最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く   作:チャンドラ=グプタ

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シャーリアの正体

「無事、シャイニングバッドを倒したこと、そしてレッドフレイムドラゴンの討伐を願って乾杯!」

「かんぱーい!」

 

 ヤヨイが率先して乾杯の音頭を取り、シャーリアがテンション高めにグラスを掲げた。

 一応言っておくが、俺達が持っているグラスの中身はお酒ではない。ただのジュースである。俺は蜂蜜ジュースを頼んでいた。

 

「ほら! ムゲン君も一緒に乾杯!」

「お、おう……乾杯!」

 俺は自分のグラスをヤヨイとシャーリアのグラスに軽くぶつけた。

「しかし……成り行きはどうあれ、またムゲン殿と一緒に戦うことができて、小生とても嬉しいぞ!」

「うん。私も本当に嬉しいわ」

「そ、そうか……そういえば、二人が王国軍に入りたい理由って何なんだ?」

「小生の目的に関わることである。それゆえ、まだ言えぬ」

 魔法学校での生活の時もヤヨイは自分の目的を話そうとはしなかった。

「そうか。シャーリアは?」

「私も今は……けど、いずれ必ず二人には伝えるから。必ずレッドフレイムドラゴンを倒しましょう」

 隠し事くらい誰にだってある。俺だって自分が異世界からやって来たことを二人に話そうとは思わない。

「うむ。そういえばウィル殿は元気であるか?」

「ああ。俺が最後に会ったのは二ヶ月くらい前だったかな? その時は元気そうにやってたぞ」

「そっかぁ。卒業以来、会ってないからまた四人で集まりたいわね」

「そうであるな!」

 俺も二人のように四人で集まり、ゆっくりと話し合いたいと考えていた。

「明日は三人で必要なものを買いに行きましょうか。そろそろ新しいローブとか買っておきたいし」

「そうだな。俺も色々と揃えておきたいものがある」

 俺が使っている銃や刀の手入れをしておきたいと思っていた。葬儀品を修理してくれるお店がバキアの街にいくつかある。

「すなないが、明日は少し出掛けたいところがある。二人で行ってきてはくれまいか?」

「あら。そうなの? なら、明後日にしましょうか?」

「いや、小生のことは気にせず、二人で準備を進めておいてくれて構わぬ」

「そうか、分かった。シャーリアはいいか?」

「ええ、勿論よ」

 

 その次に日。予定通り、俺とシャーリアは買い物をするべく、街へと繰り出した。

 商店街の近くにある公園の噴水前で、シャーリアが来るのを待っていた。

 

「ムゲンくーん!」

 少し離れたところから、シャーリアが手を振りながらこちらに向かってくるのが見えた。

「ごめんなさい。待ったかしら?」

「いや、俺もまだ来たばかりだよ」

 シャーリアと合流し、俺達は商店街に向かうことにした。

「ねぇ、ムゲン君……ヤヨイのことどう思う?」

 

 シャーリアは歩きながら突然、ヤヨイのことについて、訊いてきた。とても深刻そうにしているため、只事ではないなと感じた。

 

「何だ突然……」

「あの子とギルドを組んでもう二ヶ月以上経つんだけど、その……あの子、一回も私の一緒にお風呂に入ってくれないのよね」

「……は?」

 

 一瞬、自分の耳を疑った。一緒にお風呂の入ってくれないから何だというのか。

 

「だから! ヤヨイがどういう訳か一緒にお風呂に入ってくれないのよ。銭湯に誘っても絶対に断るし、前にお風呂に乱入したらものすごい勢いで追い返されたし」

「まぁ、単純に恥ずかしいんじゃないのか?」

「……そうかもしれないけど、なんか背中に秘密があると思うのよね。お風呂に乱入した時も必死に隠してたし」

「それは……傷でもあるんじゃないのか?」

 

 背中の傷は剣士の恥って言うしな。

 

「そうなのかしら……うーん」

 俺からしたら些細な問題のように感じるが、シャーリアは真剣に悩んでいるようであった。

「隠し事なんて誰にだってあるだろ。シャーリアだって……S級冒険者を目指す理由を教えてくれないじゃないか」

「そ、それは……」

 シャーリアはピタリとその場を立ち止まった。振り向くと、シャーリアは顔を伏せていた。

「しゃ、シャーリア?」

「ねぇ、ムゲン君……」

「な、なんだ……?」

 急にシャーリアは俺の手首を掴むと、どこかに連れて行こうとした。

「おい……どうしたって言うんだ一体?」

 シャーリアに連れて行かれた場所は商店街前にある大広場であった。遠く先にバキア城があり、シャーリアはそれを指差した。

「ねぇ、ムゲン君。あのお城なんだけど……」

バキア城――恐らくはあの場所に祖父を殺した犯人がいる。

「あ、あれがどうしたっていうんだ?」

「私さ……昔、あそこの住んでたんだ?」

 シャーリアの言葉を理解するのに時間が掛かった。

「え!?」

「私の『前』の名前はね、シャーリア=バキアだったのよ」

 次々と明らかになる衝撃的な事実に脳の処理が追いつかなくなりそうである。‘

「王族だったのか……シャーリアは」

「元ね。私の父さんは今の王の弟だったわ。父さんはね、殺されたのよ。実の兄に……」

 シャーリアの表情は今まで見たこともないような憎悪の表情に満ちていた。

「……今の王がシャーリアの父さんを殺したっていう確証はあるのか?」

 俺に質問に対し、シャーリアが首を横に振る。

「ないわ……けど、どう考えてもあいつが殺したに決まっているわ! 元々、父さんが王に即位する予定だったのよ。即位の日の前日に父さんが殺されて、あいつが王になった……そして、私はあいつに城を追い出されたのよ」

 幼い子供が身寄りもない状態でいきなり追い出されるなんて、さぞや苦労したことだろう。

「それからどうしたんだ?」

「衰弱して倒れていたところをある老夫婦に拾われて、学校に入学するまでお世話になったわ。私を拾ってくれた二人は元冒険者で魔法の使い方を教わったのよね」

 確かにシャーリアの魔法適性はかなり高い。王族であるなら、あの魔法適性の高さにも説明がつく。

「シャーリアは……今の王を殺すつもりなのか?」

「ええ、そうよ。もしかしたらムゲン君のおじいさまを殺したのも王かもしれないわね。だとしたら、目的は一緒よ」

 目的は一緒か……シャーリアが王族であると分かった今、俺はシャーリアに聞きたいことがあった。

「シャーリア。王族魔法について詳しく教えてくれるか?」

 ウィルにも以前、王族魔法がどんなものか聞いてみたが、どうやら極一部の人間にしか知られていないようであった。

「私もそこまでは詳しく知らないけど……父さんは『時を司る魔法』だって言っていたわ」

「時を司る魔法……」

 俺は祖父が死んでいるのを見つけた時の様子を思い浮かべた。

 とてもつらい記憶であるが、年齢にして若々しかった祖父の見た目はひどく老け込んでいるように見えた。恐らくは王族魔法によって、生じた現象なのだろう。

「……結構、厄介な魔法だな」

 

 時を司る魔法と言っても、さすがに何でもありというわけではないだろう。

 しかし、某吸血鬼のように数秒間だけでも時を止められでもしたら、かなりの脅威となり得るだろう。

 

「なぁ、シャーリアの父さんも王族魔法を使えたのか?」

「ええ。あまり、戦闘向きの魔法じゃなかったけど」

「どんな魔法なんだ?」

「自分の年齢を自在に変えられる魔法よ」

「いいなそれ」

 元の世界で使えればかなり便利な能力である。どんなサービスも子供料金で利用できるだろう。

「その能力を使って母さんを口説き落としたって言っていたわ」

「えっと……その、母さんとは何歳差なんだ?」

「二十五歳差よ」

 おお。大分歳の差婚だな。となると、シャーリアの父さんと俺の祖父は大して年齢が変わらないのかもしれない。

「うっ……!」

 

 突然、激しい頭痛が襲いかかってきた。脳内でとある記憶が再生される。どうやらウィルと話した時に見た記憶の続きのようである。

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