最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く   作:チャンドラ=グプタ

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シャイニングバッド

 依頼書によると、討伐対象となるレッドフレイムドラゴンは現在、シルヴァ山という山にいるらしい。

 シルヴァ山の標高はとても高く、移動するだけで膨大な時間が掛かる。

 さらに討伐モンスターがS級モンスターであるため、長期戦が予想される。

 

「移動時間を考えると、少なくとも二日は掛かると見た方がいいわね。そうなると、どこかでテントを張る必要があるわ」

「テントか……であれば、水辺に張った方がよいな。それと、食料やポーションも買い溜めておく必要があるぞ」

 

 A級以上のモンスターを討伐する際は準備に多大な時間を掛ける必要がある。自分達の方が討伐するモンスターよりも強い場合はゴリ押しでも何とかなるだろうが、あいにく俺達とレッドフレイムドラゴンと向こうの方が何枚も上手だ。

 モンスターと遭遇した場合は、逃亡する場合も考慮して、速やかに仕留めることが望ましいとされる。

 

「二人はテントで泊まったことがあるのか?」

「いえ、ないわ。A級モンスターを倒した時も日が沈む前には戻ってきたわね」

 かくいう俺もテントで寝泊まりしたことはなかった。バキアの街を離れている間は、野宿か宿で寝泊まりしていた。

「三人で寝泊まりするとなると、大きなテントを用意せねばなるまいな」

 なぜかヤヨイは俺も含めて三人で同じテントで寝泊まりする気のようである。

「いや……俺は自分のテントを用意するよ」

「どうしてであるか?」

 ヤヨイは心底不思議そうな表情で訊いた。こいつ……本気で分かってないのか。

「そりゃ、俺は男だしな。色々とまずいだろ」

「俺が気にするんだ! シャーリアだって困るだろ?」

「え、えぇそうね……あはは」

 シャーリアは顔を引きつらせて笑っていた。反応に困っているようである。

「とにかく俺は別のテントで泊まるからな」

「承知した。では、ドラゴン討伐に向けて、作戦を立てようぞ」

 レッドフレイムドラゴンに向けて、各々の役割、討伐の手順、当日に向けての準備について、綿密に話し合った。

 また、少しでも連携を高めておくため、B級モンスターの依頼を受けることにした。

 

 

 

 街から少し離れたところにあるリッセン洞という洞窟に向かった。

 その洞窟にいる『シャイニングバッド』というモンスターを討伐するべく、洞窟の奥へと進む。

 洞窟に入ってから三十分程で最深部へと到着した。

 シャイニングバッドは逆さまの状態で天井に止まっていた。

 

「見つけたわ……食らいなさい、フレイムランス!」

 シャーリアが放った火の矢がシャイニングバッドに腹部に突き刺さる。

 すると、シャイニングバッドは激しく羽をバタつかせる。

「キーーーーーーーーーーー!」

 奴は鼓膜を突き破ろうとするかのような鳴き声を発した。

「ッ!」

 

 ヤヨイは苦しそうな表情で耳を塞いだ。俺とシャーリアも耳を塞いで後ずさりを行う。

 ひたすら奴の咆哮を耐えるしかなかった。しかし、このままではじっとしていても埒が明かない。耳栓でも持ってきておけば良かったのだが、あいにくそんなものは用意していない。

 一瞬でもあの鳴き声を止めることができれば良いのだが……

 

「そうだ」

 ふと、脳裏にある作戦を思いついた。エキストラユニークスキルでハチに変身し、即座に人間には出すことにできない音で大声を発する。

「急に音が小さくなった……これもムゲン殿の力であるか?」

 『アクティブ消音』という騒音に騒音を重ねて消すという方法で、シャイニングバッドの音を抑えた。

 音を出しながら俺はシャイニングバッドに向かって飛び、奴の身体に針を突き刺した。

「ぎゃああああ! い、痛い!」

 ハチの姿になると、モンスターの声が聞こえるようになる。さっき、刺した針には痺れ作用があり、シャイニングバッドは動かしていた羽を止め、地面に落ちた。

「お前の能力もいただいておくぞ!」

 

 シャイニングバッドに噛り付き、奴の力をコピーした。コウモリは暗闇でも超音波で獲物の位置を特定できる。この力は役に立つことだろう。

 俺は人間の姿へと戻った。B級モンスターにしては中々厄介な敵であった。

 上位魔法を使えばもっと楽に倒せるだろうが、洞窟内で使うと、崩壊する恐れがあるため、使用を控えていた。

 

 ヤヨイは鞘からムラマサを抜き、力強く地面を蹴り込む。

 

「水流斬!」

 

 文字通り、刀に水流を纏わせ、シャイニングバッドを真っ二つに斬り裂いた。奴の身体から緑色の血が流れ、断絶魔を上げる間も無く絶命した。俺は人間の姿に戻った。

 

「ヤヨイ、さっきの技は……」

「うむ。魔法学校を卒業してから編み出した技であるぞ。刀に水属性の魔法を付与してみた。これで強力な斬撃へと昇華した」

「へぇ……」

 二人とも随分と腕を上げているようだ。これなら、レッドフレイムドラゴンを倒せるかもしれない。

「ムゲン君もすごかったわ。もう自由にハチになれるのね」

「一応な」

 最初は自由にハチになれなかったが、エキストラユニークスキルの使用を繰り替えしているうちにコツを掴むことができた。

「ムゲン殿。先ほどはいかにして音を消したであるか?」

「ああ……あいつの鳴き声と逆の周波数の鳴き声を重ねて相殺したんだ」

 

 以前、『レインボーパラケイト』というモンスターと戦闘した時に能力をコピーしていた。

 そのモンスターは周波数を調整し、声色を自在に変えることができる能力を所有している。

 あまり戦闘で役立つことはないと思っていたが、意外なところで役立った。

 

「ふむ……よく分からんな」

 ヤヨイには難しい話のようであった。

「ねぇ、ムゲン君。さっきモンスターの肉を食べていたけど、何か意味があるの?」

「そっか、二人は知らなかったんだな。モンスターの肉を食べることでそのモンスターの能力を使うことができるようになるんだ」

「ほう、それはすごいな」

「しかし、中々手強いモンスターだったな。B級モンスターを少し甘く見ていた」

 ウィルもいたとはいえ、シャープスネイルベアーを討伐した俺達ならもっと楽に倒せると思っていた。

「ランクは危険度で付けられるから純粋な強さとは直結しないわ。さっきの条件下なら、A級はあると見ていいわね」

 確かにあの音攻撃は洞窟内だからこそ手を焼いたが、野外ではあまり強くは作用しないだろう。

「何はともあれ、無事討伐できたのだ。街に戻ろうぞ」

 

 洞窟を抜け出し、街へと戻ることにした。街に到着すると、ある洋食屋に入り、三人で打ち上げすることにした

 

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