最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く 作:チャンドラ=グプタ
まだ時間前であったが、既にシャーリアとウィルが到着しており、二人は雑談をしていた。
「や! ヤヨイ、ムゲン君。二人とも一緒だったんだ」
「おお、偶然店で一緒になってな」
「うむ。とても良い店であった。この刀をくれたであるぞ」
ヤヨイは躊躇うことなく、鞘から刀を抜いた。
「うわ! ヤヨイ、こんな所で刀を抜くなよ」
この世界に銃刀法違反にあたる法律はないが、近くにいる通行人が物珍しそうな目でヤヨイを見つめていた。
「ヤヨイさん、もしかしてそれってムラマサ?」
「そうであるぞ。ウィル殿も知っているのであるか?」
「うん。確か妖刀って言われている刀だよね。寿命を吸うだとか、あまり良い噂は聞かないけど……」
「ウィル殿もそのようなくだらない噂を信じているのであるか? ムラマサは素晴らしき一振りであるぞ」
「そっか……そうだよね。ヤヨイさんならきっと使いこなせるよ」
「みんな! 刀の話もいいけど、そろそろみんなで食事に行きましょうよ!」
シャーリアに促され、俺達はレストランに入り、食事をすることにした。
食事の後はみんなで武器屋に入り、俺とシャーリアは剣を購入した。
購入した剣はヤヨイが使っているような日本刀ではなく、ロングソードという種類の剣である。
「きゃー! ヤヨイ可愛い! その服、超似合ってるわよ!」
シャーリアの提案で服屋に入り、シャーリアはヤヨイに服を着させてはこうしてはしゃいでいる。
「あはは……シャーリアさん、ものすごく楽しそうだね」
「そうだな」
こういうのも悪くはないな。友人とショッピングを楽しむ――元の世界でそういったことを最後にしたのははたしていつだっただろうか。もう、思い出すこともできない。
「ねぇ、二人とも来て!」
俺とウィルはシャーリアがいる試着室の前に向かう。試着室のカーテンは開けられており、中には白いワンピースのような服を着たヤヨイがいる。
「どう二人とも? ヤヨイ、すごく似合ってるでしょ?」
「うん! ヤヨイさん、とても似合ってるよ!」
ウィルは微笑みながら感想を述べた。さすがは爽やかイケメン。女性の扱いに慣れてやがる。
「そ、そうか……ムゲン殿はどう思われるか?」
ヤヨイに感想を求められた。いつもは着物のような服を着ているため、なんだか新鮮な感じだ。
「あー、その……い、いいんじゃないか?」
「あー! ムゲン君ったら、照れてる!」
「て、照れてなんかない!」
シャーリアにからかわれ、俺はついムキになってしまった。
「シャーリア殿、この服を勧めてくれたこと誠に感謝いたす」
「気に入ってくれたなら何よりよ! この服、買う?」
「買いたいのは山々であるが……お金がちょいと足りぬな。次の機会にさせてもらおう」
「あら……なら、私が出そうか?」
「気持ちはありがたいが、小生が冒険者として稼いだお金で買いたいであるぞ」
「そっか。わかったわ」
服屋から出ると、すでに日は暮れていた。門限の時間が差し迫っているため、そろそろ寮へと戻ることにした。
一人でお店を巡るのも楽しいが、こうしてみんなでお店に入るのも悪くないと感じた。
入学してから、毎日があっという間に過ぎていった。四人で授業を受け、切磋琢磨しながら魔法の技術を高めていく日々。
他のみんなは急成長とも呼べるほど、魔法のスキルを磨き上げていた。
シャーリアは火の上位魔法を一つ、ヤヨイは水の上位魔法を一つ、ウィルは雷の上位魔法の二つをこの半年間で取得した。
一方で俺の方は未だ上位魔法を使うことはできないでいる。新しい中位魔法はいくつか覚えることができたものの、上位魔法は使えないままだ。
剣術も体術もアギの使い方も、入学時よりもいくらか向上したが、やはり俺は他のみんなよりも才能が薄いのだろう。
「失礼します」
個人面談にて、オリモカ先生がいる教室の中へと入る。個人面談では、主に卒業後の進路について話し合うことになっている。
「おう。来たな。座ってくれ」
椅子に座り、オリモカ先生と向かい合う。何気にオリモカ先生と二人きりで話すのは初めてのことであり、少しばかり緊張する。
「あともう少しで卒業だな」
「そうですね。卒業試験に合格したら……ですけどね」
「お前達なら合格できるだろう。鬼ごっこで私を捕まえることができたんだ。しかも、四人だけでな。今までの生徒は十人前後の人数で挑んでも卒業までに私を捉えることができなかった。お前達の成長には本当に驚いたぞ」
しかし、急激に成長したのは俺以外の三人だ。俺自身は思ったより成長することができなかった。
「……ありがとうございます」
「納得してなさそうな顔だな。自分だけ上位魔法を習得できなかったのがそんなに不満か?」
「そんなことは……」
オリモカ先生は俺の心情を察したようである。口では否定したが、やはり悔しいという気持ちも少なからずある。できることなら一つは上位魔法を覚えたかった。
「慰める訳じゃないが……別に強い魔法を使える冒険者が必ずしも強いって訳じゃないぞ。少なとも四人の中でムゲン。お前が一番魔法の本質を理解していると思ってる」
「ありがとうございます……ですが、俺は冒険者になるつもりはありません。魔道具開発者になるつもりです」
自分の進路先をオリモカ先生に告げる。俺はモンスターと戦うよりも魔道具を作る方に楽しさを感じている。
「あー、そっち方面を目指すのか。まぁ、確かにお前にはぴったりの職業かもしれないな。ナハラさんは知っているのか? お前が魔道具開発者を目指すことを」
「まだ話していませんが……きっと祖父は認めてくれると思います」
祖父は俺に魔法のことを教えつつも、決して「冒険者になれ」とは言わなかった。
きっと俺が何を目指しても祖父は俺が進みたい道を応援してくれるだろう。
「そうか……なぁ、ムゲン。お前の両親の話、聞きたいくないか?」
両親の話だと? どうしてオリモカ先生がそんなことを……まさか。
「私はお前の両親、インフィニ=アベイルとアンフィニ=アベイルと同じギルドに所属していたんだ」
やはりそうか。両親のことを詳しく知っている人といえば、同じギルドのメンバーが真っ先に挙げられる。
俺の父であるインフィニ=アベイルはギルド内で銃士を、母のアンフィニ=アベイルは剣闘士をしていると祖父から聞いたことがあった。
「聞かせてください」
「了解した。では、話そう」
オリモカ先生は冒険者時代のことを語り始める――