最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く 作:チャンドラ=グプタ
「ウィル……お前まで」
ウィルの背中が焼き焦げており、おそらくシャーリアのことを庇ったのだろう。
「ま、待ってて。すぐに戻してあげるから」
シャーリアは王族魔法を使って、ウィルを治そうとした。しかし、ウィルには何も変化は起こらない。
もっとも、シャーリアもそんなことは知っているはずだが、かなり混乱しているようである。
「ど、どうして? どうして戻らないのよ!」
「死んだ者の時は戻らん。シャーリア=アルフレッド。そんなことも知らなかったのか?」
いや、シャーリアは知っていたはずだ。以前、試しにモンスターの死体に王族魔法を掛けてもらったことがある。
だが、何も変化は起こらなかった。死んだ者の時間は戻せないことをシャーリアは頭では理解していたのだ。
「そ、そんな……ウィル君。ウィルくーん!」
シャーリアはその場で泣き崩れた。
「お、俺のせいだ……俺が作戦を見誤ったから……」
不死の力を持つ王が自分ごと攻撃する可能性を考慮すべきであった。
「その通りだ、ムゲン=アベイル。お前が悪いのだ。この王に勝負を申し込むこと自体が愚かだったのだ」
「ムゲン殿のせいではない。悪いの貴様だ」
ヤヨイがゆっくりと王に近づいた。右腕がまだ再生しきってないようで、左手でムラマサを握っていた。
「混血の娘にも不死の力が備わっていたか。やはり、あの時殺しておくべきだったな。しかし驚いたぞ、ムゲン=アベイルよ。貴様にも不死の力が備わっていたとはな。その娘の肉を喰らったのか?」
「そうだ。エキストラユニークスキルを奪わない限り、俺を殺すことはできない」
「それは違うな。純粋な人魚の肉で無ければ完全な不死にはなれない。貴様はこのムラマサで死ぬ」
王は満身創痍のヤヨイを蹴り飛ばし、ムラマサを奪い取った。
「き、貴様! ハイドロ……」
「黙れ。エクスプロード」
王が起こした爆発によって、ヤヨイの身体がバラバラになり、肉と血が地面に飛び散った。
「さてと……混血の娘は再生が終わった後にじっくりと殺すとして、まずは貴様からだ。ムゲン=アベイル。貴様を殺して貰うぞ。エキストラユニークスキルを」
「一つ聞いておきたい。どうしてムラマサを破壊しておかなかったんだ? その刀はお前にとっても脅威なんだろ?」
「確かにこの刀は今の私を唯一殺せる代物……だが、他に不死の者が現れたら厄介だから取っておいたのだ」
「だが、この刀は普通にお店に置いてあった」
モリアさんがどういう経緯でムラマサを入手したか不明だが、少なくとも一度はムラマサを手放したことになる。
「なるほど、そうだったのか。弟との戦いでムラマサをどこかに落としてしまったのだが……こうして私の元に戻ってきたのだ。思う存分使うとしよう」
ガルド先生とウィルは死に、ヤヨイとシャーリアは今戦うことができない。
オリモカ先生が到着するまで、何とか王を喰い止めなければならない。
「王。俺はお前が憎い。お前は俺から家族と恩師と友人を奪った。お前のことを殺したくて殺したくて仕方がない。もしも一つだけ願いが叶うなら……俺はお前の死を望む」
「そうか。ならどうするつもりだ?」
「こうするんだよ。エキストラユニークスキル『ハチ』」
祖父が授けてこの∞の力で俺は願いを叶える。
「変身したか……お前が持っていても宝の持ち腐れだと言っただろう」
「そうでもないさ」
シャープスネイルベアーの能力を使って爪を鋭く伸ばし、土を掻き分け、地面の中へと戻っっていく。
地面から飛び出し、背後から王に針を突き刺さそうと試みた。
案の定、王は反応し、ムラマサで俺の分身を斬り裂いた。次々と分身を生み出し、地上に飛び出させる。
「分身か……」
王は立て続けに分身を斬っていく。分身に襲わせることで奴のフラストレーションを蓄積させる。そろそろか。
「いい加減にしろ。ブラストファイア!」
王は地面に向かって、炎の最高位魔法を放つ。鼓膜を突き破るかのような地鳴りが鼓膜を突く。
爆風により砂埃が舞い、地面にはまるでクレーターのような大きな穴が空いた。
「再生が終わったら斬り殺してやる。覚悟するがいい」
だが、あいにく再生する必要などない。俺は王の背後を取り、奴の首に針を突き刺した。
「い、いつの間に?」
隠し持っていた奥の手を使った。スケルトンカメレオンのモンスターである背景とどうかする能力を使用した。
便利そうな能力であるが、素早く動くと背景から浮き上がってしまうという弱点がある。
しかし分身を使って、上手く陽動したことで気づかれずにすんだ。
さらにシャイニングバッドの超音波で敵の居場所を探る能力により砂埃の中、王の位置を特定し、背後を取ることに成功したのである。
俺は王からムラマサを取り返し、人間の姿へと戻った。
「これは返してもらうぞ」
丁度再生が終わったヤヨイにムラマサを投げ渡す。かなり強い毒を打ったのだが、王はすでに動けるようになっていた。
「少し甘く見ていたようだな……少しイラっとしたぞ」
王から氷のような冷たさを感じるアギに悪寒がした。ヤヨイにムラマサを返したのは正解だった。ムラマサを奪い返した直後に俺が攻撃しても恐らく防がれたことだろう。
「待たせてすまなかったな」
聞き覚えのなる声がした。振り返るとオリモカ先生がいた。
「お、オリモカ先生……」
オリモカ先生が近づくと、ポンポンと俺の頭を軽く叩いた。
「ガルド先生とウィルのことは残念だったな」
「すみません。俺の責任です」
「自分を責めるな。ここは私に任せてくれ」
「オリモカ=シエンナ。貴様も裏切り者であったか」
オリモカ先生と王が対峙する。まるで二体の獣が殺し合いを繰り広げるかのような恐怖があった。
「まぁな。こいつらは私の教え子だ」
オリモカ先生が本気で戦おうとしている。在学中でもオリモカ先生が本気で戦うところを見たことがない。