最高位魔法を使えない俺はハチになるエキストラユニークスキルで生き抜く   作:チャンドラ=グプタ

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特訓

「いやー、ガルド先生とても手強かったであるな。ムゲン殿!」

「そうだな」

 

 結局、あの後ほとんど何もできなかった。

 実技の授業が終わり、教室に戻ってきた俺は魔法工学の授業で作成したポーションを飲んだ。

 爽やかな飲みご心地で我ながら美味しい……が、特段魔力が回復した様子はない。

 そもそもさっきの授業で一度も魔法を使ってないから当然か。

 

「よーし、お前らー。ホームルームを始めるぞー。ポーションはもう飲んだか?」

 オリモカ先生が教室に入ってきた。

「一応飲みましたけど……さっきの授業じゃ全然魔法を使わなかったです」

 ウィルの言葉を聞き、オリモカ先生は頭に手をあて、「あー」と嘆く。

「そういえばガルド先生の授業だったか……すまん、すっかり忘れてた。まぁいい。とりあえず、今日一日授業を受けてみてどうだった?」

「オリモカ先生もガルド先生もとても強い。小生達も卒業までに先生達みたく強くなれるだろうか?」

「いや、無理だろうな」

 オリモカ先生はあっさりと否定した。

「私だってかなり長い時間を掛けて今の力を身につけたんだ……って言っても全盛期はとっくに過ぎているがな。私みたいに慣れるのは実際に冒険者になってしばらく経ってからだろう」

「そうか……それはとても残念である」

「ヤヨイ。お前はななんでそこまで強くなりたいのかは分からないが、あんまり慌てるな。まだ若いんだし、じっくりと力を身に付けるつもりでいけ」

「……承知した」

 確かにヤヨイの強さへの渇望は異常だと言っていいかもしれない。

 

 何かあるのだろうか――例えば復讐とか

 

「あと、お前は魔法工学の補修があるから残るようにな」

「あ……そ、そうであった!」

 ホームルームが終わると、一度寮に戻ることにした。

 ヤヨイの補修が終わり次第、シャーリアと共にヤヨイに基本魔法について教える予定である。

 補修は一時間ほどで補修が終わることだろう。

俺は早速、魔道具の開発を行うことにした。小屋の中にある材料を使って、魔道具を作っていく。

 作るのはモンスターに効く痺れ玉だ。薬品の調合を行い、慎重に作り上げる。

「出来た……!」

 

 出来上がった銀色の球体をじっくりと眺める。一定以上の衝撃を与えると球は割れ、痺れ作用のあるガスを噴射する。

 実際に使わなければ効果は分からないが、かなり強めに作用するよう設計した。

 

「ムゲン殿! 何をしているか!」

「うわ!」

 突然、ヤヨイが小屋の中に入ってきた。

「ムゲン殿! 約束したではないか。基本魔法について教えてくれると!」

「わ、悪い……つい夢中になってた。よくここが分かったな」

「ウィル殿が教えてくれたのだ。ムゲン殿、それは何であるか?」

「痺れ玉っていうモンスターの動きを鈍らせる魔道具だよ」

「ほう、痺れ玉とな。これをムゲン殿が……さすがであるな」

「いやぁ、それほどでも」

 ヤヨイに褒められ、なんだかちょっと照れくさくなった。

「ちょっと見せてもらってもよいだろうか?」

「ああ、別にいいよ」

 俺はヤヨイに痺れ玉を手渡す。ヤヨイはそれを訝しんだ様子で見つめる。

「とう!」

 そして、何を思ったかヤヨイは結構強めに痺れ玉を小突いた。痺れ玉は割れ、中から黄色いガスが噴射し、ヤヨイの身体がガスに飲み込まれた。

「お、おいヤヨイ! 大丈夫か?」

「だ、大丈夫であるぞ。なるほど……確かにこれは結構くるものがあるな」

 ヤヨイは身体をブルブルと震わせていた。

「お前、どうして小突いたりするんだ」

「興味本位でつい……思ったよりあっさりと割れるのであるな」

「これくらいの強度にしないと実戦じゃ使えないからな」

 三十秒ほど時間が経つと、ヤヨイは普通に身体を動かせるようになった。

「いやぁ、なかなか強烈であった。ムゲン殿、せっかく貴殿が作った魔道具を台無しにしてしまってしまなかった」

「いや、気にしなくていい。どうせ卒業試験にならないと使う機会もないだろうしな」

 ん? 待てよ。さっき、俺が作った痺れ玉はモンスターにしか作用しないはずだ。

 どうしてヤヨイに効いたんだろうか。もしかして調合を間違えたのだろうか。

「どうしたのであるか? ムゲン殿」

 ヤヨイが不思議そうな表情で俺の顔を覗き込む。

「い、いや……なんでもない。シャーリアが待っているだろうしそろそろ行くか」

 

 俺とヤヨイは構内にある広場へと向かう。そこでシャーリアが待っているようであった。

 広場にある椅子でシャーリアが退屈そうに座っているのが見えた。

 

「あ……おーい、二人とも」

 俺達に気がついたシャーリアが手を振る。

「待たせて申し訳ない。シャーリア殿」

「もう! 遅いよ二人とも」

「悪い。俺のせいなんだ。ウィルから譲ってもらった魔道具開発室でつい夢中になってしまってな」

「うふふ、嘘だよ。そんなに怒ってないから。それじゃ始めようか」

 

 早速、三人で修行を開始することにした。まずはヤヨイに水魔法について教える。

 

「水魔法を使うときは頭の中に水を思い浮かべるんだ。そして、呪文を唱えれば発動する。こんな風にな。ウォーターボール」

 

 手本を見せるべく俺はウォーターボールを放った。

 水の塊はコンクリートの壁にぶつかり、『バシャッ』と音を立てて弾ける。

 

「なるほど……では、小生も。ウォーターボール!」

 ヤヨイは呪文を唱えたが、魔法は発動しなかった。

「何も起こらないであるな……」

「最初からそう簡単に上手くいったりしないよ。それに最初は杖を使ってやってみた方がいいよ。はいこれ。貸してあげる」

「うむ。ではありがたく使わせていただくぞ」

 ヤヨイは杖を受け取り、構えた。体内のアギを魔法へと変化させようとするのが伝わる。

「ではゆくぞ……ウォーターボール!」

 しかし、何も起こらない。

「くっ……上手くいかんな」

「何度も繰り返していけばきっと成功するよ!」

「そうであるな。よし! 鍛錬に励むであるぞ!」

 しばらくの間、ヤヨイはウォーターボールの発動を試みた。俺やシャーリアは見本として何度かウォーターボールを放った。

 すると、何十回かの試みにて、杖の先に小さな水の玉が出来上がっているのが分かった。

「おお!」

 しかし、玉の形に形成されるとすぐに消えてしまった。

「むぅ……また失敗してしまった」

「いや、かなりの上達ペースだと思う。俺なんか使える水を具現化させるまでに一ヶ月くらい時間が掛かったからな」

「ムゲン殿でもそれくらい掛かるものであるか。魔法というのは実に奥が深いな」

「けど、ヤヨイは魔法剣術を使えるじゃない。そっちの方が難しいんじゃないの?」

 シャーリアの言うことはもっともだ。ヤヨイが使う魔法剣術は間違いなくレベルの高いものであると思われる。

「確かに魔法剣術を身につけるのは大変であった。しかし、この基本魔法も中々に難しい」

「そうか。どの魔法も一朝一夕で身に付けることができるものじゃないからな」

 俺が最初に身につけたのはファイアボールであったがそれが覚えられたからといって、すぐにウォーターボールを使えたわけではなかった。

「そうであるな。よし! もう少し鍛錬を続けるであるぞ」

 その後もヤヨイはウォーターボールの発動を試みたが、成功させることはできず、気づけば日が暮れていた。

「むぅ……もう日が暮れてしまった。二人に剣術を教えようと思っていたがつい夢中になってしまったである。すまない」

「気にするな。それに、よく考えたら俺は刀を持っていないからな。シャーリアは?」

「私も持ってないや」

「ふむ、確かにそうであるな」

 

 刀は魔道具ではなく、(一部例外もあるが)購入するという選択肢しかない。

 

「それじゃ休日にみんなで刀を買い物に行きましょう!」

「買い物であるか。それは良い提案であるな」

「ムゲンくんはどう?」

「ああ。俺はどっちみち買いに行く予定だったからな」

 久々に街に繰り出すのも悪くない。魔道具開発のために買っておきたいものが色々とあった。

「夕食の時、ウィルくんにも声を掛けてみるね」

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