最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く 作:チャンドラ=グプタ
「卒業証明書、確認いたしました。こちらの用紙に必要事項をご記入ください」
俺は『冒険者ハウス』という冒険者にクエストを斡旋する施設にいた。
受付の人から渡された冒険者登録書を記載していく。記入が終わると、受付の人に冒険者登録書を渡した。
「内容を確認いたしますので、少々お待ちください」
受付員が内容を確認している間、俺はクエスト掲示板の依頼書を見て時間を潰すことにした。
王国軍に加入するためにはまずは冒険者になる必要がある。その上で、S級冒険者へとランクアップする必要があった。
「貴殿……もしかして、ムゲン殿ではないか?」
背後から聞き覚えのある声がした。振り返ると、ヤヨイとシャーリアが立っていた。
「ヤヨイ、シャーリア……」
久々に友人の顔を見て、今まで復讐心による張り詰めていた気持ちが少しばかり緩んでいくようであった。
「ムゲン君とこんなとろで会うなんて驚きだわ! どうしたの? 魔道具開発者になるんじゃなかったの?」
「そのつもりだったんだが……ちょっとその、野暮用でな」
二人に冒険者を目指す経緯を話すかどうか悩んだ。ここはうまくはぐらかすべきか……
「内容確認いたしました。『アイン=ダハ』さん。こちら、冒険者カードになります」
受付員から冒険者カードを受け取り、ヤヨイ達の方を見ると、二人は驚いたように目を丸くしていた。
俺が冒険者登録したこともそうだが、改名したことに驚愕しているのだろう。
「ムゲン殿……詳しく話を聞こうか」
冒険者ギルド内にある飲食スペースの席にて、二人に冒険者を目指すことになった経緯を話した。
「そっか。おじい様がね……」
「お悔やみ申し上げる」
俺が名前を変えたのはウィルから勧められたからである。
祖父を殺した犯人――今度は俺を襲ってくる可能性が高いとのことだった。
襲ってくるのならば祖父を殺した犯人と接触はしやすいだろうが、真っ向勝負して勝てるなどとは思っていない。
俺はウィルの言う通り、改名を行なった。この世界では比較的簡単に改名することができる。
改名した後は二ヶ月余りバキアを離れ、自力でモンスター討伐を行なう生活をしていた。
「ムゲン殿の目標は王国軍の加入……であるな」
「そうだな」
「では、我々のギルドに入らぬか?」
「ヤヨイ達のギルドか……」
ある程度エキストラユニークスキルの使い方を学んだが、単独でS級モンスターに勝てるかと言われると、正直まだ微妙である。
どこかのギルドに所属した方がいいとは考えていた。
「二人以外には誰がギルドに入っているんだ?」
「私達二人だけよ」
「何!?」
普通ギルドは四、五人大規模なところだと十人以上で構成される。
「小生達も何度かギルドに入ってみたが、どこのギルドもB級モンスター以上のモンスターを倒そうとする気概のあるギルドは無かったであるぞ」
通常のギルドはB級以下のモンスターを討伐するのが普通である。難易度が高いのも勿論だが、一度受けた依頼は失敗すると、ペナルティが発生する。
その為、A級以上のモンスター討伐依頼は凄腕の冒険者では無い限り、誰も受けようとはしない。
「なるほど……だから二人だけでギルドを結成したのか。二人はどれくらいのモンスターを倒してきたんだ?」
「最近、A級モンスターを一体討伐したわ。シャープスネイルベアーよりも遥かに弱いモンスターだったけどね」
二人もこの短期間でかなり、腕を上げているようだ。確かにアギの量は卒業前よりも増えているのが肌で感じられる。
「すごいな二人とも。俺も二人のギルドに加入させてもらえるか?」
「勿論であるぞ。共にS級モンスターを倒そうぞ!」
三人でギルドを結成することにした。クエスト掲示板の前へと移動し、S級モンスターの討伐依頼がないか探してみることにした。
「こ、これは……」
一枚のクエスト依頼書を手に取った。依頼内容は『レッドフレイムドラゴン』の討伐であった。
「れ、レッドフレイムドラゴン!? そんな依頼が来てるの!」
俺も驚きであった。よりによってエレメントドラゴンの依頼か……他にはS級モンスターの討伐依頼は無さそうである。
「何であるか? そのレッドフレイムドラゴンというモンスターは」
「エレメントドラゴンの一種よ。レッドフレイムドラゴンは炎の属性を司り、一拭きで街を焦がし、空に羽ばたけば天候を変えると言われているわ」
エレメントドラゴンには火、水、風、雷、土、氷の属性を司るドラゴンがいる。エレメントドラゴン達から採れる素材は素材はどれも高値で取引され、他のS級モンスターと比較しても討伐難易度が高い。
「なるほど……ようするにかなりの強者(ツワモノ)ということか。では、こやつを討伐することとしよう」
「ほ、本気!? ドラゴンって基本的に討伐するのが難しいのよ。あいつら、危なくなると飛んで逃げるし!」
シャーリアの言う通り、エレメントドラゴンに限らず、ドラゴンは漏れなく体力が減ると身の危険を察知して空へと逃げ出す。
「だが、それでも倒す価値はあると思わぬか? ムゲン殿の祖父を殺した相手はそのドラゴンよりも遥かに手強いのだろう?」
「そうだな。俺達でレッドフレイムドラゴンを倒そう」
俺はヤヨイの意見に乗っかることにした。二人には隠しているが、S級モンスターの討伐を急ぐ『ある理由』がある。
「全く……しょうがないわね。それじゃ、やりましょうか!」
最初は乗り気ではないシャーリアも同意し、俺達はレッドフレイムドラゴンの討伐依頼を受けることにした。