最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く   作:チャンドラ=グプタ

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手掛かり

「じいさん……」

 

 魔法警察の人に運ばれていく祖父の死体を呆然と眺める。祖父の家に到着した時、リビングで多量の血を流し、冷たくなっている祖父の死体を発見した。

 部屋はひどく荒らされており、戦いが起こったのだろうと安易に想像することができた。

 

「祖父は一体、誰に殺されたのでしょうか?」

 

 祖父の死体を発見した後、俺は無我夢中で山を降り、すぐに警察へと駆けつけた。

 警察はすぐに捜査を行い、捜査が終わるまでの間、オリモカ先生に事情を説明し、寮に泊まらせてもらっていた。

 両親の仇を討てたと思ったらまたこれだ……一体、どうして祖父が殺されなくてはならないのだろうか。

 

 悲しいという思いから一転して犯人が憎いという思いへと変わっていく。

 

 祖父が殺されてから約一週間後、警察から取り調べに呼ばれ、バキア魔法警察署へと向かった。

 とても狭い取り調べ室に案内され、警察官に座るように促される。

 

「我々も現在、懸命に調査を進めておりますが、手係かりが掴めない状態です」

「そうですか……」

 警察から主に聞かれるたのは学校での生活についてであった。事情聴取を終え、取り調べ室を後にした。

「やぁ、ムゲン君」

 警察署から出ようとした時、俺に話しかけてきたのはなんとウィルであった。

「おお、ウィル。久しぶりだな。もう警官になったんだな」

「うん、まだ研修中だけどね。それより、聞いたよ。ムゲン君のおじいさんのこと」

「そうか……」

 まだ研修中の身であるウィルにも知られているということは重大な事件として取り扱われているのだろう。

「ムゲン君。おじいさんを殺した犯人のこと、知りたいと思うかい?」

「そりゃあ……まさか、ウィル。何か知ってるのか?」

 するとウィルは俯き、黙り込んでしまった。ウィルの様子を見て、何かを隠していることを察した。

「おい、何か知ってるならちゃんと話せよ!」

 思わず頭に血が登った俺はウィルの胸ぐらを掴む。ウィルはそんな俺に対し、恐ろしく冷たい視線を向ける。

「仮に犯人を知ったとして、ムゲン君はどうするつもりだい? また仇を討つつもりなのかい? 君のおじいさんを殺せるほどの力を持った相手を」

「そ、それは……」

 

 確かにそうだ。俺は一体どうしたいんだ。かつて伝説の冒険者と呼ばれた祖父を殺せる力を持つ相手を上位魔法すら使えない俺が勝てるはずがない。

 例えエキストラユニークスキルを使っても――すると、突然頭が痛んだ。誰かの記憶が頭に思い浮かび上がる。

 

 

 

 若き祖父と思われる人物と赤髪の青年が大きなハチのモンスターと戦闘を繰り広げている。

「ライトニングテンペスト!」

 祖父が雷の最高位魔法と思われる魔法を発動する。晴天の空が瞬く間に曇天に変わり、稲妻がモンスターに落ちる。稲妻を受けたモンスターは痙攣し、動きが止まった。

「今だ、やれ!」

 祖父が叫ぶ。赤髪の青年はモンスターに手を向けた。モンスターの上空から赤い複数の魔法陣が浮かび上がる。

「スプリードエクスプロード」

 赤髪の青年が炎の最高位魔法と思われる魔法を発動する。凄まじい爆発が起こり、モンスターは爆炎に飲み込まれる。

 やがて、そのモンスターは黒焦げになり、地面に落ちた。どうやら死んだようである。

「やったな……ナハラ」

「そうだな。シークレットビーは今まで倒したモンスターの中で一番手強かった。俺一人じゃ敵わなかっただろ」

 祖父がかなり疲弊しているのだが分かる。年齢からして祖父の全盛期と思われるが、その祖父が一人で倒せないほど、強いモンスターのようである。

「それで、獲得できたのか? エキストラユニークスキルを。俺は何の変化した様子はないんだが」

「ああ、どうやら上手くいったみたいだ」

 

 祖父はハチの姿へと変化した。

 やはり、祖父は持っていたのだ。エキストラユニークスキルを。そして、魔法学校へ入学前日、俺は祖父からエキストラユニークスキルを譲り受けた。

 

「ナハラ。そのエキストラユニークスキルは君が持っていてくれ。これは君以外の人間が扱うにはあまりにも危険な代物だ。出来るだけ使わないようにしてくれ」

「分かった。お前はこれからどうするんだ?」

「一度、城へ戻るよ。兄の暴走を止めないといけないからね」

「そうか……気をつけろよ、『バキア』」

「その名前で呼ばないでくれ。今の俺の名は……」

 

 

 

「ちょ、ちょっとムゲン君。大丈夫かい!」

 ウィルに話しかけられ、ようやくが意識が戻った。

 さっきの記憶を元に祖父の手掛かりを得るとしたら――

「王国軍……」

 頭の中で思い浮かんだ言葉を呟く。

「え?」

「祖父の手掛かりを得るには王国軍のことを調べる必要がある。祖父がエキストラユニークスキルを手に入れた時の記憶を見たんだ。そこには王族らしき人がいた」

 赤い髪をしたバキアの姓を持つ人物。現在の王なのか不明だが、王族のひとりと考えてもいいだろう。

「……そこまで自分で辿り着いたんだね」

 ウィルのその反応、やはり王族が関わっていると見ていいだろう。

「頼む、ウィル。知っていることを全て教えてくれ。お前に迷惑は掛けない」

「分かった。だけど……一つ、約束してくれ」

「何だ?」

 少し間を置いた後、ウィルが頼むごとをしてきた。

「絶対に無茶はしないでくれ」

「分かった」

 

 俺はウィルから事件に関する詳しい話を聞いた。

 祖父は『王族魔法』と呼ばれる王族にしかない魔法によって殺害されていたこと。

 王族が祖父を殺したことが判明したことで、警察が捜査を打ち切りにしようとしていることを知る。

 

「魔法警察は王国の機関だからね。王族が事件の首謀者である場合は、手を出すことができないんだ」

 警察に頼っても無駄であることが判れば、やるべきことは決まっている。

「なぁ、ウィル。王族魔法っていうのは、王以外でも使うことができるのか。例えば、王子や王女とか」

「うん、そうだね。バキアの血を引くものなら使えるって言われているよ。王族の中でナハラさんと関わりの深い人物が犯人だとは思うけど……」

 それだけ分かればもう十分であった。ゆっくりと俺はベンチから立ち上がる。

「ありがとうウィル。助かったよ」

「ムゲン君……どこに行く気だい? まさか……」

 城へ乗り込む気は『まだ』ない。ひとまず、俺がまずしなければならないことは――

「S級モンスターを倒しに行ってくる」

 

 ウィルとの会話を終えた後、俺は魔法学校へと戻った。

 荷物を取りまとめ、寮から出る準備を行った。その次の日にオリモカ先生に挨拶へと向かった。

「本当にここを出るのか? もう少しここにいてもいいんだぞ」

「お気持ちはとてもありがたいですが、そこまで迷惑は掛けられません」

 まずはS級モンスターを倒す。そして、王国軍へと入り、祖父を殺した犯人の手掛かりを掴まねばならない。

「そうか。無理に止める気は無いが。まぁ、なんだ。こんなこと、私が言う資格なんてないかもしれないが……復讐に囚われるな。ナハラさんもお前に危険な目に遭ってほしいなんて思ってはいないはずだ」

 オリモカ先生の言うことはもっともである。祖父は俺が復讐をすることなんて望んでいないのかもしれない。だが――

「助言してくれたこと、心から感謝します。だけど……俺は必ず祖父を殺した犯人を見つけ出します。祖父が望むとか望まないとか関係ありません。俺がそうしたいんです」

「ムゲン……」

 

 深々と頭を下げ、学校を後にした。

 これで本当にさらばだ、バキア魔法学校。

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