なんやかんやの後。城最奥、玉座の間の巨大な扉前。
冷気、いや凍気はすでに肌を刺すまでのものになっていて、その場にいるだけでダメージを受ける。魔王級の危険度と仏が恐れるのも無理はないようだ。
四人はお互いに視線を向け小さく頷きあい、覚悟を決め扉を開けた!
「氷の魔女!でてこい!」
「ここはわたしの城よ?逃げも隠れもしないわ」
ヨシヒコの叫びに、ゆっくりと答える声があった。
玉座の間は何本もの柱の並ぶ広大な空間だった。凍気が白く渦巻く奥。玉座に座していた人影がすくりと立つ。
小さなティアラが彩る、腰に届く豊かに流れる金髪。長い睫毛に縁どられた大きな目には星輝く瞳。型のよい鼻と、愛らしい唇。
襟元が広めに開き胸元や肩をあらわにしたドレスであるローブデコルテは、豊かな胸ときゅうとくびれた腰、そして大きなヒップによって裾丈が床に至るまで魅惑の曲線を描く。
ドレスと肘上まである手袋は、クリスタルのような光沢のある素材でできている。その滑らかな表面は小さな立体的な模様が一面に施されており、少しの光でキラキラと輝く。それはまるで星空を纏っているかのよう。
噂以上の魔女の美しさに、ヨシヒコ一行は息をのんだ。
「わぁ……」
「なっ……!ダンジョーさん、まさかあれは……」
「うむ。もしかしたら、もしかするかもしれん……」
女の子憧れのドレスコーデに目を輝かせるムラサキの横で、ヨシヒコは驚愕の表情でダンジョーを見た。その視線をうけ、ダンジョーは大きく頷く。
「氷の魔女!聞きたいことがある!その身に着けているお召し物は……」
「これ?キラキラで綺麗でしょ?氷でできてるんだぞ」
ヨシヒコの問いに魔女はいたずらっぽい微笑みを浮かばせつつ、ドレスをつまんで見せた。
「な、なんてことだ……。ダンジョーさん!」
「ああ、ヨシヒコよ。氷でできているというのならば、光の加減であれやこれやが透けて見えることもありうる……。否っ!むしろ、なんとなくあれやこれらかと思っていたものが、まさしくあれやこれらの可能性すらある!」
ヨシヒコの視線を受けてのダンジョーの言葉に、ヨシヒコはさらなる驚愕に表情を歪ませた!
「ありのまますぎるっ!」
「お前らほんと、サイテーだな!」
ヨシヒコの魂の叫びに、ムラサキの罵倒がとんだ!
「いいかヨシヒコ。大事なのは集中力と角度よ」
「集中力と角度ですか?!」
「うむ。まずは目を細めるのだ。これによって人間の目はいつもより良く見えるようになる。さすれば活路も見いだせる!」
「ああっ!本当だ!見えます!よく見えます!」
「……まずいぞ。氷の魔女は噂以上の美貌とプロポーション。ヨシヒコの壊れっぷりが想定以上にヤバイ」
ヨシヒコとダンジョーが下種な作戦会議をはじめたその横で、メレブは焦りの表情を浮かべていた。
「なあ、メレブってホモ?」
そんな光景を不思議に思ったムラサキは、メレブに問い掛ける。
「はぁ?突然なにをいいだすのだ?ムネタイラよ。貴様は脳みそもまっ平か?」
「あ、いや……。あの二人と違って冷静だからさ」
「ラスボス戦だぞ?それどころではないだろうが!」
「あ、はい」
まともに見える……。初めてメレブがまともに見えることに、ムラサキは愕然とするのだった。
「次は角度よ。上下左右、小刻みに首を動かすことによって視線の角度を変えるのだ」
「こう?こうですか?」
「うむ。こればかりは手探りに色々試してみるほかあるまいて」
そうして。目を細めつつ壊れた人形のように首をふるふると動かし続けながら、魔女をガン見する不審者がそこに現れた!
「……それであなた達、何しに来たの?一応聞いてあげるわ」
「はい?いえあの……氷の魔女様の冷気で……近隣の村人達が迷惑……してるんです……」
「うわ。ガン視しながら『様』つけちゃった。だめだこのエロヒコ」
氷の魔女は眉をひそめつつ目の前の奇行種と化したヨシヒコに問う。それどころでない奇行種がのろのろ答える様を見て、メレブは頭を抱えた。
「わたしがここに来たのは、誰も居なかった五百年も前よ?後から来て文句いうとか、穏やかなわたしでもカチンときちゃうんだぞ」
「はぁ……まぁ……そうですよね……。すいません。それより動かないでもらえませんか?角度が大事なので」
「ヨシヒコー!上目遣いだ!首の角度が重要だ!」
「こう?こうですか?」
「おーい、ヨシ君ー。目を覚ませー」
「ヨシヒコ!そんなことやってる場合じゃないだろ?!」
ヨシヒコの酷い惨状に、正気に戻そうとメレブとムラサキの声が飛ぶ!
「うるさい!こっちはそれどころじゃあないっ!!」
振り返ったヨシヒコは、鬼気迫る表情でメレブとムラサキを睨みつけ一喝した!
「少しは楽しませてもらえると思ったんだけど、時間切れね。そんなにそうしていたいなら、そうさせてあげるわ」
人差し指を頬に添え小首を傾げた氷の魔女は、ため息一つ。すると凍気が白く渦を巻き、ヨシヒコを包み込む!
その渦が消えた後には、細目でへんな首の角度の不審者の氷の彫像がカピカピと光っていた……。
「ヨシヒコッー!」
「んーこんな彫像もういらないし、あなた達は帰してあげるわ。ばいばーい」
凍り付いたヨシヒコに驚愕する仲間達に、氷の魔女はのんびりお別れを言う。
……こうしてヨシヒコ一行は全滅したのだった。
*****
玉座の間、とある柱の影。白い布の被り物をした娘が玉座を覗く姿で氷の彫像となっていた……。
目を細めるとよく見えるようになるのって、ピンホール効果っていうらしいですよ?
まめしばー
→この氷の魔女。当時観ていたアニメのあるキャラが元だったり。さて、だれでしょうー?
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