最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く   作:チャンドラ

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第31話

「ウィンドカッター」

 オリモカ先生が放つ風の刃が王の首を斬り裂いた。しかし、すぐに首は体にくっつく。

 

「いい魔法だな」

「そいつぁどーも」

「今度はこちらからいこうか。ブラストファイア」

「ウィンドバリア」

 

 オリモカ先生は王の攻撃を風の障壁で防いだ。さらに、オリモカ先生は宙に浮かび、災害級の風の魔法を次々と放っていった。

 俺はオリモカ先生から離れることにした。下手すれば巻き込まれてしまう。

 

「バラバラにしてやるよ王様。エクストリームハリケーン」

「ボルケーノプロミネンス」

 

 天変地異のような暴風と灼熱がぶつかり合い、大地が大きく揺れ動く。

 さすがの王も必死にオリモカ先生の魔法に抵抗していた。

 

 ――今の内に王の首を斬り落とせ。

 

 オリモカ先生がテレパシーを使って、脳内に話しかけてきた。

 

「ヤヨイ、王の首を取れ!」

「任せれた!」

 ヤヨイがすぐさま王の首を斬りに向かう。

「無駄だ!」

 

 王の前に赤い魔法陣が発生し、そこから巨大なサラマンダーが現れた。

 サラマンダーの身体全身は赤く、所々発火していた。奴は炎を吹き出し、ヤヨイの行く手を阻んだ。

 

「おのれ、これでは近づけぬ」

「ヤヨイ、ムラマサをこっちに寄越せ!」

 

 ヤヨイが俺にムラマサを投げ渡してきた。ハチに変身し、ムラマサの柄を口で掴む。

 そのまま、王の首を斬るべく飛行した。

 

 何を思ったか、王は放っていた炎の最高位魔法を止め、オリモカ先生の魔法を生身で受けた。

 王の身体はグチャグチャに切り裂かれ、無残な肉の塊と化した。

 しかし、その肉の塊は意思を持っているかのように動き出し、その場から立ち去ろうとする。

 

 野郎……逃げる気か。

 

 ――オリモカ先生、何とか王の動きを止めてください!

 

 テレパシーを使って、ハチの姿のままオリモカ先生に話しかける。

「分かった! ウィンドリストレント」

 風の束縛が肉の塊と化した王の動きを止める。俺は人間の姿に戻り、肉の塊を斬ってみたが、全くもって手応えはなかった。

「ダメだ……やはり、首を斬らなければ」

 しかし、そこで‘ある作戦を思いついた。シャーリアに視線を送る。

「シャーリア、王族魔法で王を人型に戻せ!」

「分かったわ!」

 シャーリアが肉の塊に手を近づける。王の時が巻き戻り、人の姿へと強制的に戻る。

「お、おのれ……スピリードエクスプロ」

「遅い」

 

 俺はハチに変身し、奴の首に噛り付いた。最高位魔法は呪文を唱えなければ発動することができない。王は必死に炎の中位魔法を使って、俺のことを退けようとした。

一瞬でも力を緩めれば、不死の力によって喉を回復してしまうことだろう。

 このまま、トドメを刺さす必要がある。テレパシーを使って、ヤヨイの脳内に語りかけた。

 

 ――ヤヨイ、俺ごと斬れ。

 

 

「む、ムゲン殿……しかし……」

 ――頼む。やってくれ。俺からの最後の願いだ。王を倒してくれ。

 ヤヨイはムラマサを強く握りしめた。どうやら、覚悟は決まったようだ。

「ムゲン殿……小生はお主のこと、絶対に忘れないであるぞ!」

 ――俺もだヤヨイ。さぁ、思いっきりやれ!

 次の瞬間、喉が焼けるような痛みを感じた。

「水転斬!」

 王の首が吹っ飛ぶ光景が見えた。そして、視界はどんどんボヤけていく。

 やった、やったんだ……俺は願いを叶えることができた。ありがとう最高の友よ。

 

 

 

「な、なんだここは……」

 辺り一面に色とりどりの綺麗な花が咲き誇っており、少し先には透き通るような川が流れている。

 なぜかは分からないが、川を渡らなければならない気がした。

 そして、一度渡れば戻ってこれない、そんな気がした。

「渡るか……」

 足を水につけようとした、その時であった。

「ムゲン」

 亡くなったはずの祖父の声が聞こえてような気がした。ふと前を向くと、本当に祖父がいた。

「じいさん! 俺、やったよ。今、そっちに行くから……」

 俺は再び足を水につけようとした。

「こっちには来るな!」

 祖父が叫んだ。祖父ななぜか悲しそうな表情をしている。

「じいさん……どうして泣いているんだ?」

「すまなかったな。お前の行く末を最後まで見てやれなくて……」

「じいさん、俺……」

「ムゲン、お前は……ワシの自慢の孫だ。これからは自分の為に生きろ」

 

 

 

「ムゲン殿!」

「ヤヨイ……」

 ヤヨイの顔が視界に映る。みんなが心配そうに俺のことを取り囲んでいた。

「よかった、ムゲン君……死んじゃったかと思ったよ」

「生きていて本当に良かったぞ、ムゲン」

 オリモカ先生が優しく頭を撫でてきた。みんなに心配を掛けてしまったようだ。

「目を覚ましたばかりでこんなことを言うのも何だが、ムゲン。お前は早くこの街から出て行った方がいい。直にお前には王を拉致した犯人として指名手配されるだろう」

 元よりそのくらいの覚悟は最初からしていた。復讐が終わったら、この街を離れるつもりであった。

「分かりました。どうか、お元気で。ヤヨイとシャーリアも……達者でな」

「待って、ムゲン君」

 シャーリアは俺の肩に手を置くと、王族魔法で体力とアギを回復させてくれた。

「一緒に戦ってくれて、本当にありがとう!」

 シャーリアは憑き物が落ちたかのように明るく振舞った。

 彼女はとても強い女の子だ。心配することは何もないか。

「シャーリア! こちらこそ一緒に戦ってくれたこと、心から感謝する。いい王様になれよ」

「わ、私が王様に?」

「うん。シャーリアならやれるさ。この国を任せたぞ」

 シャーリアならきっとこの国を良い方法へと導いてくれると信じている。一緒に戦ったからこそ分かる。

 シャーリアはとても強く、優しい人間だ。立派な王様になるだろう。

「私……やってみる!」

 シャーリアと握手を交わし、続けてオリモカ先生、最後にヤヨイと握手をした。

「それじゃ、またどこかで!」

 

 軽く手を振り、三人とお別れした。しばらくの間、あてもなく雑木林を彷徨っていた。

「さてと……これからどうするかな」

 復讐も終え、特にやることも無くなった。これからは自分の生きる目的を探したい。

「待たれよ」

 誰かに呼び止められた。聞き覚えのある声。まさか……

「や、ヤヨイ……どうしてここに?」

 なんと、声の主はヤヨイであった。

「ムゲン殿のことを追ってここまで来たのだ。これから一体どこに行くつもりであるか?」

「さぁ、別に決めてないよ」

「そうか。では、一緒にジャポニに向かわぬか?」

「……いいな、それ」

 ヤヨイの提案に乗ることにした。一度、ジャポニには行ってみたいと思っていた。

「では、向かうとしよう。後、ムゲン殿……」

 俺が「なんだ?」と聞く前にヤヨイが俺の頬に口付けしてきた。

 

 

 

「小生、ムゲン殿のことが好きである」

「奇遇だな、俺もだよ」




 読者の皆さん、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 次回作もご拝読いただければ幸いです。

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