最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く 作:チャンドラ=グプタ
その日から王の討伐に向けて準備を進めた。ウィルに協力を依頼を要請したところ、彼は快諾してくれた。
王族魔法を封じる薬は完成するまでの間、オリモカ先生には王国軍に加入してもらい、城の情報について探ってもらうことにした。
薬が完成するまで半年余りの時間が掛かったが、その間に有益な情報を掴むことができた。
王国軍の加入式はいつもより護衛の数が少なくなり、希望すれば比較的簡単に護衛に回ることができる。
俺たちが企てた作戦は加入式に転移魔法で王を城から遠い場所へと移動させるというものだ。
オリモカ先生に加入式の日までに式場にて、俺と王にのみ作用する転移魔法の術式を仕掛けてもらうことにした。
転移魔法の移動先にはシャーリアとヤヨイ、そしてウィルとガルド先生にも待ち伏せしてもらっている。
王を味方のいない場所に誘導させ、一気に袋叩きにするというのが主な作戦である。
転移魔法の発動にはかなりの準備が必要となる上に一度に移動できるのは二人までであり、オリモカ先生には後から戦場で駆けつけてもらう予定である。
そして、時間は再び王国軍の加入式へと戻る。シャーリアとヤヨイに加入式を出てもらわなかったのは王が二人を見て、怪しむのを防ぐためである。
大分昔とはいえ、二人は王と出会っている。顔も見られておらず、名前も変えている俺なら王に怪しまれる可能性は少ない。
「アイン=ダハよ。王国及びこの王の為に忠誠を誓うか」
シャープスネイルベアーの能力を使って、自分の爪を鋭く伸ばす。両親を殺した奴の力を祖父の仇である王に使うことになるとは、随分と皮肉なものである。
「王様。私はあなたに……復讐いたします!」
俺は奴の腕を引っ掻いた。さらに自分の爪から王族魔法を封じる薬を注入する。
前もってモリアさんから貰った薬を自分の体内に注入しておいた。
「貴様!」
護衛が俺を攻撃すべく、接近してきた。その直後、俺と王が立っている場所に大きな魔法陣が現れ、瞬く間にヤヨイ達が待ち構えている場所へと転移した。
「なんだ、ここは?」
王は思ったよりも落ち着いた様子で辺りを見渡した。ヤヨイ達は臨戦状態で王を取り囲んでいる。
「ここはあんたの死に場所だよ」
「ふむ、そうか……何やら変な薬を注入されたようだな。そこにいる奴らはお前の仲間か?」
「そうだ。全員じゃないが、お前に恨みを持っている者達だ」
「ふん……恨みを持つ者というには知らぬ顔ばかりだな」
「エクスプロード!」
王の言葉に怒りを感じたのか、シャーリアは王に魔法をぶつける。しかし、王がダメージを受けた様子は全くない。
「姪の顔を忘れるなんて幾ら何でもひどいんじゃないかしら? 叔父様」
王はシャーリアのことを訝しんだ様子で見つめた。
「……忘れてしまっていて申し訳ない。随分と大きくなったな。シャーリア=アルフレッド」
「気安く私の名前を呼ばないで欲しいわね。フレイムバースト!」
数多の炎の砲弾を王に発射する。しかし、王がバリアを張り、全て防いだ。
ヤヨイは王がバリアを解くのを見計らい、王に向かっていった。
「水流斬」
的確に王の首を狙うヤヨイであったが、王は魔法で剣を生み出すと、ヤヨイの刀を受け止めた。
「良い太刀だな。褒めて遣わす」
「貴様に褒められても全く嬉しくない!」
ヤヨイは王の魔法を警戒したのか、一度後ろに下がった。王は予想通りかなり強いが、まだ底を見せていない為、底が知れない不気味さがある。
「お前も私に恨みがあるのか?」
「うむ。小生のこと……覚えておらぬか?」
王は顎を摩りながら、ヤヨイのことを見つめていた。そして、少しだけ申し訳なさそうな表情でこう述べた。
「すまない。全然思い出せな」
「殺す」
ヤヨイが高らかにジャンプし、空中でバク転をした。レッドフレイムドラゴンを倒した時の技を使用するつもりだ。
「水転斬」
しかし、刃が王に届く前にヤヨイの腕が斬り落とされてしまった。
王が持つ剣の刃には血が付いている。王の太刀が全く見えなかった。
「ぐ……!」
「いたいけなお嬢さんを殺すのは気が引けるが……私に刃を向けてくるのなら仕方ないな」
「何が殺すのは気が引けるだ……貴様はあの時も平然と小生から両親を奪っただろう!」
ヤヨイは不死の力で腕を再生させた。再び地面に落ちているムラマサを握りしめる。
「腕が生えた……まさかお前、あの人魚の娘か?」
「待て! ヤヨイ」
俺はヤヨイを呼び止めた。ムラマサを持っているヤヨイにはトドメを任せることになっていた。
しかし、怒りで自分を見失っているのか、作戦とは違う行動をしている。
「今は退け」
ヤヨイは無言のまま頷き、王から距離を取った。まずはガルド先生達と連携して、王の体力を削らなければならない。
「アイン=ダハよ。貴様も私に恨みがあるのだな?」
「その名は偽名だ。本当の名はムゲン=アベイル。これで分かるか?」
「なるほど。貴様、ナハラ=アベイルの孫だな」
戦闘を始める前にどうしても王に訊いておきたいことがあった。
「王……どうして祖父を殺したんだ?」
「あいつは特別なエキストラユニークスキルを持っていた。それが私の狙いだった」
「エキストラユニークスキル? モンスターの力をコピーできる能力が狙いだっていうのか?」
確かに便利な能力であるが、そこまでして欲しいものなのだろうか。
「いや、そうじゃない。私の目的は真の不死だ」
「真の不死?」
王はヤヨイの母親の肉を喰らったことで完全な不死になったと思っていたが、違うのか。
「人魚と混血の娘よ。どこかで見たことのある刀だと思ったら、その刀……ムラマサであろう? 人魚の肉を喰らい、不死の力を手にした私でも、ムラマサで首を斬られれば死んでしまう。しかし、モンスターの能力を『昇華』することができるエキストラユニークスキルならムラマサでも殺せぬ身体となるのだ」
知らなかった……だとすれば、俺が王からエキストラユニークスキルを奪われるのはまずい。
「お、俺のエキストラユニークスキルはモンスターの能力をコピーすることじゃなかったのか……」
「どうやら貴様は能力をコピーすることしかできないようだな。貴様が持っていても宝の持ち腐れだ。大人しく渡してくれるなら、命だけは助けてやるぞ」
「断る。さっきも言っただろ。お前を殺すって。お前に注入したのは王族魔法を封じる薬だ。今のお前なら俺達でも倒せる」
ここから一気に王を袋叩きにする。できればオリモカ先生の到着を待ちたいところであるが、そこまでの時間の猶予はない。王族魔法を封じる薬にも時間制限があるのだ。
「ふ……ふははははは!」
「な、何がおかしい?」
「この程度で私を追い詰めたつもりか? 王族魔法が使えなくとも貴様ら全員葬ることなど容易いことだ!」
「それは聞き捨てならないな。このワシを倒せるというのなら試してみるといい」
「ガルド先生、僕も手伝いますよ」
ガルド先生とウィルが魔法の準備をした。ガルド先生から爆発的にアギが高まってくるのが伝わってくる。