「はぁ……」
トーレボ王の街は平地にある大きな街で、街中を二分するように幅広い川が流れている。その川にはいくつもの橋が架かっていて、まどかはそうした橋の欄干に寄りかかり水面を眺めつつ、ため息をついていた。
「そんなため息をつくと、しあわせが逃げるぞ?マドカ。なにか悩み事か?」
「あ、ダンジョーさん……」
偶然通りかかったダンジョーが、そんなまどかに声を掛けたのだった。
「じつは……」
まどかは川面に視線を落としつつ、ぽつりぽつりと話し出しだす。
*****
緩やかに流れる水面を並んで眺めつつ、まどかが『訓練場』での出来事を話すのを、ダンジョーは静かに聞いていた。
「私、得意な学科とか、人に自慢できる才能とかもなくて。『職業』に就ければ少しはみんなの役に立てると思ったのに……」
「なあマドカ。おぬしはまだ子供よ。そうしたことはゆっくりさがせばいい。見つかるまで儂ら大人がちゃんと守ってやる」
「…………」
「それと。自分だけ魔法少女とやらでない事に引け目を感じているのではないか?」
「それはあると思います。私、守ってもらってばかりだし……」
「やはりな。まずそれは気にするな。仲間なのだ。それぞれ補い合えばいいのよ」
「足引っ張ってばかりの私が補ってるものなんて……」
ちからなく首をふるまどかを見つつ、ダンジョーは微笑む。
「儂の見立てだと、おぬしら四人の中心はマドカ、おぬしだと思うぞ?」
「え……、私?」
「うむ。リーダーはキョウコのようだがな。他の三人に対して最も気を配ってるのはおぬしよ。それがちゃんと三人にも伝わっているからこそ、まとまっているのだ。安心せい。おぬしはしっかり役に立っている」
「……はい」
まどかはダンジョーの優しい指摘に思わず涙ぐむ。そんなまどかの頭をダンジョーはゆっくり撫でた。
ドボーーン!
そして、突然の大きな着水音!
「……まどか、だいじょうぶ?」
驚きに目を見開いたまどかの前には、ダンジョーではなくほむらが立っていた。
「あの変態。まどかを泣かすなんてゆるせない」
「え、え?」
怒りに打ち震えているほむらの横で、まどかは状況確認のため周りを見回す。その視線の先、いつの間にか川に落ち、下流へと流されていくダンジョー!
訓練場ではぐれたまどかを捜していたほむらは、涙ぐむまどかを発見。すかさず時を止め、その原因であろうダンジョーを川へと蹴り落したのだった!
「がぼがぼがー」
「ダ、ダンジョーさん?もう!ほむらちゃん!そうじゃないから!ダンジョーさんを助けなきゃ!」
「……え?」
……すったもんだの挙句ダンジョーを救出。ほむらはメッチャまどかに怒られた。
*****
救助された濡れネズミのダンジョーは退場。まどかによるほむらへのご指摘中に杏子、さやかが合流する。
そんな時。四人に声が掛けられた。
「お仕事にお困りもぐぅ?」
「え、はい……」
少女達が振り返ると、そこには白い着ぐるみに白い被り物をした人物が立っていた。
着ぐるみは動物のようにもこりとしていて、背中に小さな蝙蝠翼と、お尻に尻尾を模したであろう赤い球体が付いている。
被り物は大きく丸い頭の上に犬のような三角耳。その真ん中、頭頂部辺りからのびた紐の先には、やはり赤い球体があり、垂れさがったそれはぶらぶらと揺れる。広い額の下に並ぶ二つの大きな孤。閉じられた目に当たるのだろうか?そして顔の中央、鼻の位置にはやはり赤い球体。
そして被り物のサイズが大きすぎるためおさまりが悪いのだろう。常に被り物の
異様な圧を発するゆるキャラの登場に少女達は息をのむ……。
「クポはクーポリ。お仕事をさがす人のお助け妖精もぐぅ」
「…………」
「クポはね、あの『訓練場』のボーナスポイントには断固反対なんだもぐぅ。あれのせいでどれだけキャラメイクに時間かけたことか。機械的にポチポチやってたら、高ポイントのヤツ消しちゃったりさ。あ、もぐぅ。ともかくね、クポのほうがいろんな仕事紹介できるもぐぅ?」
固まる少女達にクーポリはゆれる被り物を頻繁に押さえつつ、そう力説した。
「……『職業』をさがしてくれるんですか?」
「もちろんもぐぅ。このアンケートとワーキングシートに記入をお願いするもぐぅ」
震えるまどかの問いかけにクーポリは、被り物が落ちないように押さえつつ頷く。
「これで適正、経験、希望を踏まえて、お仕事を紹介しちゃうもぐぅ」
*****
「それじゃあ『ジョブ』を発表するもぐぅ」
回収した紙をしばらく眺めていた後。クーポリが少女達に振り返った。
「まずキョウコ。槍持ちて天空を駆ける竜騎士!」
「槍だけに?安直だね」
「竜騎士には小竜の相棒が付くもぐぅ」
杏子の反応におかまいなく、クーポリは子猫くらいの大きさの生き物を差し出した。それは背中に小さな蝙蝠羽根、オタマジャクシな尻尾のあるブサイクなカエルに見える。
「……竜?これカエルじゃない?」
「竜もぐぅ」
「いやカエルだろ?尻尾がオタマジャクシだし」
杏子の抗議にクーポリは無反応スルー。カエルはそんな杏子の頭に勝手に着地鎮座。
……かわいいっ!
ほむらはキュンキュンしていた。
「さて次はサヤカもぐぅ」
「あ、はい!」
「片手剣と盾、回復能力で味方を守るナイトもぐぅ」
「おお!なんかかっこいいね!んーでも盾が違うかな」
「え?いや、むしろナイトには盾が……」
「さやかちゃんは高機動に手数を活かした連続攻撃がウリでしてねー。そんな感じのナイトってことで!」
「……もぐぅ」
さやかの発言にいろいろ言いたそうなクーポリだったが、自分の中に押し込めることにしたようだった。
「さてホムラ。銃とギャンブルで味方をサポートするコルセアもぐぅ」
「ちょっと。博打打ちの海賊とか完全無法者よね。どうして私がそうなわけ?」
不服なほむらはクーポリのこめかみに突きつけた拳銃の撃鉄を起こす。
「……たぶん、そういうところもぐぅ」
クーポリは小さく答えた。
「さて。ではマドカだが……」
「…………」
まどかはクーポリを見つめ、つばをのむ……。
*****
「その様子だと、なにか嬉しいことがあったのかい?」
その日の夕食。全員が揃ったテーブルで満面の笑みを浮かべるまどかにムラサキが話しかけた。
「は、はい!私も『職業』に就くことができたんです!」
「ほう。それはよかったな。それでどんなものなのだ?」
喜ぶまどかを一同が祝福する。そんな時。
「おめでたいこの瞬間、呪文を思いついたわたしだよ」
あまりに空気を読まないメレブに非難の視線が突き刺さる。
「……呪文!すごい、すごいです!どんな呪文なんですか?」
だが、当の本人であるまどかがノリノリなので、周りは沈黙した。
「ちょっと、まどか……」
「そんな青子に、えい!」ぴろぴろり!
まどかを諭そうとしたさやかに呪文が直撃する。
「な、なんでやねーん!」
そしてさやかはいきなり肘九十度にまげた平手をズビシ!と横に当てつつ、ツッコミをいれた!
「お、おい。さやか、どうした?」
さやかの奇行に一同は驚き、目を見開く。
「う、うん。よくわかんない……」
「それは私の呪文の効果だよ!」
「!」
「この呪文をかけられたら、とりあえずツッコまなくてはいられなくなるのさ。私はそう、これを『アホカアンタ』の呪文と名付けるよ!」
「……すごい!」
一同を置いてけぼりに得意げなメレブに、まどかが飛びあがりつつ賛同する。
「すごい、すごいです!かけてください!かけてみてください!ほむらちゃんに!」
「ええっ!やっぱり私?!」
「えい!」ぴろぴろりん!
まどかの要請に従い、メレブの呪文がほむらに炸裂!
「……な、なんでゃ……ねぇん……。ぅぅ……」
涙目に真っ赤な顔をしたほむらがツッコミを絞り出す。そのあんまりな様に周りは、ほっこり。
「ふふ。絶大なる威力に恐ろしくなるね」
「…………なってない」
得意げなメレブの横から漏れた異議の声の主に一同の視線が集まる。その先には……。
両手を腰にあてたまどかが、ふんすと眉をよせていた。
「全然なってない。そんなツッコミ、ぜんぜん駄目だよ。照れちゃ駄目!もっと元気に勢いよくだよ?ほむらちゃん!」
「……な、なんでや……ねん……」
「うん!さっきよりずっといいよ!でももっと、元気よく!」
「な、なんでやねん!」
「ほむらちゃん!その調子!」
「なんでやねん!」
「すごい、ほむらちゃん!でも、もっと!」
「なんでやねーん!」
「すごい、すごいよほむらちゃーん!」
やりきったほむらに、まどかが満面の笑みで抱き着いた!
あの二人はどこに向かっているのだろう……?
すっかり置いてきぼりな一同は、二人をただただ眺めていた。
まどかのお笑いに厳しい(さんま並)のは、ねつ造になります
ちょこり修正
かなりFF11ネタでしたー!
FF11は、ちょっとマイナーですかねぇ。
盾持たないさやかと、ダイス買ってない(買えない)ほむらはLVアップしても恩恵があまりないってとこがオチ?わかりづらっ!