最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く 作:チャンドラ=グプタ
「ヤヨイさん。ジャポニってどんなところなの?」
食事中、ウィルはヤヨイにジャポニについて尋ねる。俺も祖父からジャポニについて断片的に聞いてはいたがどんなところなのかとても気になっていた。
「ジャポニか……とても良いところぞ。料理も美味しく、人も義理堅し」
「そうなんだ! いいね。観光名所とかある?」
「観光名所はやはりジャポニ塔であるぞ」
「ジャポニ……塔?」
観光名所の名前を聞いたウィルが首を傾げた。
「うむ、ジャポニの首都、トウエドにある大きな塔である。他国からたくさんの人がそれを見にやってくるのであるぞ」
ジャポニ塔……東京タワーみたいなものだろうか。
「へー! 見に行きたいな。あと、ジャポニには侍がいるんでしょ?」
「ああ、おるぞ。父上殿も侍であった」
「ヤヨイさんの父さんもなんだ! どんな人なの?」
「家族の為に精一杯戦う素晴らしき人であった」
「あった? ねぇ、ムゲン。もしかして……」
「シャーリア殿の察するとおりぞ。小生の父上はもうこの世にはおらぬ」
侍は冒険者と同じく危険が伴う職業である。職務中に亡くなってしまっても不思議ではないだろう。
「そっか……ごめんね、無神経なことを聞いて」
「シャーリア殿が気にすることではない。小生は卒業したら父のように立派に戦うつもりである」
ヤヨイは意気揚々と意気込みを語った。
「僕は父さんが警察官でね。父のように魔法を使って悪さをする犯罪者を取り締まる警察官になりたいんだ」
「そうか。とても素晴らしき目標ぞ」
「ありがとう。シャーリアさんは卒業後の進路はもう考えてるの?」
「一応ね。私は冒険者になるつもりよ」
「そうか。ムゲン君もだよね?」
「いや……俺は冒険者になる気はないよ」
しばらくの間、沈黙が続く。なんだか変な空気になってしまった。
「ムゲン殿、それはどうしてであるか?」
「俺は戦いじゃなくて別の分野でこの街に貢献したいと思う」
それは詭弁であった。本当は戦いなどしたくないだけだ。だからこそ、こんな言い訳を使ってしまった。
「そうであったか。それは立派な志であるな」
ヤヨイの言葉になんだか胸が痛くなる。違う、本当は――
「とにかく、これから無事に卒業できるよう、頑張りましょう!」
「うむ。小生も魔法剣術をもっと極めるつもりぞ」
「魔法剣術か。ヤヨイさんはどんな魔法剣術を使うの?」
「小生が得意としているのは『魔撃斬』と呼ばれる、遠くにある対象物を斬ることができる魔法である。先ほど、入学試験の際にも使用した」
的を真っ二つに斬り裂いたあれか。あの魔法剣術、少なくとも中位魔法クラスの威力がありそうだ。
「そうなんだ。僕も見てみたかったな」
「実技の授業で目にすると思うぞ。ウィル殿は一体、どんな魔法を使うのだ?」
「基本魔法は大体使えるけど……得意なのは雷魔法かな」
「そうなんだ。雷魔法ね……私、ウィル君から雷魔法を教えてもらおうかな」
シャーリアは随分と魔法の習得に貪欲なようである。
「いやぁ……そんなに誇れるものでもないよ。これから大変なこともあるだろうけどみんなで頑張っていこう!」
他の三人と雑談をしながら食事を楽しんだ後、寮に戻りシャワーを浴びた。
「明日から授業か。頑張らないとな」
家から持ってきた本を取り出し、ページを捲る。
やはり、魔法に関する本は読んでいて飽きない。元の世界での俺はオカルトの類が好きであった為、すんなりと魔法にのめり込むことになったのかもしれない。
本を一冊読み終えた後、布団に潜り就寝することにした。
次の日の朝、窓から差し込む朝日を浴び、気持ち良く目覚めた俺は寝間着から祖父に貰ったローブに着替え、食堂に向かった。
食堂にはまだ誰もきていない。他のみんなはまだ寝ているのだろうか。
「ムゲン殿!」
振り返るとヤヨイとシャーリアの姿が確認できた。しかし、本当によく通る声である。
「貴殿、今日はなかなかイカした格好であるな」
「そ、そうか……ありがとう」
「それ、もしかしておじいさんのローブ?」
「ああ。そうだよ」
入学前、父から譲り受けたローブである。ローブは防御服にもなるらしいが、一体どれくらいの効果があるものか。
「やぁ、みんな。おはよう」
二人に遅れてくる形でウィルが到着した。四人揃った俺達は一緒に朝食を食べた後、必要な物を持って教室へと移動した。
席で先生が来るのを待っていると、『ガラガラガラ』と扉が開く音が耳に響く。
オカモト先生がコツコツと歩き、教卓に立つ。
「あー、では早速本日から授業を始める。最初の授業は魔法学についてだ。その名の通り、魔法の基礎的な内容を学ぶものだ。ウィルは一度受けているだろうが復習だと思って受けておけ」
「はい、分かりました」
「では、まずはこれを受け取れ」
先生はチュパチャップスのような飴を宙に浮かせ、俺達に渡してきた。
「こいつは『魔力飴』っていう代物だ。普通のお店では売られていない。いいか? 魔力には属性がある。この飴を舐めることによって色が変化し、自分がどの属性に適しているか分かるんだ」
そんな飴があるのか。今まで色んな本を読んできたが、魔力飴なんて初めて知った。
「それじゃ早速舐めてみろ。後、この魔力飴は一般人には極秘にされている。理由は魔法に適正のない者が舐めれば副作用を引き起こす危険な代物でもあるからだ」
まじか……だがまぁ、俺なら大丈夫だろう。
包装を外した。舐める前の飴玉の色は白である。
早速飴を舐めてみると、普通に美味しいかった。
飴を口から出し、色を確認すると黒色になっていた。
「お前ら、色を確認したか? 赤が火、青が水、紫が氷、黄色が雷、緑が風、茶色が土に適正があるってことになる」
オリモカ先生が板書した……ってか黒は?
「オリモカ先生! 小生、青であるぞ!」
「あー、じゃヤヨイは水属性の魔法に適正があるってことになるな」
「私は赤……火属性みたいね」
シャーリアは火属性か。隣に座っているウィルが持っている飴玉は黄色に変色していた。
「僕は雷……知っていたけどね」
そういえば昨日、ウィルは雷魔法が得意だと言っていたな。
ウィルはこの飴で自身の適性が判明してから、雷魔法を重点的に鍛えたのかもしれない。
「適正のある属性魔法は鍛え方次第で最高位魔法を身に付けることができる。それ以外の属性でも上位魔法までなら身につけることが可能だ……といっても正直、才能の有無が大きいんだがな」
上位魔法か。俺の才能で果たして一つでも身につけることができるのだろうか。
「先生。黒は何に適正があるんでしょうか?」
「黒色!? はー、お前随分と珍しいの引き当てたなぁ」
やはり黒色は珍しいのか。板書されないくらいだしな。
「黒色は簡単に言えば『無属性』だ」
「無属性ですか?」
「そうだ。例えば、対象を回復させる『ヒール』、自分の身体能力を向上させる『ブースト』などがこれらに該当する」
無属性魔法か。あまり、戦闘向きな属性ではなさそうだ。
適正のある属性を確認した後、魔法学についてオリモカ先生が説明を始める。