最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く   作:チャンドラ=グプタ

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組手

「ほら! ちゃんと腕を下まで下げろ、シャーリア=アルフレッド!」

「は、はい!」

「ムゲン=アベイルよ! もっとリズミカルにスカワットせんか! ちゃんと膝を曲げろ!」

「はい!」

 

 このトレーニングでシャーリアと俺は厳しく指導された。俺も山でそれなりに鍛えてはいたのだが、中々疲れる。

 一方でウィルとムゲンはそつなくこなしている。

 

「ヤヨイ=テンマよ。お主は中々に見所があるな」

「ありがたいお言葉である。しかし、小生はまだまだ半人前であるぞ」

「そんなことは知っておる! これからも鍛錬を怠るな!」

「承知した」

 スクワットまでこなし、俺達はグラウンドに向かった。

「どう? ムゲン君、辛い?」

 ウィルは走りながら訊いた。ウィルはまだ涼しい顔をしている。

「まぁな……けど、こなせない程ではない」

「そっか。けど、過酷なのはここからだよ」

 

 ウィルが意味ありげに微笑む。なんだかとても不安になってくるな。

 十キロ走り終え、体育館へと戻った。

 

「やっと終わったか……今日からこれを毎日やってもらうからな。覚悟しておけよ!」

 ま、毎日か……リアルサ○タマになりそうだ。いや、ならないか。もはや魔法を使う必要がなくなる。

「では、早速ワシと組手をやってもらう。二人ずつ掛かってこい」

 ウィルとシャーリア、俺とヤヨイでペアを組むことにした。

 一組目であるウィルとシャーリアがガルド先生に対峙する。

「よし、どこからでも掛かってこい!」

 

 開始と同時にウィルが間髪入れずに正拳を突き出す。しかし、ガルド先生はウィルの手首を掴み、軽く投げ飛ばした。

 ウィルは空中で二、三回ほど回り背中を床に打ち付けた。

 

「いてて……さすがはガルド先生。そう簡単には決まらないか」

「シャーリア=アルフレッド。お前も掛かってこい!」

「は、はい!」

 

 シャーリアは攻撃を仕掛けるが、ガルド先生は何ともないように防御する。シャーリアの動きは何だかぎこちない。体術はあまり得意ではないのか。

 ウィルも立ち上がり、再び参戦する蹴りを繰り出すが、ガルド先生は左手で防御し、右手でウィルの腹部に手刀を入れる。

 

「うご!」

 ウィルが顔を青くし倒れた。おいおいおい、さっきから容赦なさすぎだろガルド先生。

 だが、さっきからウィルに凄まじい攻撃を繰り出しているがシャーリアには特に何もしてこない。

 ガルド先生も女性には優しいのだろうか。

「ウィル=モニーク。まだまだ隙が多いぞ」

「す、すみません」

 ウィルが苦しそうに立ち上がる。

「シャーリア=アルフレッド。戦おうとする意思を強く持て。最初だから様子を見ていたが、このまま何もしないつもりならお前にも攻撃する」

「は、はい!」

 ウィルとシャーリアは二人掛かりで戦うが最後まで有効打を与えることは出来なかった。

 ガルド=シーラル先生か……オリモカ先生ほどじゃないがこの人も化け物だな。

「次、ヤヨイ=テンマ。ムゲン=アベイル。準備しろ」

 俺とヤヨイはガルド先生と向き合った。こうして対峙していると、隙が全くないのが分かる。

「ふむ……隙があらんな」

「……だな」

「一人なら攻略は不可能。だが、小生とムゲン殿の二人でなら攻略は可能。そうは思わぬか?」

「そうかもしれんな」

 俺たちが小声でやり取りをしているとガルド先生が首を回す。

「おい、来ないのか? 来ないなら……」

「――ッ!」

 

 ここで初めてガルド先生の表情が強張る。さっきの実技でも感じたが、ヤヨイの瞬発力は俺達の中でもズバ抜けて高い。魔法無しの状態であれば、ウィルよりも能力は高いだろう。

 

「せぃあ!」

 ヤヨイが叫びすと連続してパンチを繰り出す。

 いける――俺は後手に回っているガルド先生の背後に回り込んだ。

「おら!」「せいあ!」

 挟み撃ちになるような形で俺とヤヨイが同時に蹴りを繰り出す。

 だが、自分の足に伝わる衝撃はヤヨイの蹴りであたった。

 ガルド先生は上空で二、三回バク転し華麗に着地した。

「お前ら……中々、見所があるな」

 くそ、避けられたか……だが、必ず一撃を入れてやる。俺が行動しようとする前に、ヤヨイが突然体勢を低くした。

「とりゃ!」

 ヤヨイがそのままガルド先生にローキックする。

「……っく!」

 

 しかし、攻撃をしたヤヨイの方が痛そうに顔をしかめる。いかん、俺も攻めねば。

 真正面からガルド先生に向かっていく。どの攻撃を仕掛けてもカウンターを喰らうことは明白だ。ならばここは……

 ガルド先生の顔の前で『パン』と大きく手を叩く。ガルド先生が目を丸くする。

 

「隙あり!」

 ヤヨイの渾身の飛び膝蹴りが見事に決まり、ガルド先生は尻餅を着く。

「てて……まさか猫騙しを使うとはな。ついびっくりしてしまった」

 これは祖父と体術の訓練の時によく使っていた手だ。使う方によっては相手に隙を生み出すことができる。

 しかし、なんとか一撃を入れることには成功したが、大して効いていないようだ。

「ムゲン殿、咄嗟の機転、誠に感謝致す」

「気にするな。もう一度二人掛かりで攻めるぞ!」

 同時にガルド先生の懐に入り込む。しかし、一瞬にしてガルド先生は姿を消す。

「まだ遅いな」

 

 背中に痛みが走ると、吹っ飛ばされた。くそ……オリモカ先生といい、この人といい、魔法を使っていないのにどうしてこんなに速く動けるんだ。

 

「いてて……今のは中々強烈な一撃であった」

 ヤヨイも床に倒れこんでいる。立ち上がり、どう攻撃すべきかと模索した。

「せぃあ!」

 俺が動き出す前にヤヨイが動いた。

 あいつ、闇雲に……ヤヨイの放った右手のパンチと左足のキックを防せがれ、まもや投げ飛ばされてしまった。

 俺は落下地点へと向かい、飛ばれたヤヨイを受け止めた。抱えたヤヨイを下ろす。

「助かった。ムゲン殿、感謝致す」

「ああ」

「ヤヨイ=テンマ。思い切りが良いのは評価するがもう少し考えて行動すべきだな」

「ご指導誠に感謝致す。ガルド先生。しかしながら小生、じっと考えるのは苦手ぞ。動いておらぬと落ち着かぬのだ」

「そんなんじゃいつか早死にするぞ」

「では、ムゲン殿。そうならぬよう協力して戦おうぞ」

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