本だが、地下鉄二日駅発の大型路線バスを走行させるという話だ。そんなこんなで、訓練を受けるあずま。いつもの通常運行の指導を受けながら運転するのに加え、新設路線も走る。車両は今の車両でやりくりし、必要に応じて増減するという。そんなことも始まるのか。彼のすり減らす神経は、またすり減っていくのだった。

 

あずまは会社からの帰り及び、休日にサーキットを借り、練習をしていた。本番は何周するかはまだ分からないが、練習させておくに越したことはないと考える。

コースは、東京ドーム2.8個分あり、途中には上り坂かつ160度のカーブがある。何度も練習をしていくあずま。帰ってくるときのあずまは、かなり疲れきっていた。

 

実は今年から、大覇星祭は7日間の開催から9日間の開催に変更された他、さきほどの一般の部、モータースポーツに加え、5人でペアを組んでクイズを行う、頭脳系も加えられたのだ。また、学園都市トラフィックサービス東は毎年、臨時便としてバスを増発している。あずま自身も、34年生きてきてこんなハードなことは無かったのだった。

 

実はその頃、アジトでは、ある計画が始動していた。

それは、あずまの殺害計画だった。

 

「情報を掴みました。子安あずま、34歳。学園都市トラフィックサービス東のバス運転士をしていて、ジャッジメント協力者の超能力者、LEVEL5です。」

 

「子安あずまにかなり親密な学生が4人いるそうね。誰なの?」

 

「佐天涙子。柵川中学1年で、無能力者、LEVEL0。子安あずまと共に生活しているそうです。次に、初春飾利。同じく柵川中学1年で、低能力者、LEVEL2。ジャッジメント一七七支部所属で、子安あずまも同じ所属である模様です。そして、常盤台中学1年、白井黒子。高能力者、LEVEL4で、同じくジャッジメント一七七支部に所属しています。」

 

「これだけ見ると、そこまで大した人間じゃなさそうね。」

 

「いえ、もっと厄介な人物がいます。常盤台中学2年、御坂美琴。超能力者でLEVEL5。学園都市第三位の超能力者で、電気系統の攻撃を行っています。今までこの御坂美琴に向けて、勝った人物は一度もいないそうです。」

 

あずまの殺害計画に関して、あずまの身辺の人物を洗いざらい探っていたのだった!

 

「そうか。我々の目的は、子安あずまを葬り去り、学園都市の長を目指すことだ。まずは無能力者である佐天涙子を拉致監禁するんだ。子安あずまは解放させるための要求なら飲むだろう。」

 

「いえ、それには及ばないかと。情報によれば、1週間後に開催される大覇星祭の、モータースポーツの部で、子安あずまは出場するとのことです。つまり、静かに殺すのではなく、大勢の観客の前で、子安あずまを葬り去るのが一番有効かと。」

 

「それはおもしろい。早速子安あずまを尾行しろ。何か情報を得られるかもしれない。至急、第1両隊を編成し、出動だ。」

 

子安あずまを殺害する計画がひそかに動いている!この先、あずまたちはどうなってしまうのか!?




大覇星祭の大きな改正により、出場することになったあずま。しかし子安あずまを殺害する計画がひそかに動いていることを学園都市の住民は知らない。果たして、この計画を阻止できるのか!?

次回 前夜祭
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。