最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く 作:チャンドラ=グプタ
「悔しい! 小生、とても悔しいぞ!」
お昼休みの食事中、ムゲンは二限目の鬼ごっこについて、とても悔しそうに嘆いていた。
「まぁまぁ、ムゲンさん。初めてであれだけ出来れば上出来だよ」
「ぐ……し、しかし……」
「僕らが初めてやった時は全然何もすることが出来なかった。それに比べれば三人とも魔法を使ってなんとか捕まえようとしていた。ほんと、みんな大したもんだよ」
「そういえばムゲン君。私に火の魔法を使うように言ってきたけど、何か意図があったの?」
「ああ。アイスボールは固形物で投げ返された。土の基本魔法であるストーンボールも同じく投げ返されるだろう。だが、流形体である火と雷を使った魔法なら効果があるんじゃないかと思ったんだ」
「なるほど、いい目をしているね。ムゲン君」
「そ、そうか?」
「うん。ムゲン君、君ならオリモカ先生をどうやって捕まえればいいと思う?」
ウィルの質問に俺は少しの時間、考え込んだ。
このメンバーの特性を生かしてオリモカ先生に一泡吹かせるとしたら――
「現状、一番早く動けるウィルがオリモカ先生を捕まえるのを担当する。俺とシャーリアが遠距離魔法でオリモカ先生の動ける範囲を制限して、ヤヨイが魔法剣術でウィルのサポートをする。これが一番良いと思うんだが……」
「うん、限りなく正解に近い。けど、それは今の持っている特性を使っての話だよね?」
今の特性を使っての話? 一体、どういうことだ?
「当面はムゲン君の作戦でいこう。そのうち分かると思うから」
「分かる? 一体、何が分かるっていうんだ?」
「まぁ、それはおいおいね……それじゃ僕は一旦部屋に戻るよ。ご馳走様」
ウィルは食堂を後にし、部屋に戻っていった。
「ねぇ、ウィル君ってどうして卒業試験落ちたのかな?」
「どうしてって……そりゃ強いモンスターにでも出会したからじゃないのか?」
いくら優秀な冒険者でも自分以上のモンスターと遭遇したら逃げ出すのが普通だろう。
「うーん、まぁそうなのかな……けど、私から見てもかなり強いと思うんだけどな」
確かにオリモカ先生が規格外だとしても、あれだけ応戦していたのだ。
ウィルが対処できないほどのモンスターか。
「お二人方、一つお願いがある」
ヤヨイが何やら畏まった感じで頼みだした。
「ねぇ、何かしら? 協力できるならするけど」
「小生にも基本魔法とやらを教えて欲しい。小生はもっともっと強くなりたい」
「もちろん! ムゲン君も手伝ってくれる?」
「ああ」
ヤヨイに基本魔法か。覚えれば確かに戦略の幅が拡がることだろう。
「感謝致す。代わりと言ってはなんだが小生も二人に剣術を指導いたすぞ」
「剣術かあ。覚えて損はないかもね」
「うむ! それじゃ早速、今日の放課後からお願いしたい」
「分かった。それじゃ放課後な」
昼休み後が終わると再び教室に戻る。三限目の授業は魔法工学であった。
主な内容は魔道具の作り方や魔法反応についてである。俺が最も楽しみにしていた授業である。
「ポーションはアギの量が多いモンスターの血液を原材料に作られる。だが、もしもモンスターの血液を何の処理を施さずに飲もうすると勿論、身体に良くない」
俺が真剣にオリモカ先生の話を聞いていると隣に「グー」という寝息が聞こえてきた。
ヤヨイが机に突っ伏して眠っている。居眠りなんてもんじゃない。爆睡である。
「おいこら。起きろ。ヤヨイ」
オリモカ先生は本を宙に浮かせ、それを軽くヤヨイの額にぶつけた。
ヤヨイは顔を上げ、眠たそうな瞳を手でこする。
「すまぬ、オリモカ先生。つい居眠りを……」
「居眠りというかもはや爆睡だぞそれは。お前にとってはつまらない内容かもしれないが冒険者になるんだったら必要なことだからちゃんと聞いておけ」
「承知した」
「全く……さっきも言った通り、ポーションにはモンスターの血液が使われている。飲むとアギは一時的に回復するが食中毒になったりするからくれぐれもそのまま飲まんようにな」
「なるほど……では、オリモカ先生。焼いて食べれば良いのではないか?」
おお、その発想はなかった。ヤヨイのやつ、天才かもしれない。
「そう来たか……確かに食べてもアギは回復するだろうが、そんな時間は戦闘中にない」
「むぅ……確かにそうか。では、火の魔法で炒めて一口でガブリと」
「あー、とにかく食べることから頭を離せ。それで早速、今からお前達にポーションを作ってもらう」
マッチ、赤い液体が入ったフラスコ、アルコールランプ、箱に入った白い粉、銀製のスプーン、ヘラがオリモカ先生の浮遊魔法により、俺達の机に上に置かれた。
「作り方はさほど難しくない。この箱に入った白い粉にはフラスコに入った血液にある毒物を浄化する作用がある。アルコールランプでフラスコ内の血液を熱し、三分ごとに白い子なをスプーン三杯入れる……ちゃんとヘラを使うようにな。これを三回繰り返せば完成だ……まぁ、お店で売られているものはもっと細かい処理が行われているが基本的な作り方が今言った通りだ」
俺は早速作業に取り掛かることにした。アルコールランプにマッチを使って火を付け、フラスコの血液を熱する。血液はすぐに『グツグツ』と音を立てて沸騰した。
注意深く時計を確認し、三分経過したらスプーン三杯投入した。
「うわ!」
『ボン』という大きな音が響いた。隣のヤヨイの席を見ると、フラスコビンが割れている。
「あちゃー、やっちまったか。粉の入れる時間や量を間違えると爆発するから気をつけるようにな」
そういうのは先に言って欲しいものである。俺は本で読んでいたから知っていたが。
時間、量を的確に見定め、作業を繰り返す。
「で、出来た……」
出来上がったポーションは綺麗な青色である。よくお店で見かけるような色だ。
「そろそろみんな出来たかー?」
周りの様子を確認すると、ヤヨイ以外は既に完成させているようである。
「よし、ヤヨイ以外は完成したようだな! それじゃ、次の実技の授業後に飲んでみるように。ヤヨイは今日の放課後、私と補習だ。完成するまで帰らせないから覚悟しておけよ」
「ぐぬぬ……しょ、承知した」
魔法工学の授業後、実技の授業を行うべく体育館へと向かった。
体育館には竹刀を持った無精髭の老人の姿が見える。
「来たな……実技を担当するガルド=シーラルだ。よろしくな」
ガルド先生に自己紹介され、俺達は「よろしくお願いします」と返答した。
「ワシの授業では主に体術について指導を行う。後、剣道も行う予定だ。冒険者たるもの、強靭な肉体こそが何よりも重要だ」
凛とした声で授業の概要について説明を行うガルド先生。魔法を使うことあはあるのだろうか。
「という訳でまずは腕立て伏せ百回、上体起こし百回、スクワット百回、そしてランニング十キロ……つまり、グラウンド二十五周するように。始め!」
マジか……サ○タマ先生のトレーニングかよ。なかなかにハードだな。